ザ・グレート・展開予測ショー

風邪のひくまま 中編


投稿者名:殿下
投稿日時:(04/ 2/21)

布団に入るとタマモが必要以上に寄り添ってきた。

(タマモってこんなキャラだったっけ?)
俺が知ってるタマモは、クールで必要最低限の言動しかしなくて、唯一熱くなるのはシロと喧嘩してる時ぐらいというイメージだったため今のタマモの姿に違和感を感じていた。

「・・・ヨコシマ?」

「んっ?」

「ずっとそばにいてね」

「・・・何かあったのか?」

「・・・・・」

「話したくないなら無理には聞かないけどさ」

「あのね、このごろ夢を見るの」

「夢?」

「そう、夢。生まれたばかりの時の・・追われている時の夢・・・」
タマモの手に力が入る。
「また追われるんじゃないかって、非道い目に遭わされるんじゃないかって・・・毎日不安なの」
そう言いながらタマモの体はガタガタと震えていた。

(無理もないよな、生まれたばかりで何もしてないのにいきなりたくさんの人間達に追い回されたんだからな・・・)

「嫌なの!もうあんな怖い思いしたくないの!」

俺は右手でタマモの頭タマモを優しく撫でながらタマモを抱きしめた。

「ヨコシマ?」
突然の事にタマモはビックリしているようだった。

「心配すんなよ。もう二度とあんな思いはさせない!美神さんやおキヌちゃん、シロ、それに俺もいる。」

「・・・ヨコシマ」

「約束する。どんな事があっても俺がタマモを必ず守ってみせる!だから安心しろよ」

その言葉を聞いた瞬間タマモの瞳から雫がポロリとこぼれ落ちた。その事に気付くとタマモは俺に背を向け必死に涙を拭っている。

「タマモ」
俺が心配そうに呼びかけると、タマモが振り返り

「また騙されたわね。ほんとヨコシマって騙されやすいんだから☆」
タマモは明るい声でさっきのも嘘泣きだと主張する。

(全く・・無理しやがって)
こんな少女があんな目にあったら普通泣きわめくはずなのに・・・なのにタマモは今までそんな素振りを全く見せずにいた。

俺はタマモをぐっと抱き寄せ言った。
「そんなに無理しなくてもいいんだぜ。」

「・・・別に。無理なんかしてないし」

「またそうやって意地を張る。じゃあさ、せめて俺と二人の時は、無理しないでくれよ?泣きたい時は泣こうぜ。なっ?」

タマモは無言で俺の首に腕を回してくる。
そして
「ヨコシマ!ヨコシマ!」
急に糸が切れたようにタマモは俺の胸の中で俺の名前を叫びながら泣き続けた。俺はその間ずっとタマモを抱きしめ続けた。こうする事によって少しでもタマモの不安が取り除かれればいいと思って・・・



その甲斐あって、少し落ち着いた様子のタマモが話しかけてくる。
「あのね、ヨコシマ」

「ん?」

「私ね、ずっと不思議に思ってたことがあるの」

「何が」

「何でミカミ達はヨコシマと一緒にいるのか」

ガクッ
「な、何で?」

「だって普通ドジでセクハラばっかりやってる男なんかすぐに愛想尽かすでしょ?なのにずっと一緒にいるんだもん。だから何でなのか知るためにずっとヨコシマを観察してたの」

(そんな事してたのか・・・ぜんぜん気付かなかった)

「それでね。普段の姿を見てたら、やっぱりミカミ達の考えが理解できなかったの」

「はははっ・・・・」
俺は乾いた笑いを返すしかなかった。

「でも違った。ヨコシマは確かにドジだし、セクハラばっかりしてるけど本当はすごく優しくて強い男なんだって・・・」

「おいおい、そんな事ないぜ。俺がしょっちゅう弱音吐いてるの知ってるだろう?」

「知ってる。でも弱音を吐くだけで決して逃げないし、ヨコシマのそんな態度を見てみんな安心してるの。それに・・・」

ガバッ

「うわっ!」

いきなりタマモが俺の上着を脱がせようとしてきた。

「ななな何すんだよ!」

「脱いで!」

「いや、そういう事はもっと段階を経てお互いの気持ちを確認してからでな・・・」

「チャカさないで!」
タマモが真剣な表情で俺の目を見て言う。

「いいから脱いでみて」

「・・わかったよ」
そう言って俺は上着を脱いだ。

「それに・・・この傷だらけの体」

「これは俺が除霊中にドジっちまって」

「嘘ね。ドジしてついた傷もあるでしょうけど、ほとんどは誰かをかばって負った傷でしょ?」

「そんな大層なもんじゃねえって」

「おかしいとは思ってたのよ。いくらあんたの運が悪いっていってもあんたばかり怪我して・・・なのにミカミ達は傷一つついてない。そりゃそうよね、いつもヨコシマがみんなにわからないように悪霊を引きつけてたんだもの」

