『港区台場午前9時』
投稿者名:ヨコシマン
投稿日時:(04/ 2/24)
「どういう事ですの?」
「・・・だから、悪いって言ってんだろ。」
「『言ってんだろ』ですって?!なんですの、その言い方!」
「わかった、悪かった。悪かったよ。仕方ないだろ、仕事なんだから。」
「その台詞、私が何回聞いたか覚えてらっしゃる?」
「・・・悪い。」
「ふん、本当は私と一緒に居るのが嫌なんでしょ?」
「そ、そんな訳ねぇだろ!」
「じゃあ、どうして毎回毎回、約束を破るんですの?今日だって、お父様に内緒で何とか抜け出してきたのに!」
「しかたねぇんだよ!知ってんだろ、俺はモグリのGSなんだ。クライアントの依頼を断ればあっという間に干されちまうんだぞ。」
「・・・お父様がね、あなたに本当にその気が有るのなら、家のコネで何とかしてやるって・・・。」
「やめろ。お前の親父に借りを作る気はねぇ。それにママから貰った名前を捨てる気もな。」
「・・・!どうしてそう強情なの?!お父様だって、本当はあなたの事認めてるのよ!
きちんと正規のGS資格を取ってさえくれれば・・・。」
「モグリのGSじゃあ、家名に関わるってか。俺はな、そういう考え方が一番好かないんだよ。」
「なら!どうするつもりなんですの!?一生このまま、私達中途半端な関係を続ける気?私は絶対嫌ですわよ!」
「俺だって嫌だよ!でも、どうする事もできねぇんだ。メドーサたちと組んでやった事は一生消えない烙印なんだよ。」
「そんな・・・。そんなのあんまりじゃない・・・。」
「お互い様だろ。お前だって、代々続いた“家”を捨てられないじゃねぇか。
俺が何度も一緒に行こうって言ってんのによ。」
「それは・・・、そう言われて凄く嬉しかったけど・・・。私だってお父様を悲しませたくないもの・・・。」
「そうだろ。俺も同じさ。」
「でも、私は貴方と一緒にいたい・・・。この気持ちも嘘じゃないのに。」
「・・・そうだな。俺もだ。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・ねえ、正直に言って。本当は、私の事が重荷なんでしょう?」
「ああ?!何言ってんだ?!急に?」
「だってそうでしょう?私は“家”に縛られて貴方に付いて行く事さえ出来ない女。
でも、貴方は大空を飛び回るあのカモメのように自由ですもの。私と一緒じゃ辛いだけ。」
「そんな事考えた事もねぇ。つまんねえ事言うな。」
「つまらない事?じゃあ、違う言い方の方がよろしいかしら?」
「・・・どういう意味だ?」
「私、貴方の事・・・心から大切に想ってるわ。でも、だから、だから私達・・・やっぱり別れ・・・あむっ!・・・んっ・・・。
ぷはっ!・・・な、何なさるの!?」
「・・・つまんねえ事言おうとするから、口塞いだだけだ。文句あんのか?」
「ちょっと・・・イタッ!は、離して!」
「駄目だ。二度と言わないと誓うまで離さねぇぞ。」
「そんな・・・!だって・・・、しょうがないじゃ・・・んっ、んんっ!・・・・・・はぁ。」
「まだ言うのか?言い続ける限り口も塞ぐぜ。」
「・・・卑怯者ぉ。」
「ああ、そのとおり。俺は卑怯者だ。」
「呆れた・・・、開き直ってますわね。」
「へん、開き直って何が悪い。・・・なぁ、あのな、もう少しだけ待っててくれよ。」
「え?」
「俺もさ、何にも考えてねぇ訳じゃ無いんだって事さ。」
「どういう・・・事ですの?」
「今の俺の主なクライアントな、ここだけの話だぞ。小竜姫絡みなんだ。」
「小竜姫・・・?妙神山の?」
「ああ、今俺はあいつらが表立って動けない“イリーガル”【非合法】な依頼をこなしてるって訳だ。これは極秘だぞ。
要するに、協会に所属してない俺はいろんな意味で使い勝手が良いんだろう。」
「“イリーガル”・・・。」
「まぁ、報酬はすずめの涙なんだが、その代わり・・・GS協会に口添えしてもらうのが条件だ。口止め料の意味も有るだろうがな。
契約時に決められた依頼件数も、もう少しで終了する。だから、あと少しだけ・・・待っててくれよ。」
「信じて・・・良いんですのね?」
「ふん、信じてもらわなきゃ困るぜ。・・・お、おい、な、泣くな!コラ!」
「・・・どうして・・・言って下さらなかったの?」
「だから、極秘だって言ってんだろ。本当は今、お前に言う事だって規約違反なんだぜ。絶対誰にも言うな。」
「・・・分かりましたわ。その時まで、貴方を待ちます。」
「すまん。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・あ、ねえ、貴方の腕・・・ちょっと痛いですわ。もう少し優しく抱いて下さらない?」
「あ・・・悪い。」
「それで・・・その・・・さっきの件なんだけど・・・。まだ有効ですの?」
「さっきの件?」
「あの・・・、私が“つまんない事”言ったら・・・その・・・口を・・・。」
「・・・!ああ、何度でも塞ぐ。むしろ言おうとしてくれるとありがてぇけどな。」
「あ、もう・・・、何ニヤケてるのよ?大体貴方・・・。」
「いいからほら、もう黙れよ・・・。」
「ふん、なによ・・・、バカ・・・。」
今までの
コメント:
- いかがでしたか?ヨコシマンです。
今回の投稿はちょっとしたお遊びをして見ました。
ルールは簡単。名前を書かない、台詞のみ、「愛してる」「好きだ」は使わない。これだけです。
読んでくださった皆さんは二人の姿が想像できたでしょうか?
