ザ・グレート・展開予測ショー

長編・GS信長 極楽天下布武!!(8)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 2/22)

弓箭を執るの家
戦死を以て栄と成す

悔い思ふべきに非ず















オカルトGメン臨時本部。
「しかし,連中は何を考えて居るんでしょうね」
部下の一人が信秀に問う。
「何だ,服部。お前は風水も知らんのか?」
「え?いえ……」
「ならば分かるだろう?風水説において都の四方を護る四神相応の地,即ち鴨川(東=青龍=流水),山陰道(西=白虎=大道),巨椋池(南=朱雀=沢畔),船岡山(北=玄武=高山)。これ等を壊す事により地脈の流れを変え,京に魔を呼び込もうと言うのよ。京都の鬼門を護る比叡山延暦寺は,時代が下ると共に頽廃を極め,織田信長の焼き討ちによって消えて無くなっているからな」
「はあ。しかし,では連中が言っていると言う『魔都』とは何なのでしょうか?」
「うむ……。確かにな。“四神”を崩したからと言って,直ぐに何が如何なる訳でもあるまいし……。何か,未だ有るのやも知れぬな」
「何か……とは?」
「そうだな……。今現在,本来平安京の中心にあるべき大内裏は見る影も無い。何かするとすれば……京都御所か」
「京都御所,ですか」
「ああ。……援軍を頼んだGS等は未だ来ぬのか?信長は如何した!」
「はあ。小笠原氏が来て以来,未だ誰も来ておりません。収集をかけたのは昨日の今日ですし……彼等からしてみれば我々は商売敵ですからね」
「うむ……昨日の外相暗殺や一昨日の防衛庁長官暗殺の犯人も,奴等と見て間違いなさそうだな」
「ええ。国連やI.C.P.O.の本部に救援要請を出そうにも,外務省で止められてしまいました。今それ所では無いのだと。自衛隊も同様です」
「そうか……。糞。これしきの相手,数の論理で攻めれば如何と言う程の事も無いものを……」
「と言って,敵は大勢の霊能者集団の様ですから,現地収集出来る並みのスイーパーでは歯が立たぬでしょうからね」
「ああ……」
「隊長……,自分は口惜しいです」
「だな……。超国家権力を司っていながら,結局人任せにしか出来ないとは……」
全く,腹立たしい。



オカルトGメンの嘆きを良い意味で裏切って,京都市中では既に民間GSと『魔流連』メンバーとの戦いが始まろうとしていた。
即ち,朱雀大路(現・千本通り)。
船岡山を支点に,旧大内裏を貫くこの“古都の中心”で,藤吉郎達と,植椙景勝の戦いが始まろうとしていた。
「面白いじゃない!纏めて相手してやるわよッ!」
景勝が,『兼続』を構えて叫ぶ。
「い,いや。待って。此処は一つ穏便に……」
「何処からでも如何ぞ」
「にーちゃんは殺させないよ!」
三人が勇ましく返す。
藤吉郎だけ反応の質が違うのは,彼の臆病さの現れか,それとも場の雰囲気に飲まれず冷静でいる証か。
まあ,どちらでも同じなのだが。
「……本気で行くわよ」
景勝がそう言ってアスファルトを蹴ろうとした時,藤吉郎が掌の中の文珠を発動させた。
刻まれた文字は,

『音』

パアン!
耳を劈く爆音が,辺りに鳴り響いた。
「く……!?」
余りにも大きな音に,景勝の意識は一瞬飛んだ。
耳がキンとする。
「己……!」
この無防備な体勢に攻撃をされたら事だ。
景勝は一旦『兼続』をしまうと,霊力を防御に集中させた。
「……?」
が,何時迄待っても攻撃は来ない。
不審に思って顔を上げると,何と敵の三人も目を回していた。藤吉郎も含めて,である。
「な……っ!」
景勝は,思わず口元をひくつかせた。
「巫山戯るな!これは真剣勝負だと……」
景勝が怒鳴り声を上げた時,朱雀大路の両脇の家々から,『魔流連』の下っ端構成員達が,わらわらと現れた。
「一体,何の音だ!?」
「曲者!?」
「景勝さん,これは一体……」
「秀家さん。何時お帰りに?」
「景勝さん。こいつ等何なんですか?」
お前等が曲者だろとか言う突っ込みは兎も角。
場の雰囲気は,一触即発の気運からざわざわとした喧噪に変えられてしまった。
「ちぃっ……!」
これが奴の手か。喧噪に紛れて有耶無耶にしてしまうつもりか。
藤吉郎を睨んでやろうと景勝がふと視線を移すと,
「――いない!?」
何時の間にか,藤吉郎が消えていた。
「糞,何処へ……」
辺りを見回すと,屋根を伝え飛んで逃げて行く藤吉郎の後ろ姿が見えた。
「逃がすか!」
景勝も,彼を追ってその場を離れた。


「秀家さんなんて呼ばないでも良いよ」
藤吉郎と景勝の居なくなった朱雀大路で,『魔流連』の下っ端達に囲まれ辟易していた秀家が不意に口を開いた。
「え?」
「僕,もう『魔流連』抜けたから」
「な,何ですと!?」
周囲から驚きの声が挙がり,ざわめきとなっていく。
「……如何する?」
「ど,如何って……」
「僕と,闘る?」
「え……」
返事をする間もなく,数人が流血し倒れた。
「う,うわあぁっ!?」
「な,何するんです。秀家さんっ!」
「だから,僕は抜けたんだってば,『魔流連』。だから――」
血を吸った秀家の爪が,陽の光を浴びて紅く光る。
「君達は,僕の敵だよ」
ザン!
「ぎゃあああぁ!」
最も秀家の近くに居た者が,悲鳴と共に血を流し倒れた。
「……『魔流連』のみんなを,裏切りたくないんだ,じゃ無かったっけ?」
傍らのめぐみが半ば呆れ顔で問う。
秀家は,それに冷笑を以て答える。強い力を持つが故に苛められる運命を負った彼特有の,自嘲を含んだ嘲笑だった。
「良いんだよ。此奴等,下っ端だから。カルト集団紛いの新興勢力にくっついて,お零れに預かろうとしてるだけの只のカスだよ。『魔流連』が何を求め何をしようとしてるのか,それさえ分かってない様な連中だもの」
「そ,其処迄言う……?」
「平気だよ,殺してないから。僕だって,にーちゃんの役に立ちたいんだ」
一瞬にして敵意に変わった周りの視線を,全く意に介さずと言った風情で秀家が宣った。
「だから……」
高まっていく霊圧に,二人を取り囲む下っ端達が身構える。
「せめて,此奴等を倒す」
ゴッ!
アスファルトを蹴り,秀家は未だ集まって来る(暇な)下っ端達の群の中へと消えていった。
「ふう……」
それを眺め,めぐみは溜息をついた。
次の瞬間,手に持った箒を回転させ,背後から迫っていた下っ端Aを昏倒させた。
ザッ……
周りを固めつつある下っ端達とめぐみが,同時に間合いを取る。
「ま,私もですけどね。それにしても……」
めぐみが箒を構える。
「男の方ばかりですねえ。そんな嫌らしい目で見ないで下さいよ,こんな昼間から……」
いや,あんたそんなコスプレしといてそれは無いだろう。
と,声なき突っ込みが聞こえた。
「まあ,姦られるつもりはありませんけどね……!」
半回転した箒の柄が魔法陣を描き……
辺りに,爆音が轟いた。


「くっそ,何処へ行った!?逃げ足の早い奴だ!」
屋根を伝い渡りながら,景勝は一人ごちた。
やがて,その眼が一度見失った藤吉郎を捉えた。
「居たっ!」
何やら広場らしき所に立っている藤吉郎を追って,自分も其処へ向かう。
微かに生えた草の上に着地する。
「如何した,逃げるのは止めたのかい?」
「え,逃げて良いの?」
質問に質問で返された。
何なのだ,この男は。
……調子が狂う。
「良い訳有るか!」
「でしょう?」
「でしょうって……」
「だから,こうして此処迄招待したんじゃないすか」
「何?」
「狙いは,俺だけなんでしょ?」
「へぇ。サシで闘ろうっての?良い度胸じゃない」
「良い度胸かは知らないけど……」
「良いじゃない。受けてやるわ」
景勝が,『兼続』を作る。
「……」
藤吉郎も,手にした文珠に『鎌』の字を浮かび上がらせた。
忽ちの内に,藤吉郎の右手に『兼続』と寸分違わぬ霊波鎌が握られた。
「……こっちの土俵で闘ってくれるって言うの。それは余裕?それとも,拘り?」
「……」
「ま……,どっちでも良いけどね」
景勝の眼が一瞬だけ閉じられ,小さく息が吸い込まれた。
「いざ,勝負!」



