ザ・グレート・展開予測ショー

素晴らしい日々へ・10


投稿者名:ほんだら参世
投稿日時:(04/ 2/22)

その日、俺と唯ちゃんとおキヌちゃんは厄珍堂の前にいた。
美神さんが風邪を引いたので仕事が休みになったのだが、頼んでおいた道具が今日届くので、取りに行って欲しいと言われたからだ。
加えて、俺は一度も行った事が無いのでついていって場所を覚えておけとのことだ。

「じゃあ、入りましょうか。」

唯ちゃんがそう言って目の前の建物に入っていくのに、俺とおキヌちゃんはついていった。
中に入ると、厄珍のおっさんがカウンターの向こうで昼の連ドラのラブシーン直前の場面に見入っていた。

「あの〜、厄珍さん。」

「誰あるか!! 今、良いところなんだから邪魔するんじゃないねっ!!! ・・・・って、令子ちゃんとこの嬢ちゃんじゃないか。」

「こんにちは、厄珍さん。 今日は美神さんの代わりに、注文していた道具を取りにきました。」

「そうあるか。 しかし、令子ちゃんもだけど、嬢ちゃんも相変わらずいいケツしてるね・・・イテッ」

そう言って厄珍が尻に触ろうとした手を、唯ちゃんがつねっていた。
つねりながら持ち上げとる、ありゃあ痛いぞ〜。

「お〜、痛い。 ちょっとしたお茶目よ。 許してくれてもええじゃないか。」

「お茶目でお尻をさわられたくありません!」

う〜ん、ここでお茶目じゃなければいいのって聞いたら、やっぱり張り飛ばされるんだろうな。

「んっ? そっちの坊主はなにか? 唯ちゃんのコレか?」

そう言って、厄珍は指でお決まりのサインを出したが、すぐに真っ赤になった唯ちゃんに思いっきり引っ叩かれていた。

「やだ。 も〜厄珍さんったら、そんな・・・キャ〜。」

・・・唯ちゃん、なんか最近手遅れな領域に入ってきていないかい。



*  *  *  *  *  *



唯ちゃんが正気に戻るのを待っている間に、おキヌちゃんと一緒に店の商品を見ていた。

「わー、本当に色々なものがありますねー。」

おキヌちゃんは、見たことがないような道具を見れて結構楽しめているようだ。

「おキヌちゃん。 この超高級線香っての買ってあげようか?」

「そんな、悪いですよ!」

「いーの、いーの。 おキヌちゃんは事務所の掃除とか頑張ってやってるんだから、日頃の感謝ってやつだよ。 つーわけで、おっさん。 これ、包んでくれ。」

カウンターの向こうの厄珍に、そう言って線香を出した。

「毎度有り〜。 ところで、坊主。 令子ちゃんとこの新入りって事は、GSの見習ってことね? だったら、良い商品があるね。 試してみないか?」

このおっさんは、また俺をカモにしようとしてるってわけか。

「厄珍さん! またそうやって変な商品を試そうとしてますね!! そういうのはいけない事だって、前にも言ったじゃないですか!」

いつのまにか正気に戻っていた唯ちゃんが間に入ってきた。

「人聞きが悪いね。唯ちゃん。 ワタシはただの親切で言ってるだけよ。」

「美神さんからも聞いているんですよ! 厄珍さんのやっていることは!」

そうやって興奮しだした唯ちゃんを何とかなだめて、俺達は厄珍堂から出ていった。
結局、線香のオマケってことで、《式神ホイホイ》なんつーとてつもなくあやしいアイテムをもらうことになった。



*  *  *  *  *  *



途中、唯ちゃんが線香をかかえて嬉しそうにしているおキヌちゃんを見て複雑そーに不機嫌になっていたが、無事に事務所に帰って来れた。
だが、事務所に帰ってくると、その前に見知った人物が立っていた。

「あれ、冥子ちゃん。 どうかしたの?」

「あ〜、横島く〜ん! 式神が・・・式神が一匹いなくなっちゃったの〜っ!!」


・・・暴走中


「お、落ち着いたかな? 冥子ちゃん。」

とっさに張ったサイキック・フィールドでなんとか唯ちゃん達を守ることはできた俺は、泣き止んだ冥子ちゃんにそう声をかけた。

「ご、ごめんなさい〜。 私、うろたえちゃって〜。 昨日からこのコたち暴走しっぱなしで〜!!
お願い〜!! 捜すの手伝って〜!! あのコ今頃きっと泣いてるわ〜!!」

そう言って、冥子ちゃんはまたグズリ出した。
やばいっ!

