ザ・グレート・展開予測ショー

キスマーク(後編の後編9


投稿者名:青い猫又
投稿日時:(04/ 2/15)

事務所の前に立つタマモは目の前に見える事務所に、なにかとてつもなく
恐ろしい気配を感じ取っていた。
ついさっき横島と駅前のうどん屋、七水から帰ってきたのだが玄関を目の前にして
一歩も動けなくなってしまった。

「さっきからどうしたんだタマモ」

一歩も動かないタマモを心配して横島が声をかけてきた。

「え、いや。なんでもないんだけど。なんか嫌な予感が」

「ん、そうか?いつもどおりだと思うけどな」

横島が事務所を見上げる。
外見からはとくに変化は無く問題はありそうに無かった。

「なんだったら、これから俺のアパートに来るか?」

さりげなく横島が自分アパートに誘ってくる。

「い、いいわよ。これ以上変なことなんてされてたまるものですか。」

すでに本日分のキスマークはしっかりと付けられていたので、タマモとしては
これ以上は勘弁してほしかった。
横島は楽しそうに笑いながらタマモの頭を撫でてくる。
最初のころはタマモも拒んでいたが今ではすっかりされるがままである。

「なにもしないって〜の、俺を信用しろよ」

「私が困る事しかしない横島の言うことなんて信用出来るものですか」

タマモは一生懸命頭を撫でている横島の手を掃おうとするが、たくみに避けられ
掃えないでいる。

「くぅ〜横島やめなさいよ。」

タマモは怒って止めさせようとするがぜんぜん成功しないでいる。

はっきり言ってじゃれあっているバカップルであった。

「で、どうするんだよ。入るのか?」

ひとしきりじゃれあうと横島がどうするのか聞いてくる。

「入らないわけにはいかないでしょ。」

思い切って事務所の玄関を開ける。
一回大きく深呼吸をするとタマモが思い切って入る。

二人が入ると、ばたんと閉めても居ないはずのドアが閉じる。
退路が断たれた。そうタマモは思う、どうなっているか分からないが
覚悟を決めないといけないとタマモは気を引き締める。

「タマモ様、美神オーナーがお呼びです。」

人工幽霊1号が閉じた扉を見ていたタマモ達に伝えてくる。

「美神が?なんのようなの?」

「それは来てから伝えるとおっしゃっているので私は存じておりません」

美神が自分呼ぶ理由など限られている。
まずい、ばれたかも知れない。でもどうして?
タマモは一生懸命ばれないようにがんばってきた。
ばれる理由なんて無かったと思っていたのに、はっ

