〜 『キツネと姉妹と約束と 第3話・後編』 〜
投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 2/24)
「いいのかよ?あの魔族、店に残してきたままで・・。」
「スズノちゃんがいるんだ。あのまま留まってGメンと対面するわけにもいかないだろう?
それに、あの手錠には強力な封印が施されているからね、奴が暴れだす心配もない。」
言いつつも、やはり気になるのか、西条は横目でチラリと背後をうかがう。
・・・・・。
4人はそろって夕焼けの小道を歩いていた。
正確には3人・・泣きつかれたスズノが横島の背中で寝息をたてている。
「・・結局・・何が狙いだったの?あの男・・。スズノを連れて行きたい素振りだったけど・・。」
「多分、この間、君をつけまわした連中の一味だよ。相変わらず戦力集めにご執心らしい・・。」
問題は何故それがスズノなのか、ということ。
肩をすくめながら、2人は意味が分からないとばかりに首をかしげる。
・・後ろを歩く横島だけが、一人神妙に顔をしかめていた。
(・・2人とも・・気づいてないのか?)
・・無理もない。他人に向けられた殺気など・・そうそう知覚できるものではないのだから。
かく言う自分も、もう少しで見逃すところだった。
・・・一瞬だけ開放された・・あのスズノの力を。
隊長が捕獲命令を出すのも頷ける。
地上に生きる神魔族にあれと渡り合えるものが何人いるか・・・。それほどまでに強力なのだ、この少女の力は。
(・・べスパでも・・触れられるかどうか・・ってとこだろうな・・)
おそらく本人すらも自覚がない。
何らかのの外的要因が引き金になって・・『暴走』という形で力が発現する。
怒りや憎悪に意識を奪われ・・・衝動の赴くままに全てを・・・。
だからこそ危険極まりなく、Gメンは幽閉することによって彼女の動きを封じた。
敵が目をつけたのも・・・おそらくはそこだろう。
・・・・。
(・・参ったな・・こりゃ)
風が吹く。
幾分か優しさを増した空気の流れが、少女の銀髪をサラサラと揺らして・・・・
安らかな寝顔は・・一体どんな夢をみているのだろう?
「・・ほんとに・・こんなに小さいのにな・・。」
苦笑しそうになりながら、横島は少しかぶりを振る。
たしかに、彼女は危険なのかもしれない・・いたずらに力を振るう魔族よりもずっと・・
だけど、そこで牢屋に閉じ込めてハイおしまい、というのは・・・・何かが違う・・・。
少なくとも、自分はそんな結末を見たくて力を求めているのではないのだから。
「・・・ん・・ねーさま・・・横島・・・・。」
「お〜・・寝言で呼ばれるなんて光栄だな。」
少し驚きながら一人ごちて・・横島はスズノを抱えなおす。
「・・心配すんな。守るからさ・・・お前も・・お前のねーさまも・・。」
〜appendix.2『ラブコメの王道とその対策』〜
「・・おいおい。マジに1人で行く気かよ・・。」
「そう不安そうな顔をしなくても、君たちの身元についてはしゃべらないよ。
先生には隠し事をするより、頭を下げて頼んだほうがいい。・・スズノちゃんの処遇、なんとかしてもらうさ。」
からかうような笑みを浮かべて、西条が車のドアを開け放つ。
場所は夕陽の落ちかけた公園前。
3人を下ろした後、彼はこれから立ちはだかる困難に・・密かに頭を抱えていた。
本気で起こったときの美智恵は・・誇張ではなく、本当に鬼も逃げ出す勢いで・・
「・・そうじゃなくてよ。そんなことしたら冗談抜きで免職ものなんじゃあ・・。」
「おや。横島君が僕の心配とは気味が悪い・・・。」
「・・本当に気味悪そうにいってんじゃねえよ・・・。」
半眼でつぶやく横島に眉を上げ、西条は軽くため息をつく。
「実は少しショックでね。さっきスズノちゃんの寝言に僕の名前が出てこなかったろう?」
「・・まさか・・んなくだらない理由で・・。」
「そのまさか、さ。第一、僕にとっては一大事だ。君に負けたみたいでくやしいじゃないか。」
苦笑を交えたそんな会話。
どこまでが冗談で、どこまでが本気なのか・・どちらにしても酔狂なことだ。
・・・。
「・・西条さん。スズノのこと・・お願い。」
「・・ま、名前を覚えてもらう程度には活躍してみせるさ。子守りは君たちに任せて・・ね。」
そう言うと、手をヒラヒラさせながら西条はアクセルを踏みしめて・・・・
そのまま、街路樹の向こうへと消えてしまう。
