ザ・グレート・展開予測ショー

〜『キツネと姉妹と約束と 第1話』〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 2/14)



〜appendix.1 『問いの答えは.....』



「また逢える?」

欠けた記憶の断片は・・・
そう私がつぶやくところから始まる。

蛍火漂う、冷たい夜のことだった。

その人は・・・いつも優しいその人は、寂しげに少しだけ微笑んで・・・

「・・あなたに会うのは・・もうこれできっと最期。」

・・そうして、私の頭を撫でてくれる。

視界が霞んだ。涙だと気づいたのは、しばらく後のことだった。

「ほら、泣かないの・・。あなたは私なんかよりずっと強い子なんだから・・。」


必ずあなたは幸せになれる・・誰より、何より・・幸せになれる。


その人はうわ言のように繰り返した。おまじないのように・・・祈りのように・・・

抱きしめられる私は、心ひそかに思うのだ。

幸せになんの価値があるだろうと・・・
この人が不幸になって・・それで私が幸せになって・・・
それは多分、悲しい幸せだと。



「また逢える?」

・・問いの答えは・・・

いつだって一筋の涙しか生みはしない。
いつだってかすれた景色しか生みはしない。



                  ◇




「・・あのさ、最初に言っとくんだけど・・お前ら絶対・・・すっごく勘違いしてるだろ?」

いつもの放課後のいつもの通学路。
そこで・・・・横島は半眼になりながら嘆息した。

・・唯一、いつもと違うのは彼を取り囲む人ごみ・・横島を中心にして群がる数十人の生徒たちがいることだ。

「往生際が悪いぞ横島!!じゃあお前・・『それ』はどう説明するつもりだ!!」

「・・だからなんでそうなる・・。説明もなにも・・勝手についてきたんだっての・・。」

言いながら、横島は自分の腹部あたりまで視線を落として・・・

・・・・・。

・・・そこには一人の少女がいた。
年のころはまだ10歳を少し超えたあたり。
見事な銀のロングヘアーに白い肌・・そしてどんぐりのようにコロコロとした青い瞳。

・・おそらく、後数年もすれば相当な美人に化けるであろう・・そんな少女が・・

・・・なぜか横島の腰にしがみついている。

「・・うぅ・・。もう、弁解するのに疲れてきた。あのね、お前ら常識的に考えろよ。
 お前らはコイツがオレの子どもだと主張してるわけだが・・・オレは高校生。
 ・・年齢が合わなとかいう考えには至らないのか?」

「・・だって横島(君)だし・・・」

「どんな化け物なんだよオレは!!!」

・・・。
こんな会話。
すると、不意に・・銀髪の少女がクイクイッと横島の服を引っ張って・・・

「ん?なんだチビ助。どうかしたか?」

・・・・・。

「・・・お前・・横島ってゆーのか?」

澄んだ可憐な声に似合わない、乱雑な口調で話しかけてくる。
それに横島は頬をかいて・・・・

「そうだけど・・。う〜ん・・お前もうちょい可愛げのある話し方した方がいいんじゃないか?
 せっかく美人さんなんだし。」

「?そーなのか?」

少女はリスのように小首をかしげる。

・・・。
・・で、そんな様子を見た学友たちは・・

「・・・ロリコンか?」 「ううん・・むしろケダモノよ。」 「・・横島・・あの野郎!」

・・なんて信頼など欠けらも抱いてないようなセリフをのたまって・・・

「・・っは!?ちょ・・ちょっと待て!!誤解だ!!人の話を・・ってギャアアアアアアアアアア!!!」

・・・しょっぱなからこれで、果たして彼の体はもつのだろうか?



〜『キツネと姉妹と約束と その1』〜


「こうしてると思うんだけど・・平穏と退屈って紙一重なのね。」

事務所の一室で・・タマモは言葉どおり退屈そうにのびをしていた。
おやつのいなり寿司を口にしながら(おやつにいなり寿司というのもどうかと思うが・・)
目の前に座る公務員の男へと視線を移して・・・・

「・は・・ハハッ・・ヒマそうだね。」

西条は冷や汗をかきながら笑みを浮かべる。
今、現在の事務所にはこの二人の姿しか見当たらない。

なんでも美智恵から召集がかかったという話で、タマモ以外のメンバーはみなGメン本部へと出払っているのだ。

「・・わざわざ私抜きで・・・か。一体どんな話をしてるの?」

タマモはテーブルの上で茶をすすりつつ、探るような瞳を向けてくる。

「・ご・・誤解だよ。君はこの前の件でしばらく身動きが取れなかっただろ?だから大事を・・」

「ふふっ。こうやってご丁寧に『監視役』までつけてくれるんだから・・
 よほど私の体のことを気づかってくれてるのね。」

「・・・む・・。」

・・・・。
数秒の沈黙。
互いに少し押し黙った後、西条は降参するように両手を挙げて・・

「・・まったく・・。君には敵わないな。」
ため息まじりにそうつぶやいた。

「別に深く詮索するつもりはないけど、私に聞かれるとそんなに都合が悪い?」

「都合が悪いというよりは・・巻き込まれるといったところかな?どちらにしろあまり関わらない方がいい。」

ヒントはこれでおしまい、とばかりに片目を閉じて、西条はタバコを取り出した。
タマモの方も軽く肩をすくめるだけで、これ以上話題には触れようとしない。

Gメン全体の動きはどうあれ、美智恵や西条は信用に足る人物だ。
これもきっと自分のためを思い取ってくれた処置なのだろう。

「・・しかし・・相も変わらず鋭いね。
 横島君はあれで抜けてるところがあるから、君みたいな人がパートナーで丁度いいんじゃないか?」

「・・ど・・どうしてそこで横島が出てくるのよ。」

照れ隠しのためか、一気にお茶を飲み干して・・タマモはそのままつっぷした。

「・・あの鈍感・・・。」

とある事情で療養中の3日間、タマモはタマモなりに・・顔から火が出る思いでアプローチをかけたのだ。

それを・・・
それをあの男はことごとく、ノラリクラリとかわし続けて・・(しかも無意識で)

