ザ・グレート・展開予測ショー

素晴らしい日々へ・4


投稿者名:ほんだら参世
投稿日時:(04/ 2/14)



「不束者ですが、よろしくお願いします。」

 床に三つ指をたててお辞儀をする唯ちゃんを見て、俺は乾いた笑いを浮かべながら、こうなった運命ってやつを呪った。

「誰か助けて。」

うめき声のような小さな囁きが俺の口から出ると同時に、救いの主は現れた。

「ちょっとなに言ってんの、唯ちゃん!!」

その声が聞こえると同時に、美神さんが部屋に入ってきた。 美神さん、いつもは守銭奴の鬼にしか見えないあなたが、いまは如来様に見えますよ。

「何って、今回の責任について話していたんですよ。」

「責任って、あのね唯ちゃ「あなたが唯ちゃんの上司の美神さんですか。 すごい人だって唯ちゃんから聞きましたよ。」」

俺は、唯ちゃんと美神さんが言い合おうとしている所に割って入った。 唯ちゃんは頑固なところがあるみたいだから、下手に言い合って意固地にさせるよりも話をそらせた方が良い。 俺の意図に美神さんも気が付いたらしく、話を合わせてくれた。

「そう言うあなたも、さっきの霊波刀は凄かったわよ。 よかったら、名前を聞かせてくれない。」

「ああ、そういえば自己紹介をまだ一度もしてませんでしたね。」

「えっ、一度もしてないって。 もしかして、唯ちゃんにもしてないの?」

「ええ、する前にああいう状態になってたもんで。」

「あ、あはは、唯ちゃんって普段は良い娘なんだけど、そういうところがあるのよね。」

俺達二人の間に乾いた笑いが流れた。

「で、俺の名前なんですけど、苗字は唯ちゃんと同じ横島で、名前は忠夫。 横島忠夫っていいます。」

「えっ、私と同じ苗字なんですか!」

唯ちゃんはそう言うと、小さくなにやらブツブツ言い出した。 時折、「運命」やら「赤い糸」のような単語が聞こえてくる。 唯ちゃん、君は妄想癖まで有るのかい。そういうのは小龍姫さまだけで十分なんだけどな、俺的には。

「変ね、横島忠夫なんて聞いたことないわよ。 それだけの霊波刀をもったGSなら、聞いたことが有っても良いはずなのに。」

「ああ、それは当たり前ですよ。 俺はGSじゃあ無いですから。(この時代ではね)」

「「ええええええええ!」」

二人とも声が大きい。 それに唯ちゃん、君はいつ妄想から帰って来たんだい。

「忠夫さんは、ここに除霊にきたGSじゃあなかったんですか!」

いきなり呼び捨てかよ!! そういう娘には見えなかったんだけどな、さっきの妄想で何か変な方向に逝っちゃったのかな。

「ここには、修行中の事故で飛ばされただけだよ。 だから、偶然ってわけ。」

その言葉を聞いた唯ちゃんは、「やっぱり運命」などと赤い顔をしながら小さく呟きだした。 もう勝手にしてくれ。

「へー。 あっ、でもそんな強力な霊波刀を持ってるって事はGS志望なのよね。 ならうちで働いてみない。」

今後のことを考えると、美神さんの所で働くべきだよな。 でも、あの時給は勘弁してほしいな、そこら辺は俺の交渉術しだいだな。

「時給は・・・そうね、あなたほどの能力なら無免で助手扱いだとしても、時給8,000円でどう?」

その言葉を聞き、俺はこの世界がパラレルワールドであるという深い確信を得ると同時に本日二度目のプッツンを経験した。



*  *  *  *  *  *

「で、今日はどういう除霊なんですか?」

あの後、俺は唯ちゃんの手厚い看護を受けて気を取り戻した。 またプッツンした所為で、唯ちゃんはますます責任を取らねばと思うようになったらしい。 しかも、唯ちゃんのさっきの妄想の中で変な方向に逝ったらしく、さっきから俺の腕にしがみついている。

「ん、簡単な除霊よ。 ここのホテルの露天風呂に出る霊を払ってくれっていう依頼。 出てくる霊は・・・そうね、この気配から言って、仲間とはぐれて雪に埋もれて死んだ明痔大学のワンダーホーゲル部員ね!!!」

