〜 『キツネと姉妹と約束と 第3話・中編』 〜
投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 2/21)
「・・・・タマモねーさまっ!!!!!」
我知らず、スズノはタマモの体へとしがみついた。姉の腕からはすでに血の気が失せはじめている。
「妖狐スズノだな?オレと共に来てもらおう・・Gメンよりはマシな待遇を保障するぞ。」
耳に届く男の声。
ここに来て、ようやく相手の全貌を見て取ることができた。
一見すればレストランの店員・・・しかしその瞳だけがギョロギョロと不自然に輝いている。
・・・・鳥?・・なんとなくだがそう思った。
「・・・お前は・・・人間ではないのか?」
「そうさ。オレはお前を閉じ込めた人間じゃねぇ・・。お前のお仲間だよ。」
言って、男は腹を抱えて笑い出した。
・・・何が可笑しいのか・・・その笑いはとどまることを知らない。
(・・・・・・・っ!!)
その手を血で染め上げながら・・姉の命を奪っておきながら・・・・・
・・・・一体・・何が可笑しいっ・・・・・!?
意識が澄み渡る。・・久しく忘れていたこの感覚。
目障りだ・・・・・消してしまえ・・・・!!目の前の存在を・・・・・!
『何か』が・・・這い寄る・・。
スズノであってスズノでない・・・・『何か』・・。
「・・・どうして・・・・」
「?」
「・・・ねーさまは・・・横島のことが好きなのに・・好きになれたのに・・・・」
スズノの体が小刻みに震え出す。それは・・悲しみによるものだけではなく・・・・猛る炎にような・・・・
「あ゛?何言ってやがる?クソガキが・・」
「・・・・・・を・・・・・・なえ・・・・・。」
つぶやくのは、やはりか弱い少女の声。・・しかし、数秒前とは決定的な違いがある・・・。
・・・憎悪。
少女の憎悪に・・世界が共振する。
「・・万死をもって・・・・その罪を贖え!!!!!」
!?
刹那。
信じられないほどの殺気が男を襲う。
向けられた本人にしか分からない・・・・・しかし強大な力。
「・・・ひっ!!」
反射的に彼は後ずさった。
・・これは・・何だ?自分はただ、妖狐の子供の捕獲を命じられていただけのはずではなかったのか?
―――・・・派手に踊れ。どの道、殺すがな・・・。
精神に直接語りかけてくる声。少女が一歩・・・また一歩と踏み出すたびに・・・
ビリビリと・・全身が消し飛ばされる感覚を覚える・・・。
・・・冗談ではない・・・・コイツは・・・・化け物か・・・?
・・・・。
「・・ねぇ?何に驚いてるか知らないけど・・そろそろ気づいてほしいんだけど・・」
しれっとした声。・・と同時に、男の頬を炎がかすめる。
瞬間、スズノの前でタマモの亡骸が消えていき・・・・・
「・・え・・・・あ・・・・・れ?」
間の抜けた声とともに、スズノがペシャリと崩れ落ちた。
・・そのまま・・呆けたように前を見つめて・・・・
「・・・ねー・・・さま・・。」
「っ!?貴様・・何故っ・・・・!?」
次に男が目にしたのは、自分がこの手で始末したはずの妖狐の姿。
少女はくるくると火球を弄びながら・・テーブルの上に、何事もなかったかのように腰掛けている。
「どう?私の幻術も捨てたものじゃないでしょ・・スカウトしてみる?」
――・・。
言いながら、タマモは素早い身のこなしで距離をつめる。
「・・・・おのれぇっ!!!」
空を切るような音。そして、一瞬で敵が自分の間合いを侵したことを知る。
男はいきり立ち・・再び彼女を切り裂いて・・・・
「残念。ハズレ♪」
そして、下方から現れたタマモの掌に足をすくい上げられた・・。
!?