「人工幽霊1号、しゃべったのね」

「・・・・・」

「人工幽霊1号!」

「主人である美神オーナーには逆らえません・・・」

人工幽霊1号が絶望的な一言を言ってくる。
タマモが床へと崩れ落ちる。

「おい、大丈夫かタマモ?」

「よ、横島」

横島が心配をして手を差し伸べてくる。タマモはその手を取ろうか取るまいか
一瞬迷ったが素直に取ることにする。

「安心しろタマモ、俺が一緒に行って美神さんからかばってやるよ。
大丈夫いつも道理俺が殴れられれば平気だって。」

「よ、よこしま〜」

はっきり言ってタマモは泣きそうだった。
そしてこれほど横島が心強いと思ったことも無かった。
もはや油揚げ1ヶ月禁止とかの世界ではないのは確実である。

なんとかして、横島と口車をあわせてごまかせないか考える。

「横島、私のこと好きよね。愛してるわよね。」

「当然だろ、好きだし愛してるぞ。」

いまは使えるものはたとえ横島でも使って美神から逃げなければならない。

「なら、美神との会話のときに私に合わせてね。」

「ああ、安心しろタマモのことは俺が守ってやるぞ。」

なんとかなるかも知れない。
タマモは少しだけ希望を見つけると勇気を振り絞る。
とにかく今の危機をなんとかして乗り切るしかないのだ。

「とにかく、行くしかないわね。」

重い足を引きずって部屋の前までたどり着く。
最初の夜に横島の部屋のドアを開けるときよりも緊張をする。

いつもはしないノックなんてものをしてみる。

コンコン

「入って良いわよ。」

美神のみょうに明るい声が響く。

タマモは冷汗が流れるのを感じる。
やばい、美神は本気かもしれない。
しかし、どこまでばれているのか分からないので、今は強気で行ったほうが
いい気がする。

がちゃ

ドアを開くと正面にある美神の机に美神が座っており、
ソファーの左右にシロとおキヌが座っている。

「二人とも来たのねちょうどいいわ。こっちへいらっしゃい」

美神に促され、タマモと横島は美神の机の前へと行く。
正直タマモはにこやかに笑う美神が恐ろしく怖かった。

「み、美神いったいなんのようなの?」

声が裏返りながらそれでも強気に言ってみる。

「それはタマモが一番良く分かってるでしょ?」

やはりばれている。
こうなったら横島と口車をあわせてごまかすしかない。

「美神さん、タマ「うるさい」」

横島がタマモを弁護しようと一言喋った瞬間に、美神の神通根によって
叩き伏せられた。

横島撃沈・・

「いまの横島君に言葉がつうじないのは分かっているわ」

タマモの希望は弁護開始1秒で消えてしまった。
しっかりと全部ばれているらしい。
タマモは逃げ出すこともごまかすことも出来ないと悟った。

「タマモ、そのマフラーいつまでつけてるの?ここは部屋の中なんだから
外しなさい。」

タマモは取り合えずふるふると首を振ってみる。
外したら殺されるかもしれない。

「いいから外しなさい!」

「は、はい」

急いでタマモはマフラーを外す。
当然そこにあるのはさっきつけられたばかりの真っ赤なキスマーク
美神だけではなく、ほかの二人からも殺気を感じる。

「はぁ〜」

美神がため息をつく。頭に手をあててふりふりとする。

「タマモ、なんで黙っていたの?そのせいでどれだけ大事になったか
分かってるの!」

もうこうなったら誤るしかない、いくら美神だって命まではとらないだろう。
誤りたおせば明日の日は拝める。

「その、ご、ごめ〜〜〜ぇぇ、えっ?」

最後まで言えなかった。いつの間にか復活した横島がタマモを小脇に抱えると
ダッシュで部屋から逃亡した。

いつも除霊の時には背中に大荷物をもつ横島である。タマモぐらいなら普通に
抱えたまま走れる。

部屋に取り残された美神達はなにが起こったか分からず、
一瞬の間反応が出来なかった。
いち早く復活した美神がと吼える。

「よ、よこしま〜〜〜〜〜」

それからの対応は早く人工幽霊1号に各階の結界による封鎖を支持すると、
美神たちも急いで後を追う。

横島の小脇に抱えられたタマモも自分の置かれた状況を把握する。

一言で言えば最悪だった。逃げてどうする。美神たちに本気で消されかねない。

「横島、降ろしなさい。戻るのよ。お願いもどって〜〜」

「安心しろタマモ、どこまでだって逃げてやるさ。今は不安になるだろうけど
大丈夫俺が一緒についてるぜ」

なぜか歯を光らせながらさわやかに言ってくる。
だめだ、なにを言っても無駄だと悟る。

階段前に人工幽霊1号の結界が張られているのが見える。
本来結界は透明なので見えないはずだが、きっと人工幽霊1号がぶつかるのを
気にして見えるようにしておいてくれたのだろう。