横島に対して、大量の煙を撒き散らすのを忘れないあたりが、なんとも彼らしいが・・
「・・・あいつ・・まさかただのロリコンとか・・そういうオチはねぇよな・・。」
「・・多分、大丈夫・・・だと思う。」
ポツリとつぶやく横島の顔もタマモの顔も・・割と深刻だったりして・・・
『ハゲ疑惑』の次は『ロリコン疑惑』と・・彼もなかなか苦労が耐えない人だ(笑)
「さて・・オレたちはどうする?野宿・・ってわけにもいかないよな?」
もはや爆酔モードに突入しているスズノを指差し、横島はタマモを振り向いた。
「・・別に、私たちに手配がかかってるわけでもなし・・普段どおりでいいんじゃない?じゃないと逆に怪しまれるわ。」
目を細めるタマモの頭の中では、あらゆる事態を想定して・・
すさまじい速さで脳がフル稼働しているに違いない。
対して、横島は別段、何を考えるという素振りも見せず・・・
「なるほどね。じゃあスズノにはオレの部屋にでも泊まってもらうかぁ・・・」
・・なんてことを提案する。
・・・。
・・・・・。
タマモの思考が一時停止した。
「な・・・なに考えてるのよ!このケダモノ!!」
「け・・ケダ・・ってはぁ!?そりゃこっちのセリフだ!いくらなんでもスズノに手を出すほど落ちぶれてねぇよ!!」
・・いや、全く説得力がないのが悲しいところだが・・
横島は微妙にショックを受けたような顔で・・・・
「・・・あのなぁ・・。じゃあどうすんだよ。美神さんにバレずに事務所にスズノを連れ込むってのか?」
「・・そ・・それは・・」
さすがにタマモも・・横島がスズノの寝込みを襲うなどとは・・考えていない・・。
・・・しかしである。子供とはいえ、思い人が別の女と一夜をともにするなど・・・・
姉である前に『タマモ』として許容できないというかなんというか・・・・・
・・・とにかく、まぁそんな感じなのだ。
・・もっとも、この直後の横島の発言で、タマモはさらに真っ白になるのだが・・・
「・・じゃあさ。お前も一緒に泊まればいいじゃん。雑魚寝になるけど3人ぐらいならなんとかなるし。」
「ああ・・なるほどそういう手も・・・・・」
ポンッと・・タマモは合点したように手をたたき・・・・・
・・・・・。
・・・・・・。
「え?」
おそらく、本日最大であろう・・そんな驚きとともに完全に身を固くする。
やがていつの間にか起きだしたスズノによって、横島宅へと・・彼女はズルズル引きづられ・・・
「ちょ・・・ま・・・待って!!い・・いくらなんでもそれはまずいんじゃあ・・・」
「?別に自分の家だと思って楽にしてくれていいぞ?」
「・・そういうことじゃなくて・・」
「ねーさま、ファイトだ。ここからが正念場だ。」
「・・・・・・。」
・・夜はまだまだ長そうである。
〜『おまけ 3.5話 』(そのセリフはセクハラです横島くん(笑))
夜も更けて・・・
戸惑いはあったものの・・横島宅で、タマモは割りと楽しい時間を過ごしていた。
普段3食カップラーメン、という横島の食生活には・・正直、閉口したが・・・・
明日の朝食を自分が作ろうか?持ちかけてみると、彼は心底喜んで・・・これはこれで悪くない気分。
―――・・・。
「・・ふむ。正常な男子は女の風呂をのぞくものだというが・・そしてこれから私とねーさまは入浴なのだが・・
のぞきたいのか?横島。」
「・・・のぞきたくねーよ。」
「!・・では横島は正常ではないのか?異常なのか?病院にいくか?」
「・・・・あぅ・・誰か助けて・・・」
そばでなされるそんな会話。
それにタマモは少し憮然として・・・・・
いや、別に覗いたら覗いたでひどいのだが・・しかしここまで興味なさそうにされるのはちょっと・・という感じで・・
(ふ・・・ふん。私だってシロやおキヌちゃんよりは・・・胸あるんだから・・)
胸の話となれば、タマモは『一応』・・繰り返すが『一応』事務所No.2だったりして・・
まぁ、No.2〜4まではどんぐりの背比べで、1と2の間に恐ろしいほどの開きがあるのはこの際秘密だが・・
・・・・。
「・・横島・・。なにそれ?」
「うん?・・ああ、お前らが風呂に入ってる間に見とこうと思って。」
・・。
・・・で、横島の手にしっかりと握られていたものは・・・・
「・・・つ・・・つまり・・私たちの入浴シーンよりそのいかがわしい本の方が魅力的だと・・・?」
タマモが突然、ワナワナと震えだす。