京都御所。
リーダー格の男が京を魔都にすべく“行”――儀式を行っている間,四聖獣の役を負わされた者達以外の『魔流連』の幹部メンバーは,此処で待機していた(景勝,義景,秀家,久秀,光佐は除く)。
「!又た誰か来たよ」
霊波探知をしていた少女が言った。
「何?」
何となく副リーダー的な役割を任されている青年が,詳細を報告するよう促した。
「かなり強力な霊能者が二人。車か何かに乗ってるみたいだね,凄いスピードで四条大路を西進中!」
「そうか……」
「てか,これ。もしかしたら……」
「え?」
「織田信長さん……かも……」
「何だと!?」
「私,ファンなんですぅ〜」
「そんな事は如何でも良い」
「はい……」
「それがホントなら,少し厄介だな……」
「何がだよ」
青年の呟きに,別の声が被せられた。
「もし織田信長が来たら,俺にやらせてくれる筈だったろう?」
青年より少し下位の男である。
「迷う事は有るまい。それとも,まさか今更あれは方便だったとは言わないよな?」
「……」
青年は,男をじっと窺った。
此奴に行かせて大丈夫か……。
「おい!」
「分かった。行ってくれ」
「ああ!織田信長の首,絶対に取ってきてやる!」
男は勇んで出口へ向かって歩き出した。
「……待て」
不意に,後ろから制止を受けた。
「何すか……?輝虎さん」
声の主は僧体の男――植椙景勝の養父,植椙輝虎(うえすぎ・てるとら)だった。
法名・謙信。濃い無精髭を生やしているにも関わらず,年を感じさせないナイス・ミドルである。霊能の名門・植椙家の現当主でもある。
しかし,異常に潔癖で又た気分屋な所もあり,其処が短所と言われている。彼が気紛れに二人の容姿を迎え入れた事からお家騒動が勃発し,その結果,勝利した景勝は幼い頃から揚げ足を取られぬようにとひたすら無口に努めた挙げ句,今の様になってしまったのだが,それは又た別の話。
兎に角,彼は国内でも現役トップクラスのゴーストスイーパーなのだ。
「私も行く」
「なっ……!俺が信用出来ないってんですか!?」
「そうではない。しかし,相手は二人。なれば,此方も二人で行くべきでは?織田家の跡取りを相手に,二対一では流石に無理だろう」
「……分かりましたよ。その変わり,織田信長は俺にやらせて下さいよ」
「ああ。では,行こうか」
「……」
先に立って歩き出した輝虎の背を拝み,男も出て行った。
「行ったか……」
「で,さあ」
少女が,又た話し始めた。
「何だ?」
「景勝さん,何か敵とサシで戦ってるみたいなんですよ」
「と言うと?」
「残りの二人は下っ端達に任せてるみたいなんですけど……,どんどんやられてってるみたいなんですよね……」
「む……」
「では,私が行きましょう」
「牧師」
キリスト教の僧服に身を包んだ男が進み出た。
「魔都の建設を阻む悪魔の使いに,神の裁きを」
「……」
茶化してるのか本気で言ってるのか……。此奴の冗談は,何時も笑えない。
「では,行って来ますよ」
そう言って牧師も門戸を潜っていき,その場には青年と少女だけが残った。



その頃,京都上空。
ゴオオォォ……
火を噴きながら空を飛ぶのは,一人乗り小型飛行艇,ヒラテ・フライヤーMrk,・(作・ドクター・ヒラテ)。
それに搭乗しているのは,浅野ねねだった。
平行して,ドクター・ヒラテを抱えたフカンが飛んでいる。勿論,家康も。
「しっかし,京都迄連れて行ってくれるて,これかいな」
「仕方無かろう。金が無いのじゃから」
「天才錬金術師も,お足が無けりゃ哀れなもんやな」
「喧しい」
「び,貧ちゃん。連れて行ってもらうのにそれは……」
「はいはい」
そう言いながら,家康は思う。
せやからって,普通こんなん乗ろなんて思わへんぞ。本ま,ねねも結構手段選ばんタイプやわな。まあ,そっちのがええけど……。
と,案じていると……
プスン
何やら,間抜けな音がした。
「……?何の音や」
ふと見ると,ヒラテ・フライヤーMrk,・の船尾から黒煙が吹き出ている。
「ふうむ。如何やら燃料切れの様じゃのう」
「……て」

