ザ・グレート・展開予測ショー

やっと、気づいた。〜3〜


投稿者名:yukuri
投稿日時:(04/ 2/16)


「くそっ・・・・・」


誰もいないボロアパートの横島の部屋から誰に向けられるのでもない声が漏れる。


(今日は・・・・・本当に危なかったな。美神さんを『模』してなかったらどうなってたか。)


横島は今日の除霊中に起きた自分しか知らない、いや、知れ渡ってはいけなかった未来を思い出していた。

あの時俺が注意深く敵を見ていたら・・・・・今日の自分の失敗が悔しくて仕方がなかった。


(もう誰も失わないと、大切な人を守ると決めていたのに。あの誓いはこんなにも軽いものだったのか?)


かつて、なんのとりえもない自分を愛してくれた女性。その女性守ろうとして、逆に文字通り命がけで自分を救ってもらった。

ちょっとしたきっかけから自分を先生と慕ってくれてきた少女。彼女もまた、自ら体を張って自分の命を守ってくれた。


(俺にそんな価値ねぇよ、畜生・・・・・)

(もう誰も失わない、守ってみせる。お前らが助けた価値があったって男になってやる!)


帰宅してから、電気もつけずに万年床に転がりながらも、自分のやるべきことを見つけていた夜だった・・・







ちゅん・・・ちゅんちゅん



ドドドドドドド!!!

バン!


「先生!朝の散歩に行くでござるよ!!」


「おぅ、シロか・・・すぐ行くからそこでまっててくれ。」


「お!今日はなにやら素直でござるなぁ。やっと先生もサンポのよさに気づいたんでござるな!!」(ひゃんひゃん)


いつもならしきりに散歩への同行を拒んでいた横島の急な素直さに、都合の良い解釈に自分で納得しながら勢いよく尻尾を振っているシロ。


「まぁそんなもんだな。あ、今日から俺も自転車は使わずに“走る”から・・・すまねぇがいつもよりペースは遅くなるぞ?」


「なぬ!?先生・・・熱でもあるんじゃ??」


「なんでやねん!ただちょっと、俺も体を鍛えてみよっかなぁって思ってな。嫌か?」


「そういうことなら拙者は一向に構わないでござるよ!いやぁ、現状に満足せずに鍛錬をしようとは・・・さすが先生でござるな!!」


(今のままじゃ駄目だから・・・だよ、シロ。)


今から散歩をするというのに“走る”と言う単語が出てきてもおかしく思うことがないのが、この2人の(シロの)サンポのすさまじさを物語っているのだろう。

昨日のシロの死につながる未来を見たことは、今のところ横島は誰にも伝えていない。伝える勇気がなかった。

もう大切なものは何も失わないと決めた横島の最初にとった行動は、シロのハードなサンポに自らの体で付いていくことだった。



タタタタタタタ・・・・


「やっぱり朝の散歩は気持ちが良いでござるなぁ〜。」


「そ・・・そうだなぁ。」


横島が自転車に乗っていないのでいつもよりペースを落としてサンポするシロ。それでも常人のフルマラソン並みの速さである。

除霊の荷物を持ち歩いているため、一般人よりは体力のある横島でもさすがに人狼のシロのようにこの速さで息切れせずに喋ることはできない。


「やっぱり、自転車を引っ張るよりゆっくりでも先生と並んでたほうが楽しいでござるよ!!」


「そ・・・そうだなぁ。」


「明日からもずっとこのサンポでもいいでござるか??」


「そ・・・そうだなぁ。」


「やったぁ!先生は優しいでござる♪わんわん!」


ドドドドドドド!


「そ・・・そうだなぁ。って勝手にペース上げるんじゃねぇ!!」


横島が生返事をしているのにも気づかず、喜びのあまりいつも通りのスピードを出してしまうシロに必死で追いつこうとするが到底無理なことだった。




結局、最後までシロに追いつくことはできずにサンポは終わった。


「先生・・・すいません。先生をおいたまま走っていってしまって・・・・」


「い、いや、気にするなシロ!今度からは一緒にサンポしような。ははは・・・・・」


横島のアパートに戻り、気づいたときには横島はもう水平線の向こうがわにいた。

30分程して戻ってきた横島に謝罪をするが、当の横島は疲れていてそれどころではなかったようだ。


「よかった・・・・拙者も、明日からはずっと一緒に並んだままサンポがしたいでござるよ!」


「シロ・・・・」


横島はあのとき自分をかばって死んでいくシロを見たときから、シロをただの弟子ではなく、

自分を心のそこから大切に思ってくれている存在だと認識し始めていた。それは、横島にとってシロを弟子から一人の女性として見る事になったことを意味していた。


「シロ、ずっと俺のそばに居てくれるか??」


「??なにをいまさら。拙者はずっと横島先生のそばにいるでござるよ!!」


「そうか・・・ありがとうな、シロ。」


「!?・・・・・・・・く〜ん・・・」


シロのその答えがよほど嬉しかったのか、シロを抱きしめ、頭を撫でてやる。それに心地よさそうに目を細めるシロ。







「おかさ〜ん、あの2人なにしてるの〜??」


「こらっ!指差しちゃいけません!!」


2人は周りから痛い視線を向けられていること気づかず、独自の世界を作り上げていた。




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