「へ?当然じゃん。あははっ!何言ってんだよ、そんな・・まな板が少し出っ張ったぐらいの慎ましい胸で・・」
・・で、言わなきゃいいのに横島がそんなことを口走って・・・
・・・。
「ね・・ねーさま・・落ち着いて。横島だって悪気があるわけじゃあ・・。」
「・・・人の・・気にしてることを・・」
「へぇ!?なんだよ!いきなりどうした!?」
予定調和のごとき勢いで起こる大乱闘。
・・横島宅の明かりが消えるのは、もうしばらく先のことだったりする。
〜続きます〜
『あとがき』
え〜・・次回冒頭、とんでもないことが起こります。皆さん乞うご期待(激爆)
しかし・・3.5話は・・・え〜と・・まぁ、事務所メンバーの胸のサイズには様々な意見があるようですね(笑
まぁ、タマモは将来的には相当なものにんるはずなので、現在もその片鱗をわずかに見せているということで・・
実際のところどうなんでしょうね?まだおキヌちゃんの方が上なのか・・?(謎)
現在、11話執筆中です。え〜と・・暗いです。もうそれしか言えないぐらい・・(汗
でも最後はハッピーエンドなのでご安心ください〜
とりあえず、ここからしばらくは平和な日々が始まります。次回はピートとか愛子とかが出てきたりします。
それでは〜
今までの
コメント:
- と・・とりあえず3話中編のコメント返しを行いました〜遅れてごめんなさい。
洞の中のフクロウさん・GTYさん・竹さん・ヒロさん・紅蓮さん、どうもありがとうございます〜
あ・・それと1話と2話の感想を書いていただいた
青い猫又さん・お茶会さん・まっつんさん・林原さん・脇役好きさん・えび団子さん、にもこの場を借りてお礼を(汗)・・コメントが返せなくてごめんなさい〜 (かぜあめ)
- 格好いい西条を書ける人って凄いなあ。
で,矢っ張り横島って「GS美神」で一番難しい人じゃないかと思ったり。
頭のいい狐姉妹が良い感じでした。 (竹)
- 西条ってボケやツッコミ、シリアスまでこなす多彩なキャラですよねホントに(笑
今回も楽しく見させてもらいました。
しかし胸のサイズは気にした事なかったですがそうだったとは
次回も楽しみにしてます。 (青い猫又)
- どうもです〜ヒロです〜
いや、もうなんていいますか〜グレーな展開で・・・まな板とか・・・健全な男子だったリとか・・・いや、もうどうにでもなれ!!あとは覚悟と気持ちだ!!(何が?)
エ〜ト、目の保養ありがとうございました、といっておきましょう!!(謎)
さて、別れ行く西条さんが何を起こそうとしているか、そして魔族たちの動向が気になりつつ、であであ〜これからも頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- どうも、新参者の殿下です。
最高のです!!!タマモがスズノに引きずられていく所とかスズノがタマモの恋路を応援する所なんかがなんか良い感じです。
特におまけの話がものすごく気に入りました。
次回を心待ちにしています! (殿下)
- 横島君何してるんだ!!!そこは二人の入浴シーンを覗くとこでしょ!!そして読者を萌えさせろー!!!
タマモとスズノ本当に可愛いなぁ〜v (紅蓮)
- 今回は久しぶりにラブコメですね!!こう言うのもホノボノして良いですね。でも横島の『まな板』発言はカナリ面白かったです!!このセリフを言ってしまう所も横島らしいですね☆あと西条が車で出発する時に横島に大量の排気ガスを撒き散らす所もホント受けました!!やっぱり西条は心得ていますね!!次回も頑張ってください!! (GTY)
- 西条にまた新たな疑惑が・・・(汗) いえ、西条は横島に対してはあんな感じですが、本当はいい人なんでしょう。 でなければ、山ほどのチョコはもらえませんよね。 タマモはしっかりお姉さんしてますが、チビタマ・・・もといスズノの独特な性格もかわいいです。 気になるのはスズノが何者なのかということ、そしてNo.3が誰なのかということ!(違います)
(ヴァージニア)
- へえ、タマモって……そうなんだ(何?)
ちなみに横島クンの部屋には風呂はありません。
戦闘……もとい銭湯のはずです。>「清く貧しく美しく!!」参照
西条が疑惑を残しつつも良心的な行動を取っているところがいいですね。 (林原悠)
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