「だ、大丈夫だよ、冥子ちゃん! 俺達が絶対に式神を見つけ出すから!! なっ、唯ちゃん、おキヌちゃん!」

「「も、もちろんですよ。 忠夫(横島)さん。」」

こうして俺達は、冥子ちゃんの式神捜しに参加することになった。



*  *  *  *  *  *



数十分後・・・

「それで、冥子ちゃん。 どの式神がいなくなったの?」

「マコラなの〜。 マコラには変身能力があって、放っておくと身を守るために周囲の人間にどうかしちゃう習性があるのよ〜。」

こんな会話を、唯ちゃんとおキヌちゃんの冷たい視線を浴びながらしていた。
なぜなら、俺は冥子ちゃんと一緒にインダラの上に乗っていたりするからだ。
言い訳に聞こえるかもしれないが、仕方ない事なんだぞ。
こうでもしないと、冥子ちゃんの暴走を防ぐ事ができないんだからな。

「心配で胸が張り裂けそうで、ほかの式神のコントロールもできなくて、こうなったら令子ちゃんに頼むしか〜って思って行ったのに誰のいなくて〜。」

やべえ!また始まった。

「大丈夫、大丈夫。 俺達がきっと見つけるから。」

そう言って、冥子ちゃんの頭を撫でてあげると、なんとか冥子ちゃんのグズリは止める事ができた。
が、・・・・・

「ありがとう〜。 横島君、大好き〜。」

そう言って、抱き着いて頭を擦り付けたりするもんだから、今度は二人の方から超一流の殺気ってやつが感じられるようになった。
誰か、助けて。

「ところで、どうやって捜すんですか?」

唯ちゃんが不機嫌そうにそう言った。
絶対に後でシバかれそうだな、こりゃあ。

「う〜ん。 人間に化けてるとなると、捜すのに苦労する事になるな。」

俺達が捜す方法になやんでいたら、おキヌちゃんが良い事を思いついたようで、俺達に提案をしてきた。

「さっき、厄珍堂さんでもらったものが使えませんか!」

そういえば、さっき厄珍堂でもらった《式神ホイホイ》ってのははぐれた式神を捜す道具だって言ってたっけ。

「あやしいアイテムだったけど、やってみる価値はあるかな。 えらいぞおキヌちゃん、よく気が付いたね。」

そう言って、俺はさっきから冥子ちゃんの頭を撫で続けていたので、なにも考えずに自然におキヌちゃんの頭を撫でていた。

「あ、ごめんね、おキヌちゃん。 いきなり撫でちゃって。」

「い、いいえ、いいですよ。 幽霊になってから撫でられるのって初めてだったから、嬉しかったです。」

おキヌちゃんは、赤くなってそう言った。
それが可愛く見えたので、また撫でてしまったが、それが間違いだった。
その瞬間に、唯ちゃんの殺気が神の領域に入りかけていた。
加えて、冥子ちゃんまで頬を膨らませて、撫でる事をせがみだしていた。
んで、それを見てまた唯ちゃんの殺気が膨れ上がる。
どうせいっちゅーねん!



*  *  *  *  *  *



なんとかその場を流して、俺達は何かあったとしても周りに被害が及ばない広場のような場所に居た。

「よし、後は待つだけだな。」

厄珍堂でもらった《式神ホイホイ》を辺りに仕掛けて、俺達は少し離れた所で見張ることにした。

「あんな変な薬で大丈夫なの〜。」

冥子ちゃんが心配するのも、もっともだろう。
《式神ホイホイ》は真紫の半液体状の薬品で、式神の使い手の霊力を込める事によって出る匂いにつられて式神が来るって言うんだが、色も匂いもこれ以上ないってくらい怪しい。

「やっぱり、厄珍さんからもらったオマケじゃあ駄目なんじゃないんですか。」

「でも、まだ始めたばかりだから、もうちょっと待ってみようよ。」

「あっ。 見てください! 来ましたよ!!」

そう言うおキヌちゃんの声に反応して見てみると、本当にそこにはハイラがいた。

「よッしゃー! いくぜ、皆!!」

俺のその声を合図に、全員が一斉にハイラに向かって走りだした。

「唯ちゃん! はい、呪縛ロープ!!」

「ハイラ〜!」

どんどんハイラに近づいて行くと、ハイラがビクビクッと震えているのが見えた。
なぜ震えているのか?という疑問がよぎった瞬間に、いきなりハイラに飛び掛られた!