「呑気に言ってる場合かああぁぁぁ!!!!???」
家康の絶叫と共に,ねねとヒラテ・フライヤーMrk,・は,真っ逆様に落下していった。
「ねねーーーーーーーっ!!」
家康が急降下していく。
「ふうむ。儂等は如何すべきかのう,フカン」
「イエス,ドクター・ヒラテ。至急,追うべき・かと」
「そうだな」


チュドーン!!
落下したヒラテ・フライヤーMrk,・は,京都タワーに直撃した。
タワーから煙が上がる。
その煙の中から,絹女光佐が出てきた。
「けほっけほっ!もー,なぁーに?」
やがて煙が晴れると,その中から光佐と同年代位の少女が現れた。
「あんた,誰?何でこんな所にいんのよ……って,あれ?気絶してる」
続いて,何やら小さい神様が血相を変えて飛んで来た。
「ねねっ!大丈夫か!?」
「……貧ちゃん?うん,大丈夫だよ」
目を醒ました少女――ねねが起きあがってそう答え,家康が転けた。
「無事なんか!?」
「?うん,全然」
「な……」
有り得へん。
この事故で無傷やて?そんなアホな。
「一体,何が有ったの?貧ちゃん」
「いや……」
とすると,矢張り……ねねにも霊能力が?
命の危機にさらされ,潜在能力が目覚めたんか……?
「如何したの?貧ちゃん」
「いや……」
家康が考え込んでいると,無責任に呑気な声が聞こえた。
「おーい,大丈夫じゃったか?」
言う迄も無く,ドクター・ヒラテである。
「……奇跡的にな」
「そう怒るでない。仕方有るまい?儂の稼ぎでは充分な燃料が買えんかったのじゃから」
「先に言えや……」
「お主が如何しても連れてけと言ったのじゃろうが」
ヒラテは不老不死の為,生死に関する感覚が鈍い。まあそれは,人の生死を扱うGS全体に言える事でもあるが。
「あ,あのっ!」
ヒラテと家康の会話に,突然光佐が割り込んだ。
「もしかして,錬金術師のドクター・ヒラテさんではっ!?」
「む?そうじゃが」
「やっぱり!て事はこれが,世界で唯一の人工知能アンドロイド,フカンなんですか!?」
「イエス。私が・フカン・です」
「わぁ〜,凄いっ!まさか生で見られるなんてっ!」
「……何なのじゃ?お主」
「わ,私,貴方のファンなんです!そのっ,もし良かったら弟子にして下さい!」
「弟子……とな?」
「私,霊能工学が好きで……。な,何でもしますから!家事から家計のやりくりから,何なら下の世話迄っ!」
「いや,儂は其処迄衰えては……」
「お願いしますっ!」
「……むう。如何思う?フカン」
「イエス,ドクター・ヒラテ。特に・問題は無い・かと」
「そうか。まあ,フカンがそう言うならな」
「有り難うございますっ!!」
そんな騒ぎを後目に,ねねと家康はタワーを下りていった。



四条大路。
「ひゃっほーーーーーーっ!」
誰も居ないその道を,信号も無視して爆走する車が有った。
言う迄も無く,信長とヒナタ,天回を乗せた車である。
「誰も居ない道をかっ飛ばすってな,気持ち良いなッ!」
「て……そんな事しに来た訳じゃ……」
「硬ぇ事言うな……よ!?」
前方で,何かが爆発するのが見えた。
キキキキキキキキッ!
急ブレーキを踏んで,ドリフトしながら信長は車を止めた。
「あたっ!舌噛んだ」
「何事じゃ?」
車を降りる信長に,ヒナタと天回が問うた。
「……見ろよ」
信長の示す先には,クレーターの様な巨大な穴が開いていた。
「穴……?道路の真ん中に?」
「さっきの爆発かの?」
「だな……。俺等を,こっから先に進ませない気か」
「如何するんですか?」
「迂回するっきゃ無ーが……他の道もこうされたら,歩いてくしか無ーな」
「目的地も分からないのに?」
「十中八九,内裏だろ?まあ,もしかしたら旧大内裏の方かも知んねーけど」
「うむ……」
さてと言う事で三人が車に戻ろうとした時,途轍もない殺気が三人を――いや,信長を襲った。
「そんな心配なんざする必要無いぜ」
一拍おいて,声が飛んでくる。
「この……声は……ッ!?」
「如何したんですか,信長様」
「む!誰か来たぞ」
信長達の後方に,顔を歪ませた男が現れた。
「手前ぇは……」
信長が,譫言の様に口走る。
そして,男は言った。
「よう。久しぶりだな,兄貴……」

「信行……!」

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