ザ・グレート・展開予測ショー

長編・GS信長 極楽天下布武!!(5)


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 2/19)

守護する百姓
前世の因縁無くて生まれ会ひ難し

願わくば民豊かにあれかし















電話のベルが鳴った。
「はイ。蜂須賀堂」
この『蜂須賀堂』の店主,蜂 須賀はカウンターから手を伸ばし,受話器を取った。
「ああ,隊長さんカ」
如何やら,電話の相手はオカルトGメンの日本支部隊長,織田信秀らしい。
「あア……。その連中なら,多分連絡附くと思うゼ」
何やら,依頼をされた様だ。
「ああ……,応。……分かっタ。それじゃア」
ガチャ……
「……」
須賀は一旦受話器を置くと,再びダイアルを回し始めた。
「やれやレ……。又た何か厄介な事が起こったらしいナ……」
まあ,此方は儲かるから良いのだが。



織田除霊事務所。
誰もいなくなった無人の事務所で,ポン!と言うコミカルな音がした。
「……」
音と共に現れたのは,福の神こと東照大権現徳川家康だった。
「又ーた厄介な事に巻き込まれた様やな,にーちゃん」
独り言を呟く。
ねねが学校へ行っている間,情報収集も兼ねて此処に入り浸っていた家康だが,何やらの緊急事態を見て姿を隠していたのだった。
「本ま,今迄のやり方じゃ温いわな。記憶が入れ替わってる今なら尚更や……」
狸親父と言われた家康の頭脳が,何某かの閃きを得たらしい。
「……なら,善は急げや」
そう言って,家康は事務所を後にした。
彼の考えが“善”なのかは判然としないが……。



岐阜市,とある旅館。
露天風呂,女湯。
「っはー。生き返るわねー。ずっと車で座ってたから腰が痛いわ」
「……拙者,この臭いは少し堪らんでござる」
「て言うか,ヒナタちゃん落ち込んでたんじゃないの?」
「ん……」
この旅館の売りである石造りの露天風呂で艶姿を披露しているのは,誰有ろう,信長一行女性陣の皆様である。
「そうなんだけどさ……。うじうじ悩むのは性に合わないしね!ほら,私って体育会系だし」
「そう……」
「それに……これ以上,周りに迷惑掛ける訳にはいかないしね」
「じゃあ,一人なら悩むんだ?」
「さあ……ね」
「……」
考高とヒナタの会話に,何となく気まずい雰囲気が場を包んだ。
「あ〜……う〜……その!」
堪りかねて重治が話を切り出した。
「お,落ち込む事ないでござるよ,ヒナタ殿!拙者等ほら,何時も何時も先生にご迷惑をお掛けして……」
「えばって言う事じゃないでしょう……」
そう突っ込むのは勝竜姫。
「と言うか,蒸し返して如何すんでちゅか……」
と,的を射ているが故に辛辣な言葉を投げ掛けるのはタツリオだ。
「クゥ〜ン……」
「あ!気,気にしなくて良いよ,半兵衛ちゃん。心遣い,嬉しかったよ,うん」
「……そうでござるか?」
「あんたが気ぃ遣われて如何するのよ……」
「喧しいでござる!女狐」
「そんなに大声出したつもりは無かったんだけどね」
「お,己!詭弁を労して拙者を侮辱するか!?許せんでござる!」
「あんたが馬鹿なだけでしょ?」
「何を〜!?この頭でっかちの色魔が!」
「何ですってぇ!?」
又た始まった。この二人(二匹?)にとっては,これも日常茶飯事――コミュニケーションの手段の一つなのだが。
「ま,まーまー。半兵衛ちゃんも官兵衛ちゃんも落ち着いて……」
「くっ……!」
「ふん……」
「……仕方ないでござるな。ヒナタ殿のお顔に免じて,此処は引いてやるでござる」
「こっちの台詞よ!」
正に売り言葉に買い言葉である。仲が良いのか悪いのか。
「……勝竜姫も,何か顔色悪いでちゅね」
「え,そうかしら?」
「そうでちゅよ。ムラマサが心配なのは分かりまちゅけど,そんなに思い詰めても仕方無いでちゅよ」
「……そうですね……」
それだけじゃないんですけどね……。
「有り難ね,官兵衛ちゃん」
「何が」
「気,遣ってくれて」
「……礼を言われる事じゃないわ」
「そう?」
「ええ。……分かったら,今度からは一人でやってよ?」
「……」
「無力なのは,別に貴女だけじゃないんだから……」
「ん……分かってるんだけどね……」
「私達が彼奴にしてやれる事なんて,そう多くはないわよ。彼奴が私達に与えてくれるものに比べたら……」
「……」
でも,巻き込んだのは私だ。
「そうだよね……」
「……」
「分かってるんだけど……ね」

私は,何だ?