「・・・・・」

「なんで?どうしてそんな無茶な事をするの?私たちが頼りないから?」

「そんなことないよ」

「じゃあ、どうしてなの?ヨコシマも私と二人の時は無理しないでうち明けてよ」

少し考えてヨコシマは悲しそうな顔をして話し始めた。
「・・・昔な、一人の馬鹿な男を好きになってくれた女がいて、その馬鹿な男はその女を守ってやるなんて大口叩いてさ、でも結局その男はその女に命を救ってもらっておいて、この世界を救うためにその女の命を犠牲にしたんだ」

「・・・・・」

「今でもその時の事を思い返すんだ。あの時あれしか選択枝がなかったのかとか、あいつは何で俺なんかに惚れちまったんだろうって」

(知らなかった。ヨコシマにそんな事があったなんて、普段はそんな素振り全く見せないのに、でも・・・)

「ヨコシマ間違ってるよ。これだけ優しいヨコシマがそんな思いしてまで選んだ選択なんだよ。他に選択肢なんてあるわけないじゃない!それにその女の人だって、そんな優しいヨコシマだから好きになったんだよ!」

「・・・タマモ」

「だからそんな悲しい顔しないでよ」

「ありがとうな」
俺はそんなタマモの言葉がすごく嬉しかった。

「いいのよ、私も愚痴を聞いてもらったしね。お互い様よ」

「そう言ってくれると助かるよ」

「ヨコシマ、一つだけ教えて」

「何だ?」

「その女の人の名前はなんて言うの?」

「・・・ルシオラって言うんだ。蛍の化身の魔族だよ」

「そう、ルシオラって言うの・・・良い名前じゃない」

「ああ」

「・・・・」

「・・・・」

「あのね、ヨコシマ。私あんたに謝らなくちゃいけないことがあるの」

「何を?」

「実はね、さっき起きてたの。ヨコシマが私に・・キス・・・しようとした時・・それでわざと寝返りうった振りして唇にキスさせたの」

「・・・・そっか」

「やっぱり怒った?」
タマモは不安そうな顔で聞いてくる。

「いや、全然怒ってねえよ」
俺はそう言いながらタマモの頭を優しく撫でる。

「そのおかげでタマモと色んな話ができたし、それにタマモの『ファーストキス』の相手にもなれたしな」

「ば、ばか!」
タマモは真っ赤になって照れている。

(う〜ん・・やっぱり可愛いな)

そんなタマモを見て俺は少しいじめたくなってしまった。

チュッ

不意に俺はタマモのおでこに優しくキスをした。

「な、なな、何よ!いきなり」

「いやあ、やっぱりタマモって可愛いなと思ってさ」

「う〜〜〜〜」
タマモは赤くなりながら唸っている。

(少しやりすぎたかな?)

ぎゅっ
そんな事を思っているとタマモが抱きついてきた。

「どうした?」

「・・・もう一度キスして」

「えっ?」

「もう一回・・キス・・・して」

「今しただろ」

「おでこなんかじゃなくて、ここ」

そう言ってタマモが指さした場所は・・・唇

「いいのかよ」

「女の方から言ってるのよ。良いに決まってるじゃない」
タマモが目を閉じる。

「じゃあ・・・」

そう言って俺がキスしようとしたが
「一つ言っておくけど・・・」
不意にタマモが目を開ける。

「うわっ!何?」
「こんな事するの・・・ヨコシマだけだからね」
そう言い残してまた目を閉じる。

「ああ、ありがとうな」
そして、俺はゆっくりとタマモと口づけを交わした。
どれぐらいの時間タマモとキスをしていたのかはわからないが、とても長い口づけだった。


しかし俺はこの時知らなかった。そろそろ美神さん達が帰宅する時間になっていた事を・・・

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