「うおっ!!」

なんとか避けることができたが、スピードもパワーも、いつものハイラとは比べ物にならねえ。
まさか、あの薬でパワーアップしてるなんてことがあったりするのかよ!

「忠夫さん!!」

こっちに走ってくる唯ちゃんと冥子ちゃんが見えた。

「来るな!! こいつはいつものハイラじゃあねえ!!!」



唯SIDE

「来るな!! こいつはいつものハイラじゃあねえ!!!」

その忠夫さんの言葉に、私達は立ち止まった。
その言葉の意味はすぐにわかった。
あの忠夫さんが、傷つけないように手加減をしているとはいえ、押されているのだ。
私達では、足手まといになってしまうだろう。

「やっぱり、あの薬が原因でパワーアップしているのね。 しかも、どうやら極度の興奮状態になっているようね。」

「じ、じゃあ、私があんな提案したせいでこんな事になっちゃったんですか。」

「そんな事はないわ、おキヌちゃん。 悪いのは全部、変な薬を押し付けた厄珍さんだから。 今は忠夫さんを助けることを考えましょう。」

そう言って落ち込みかけたおキヌちゃんをなだめて、私はおろおろしている冥子さんに声をかけた。

「冥子さん! なんとかハイラを止められないんですか!!」

「だめなの〜! 今のあのコには声が届かないの〜!!」

どうすればいいの!
そう考えていると、忠夫さんのほうから爆発音のようなものが聞こえた。
見てみると、忠夫さんが吹き飛ばされたような体勢で、忠夫さんとハイラの間に小さなクレーターのようなものが出来ていた。

「そんな! そこまでハイラがパワーアップしているって言うの!!」

もう、足手まといとか言ってる場合じゃない!
そう思って忠夫さんの方に向かって走り出そうとした時・・・・・プッツンという音が聞こえたような気がした。



忠夫SIDE

しくった!
まさか、ハイラがあんな強力な霊波攻撃をしてくるなんて。
厄珍の野郎、なんつーとんでもないもんを渡してくれやがるんだ!

「くそッ!!」

すぐに起き上がろうとしたが、ハイラのほうが速い。
攻撃するしかないと思ったその時・・・
冥子ちゃんの泣き声が聞こえた。



*  *  *  *  *  *



あの後は、結局冥子ちゃんの暴走によって全部終わる事になった。
俺とハイラはボコボコにされて、唯ちゃんとおキヌちゃんは冥子ちゃんの側にいたおかげで被害はあまり受けなかった。
ハイラを傷つけないようにしていた俺の苦労はなんだったんだろう。

だが、一番苦労したのはその後だ。
おキヌちゃんが、

「私のせいです。 すいません〜!!」

と言って、泣きついてくるし。
冥子ちゃんが、

「横島君〜。 本当にありがと〜。」

って言って、俺の頬にキスをしてくれちゃったりしたので、後ろにいた唯ちゃんが本日最大級の殺気を放ち出したりするのだ。
もち、この後は、今日の間に積もり積もった分の全てのフラストレーションを込めた一撃を頂戴することになった。



ルシオラ、俺はお前にもう一度会う前に死ぬ事になるかもしれん。











どもっ、怒涛の肉体労働から生還したほんだら参世です。
いや〜、本当にきつかったですよ、今度のバイトは。
前回の話はバイト中に合間をぬって書いたんですけど、なんか短いうえに本来なら書くはずだったものがぬかされてるところがありましたよ。

まず、前回の話で文珠についての突っ込みがあったんで、そこらへんに対してのコメントをば。
現在の横島君は、一日に2つの文珠が作れることになっています。
ストックに関しては、自分の中の容量の問題で、30個までしかできないことになっていますが、これは今後ふえることになります。
ちなみに、この横島君は修行のなかで、二文字の文字を込める事ができて複数回使える《双文珠》を使える事になっています、つーか、前回の話はこれを使わせる予定だったんですけど、仕事で疲れてボケてた所為で間違えました。
詳しい設定は、今後の話のなかで出てきます。

さて、今回の話はどうだったでしょう?
冥子ちゃんを可愛く書かねばと思ったのに、微妙におキヌちゃんのほうにベクトルが行きかけちゃいましたよ。
唯ちゃんは作者が予定した以上の嫉妬魔神になってるし。

あ、後、竹さんに追伸。
竹さんの作品を読んで感想を書こうとしたんですけど、自分はMISTERジパングってあんま読んでなかったんですよ、つー訳で、読んでから出直してきます。

では、今度は第11話にて。 さいなら、さいなら、さいなら。


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