その頃,旅館のロビー。
「やっぱ,なーんか臭うな?天回」
「硫黄じゃろう。此処の風呂は温泉だったからの」
「……じゃ,ねーよ。火薬臭いって事だ」
「ふむ。黒色火薬には硫黄も使われておるからな」
「比喩だっつってんだろ!」
「いや,言っとらんぞ……」
「ったく……」
「霊感と言う奴か?」
「……さあ。分かんねーが,でかいヤマになんぜ,こりゃあ。俺が言ってんだ,間違い無ぇ」
「……嬉しそうじゃの」
「ああ……,嬉しいね」
「何故……?」
「へ……!面白そうだからに決まってんだろ?」


信盛は未だ風呂。



彦根市,某ホテル。
「わ,ワッシ一人の為にわざわざ一部屋取ってくれるなんて……,うおー!感激ですジャ,帰蝶サン!」
そう喚くこのリーゼントは,言う迄も無くマエダー利家。
「良いのですか?心配致さずとも,此奴が血迷ったとしてもこの私めが必ずや姫をお守り致しますが」
ふしゅるる〜,と何故か鼻息に効果音付きな彼女は,氷室女華。
「良いのよ。マエダーには何時も薄給で奉仕してもらってるしね?こんな時位」
「それよか,給料上げて欲しいですタイ……」
「何か?」
「い,いえ!何でもありません」
そしてこの一寸きつめの美人が,二人の雇い主である『小笠原帰蝶GSオフィス』の所長,小笠原帰蝶その人である。
「それに……」
「それに?」
「今回の仕事はでかいヤマになりそうだからね……。ま,明日に備えてゆっくり休みなさいよ。女華に寝ずの番でもされちゃ敵わないわ」
「……何なんですか?今回の依頼って」
「さあね。未だ分からない」
「えっ!?」
「ま,行けば分かるわよ」
「はあ」
「ってと!お風呂入りに行こうか,女華」
「……」
「女華?」
「……は!お供致します」
「ん。じゃ,行こう」
「は……」
女華は,その醜い……と言うかごつい容姿の為,生まれてこの方異性に避けられ続けてきた。
その結果,彼女自身も異性に全く魅力を感じなくなってきた。……まあ,一種の逃避なのかも知れないが。最も近しい異性である利家が,既に彼女持ちだったりする事も,それに拍車を掛けたかも知れない。
……そう言う訳で,女華の帰蝶に対する感情は,“敬愛”や“忠誠”だけでは最近はなくなってきていた。
「……女華サン?如何したんですタイ,顔赤いですよ」
「え!?い,いや,何でも無いのよ」
「はあ」
何を考えているのだ,私は……。今し方マエダー君を諫めたばかりではないか。大体,姫に邪な感情を抱く等……
「如何したの,女華!早く行きましょうっ」
ぐはあ!
笑顔で手を振ったりしないで下さい,姫様ぁ!しかもお風呂!私の理性がやばいです!
「ふしゅ〜〜〜,ふしゅっしゅるる〜〜〜!」
「女華サン……?」