クルリ・・と。
ギャグマンガ顔負けの勢いで男の体躯が回転して・・・
・・・バターーーーン!!・・と。
ギャグマンガ顔負けの安直な効果音とともに、床に叩きつけられる。
「・・もとはギャグマンガなんだけどね。」
「っ・・くそ!!なぜオレがこんな小娘に・・・・・!」
忌々しげに顔を歪め、すぐさま立ち上がろうとした魔族は・・・
・・しかし、タマモの射抜くような視線に言葉を失った。
「私を狙う分には好きにしていいけど・・でも、『妹』には手をださないで・・。」
「ハッ!!妹だと!?」
鼻で笑う男の顔に浮かんだのは、タマモに対する侮蔑の表情。見透かしたように唇をつりあげる。
「笑わせるなよ!!ソイツはただの・・・・・・!」
「そこまでにしてもらおうか?本人たちが姉妹と主張してるんだ。
・・部外者が口を出すのは野暮ってものだろう?」
前触れも無く、男の両手に手錠がかけられる。
見れば、西条が霊剣を抜き放っていた。
「・・・・・・チッ・・!」
―――・・・。
「・・ったく。手を出すなって言うから、ひっこんでたけど・・冷や冷やさせんなよ。
しかもケガしてんじゃねぇか・・。」
いつの間にか、横島がとなりに立っていたりして・・・タマモの肩に触れようとする。
「・・か・・かすり傷だから。これぐらい放っておけば・・・」
「だ〜めだ!!ホレ、文殊使って回復・・・・」
「いいの!文殊が勿体ないじゃない・・。」
「だめだっつーに!!さっさと使え!!」
「いいの!!」
・・こんな不毛がやりとりが展開されて・・
・・・結果として店内には死者はおろか、けが人すらもほとんど出ず・・・・
固唾を飲んで見守っていた客たちも、やがて緊張の糸を解いていく。
「・・・・・・。」
ザワザワと喧騒が起きる中。
フラフラと・・・・・・スズノが言い合う2人に近づいて・・・・
・・。
「・・スズノ?ケガはない?」
「・・ねーさま・・・よかったぁ・・・。」
そのまま・・タマモの胸へと飛びこんでしまう。・・スズノの肩は安堵の涙で震えていた。
「・・へ?・・・あ・・あの・・ちょっと・・スズノ?」
・・しがみついたまま決して離そうとしない。
慣れていないのか、抱きつかれた本人の方は赤い顔でうろたえてしまい・・・・
「よ・・・横島・・こういう時ってどうすれば・・・・・」
「ん〜?・・黙って胸貸してりゃいいんだよ、『タマモねーさま』?」
それに・・・・
それに横島は・・微笑ましいものでも見るように、ゆっくりと頬を緩めたのだった。
〜続きます〜
『あとがき』
・・スズノ激強!(笑
そして、タマモに圧倒される敵もどうかと思う今日この頃です。
ラブが控えめになってしまいました・・もうちょっと書きたかったんですが・・
うう・・現在執筆中の第9話はでは横タマのシリアスラブ(横島の中ではそうではないかもしれませんが)
が展開中ですのでそちらの方をお楽しみに・・
あ・・あと、西条ですが車・・パトカーでもよかったんですが、流石にパトカーで逃亡はないんじゃないかと
思いまして・・う〜ん難しいですね。
しかし・・『姉妹』は長いですね・・9話の時点で原稿用紙150枚を超えちゃってます。
10話からがクライマックスなんですが・・・書きすぎだ・・(汗
それでは〜また次回お会いしましょう。
P.S.
本当に毎回毎回、皆さん感想ありがとうございます〜
インターネットカフェで打ち出すところから始まるので、時間がなくて(毎回1000円(笑))
・・それで返信ができず申し明けありません〜
はげまされます〜ありがとうござます〜
今までの
コメント:
- よかった〜〜〜!!!
