ザ・グレート・展開予測ショー

非日常(6)


投稿者名:ゴン太
投稿日時:(04/ 2/22)


今、私はある書類にペンを走らせている。
その書類とは横島君を正社員として雇うための契約書。
そこに書かれている内容は、今までの赤貧生活で暮らしていた横島君からしたらきっと眩しくて目も開けられないような魔法の紙だ。

「ふぅー、これで後は横島君の所だけね。」

ひと息ついて書き入れる箇所を全て埋めた契約書を見る。
後は横島君のサインを入れるだけ、そうしたら彼は晴れてこの美神除霊事務所の正社員になる。
ただ・・・
心配事が一つだけあるの。

だってあんな生活していた横島君だもの、この金額を見たら発狂しちゃうんじゃないかしら。
そしたら契約云々なんて言ってられない・・
・・まぁ、その原因は私にあるし仕方ないか・・・

言われなくてもわかってるわよ、らしくない事してるって言う事は。
でも、私は・・・美神令子は負けたまんまじゃいられないのよ。
そうよ、追いつかなきゃいけないのよ

・・・・横島君に・・・・・



あの日、ママが帰ってから暫くしてひのめを抱いた横島君とおキヌちゃんが一緒に帰ってきた。
そして私は横島君にママから聞かされた事を伝えた。

ただGS協会の事は話さないでライセンスの事だけを彼に伝えた。GS協会の話を持ち出すって事は間接的にあの時の事を・・・ルシオラの事を話す事になりかねなかった。 正直、私は自分自身で手がいっぱいで彼女の事を話せる余裕はなかった。だから “私が”見習いから、正式のGSとして許可を出したという事にして話した。
すると横島君は、

「一人前だって認めてくれるんですか・・・・そっかァ・・・俺、美神さんの・・みんなの助けになってるんっスね。」

そのとき横島君があまりにも嬉しそうに言うから少し良心が痛んだけど重要なのはこれからだと気を引き締めて言葉を返したの。

「まっ、まぁね。あんたも結構使えるようになってきてるし、
もうそろそろ見習い期間を終わってもいい頃かなってネ。」
「そう言ってもらえると嬉しいです。・・・んっ!?てことは―――」

・・・来た!!もし彼が独立すると言っても私には止める権利なんて無い。自分で言うのは何だけど私は横島君にはずいぶんひどい扱いをしている。
私だったら・・・ううん、誰だろうがライセンスを持った時点で即座に独立するだろう。
だから横島君もきっとそう言うんだろうと思ったのに彼が言った言葉は・・・・・・・

「給料上げてもらえるんですか。」

・・・

「へっ?」

あまりに予想外の事に間抜けな声を出してしまった。

「ああッ〜、すいません。ただ正式なGSになったからちょっとぐらい上げてくれるかなって思って・・・御免なさい、すいません、だからムチだけはーー!」

アレはさすがに予測できなかったわ。でも私もついついパニックになっちゃって、

「あああ・・あんたそれで良いの・・・!?独立だって出来るのよ?」

って墓穴ほっちゃったのよ。そしたら横島君は・・・

「えっ?ああ・・・そういえば独立も出来るんでしたっけ・・・う〜ん、イヤッ・・色々と大変そうだしやめときます。」

だってさ。全然その気がないみたいだしどうも取り越し苦労だったみたいだってホッと安堵したんだけど、

「それに、ここには思い入れがありますし・・・守りたいものが・・・ね。」

いきなりそう言った横島君・・・・・・。

前は美人としったら見境なくセクハラして・・お風呂だって覗いて・・・エロガキで・・・・・・
ずっといっしょにバカやってきたのに―――・・・ 

あの時、差し込んだ夕日と相俟って照れくさそうに鼻の頭をかく横島君。だけど目は真剣だった。






・・・彼はいつの間にか私を置いて先に行っていた・・・




その時にあたしは決めたのよ。いつの間にか追い抜かれていたけど、またすぐに彼に追いつくって―――

――― ジリリリリッ ―――

電話の音で思考が途切れる。時計を見るとどうやら長い事考え込んでいたらしい。
自分の決意を邪魔されて少し腹が立つが、しつこく催促するベルの音がうるさく少し不機嫌気味に取る。

「はい、美神除霊事務所。」
「あ〜、令子ちゃん〜〜〜。」

聞こえてきたのはノーテンキなお嬢様の声だったわけで・・・・

「でっ、どうしたの冥子?言っとくけど、『怖いから除霊に付いてきて〜〜。』なんて聞かないわよ。」

電話越しだと“暴走”に巻き込まれる事もないから素っ気なく返す。

「違うの〜〜。今日はそうじゃないの〜〜〜。今日わねぇ〜〜〜・・・・・・。」

・・・・

「そう、よーく分かったわ。ありがとう。」

――― ガチャ ―――

やっと用件を聞けたのでさっさと受話器をおろして電話を切る。
冥子の話によるとどうも三日後にスイスの方で精霊石のオークションがあるらしい。
どうしてこれだけの事を言うだけであの子は五分もかける事が出来るんだろうか、なんて決して終わりのない事について考えそうになっている自分に気付いて、頭を振って考えを取り払う。

それにしてもオークションねぇ〜。オークションが終わったら冥子達とショピング、ついでにみんなにおみやげでも買ってあげようかな。

おキヌちゃんは小物とか洋服とかにして、シロは・・やっぱり肉か、タマモは・・・油揚げはあるかしら?
横島君は、そ〜ねぇ〜・・・・・あれ?横島君は?何が良いの?
横島君が好きなもの?食べ物?う〜ん、何だかなぁ〜好きな物・・好きな物・・・・・

『お姉さ〜ん。』

これかしら?でも、何なら私をあげ・・・

「って!しっかりしろ私!!」

危ない、危ない。あやうく変な方向に流されるところだったわ。
でも私、あまり横島君の事知ってなかったのね。
・・・まぁ〜あせっても仕方ない!何てったってこれからも一緒にいるんだしね。

「あっ・・・」

そうだ。横島君もこれから一端のGSになるんだから格好は大事だしスーツよ!スーツッ!!
どうせなら内緒でサイズを計って・・きっと驚くだろうな。

そしてその後で満面の笑みで『ありがとう』って・・・・・



顔が熱い、きっと今、自分の顔はとても真っ赤だろう・・・恥ずかしい。けれどそれが嬉しくもある。

この気持ちはもう誤魔化さない、誤魔化せないし、誤魔化すつもりも、もう無い。


前世なんて関係ない。私は“今”彼に恋してる


だからこれからもよろしくね・・・?




・・・・・・パートナー

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