名古屋市。名古屋駅近くのビジネスホテル。
「御免なさいね,二人共。三人で一部屋なんて。何分,持ち合わせが少なくて……」
「いえ,そんな。お金出してもらってるのに,贅沢は言えませんよ。なあ,秀家」
「え,うん。そう……だね」
しかし,若い男と女が,ビジネスホテルとは言えこうも簡単に同じ部屋で寝泊まりしても良いものなのか?大人の世界ってそーゆーものなんだろうか?それとも,この二人が特殊なだけ?
「?どした,秀家」
まあ,僕も居るから二人っきりって訳じゃないけど……。
「いや,別に……」
藤吉郎と秀家は,めぐみと共に駅前のビジネスホテルで夜を明かす事となった。因みに代金はめぐみ持ちである。と言うか,藤吉郎には持ち合わせもカードも無かったので,食費,交通費,その他諸々,バイト代と言うか必要経費と言う事で全てめぐみが持ってくれる事となった。
「何か,すいません。ホントに……」
「構いませんよ。豊臣さん程のGSに助っ人を頼むのには,この程度じゃ足りない位ですよ。薬草の分を含めてもね」
「はあ……。ホント,すいません。その代わり,仕事は頑張りますんで」
「ふふ。期待してますよ」
「はいっ!」
「……」
それを,何か珍しいものでも見る様に眺める秀家。
「?如何かしたか」
「いや……。にーちゃんは,何にでも真剣だなって思って」
「え?」
「……僕を説得した時だって,何の打算も安っぽい同情も感じなかった。……いや,ホントの所如何だか知らないけど」
「うん……。そう……かな?」
「そうだよ。如何して?」
「如何して……か。如何だろう。人間,自分の事なんて自分が一番分かんないもんだしなあ」
「……そう?」
「そうだよ。他人は分かってくれないなんて,只の甘えだよ。ままならない自分を誤魔化してるだけだ」
「……」
「理由……ね。そうだな,強いて上げるなら」
「うん」
「俺には……何も無いから」
「何も無い……?」
「俺は……,非力だし,貧乏だし,根性も無い。計算無しで生きてける程強くもないけど,計算だけじゃ生きていけない」
「え……?」
「彼処でお前を説得したとして,懐いた振りをして寝首掻かれるかもしれない……。って言うか,現在進行形でそうだよな」
「……」
「でも,もしそうなったら,それも仕方無い事だと思ってる。生からの逃避かも知れないし,半端な綺麗事かも知れないけど……」
「でも……!にーちゃんには色々あるじゃないか!才能も!地位も!友達も!」
「……それは,本当は俺の物じゃないんだ」
「え!?ど,如何言う事?」
「ま,色々有るんだ。だから出来れば……,お前は,“俺”を見てくれよ」
「え……,うん……」
大人だ……。やっぱりこの人は。少なくとも,僕よりはずっと……。
「……有り難う」
「うん。……にーちゃんも,“僕”を見てね」
「ああ……」
「……」
辛いのは,僕だけだと思ってたよ。
「そう言えば,秀家。『魔流連』って――」
「御免!にーちゃん」
「へ?」
「……僕,もう『魔流連』に戻るつもりは無いけど……,でも,『魔流連』のみんなを裏切ったりはしたくないんだ……」
「……そっか」
「御免……」
「良いよ。御免な,こっちこそ。悪い事訊いて」
「……。でも――」
「え?」
「屹度,すぐに分かるよ」
二人のその遣り取りを見て,めぐみは細い目を更に細めた。



東京,浅野家。
「え!豊臣さんが!?本当?貧ちゃん」
「せや。何か,又た偉い事に巻き込まれとるみたいやで」
「そんな……」
「……どないする?ねね」
「如何って言われても……。私には何も出来ないし……」
「……ねね」
「はい?」
「日吉にーちゃんの性格は良う分かっとるやろ?待っとるだけじゃ,何も変わらへん」
「う……」
「ましてにーちゃんはゴーストスイーパーや。毎日,生きるか死ぬかの世界で生きとるお人や」
「……」
「こう言う話,知っとるか?命懸けの修羅場を共に過ごした者達は,結び付きが強くなるっちゅう話」
「知らない……」
「自分の命が危ない状況でその時間を共有したもん同士には,家族的な感情が芽生えるっちゅう話や。男女だと,結婚迄行く事も珍しゅう無い」
「……」
「その話が本当か如何かは,身に染みて分かっとるやろ……?」
「……!」
今は居ないあの人と,豊臣さんが一緒にいた束の間の日々。彼女に向けられた豊臣さんの笑顔は,私の見た事も無いものだった……。
「それで……」
それを見て……,私は……!
「それで……私に如何しろと?」
「知った事や。にーちゃん達を追いかけるんや。取り敢えず……京都やな」
「でも……私なんかが行った所で……」
「ねね!」
「っ!?」
「役に立つだの立たないだのなんて,考える必要有らへん!ねねの幸せは何や?」
「……豊臣さんの……側に居る事……です」
「せやったら,それをすればええ。にーちゃんの為に出来る事が,ねねにも屹度有る筈や」
「貧ちゃん……。有り難う……」
「……ねねに福を呼ぶんがボクの仕事やさかいな」
「あ,でも……」
「何や。未だ何ぞ有るんかいな」
「京都だなんて,如何やって行けば良いの……?」
「ああ,その事か。なら,心要らん」
「え?」