「すごいです、美神さん! 気配だけでそこまで分かるんですね!!」

「いいえ、事前に近くでそういう事故が有ったらしいっていう事を調べておいたの。 霊能者には、ハッタリが重要よ。」

その美神さんの一言を聞くと、唯ちゃんは勢い良くズッコケた。 うん、いいコケだ。

「よその霊能者が聞いたら怒りそうなセリフですね。」

「お喋りは終わり、来たわよ!」

その美神さんのセリフと同時に、目の前に何かが現れようとした。 って、この気配はひょっとして。

「ど・・・どーも・・・」

そう言って出てきたのは、巫女服を着た幽霊。 おキヌちゃんだった。



*  *  *  *  *  *

「それで、あなたは300年前に人柱になった巫女ってことね?」

おキヌちゃんの話を最後まで聞いた美神さんはそう言った。

「はい。 でも、あたし才能無くて、成仏できないし、神様にもなれないし・・・ 一目で私の名前を言い当てた人なら、私をお助けくださるかと思って・・・」

「あんた、そんな事をしたの?」

「ええ、さっき美神さん達に会う前にチョット。」

俺は、苦笑しながら美神さんの質問に答えた。

「でも、やっかいね。 こういう場合は、山の神様になる為に地脈との繋がりができてるのよ。 下手な事はできないわ。」

「そんな、美神さん。 この娘がかわいそうですよ、何とか「できるよ。」」

俺は、唯ちゃんのセリフを遮りながら一歩前に出た。

「できるって、なにをするのよ。」

「簡単なことですよ。 ヒントはさっきの美神さんのハッタリは正解だったってことです。」

そういって俺は窓のほうに歩いていき、声をかけた。

「出てこいよ、ワンダーホーゲル部員。」

そう言うと、目の前に今度は鬚面のいかつい霊が出てきた。

「よ、よくわかりましたね。」

「んーな事はどうでも良い。 それよりお前、ワンダーホーゲル部なんてのに入ってたんだ、山は好きだよな。 山の神様ってのになるつもりは無いか?」

その言葉で、一瞬呆然とした美神さんも理解した様子だった。

「や、やるっす!! やらせて欲しいっす!! 俺たちゃ街に住めないっす!! 遠き山に陽は落ちるっす!!」

「よし。 おキヌちゃんもそれでいいね。」

「は、はい!!」

展開に着いて来れなかったおキヌちゃんも、勢いよく返事をした。

「じゃあ、美神さん。 後は任せてもいいっすよね。」

「最後までやってもらいたい所だけど、唯ちゃんに怒られそうだから、少しは働くとしましょうか。」

その美神さんの言葉を聞くと、唯ちゃんは当たり前ですと言わんばかりに頷いた。 ははっ、本当にえらい違いだな、この世界での俺と美神さんの関係って。

「この者を捕らえる地の力よ!! その流れを変え、この者を解き放ちたまえ・・・!!」

その美神さんの言葉と共におキヌちゃんを縛っていた何かが、ワンダーホーゲル部員に移り変わり、着ている服は登山服から山の神様っぽい服装に変わった」

「これで自分は山の神様っすねーっ!!」

「とりあえずはね、力をつけるにはまだまだ永い時間と修行が必要よ。」

「おおっ、はるか神々の住む巨峰に雪崩の音がこだまするっすよー!!」

そう言ってワンダーホーゲル部員はどこかに去っていった。 あいかわらず、わけわからん奴だったなー。

「これで成仏できますね、おキヌちゃん。」

「はい! ありがとうございました。 このご恩は次の人生でも忘れません。」

「いーのよ、こっちもおかげで仕事が簡単に済んだんだもの。」

「それでは皆さん、さよう「ちょっと待った。」」

あぶねー、多分大丈夫だろうけど一応止めないとな。

「何ですか、横島さん。」

「あー、素朴な疑問なんだが。 君、成仏のしかたってしってんの。」

時が止まった。






あの後の展開は、唯ちゃんが「成仏させてあげなくちゃ。」という意気込みを見せたのを、「人柱なんてものにされるなんていう幸薄い人生をおくったんだから。 少しは楽しい生活って奴を経験させてあげてからにしようよ。」という言葉で説得する以外はほど俺の記憶と同じような事になった。 俺に関しては、助手になるかは修行をしていた所に一度もどってから決めるということになった。 唯ちゃんがごねたが美神さんにも手伝ってもらって、なんとか説得した。 さて、これからどうするにしても、まずは妙神山だ!











毎度どうも、ほんだら参世です。 今回の「素晴らしい日々へ」はいかがだったでしょうか。 今回もかなり強引な所がありましたね。 そこらへんは演出と作者の未熟さの半々です。 後、竹さん。 感想を送ってくれってのですが、まだこの作品の設定で固まりきってない部分が有るから全体に影響が出そうなんで、ちょっと今は他の作品を読まないようにしているんです。 少し送れますが設定固めが出来たら読んで感想を送るんでそれで勘弁してください。 なにぶん初めての作品なんで慎重に行きたいんですよ。 その他、感想を下さった全ての皆さん。 有り難う御座います、皆様の声援が私の指の原動力です。
さて、次回は小龍姫様の登場です。 他にも何人か登場させるつもりなので期待してください。 まだまだ未熟者の作者の作品ですが、皆様に少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 以上、ほんだら参世でした。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa