ザ・グレート・展開予測ショー

素晴らしい日々へ・6


投稿者名:ほんだら参世
投稿日時:(04/ 2/15)

 「大丈夫ですよ。 残された人の気持ちって奴はイヤと言うほど知ってますから。 俺が目指すのは、犠牲の上に成り立つ皆の幸せな日々ってやつじゃあないですよ。 誰も犠牲にせずに成り立つ、皆との素晴らしい日々ってやつですよ。」

なんていうような俺的には、最高にカッチョ良い言葉を小竜姫様に言ってから1週間程がたった。 あれから、自分で決めた通り美神さんの事務所に入った。 その際に、事務所の場所を言い忘れたということで落ち込んでいた唯ちゃんに、出会い頭に抱きつかれたりした。 何で場所がわかったのかという質問に対しては、「美神さん程のGSなら、GS協会に聞けば直ぐに分かるよ。」という言葉を返した。 唯ちゃんはその言葉に、何でそんな簡単な事に気が付かなかったんだろうって様子で赤くなっていた。 同じように心配していたらしいおキヌちゃんも、俺が来たことを喜んでくれた。 美神さんは、その後直ぐに俺と雇用契約のようなものを交わそうとした。 その際に、あの時は唯ちゃんが側にいた事と何とか俺を助手にしようとしてあんな時給を言ったが、今では少し悔しそうにしている美神さんに、いくつかの条件を飲んでくれれば半額で良いと交渉してみた。 これに対しては美神さんは嬉々として受け入れてその条件を受け入れてくれた。 こうして俺は正式に美神除霊事務所に所属する事になった。

「平和ですね〜。」

俺の隣でおキヌちゃんはそんな事を言っていた。

「俺とおキヌちゃんが入社してから、一軒も依頼がきてないからね〜。」

この世界での俺の戸籍の方は小竜姫様がなんとかしてくれると言って実際何とかなったが、その際に年齢を20歳としてしまったので高校に入る事もできない。 最初は勉強なんてしたくないからいいやって思っていたが、2・3日も経つと何となく学校というものが懐かしくなってきた。 原因はここ1週間依頼が無くて暇だということと、この昔の事務所にいると昔を思い出してしまうという事だろう。

「こんなことなら小竜姫様に頼んで、17・8歳ってことにしてもらうんだったな。」

「ん? 何か言いましたか、横島さん?」

「あ、いや、なんでもないよ、おキヌちゃん。」

などという会話を交えながら、俺はおキヌちゃんが入れてくれたお茶を楽しんだ。 なんか、このままだと老け込みそうだ怖いな。

「トランプでもしようにも、二人じゃあ出来ることなんてたかが知れてるし。 美神さんは出かけているし、唯ちゃんは学校だしな〜。 どっちでも良いから早く帰ってこないかな〜。」

俺のその言葉が天に届いたのか、事務所のドアを開けて美神さんが帰ってきた。

「あっ、美神さん。 お帰りなさ〜い。 ・・・あれっ、後ろの方達はどなたですか?」

おキヌちゃんの声に降りかえってみると、そこには美神さんと一緒に何処かで見た覚えの有る二人組がいた。

「ただいま、おキヌちゃん。 後ろの二人は、今回の依頼の除霊対象よ。」



*  *  *  *  *  *

「銀行強盗ですか?」

あの後、唯ちゃんが帰って来るのを待って今回の依頼についての話を聞いた。

「そう。 この二人はね、銀行強盗に押し入ろうとする前に事故で死んじゃったのよ。 その後に、逃げる途中ならまだしも、押し入る前に死ぬなんて納得がいかないっていう理由で成仏が出来ないの。 ちょうどよくその銀行で来週に防犯訓練があるから、その訓練で強盗をやって成仏をしてもらおうってことなの。」

そういやあ、そんな事があったな〜。

「人の道を外さずにすんだのに、わざわざ幽霊になって道を外そうとするなんて。」

唯ちゃんは少し怒り気味だ。 彼女は結構堅物な所があるから、こういうのは許せないんだろうな。

「でも、それって訓練なんですよね? そんなんで成仏できるんですか、その二人?」

「その点に関しても大丈夫。 私達が奪うのは依頼料になるものなのよ。」

「へ?」

「奪ったお金がそのまま私達のものってこと。 これなら二人も強盗って事で納得できるでしょう。」

俺の質問に対して美神さんはこう答えた。 あ〜、そうだった、そうだった。 

「とにかく、すべては1週間後よ。 道具の方はこっちで用意しておくから、皆はそれまで自分たちの判断による用意をしておいて。 あ、おキヌちゃんには頼みたい事があるから、一緒に来てくれない。」

そう言って美神さんはおキヌちゃんを連れて、部屋から出ていった。 唯ちゃんの方はあの二人に説教をしていた、人としてとかいう言葉があっちから聞こえてきた。 巻き込まれんうちに逃げとこ。