一瞬、タマモ死にます〜〜!!??って思っちゃった;;
いいですね〜姉妹ネタ〜♪続きが早く読みたいです〜♪ (洞の中のフクロウ)
- え!『姉妹』って、そんなに長いんですか!!書いてる人からしてみれば大変かもしれないですが読んでいる自分としては、長いほうが読み応えが有ってホント楽しいです!でも今回も西条は良い所で登場しますね!!でも今回の敵が何物なのかはカナリ気になる所ですね。あとタマモが横島への好意を認め始めたあたり、タマモが少しずつ変わっているって事ですね!!昔のタマモなんてメッサ否定してましたからね!!時の流れを感じるね。 (GTY)
- 敵,弱っ!
でも,序盤に雑魚はお決まりですね。前編で格好良く登場したと思ったら・・・。
各キャラの掛け合いが面白かったです。 (竹)
- どうもです〜ヒロです〜
スズノ激強!?(でもまだ戦ってはないんですが)
タマモも強!!西条さんは・・・?え〜個人的に彼のご活躍にも期待してるもんです。
でもやっぱりこのお話も逃亡で始まったわけですからね〜美神さんの経済的な封鎖とか〜行動制限(検問とか)あとはカーチェイスや派手な銃撃戦なんか・・・ってそれもうすでにお話が違いすぎ!!申し訳ないです。
え〜ごめんなさい。であであ〜これからも頑張って下さいませ〜 (ヒロ)
- え?横タマのラブラブなくて死亡ー!???と思ってしまいました〜
スズノが激強!激可愛!
横島君にもっと活躍シーンを!!! (紅蓮)
- 賛成票を入れ忘れたようですw続き期待してま〜すv (紅蓮)
- 結構時間に余裕があるのでここからでもコメントをば(笑
>洞の中のフクロウさん
読んでくださってありがとうございます〜。作者も前編で終わったら暴動が起きるのではないかと思ってしまいまして(汗)
>GTYさん
うう・・本当に毎回毎回ありがとうございます〜
長いですね〜姉妹は・・多分、このお話だけで単行本がつくれるんじゃあ・・(爆
タマモの横島への好意・・「ウェディング」あたりだと否定しまくりでしたもんね〜本当にありがとうございました〜 (かぜあめ)
- >竹さん
読んでくださってありがとうございます〜
タマモにあそこまでいいようにあしらわれる敵もかわいそうですね(笑
このお話の掛け合いはけっこう自分でも気に入っているのでほめていただいてうれしいです〜竹さんも連載がんばってください〜
>ヒロさん
うあ・・いつもいつもコメントありがとうございます〜
西条さんのバトルはちゃんとありますよ〜しかも一対一で強敵とのバトルが・・
もう彼の過去のせいでプロットが崩れて崩れて・・泣きそうです(笑
ヒロさんの連載もクライマックスですね〜がんばってください。 (かぜあめ)
- >紅蓮さん
「聖痕」からお付き合いいただき、本当にありがとうございます〜
スズノ可愛いですか〜よかった〜
横島は後半でめちゃくちゃ活躍します〜このシリーズのラストで謎の核心に微妙に迫る予定です。それでは〜 (かぜあめ)
- 一気にシリアスな展開に突っ走るのかと心配しましたが、ギャグでよかったです。
しかし、スズノに翻弄され気味なタマモがなかなかよい感じですな。 (林原悠)
- あ・・あれ?洞の中のフクロウさんのコメントが途中で切れてる・・(汗
すいません〜。林原さんもありがとうございます〜以下返信です〜
>洞の中のフクロウさん(これが完全版です(爆))
読んでくださってありがとうございます〜。作者も前編で終わったら暴動が起きるのではないかと思ってしまいまして(汗)スズノってかなりすさまじい過去を持っているので、ここからが姉妹の絆が試されるって感じです。ご期待に添えるようがんばります〜
>林原さん
ウェディングとか聖痕だとここで一気にシリアスになってラストって感じなんですが(笑
久しぶりに長編に挑戦してみようかなぁと思いました。すごく大変だったりしますが
スズノは書いてて本当に楽しいんです〜
読んでくださってありがとうございました〜
(かぜあめ)
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