同じく東京。利政の教会。
「……ええ,分かりました」
そう言うと,利政は電話を切った。
「先生,こんな時間に一体誰から……?」
「おお,ミツヒデ君か。いや,信秀君から仕事の依頼だよ。今すぐ京都に来てくれとの事だ」
「京都?今すぐに,ですか」
「ああ。……私は行くが,君は如何する?明日も学校が有るし,アラキ君を一人にさせる訳にもいくまい」
霊感が疼く……。確証は無いが,今日の依頼と決して無縁では有るまい。だとすれば……,断る等出来ぬ。
「いえ……僕も行きます。お供させて下さい」
「おにーさまが行くなら,私も行きますっ!」
「アラキちゃん……」
「今回の仕事は……,恐らく大事になるだろう。私の霊感がそう言っている。何時もに増して危険だ。それでも,来るのかい?」
「ええ」
「勿論ですっ!」
「……そうか。これも,修行か」
神よ,彼等の前途に祝福有れ……!



神戸港。
この湾に,東京湾から自家用船で乗り込んだ者がいた。
織田信秀から依頼を受け京都へ向かう,六道吉乃とたまたま学校に残っていた為に吉乃のお守りを押し付けられた鬼道加江である。
「やっと〜〜〜,神戸迄〜〜〜着いたわね〜〜〜」
「くぅ……!採点なんて家でやれば良かった……。弱いと言うのは首が無いのと同じね……」
「加江ちゃん〜〜〜。これから〜〜,如何するの〜〜〜?」
「……取り敢えず今日は此処に泊まって,明日京都に行く手筈だけど」
「そう〜〜〜,あら〜〜〜?あの人は〜〜〜」
「え?」
「あ,六道の旦那じゃねーか。何だよ,もしかして旦那も信秀さんに呼ばれたのか?」
「そうなのよ〜〜〜。浅井君も〜〜〜?」
「ああ。此処で香港行きの船を待ってたら蜂から電話が来てよ。京都へ行けとかってな」
「そうなの〜〜〜。それじゃあ〜〜〜一緒に行きましょう〜〜〜。大勢の方が〜〜〜楽しいわ〜〜〜」



再び東京。ドクター・ヒラテ宅。
「何じゃと?京都に連れてけとな」
「せや,ドクター・ヒラテ。あんさん所にも隊長はんから依頼が来とんのやろ?西条はんが持て余す様な敵や。こう言う時,あの人が頼るんはあんた等やからな」
「むう。確かにそれはそうだが……」
「勿論,ただとは言わん。ボクが目出度く福の神として大成した暁には,その分け前を授けたってもええ。どや。不老不死のあんたになら,悪くない条件やろ」
「ふむ……,良かろう。その台詞,忘れるでないぞ」
「あんさんもな」
「……覚えといてくれ,フカン」
「イエス。ドクター・ヒラテ」
「貧ちゃん……!」
「感謝は後でええ,ねね。それに,ボクにも他の目的があるねん」
「他の目的……って?」
「いや,下らん事や。気にせんどき」
「うん……」

『ジパング』のおキヌちゃんは,このボクやで……!



京都伏見,二条城。
植椙景勝は,城壁の上で月を眺めていた。
「良い月ね」
「……」
後ろから声を掛けられて振り向くと,茉長久秀が居た。
「いよいよ明日ね」
「……」
「淺鞍さんは捕まっちゃったみたいだけど」
「……」
「何か言ってよ」
「……ああ」
「はあ〜。相変わらず無愛想ねえ,“死神人形”さん?」
「……」
「お〜い」
「……そうだな,“聖なる暗殺者”」
「御免。景勝ちゃん」
「……」
「御免てば」
「……ああ」
「ふう」

いよいよ,明日だ。

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