気合の入ったSSや長編を読んでちょっと疲れたみなさんの息抜きになれば幸いです。
デザートSSってとこですかね?(笑)
良かったら感想を下さいね。それでは。 (ヨコシマン)
- 楽しめました〜♪こういう話いいですねぇ〜v (紅蓮)
- え?これはフランスの小説(挨拶)
こんなおあぞび小説は大スキです!大スキなんで!!スッキヤでぇぇぇえ!!!
ごめんなさい、暴走気味で。デザートだなんてトンでもないです。そうですね〜言うなれば、ワインのようですかね?美味しいお話ってことです(謎)
であであ〜これからも頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- デザートというよりもメインディッシュ並にラブってるお話でした(w
今食べてる唐辛子せんべいがあまり辛くない!(謎)
2人のやりとりが目に浮かぶのに!田舎モンだから港区の背景が浮かびづらいのが残念でなりません(ノД`)
それに…『午前9時』って…朝じゃんっ!(笑) (BOM)
- ・・ブハッ!!!(吐血)
素敵です〜実はこのカップリング大好きなんですよ。
会話だけなのに情景が目に浮かんできますね〜
いいな〜ラブラブ・・投稿お疲れ様でした〜 (かぜあめ)
- 言われてみれば一度も名前が出てきてない?!
意地っ張り×超鈍感などっかの二人もいいですが、意地っ張り×意地っ張りなこの二人もいいですね!
状況描写なしでもはっきりと二人の姿が眼に浮かびました。雪よ、牛乳飲め!(謎
|д゚).oO(でもなんで弓さんは口を塞がれることを嫌がってないというかむしろ求めてるんだろう?お子様なボクにはさっぱりわからないな〜まる) (ひさ)
- 面白かったです!
僕は会話ばっかりな文を書いちゃう人なので,何か勇気づけられました。 (竹)
- 「口を塞いだ」時点でデザートからメインディッシュにランクアップ。
「朝っぱらから」口を塞いだ事で、フルコースにランクアップ。
これで「愛してる」「好きだ」なんて台詞を言っていたら満漢全席に?
どちらにしろ、恋愛話用の別腹を持っていない私は、このお話一つでおなかいっぱい(笑)。
ごちそうさまでした。(←素直にうまいと言いなさい) (dry)
- 厄珍と一緒にマシンガンをもって、突入します。
誰も止めないで下さい
トンプソン(嘘) (トンプソン)
- ふぉっふぉっふぉ。どれだけの重さだろうと、その重さこそが嬉しくもいとおしい「重荷」とゆーものもあるのじゃよ。まだまだ青いのぅ、かおりん(偽爺)
ゆっきー君も、彼女さんが口にしているのが「家名」ではなくて「お父様」である事に気付いてやりなされ。家は棄てられても、家族を棄てる決断はなかなか出来んもんじゃて(偽爺)
それにしても、お台場の午前9時ともなればそれなりに人が居るもんじゃと思うとったが、若いもんはえぇのぅ…(偽爺) (黒犬@爺)
- プディング・ア・ラ・モーーッ!!(挨拶)
ストレートな言葉は使わずに「つまんねえ事言うから口を塞ぐ」彼が彼らしいの一言に尽きます。強情な者同士、
ケンカが絶えませんがそれでいて、だからこそラヴ(何。そんな彼に戸惑いながら押される彼女もツボです。
この二人は何と無く、美神さんよりもアダルトな雰囲気がある様に私的には思われです。
しかし、彼が絡むとどうも腹黒いですね、妙神山の面々は(笑)。そーゆーものか。そーゆーものだ。 (フル・サークル)
- 殺しちゃったりもしたけど、最近このカップルがお気に入りです。
というか自分の作品で死なせちゃったから愛着が湧いたとこありますが。
それはさておき、いい感じのディアローグでした。
お互いにちょっと意地っ張りのふたりがリアルですよね。
私もまた書いてみようかな。 (林原悠)
- 言葉のみのやりとりが、十分なイメージを読ませてくれました。
これがデザートとは何とも贅沢な事です(笑)
ヨコシマンさんの「お遊び」に楽しく翻弄させて頂きましたっ( ̄ー ̄ゞ−☆ (志狗)
- おおう、二桁。(びっくり)
皆さんコメント有難うです。
それではコメント返しです。
>紅蓮さん
あはは、楽しんでいただけましたか。それは何より。コメント有難うございます。
>ヒロさん
フランスの小説ってこんなのなんですか?(笑)
読んだ事ありません僕は。ワインかぁ、カッコよくて照れるにゃ〜。(笑)
>BOMさん
タイトルはホントに思いつきなんです。ほら、語呂がいいでしょ?(笑)
だから、無理にお台場じゃなくてもいいんです。BOMさんが想像しやすいところで朝から口塞いじゃって下さい。(笑) (ヨコシマン)
- 続きです。
>かぜあめさん
キャー!かぜあめさんが吐血した!( ̄□ ̄;)
お褒めの言葉有難うございます。ちょっと息抜きできました?
>ひささん
ひさくん、君も大きくなればきっと解るよ。(笑)
>竹さん
少しでも勇気付けられたのなら、僕も嬉しいです。頑張って下さい!
>dryさん
お腹一杯になっちゃいましたか(笑)
ジャイアントパフェみたいにボリューム満点SS!(ぇ
>トンプソンさん
トンプソンさんが行かなくても、横島とタイガーがマシンガン片手に茂みに潜んでます。(笑)
友情って・・・いいですよね?(何
>黒犬さん
何故におじい様に・・・?(笑)
さすが、恋愛経験豊富なお方のコメントですね。(笑)
あ、嘘です。嘘ですってば!何を持ってるんです?ヤ、ヤメテ!ウギャー!(沈黙) (ヨコシマン)
- >フル・サークルさん
ザッハ・トルテ!(挨拶)
妙神山だって、いろいろあるはずです。(笑)
ただ、悪どい事はさせてません。ご安心を。(笑)
>林原悠さん
殺しちゃった?!( ̄□ ̄;)
今度は林原さんのも読みたいです〜。期待して待ってます。確定です(ぇ
>志狗さん
わーい!志狗さんありがとう。志狗さんを翻弄しました(* ̄ ^  ̄)エッヘン
贅沢なデザート・・・最高の誉め言葉です。(歓喜) (ヨコシマン)
- >殺しちゃった?!( ̄□ ̄;)
はい、某所への投稿作で殺しました。今は私のホームページにおいてあります。 (林原悠)
- 口から砂糖を何リットルも吐き出しそうな感を覚えました(笑)!なんだこの甘さは!?そして美味くて上手い(ナニ)!こんにちわ、浪速のペガサスです。
言葉だけしかないのに十分に彼らだとわかるこの上手さ、感動です。どうか俺にもその才能の欠片をぉ(笑)!!
投稿お疲れ様でした。 (浪速のペガサス)
- この先、二人に幸せがありますよう・・・。
それにしても・・・キスですか。
きす、記す、帰す、キス・・・。キスぅぉぉぉぉおぉ!?
あれですか。帰すするたびにキスしませう、と言うことですか(何?)
―――と、それはともかくぅ。
甘い話って好きです。その中に切なさがあるともうたまりません。
カッコ良い甘い話って感じでした。もう既に二人の距離がゼロなのに、でも、縮める事が出来ないでいるその関係。でも・・・。
二人の間には確かに、確固としたものがあるから、時間が経てばすぐに進む事が出来る。
このコメント、支離滅裂(愕然) お、面白かったんですおぉぉぉ! (veld)
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