・・思い出すだけで腹が立つ。


「そういえば横島君にもかかってるだろう?招集。ちゃんと向かってるんだろうな・・。」

「・・どうかしら?除霊委員の仕事で遅れるって言ってたから・・そろそろ学校を出たあたりじゃない?」

                   
                 ◇

「・・・なんだか知らんがどうしてもオレについてくる気か?」

さんざん帰るよう説得したのだが・・・
横島の問いに少女はコクリとうなづいた。


・・・というわけで、現在、彼らは近場の交番へと立ち寄っている。
流石にこのまま一緒にGメンへと向かうわけにもいかず、駐在さんにここ最近の迷子について尋ねているのだ。


「・・にしても・・誰かに似てんだよなぁ・・お前。」
言いながら、横島は首をひねる。

話してみて分かったのだが・・この娘、外見のわりに妙に落ち着いたところがある。
目が据わっているというかなんというか・・・
・・とにかくただの子供というわけではなさそうだ。

「・・似ている?私がか?」

「・・ん?ああ・・まあな。」

退屈そうに宙を仰いでいた視線が、突如、横島へと向けられる。


「・・・それは、ねーさま・・かもしれない。」

「姉さま?」

「・・・横島からはねーさまの匂いがする。」

腕を組みながら何かを考えるこの仕草。
おおよそ愛想などというものとは無縁なこの態度。

(・・ああ、そうか。アイツに似てるんだ)

横島の頭の中には、よく見知った少女の姿が浮かんでいた。

・・妹がいたのか?そんなこと一度も聞いていないが・・・・・・
ちょっと実験してみよう。


「えっと・・チビ・・名前は?」

「・・・スズノ。」

「そうか・・。スズノこれを見てみろ。」

・・なんてことを言いながら横島がカバンから取り出したのは・・油揚げだったりするわけで
(最近、ある特定の人物と組んで仕事をこなすことが多いので常備することにした。)

瞬間、スズノは・・キュピーンという効果音を出さんばかりに目を輝かせる。


「・・・・あぶらあげ・・・。」

「・・ん。油揚げだな。」

先ほどとは打って変わり、少女は面白いぐらい動揺し始めて・・・・
何かを言い出そうとしては引っ込め・・・言い出そうとしては引っ込め・・・・

・・その繰り返しらしい。


「・・・・・・・。」

(うわ・・食い入るように見つめてるよ・・。)

・・これはすごい。
下手をすると妹の揚げ物好きは姉(と思われる少女)を凌駕しているかもしれない。

「あのさ・・スズノ・・。」

「・・・・・・・。」

「まだいくらでもあるから、1つぐらい全然かまわないだけど・・・」

・・・・ピクッ!!

「・・食うか?」

コクリ。


・・・・とまあ、会話と効果音だけで成立するようなやりとりがその場でなされて・・

「?」

・・・そして・・数秒後、異変が起きる。

興奮のあまり、集中力が途切れたのか・・
スズノの頭から獣の耳が・・・背後からは6つの狐の尾が現れて・・・

「へ?は・・・おい!す・・スズノ・・!?」

そして、最後にはポンという音ともに煙が上がり・・彼女の姿は子ギツネへと変じてしまう。


「・・むぅ・・。戻ってしまったようだ・・。」

・・・・・。
・・・・・・・。

「あ〜・・え〜とその・・なんだ・・。やっぱりお前、タマモの妹で決定だ。間違いないわ。」

横島は・・・・
横島は、またも巻き込まれそうな厄介事の予感に、悲しく崩れ落ちるのだった。


〜続きます〜


〜『あとがき』〜

皆様、こんにちは〜そしてお久しぶりです、かぜあめです。
このお話のプロットをまとめるのに、2週間以上かかってしまいました(爆

というわけで『ウェディング』→『聖痕』→ときてこの『キツネと姉妹と約束と』が始まりましたね。

このシリーズは基本的には、ほのぼのハートフル・・後半の方はシリアス&ダークという
・・なかなかアレな展開になっています。
うう・・バレンタイン用の短編も書きたかったんですが・・
どうにもうまくいかず・・・(汗)

・・それにしても、今回は珍しく横島とタマモの絡みがなかったですね。
スズノは自分でなかなか楽しいので、今後レギュラーキャラになったりするかもしれません(笑

今回は西条がメチャクチャ活躍します
・・あと小竜姫さまとパピリオ・・この間のラストで登場した魔神の少女(ドゥルジさま)なんかも出張る予定です。

よければラストまでお付き合いください〜それでは〜

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