*  *  *  *  *  *

そうして、1週間後のAM8:55。

「銀行強盗は閉店前が定石じゃないのか?」

「相手は私達が来ることを知ってるのよ。 ウラをかいて開店直後を襲うの!」

美神さん達が話し合っている横で、唯ちゃんが渡された銃をジーっと見ていた。

「美神さん、これはまさか本物じゃあないですよね?」

「当たり前でしょ。 少し改造がしてあるけど、おもちゃの銃よ。」

流石に唯ちゃんがいるから、本物の銃を用意する事はなかったようだ。

「さあ、開店よ! 横島君、GO!」

「へ〜い。」

俺は美神さんの号令を聞いて、婆さんの変装をしながら銀行に向かった。

ウィーン

自動ドアを通った後に真っ直ぐ受付に向かった。 4 ・ 3

「いらっしゃいませー!」

「あのー、ちょっとすいませんけど・・・」

2 ・ 1 ・ 0

「強盗だっ! 全員手を上げてカウンターの外に出ろっ!!」

俺が行動を起こすと同時に、美神さん達も銀行内に押し入ってきた。

「シャッターを閉めろ!!」

「余計なマネするとぶっぱなすわよ!!」

パンッパンッ

警報を鳴らそうとしたカウンターの女の子に、美神さんは銃弾を打ちこんだ。

ネヴァー

「ひいいいいいい!」

「時給500円でやとった低級霊よ。」

おお、ひさしぶりだな、この弾を見るのも。 しかし、低級霊が何に金を使うんだろう? やっぱ線香とかかな。

「金庫開きました!!」

「30秒よ!! 始めて・・・!!」

しかし本当にプロだよな〜、誰がどう見たって。 手馴れているように見えるのは、おれだけじゃないだろうな。

「29!! 28!! 27!! 警備から警察に連絡がいった頃よ!! 25!!」

あっ、唯ちゃんが頭を抱えてるよ。

「あと5秒!! いくら入った!?」

「3つ・・・!! 約3億!!」

その声に、頭を抱えていた唯ちゃんが反応した。

「3億ですって!! ちょっと美神さん!!」

「よし!! 引きあげよ!! 全員床に伏せて目をつぶれ!!」

美神さんはそう銀行員達に脅しをかけると、外に置いてある車に向かった。

「美神さん!!」

「まあまあ、唯ちゃん。 その話は後にしようよ。」

怒鳴る唯ちゃんを宥めながら、俺も車に向かった。

ファオファオファオ

車に乗って走り去る俺達の後ろで、サイレンの音が聞こえた。

「やったあ!! ポリが来るより先に逃げたぞっ!!」

「やりましたね、アニキー!!」

「ああ・・・。」

「し・あ・わ・せ・・・!!」

2人の霊は満足したのか、満足そうに成仏していった。

「思ったより早く成仏したわね。」

「そんなことより、美神さん!! 3億ってどういうことですか! そんな法外な代金を取る気なんですか!?」

2人の霊の成仏の確認をした美神さんに、唯ちゃんが食って掛かった。

「ああ、その事なら・・・」

バシュッ   ドギャギャギャアア

いきなり車のタイヤがパンクしてスリップを起こした。 なんとか止まった車の上に、黒い全身タイツのようなものを着たねえちゃんが降りてきた。

「動かないで! そこまでよ!!」

隊長らしきねえちゃんが、美神さんにそう言った。

「私達は・・・   バッ   かねぐら銀行特殊窓口部隊!! 異常なまでに安全確実!! それが私達のモットーです!!」

着ていた黒い全身タイツのようなものを脱ぎ捨てながら、隊長さんはそんな事を言った。

「いたた。 まったく、無茶するわね〜。 こんなことをしなくても、このお金はかえすつもりだったわよ。」

「「えっ。」」

唯ちゃんと隊長さんの声がハモッた。

「あ、でも規定通りの代金はもらうわよ。」

「え、ええ。 それに関しては文句はないわ。」

「う〜、美神さん。 疑ってごめんなさい〜。」

隊長さんは困惑しながら、唯ちゃんはしょんぼりしながらそう言った。 怪しい、絶対怪しいぞ。 美神さんがこんな行動をとるなんておかしすげる。 などと思ったが、結局俺には関係無い事だからという事で、俺は俺で趣味に走らせてもらった。

「いや〜。 すごいですね、皆さん。 ところで、この後暇な人います。 よかったら一緒にお茶でもしません?」

俺は挨拶代わりの軽いナンパをしてみた。 しかし、次の瞬間。 一筋の閃光が見えた。

ああ、空が青い。

後に聞いた事だが、俺はあの時唯ちゃんのアッパーカットによって宙を舞ったらしい。 その唯ちゃんのアッパーの軌跡には、虹が見えたと言う・・・・・勝利の虹かよ!!!



*  *  *  *  *  *

「あっ、おキヌちゃん。 さっきの除霊で見なかったけど、どうしてたんだい。」

何とか復活して(確実に美神さんのシバキを超えとったぞ!)、事務所に帰った後に見かけたおキヌちゃんに声をかけた。

「あっ。 横島さん。 さっきは美神さんに頼まれていた事をやっていたんです。」

「へ〜、何を頼まれていたの?」

「ん〜と。 横島さんなら良いかな。 唯ちゃんには内緒って言われてるんですけど、さっきの銀行のこんぴーたで美神さんのスイス銀行の隠し口座に10億円入金してきたんです。」

なんですと! やっぱりと言えば、やっぱりだな。 それでこそ美神さんって奴だよな、ホント。

「どうしたんですか、横島さん?」

「いや、なんでもないよ。 平和だなって思っただけだから。」












どうも、ほんだら参世ございます。 今回の話を見て、「おいおい、最初の依頼はオフィスビルじゃあないのかよ?」と思った方、すいません。 あの話や女子高の話などは今の横島君が加わっている現状では、あっさり終わってしまってしまいそうなのでやめにしました。 他にも結構削る話はあるつもりなんで、この話だけはやってくれって奴があったらいってください。 そう要望はなるべく受け付けるつもりです。 さて、それでは。 また次回にて、さよーならー。

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