横島が開いている手をポケットに突っ込む。
取り出した文殊に”破””壊”の文字を入れ、結界へと投げつける。
一瞬強い光が輝くと目の前の結界が消えた。

同じ事を繰り返し1階へとたどり着く。

「先生お覚悟」

掛け声とともに今降りてきた階段からシロが飛んできた。

「ひっ〜」

タマモはもとより前衛向きでは無い。美神の除霊の手伝いにもいつも
後方からのサポートに徹している。

それが横島に抱えられたまま振り回されるのだからたまったものではない。

「シロ、お前まで俺達の邪魔をするのか」

「先生、今の先生は正気ではないのでござる。元に戻ってくだされ」

シロ、横島ともに霊波刀でつばぜり合いをする。いつもはちゃらんぽらんの
横島だが、実力的には美神と同じかそれよりも上である。
とうぜんシロごときでは相手にならず、シロはだんだんと追い詰められていく。

「シロ、お前では相手にならん、出直して来い。」

「ぐ、む、無念。ですが十分時間は稼げたでござるよ。ぐふぅ」

横島の一撃によって床にのびたが、シロは捨て台詞はいて気絶する。

「な、なに」

「横島君、真打登場よ。」

シロの時間稼ぎによって追いついた美神が、神通根を神通鞭にして階段から降りてくる。

「美神さん、俺は愛に生きることにしました。だから邪魔をしないでください。」

その一言に美神の顔に青筋が現れる。とうぜん殺気が増す。
脇に抱えられたタマモはこれ以上横島が美神を刺激しないのをひたすら祈っていた。

「ほ、ほう。覚悟は良いって事ね、横島君。」

「行きます。」

横島は叫ぶと同時に美神に向かって走る。

「えい」

幽体離脱したおキヌが床から手をだして横島の両足を捕まえた。
とうぜん前に走ろうとしていた横島は、慣性の法則にしたがって前につんのめった。
ばたんとタマモと剣で両手のふさがっていた、横島は床に顔面から突っ込む。

手が緩んだ隙にタマモが横島から脱出する。

「ぐ、ぐぇ〜」

横島が顔面を押さえながら転がる。

「ふ、横島君。まともに相手するだけが勝負じゃないのよ〜〜」

そこから先は一方的な美神のリンチいやいやお仕置きが始まった。

「は〜すっきりした。」

横島がもはや五体満足な場所が無いほどしばき倒すと、美神はやっと満足したのか
おキヌに指示をだす。

「あ、おキヌちゃん横島の馬鹿に解毒薬4人前飲ませてそれで元に戻るはずよ」

「はい」

おキヌはぼろぼろになった横島にヒーリングはせず解毒薬を飲ませる。
最後にさりげなく頭を一回はたくのを忘れない。

今度はタマモを睨む

「タマモあんたはちょっとこっち来なさい。あらいざらい吐いてもらうわよ。」

「は、はい」

タマモは引きずられるように再び事務所の部屋へと連れて行かれると、
今までの事を全て吐かされる。
最初に横島の部屋に行った場面や、キスマークを付けられる場面でひしひしと
プレッシャーを感じたがなんとか耐えた。

結果は油揚げ2ヶ月禁止・・泣きそうであった。



その後、キスマークは消えてしまったが、タマモは鏡を見るたびになんだか
キスマークの痕を探してしまった。

横島はきつねうどんを食べたあたりから美神にしばかれるまでの記憶が無いらしく。
包帯だらけの上に、事務所のみんなから冷たい態度を取られることにしきりに
不思議がっていた。
しかし誰も真相は伝えず。横島は2週間の事をついに知ることは無かった。
ちなみにその時タマモは油揚げ禁止によって妖力が足りなくなり、子狐に戻って
いたので言葉が喋れず横島が聞き出すことは出来なかった。
またちゃっかりタマモは子狐の戻ったのを良いことに、
横島にペット感覚で甘えまくっている現場を見られ、
油揚げ禁止が伸びたのはまた後の話である。

余談であるが例の惚れ薬は事務所のみんなが狙っていたようで、
厄珍が回収にくるまでの間、事務所はかなりぴりぴりしていた。


以上終了〜

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