ザ・グレート・展開予測ショー

非日常(5)


投稿者名:ゴン太
投稿日時:(04/ 2/11)



横島は、ひのめを抱きかかえいつの日にか『お義母さん』と呼ぶことになるかもしれない人に別れを告げる。

「じゃあ行こうか。」

そう言うと後ろにいるおキヌに振り向く・・・。


そこにいたおキヌの顔はブスッと頬が膨れて、その周りに漂う雰囲気はまさに「私、不機嫌なんです!」と言わんばかりで横島はたじろぐ。


「あ〜・・・え〜と、おキヌちゃん怒ってる?」
「べつに・・・・・・怒ってないです・・・。」


口ではそう言っているが言外から感じるプレッシャーは一向に減る様子はない。

・・・ウソだッ!絶対ウソや〜〜。怒ってる、怒ってるよ〜。なんなんだ、いったい俺がなにをしたんや〜〜
横島は慌ててさっきまで自分の行動を思い出しはじめた。



突然だがおキヌは、料理を作るのが好きである。理由としては、みんなが美味しそうに食べてくれるのが嬉しい。特に彼女の大好きな人が本当に美味しそうに食べてくれるから。
決して、決っっして!雑誌で掲載されていた『手料理で大好きな彼をゲット!!』や『男を落とすなら普段からのエサ付けが肝心!』を見たからではない・・・・・・・・・・

―――とにかくおキヌは自分の大切なアピールポイントが奪われたような気がしてイヤだった。

それと同時に横島の良さにだんだんと周りが気付き始めていることにあせる。

・・・“あの”出来事の後、横島さんは変わりました。もちろん良い意味でです。


一つ目は、笑顔が素敵なところ、といっても元々素敵だったんですけど。
時々、なんていうか・・・・包み込むような・・・それでいて強い何かがあるような・・・そんな物が混ざり合ったきれいな笑顔をするんです。


それともう一つは・・というかこれが一番の驚きなんですけど“飛びかからなくなった”んです。
前の横島さんは美人な女性を見ると、たとえそれがクライアントの人でもすぐに飛びかかっていました。・・・結局美神さんの拳で“止められる”事になるんですけど。


・・・・でも、今はそれがないんです。


だから隠れていた横島さんの笑顔が“優しさ”がみんなに伝わってきている。


私が最初に見つけたのに・・・横島さんの優しさを最初に見つけたのは私なのに・・・・!


『私を・・・私をもっと見て下さい!!』


そう、おキヌは心の中で叫ぶが、声には出なかった。今一歩のところで勇気のでない自分が歯痒く感じる。
だが同時に精一杯のアプローチに気付いてくれない横島の鈍さに嫉妬する。


おキヌは俯いていた顔を上げ目の前にいるであろう鈍感男を睨み付ける。横島は必死になっておキヌが怒っている理由を探していた。「・・・じゃない。・・・・・・違う。」とブツブツと呟いては首を横に振る。

おキヌはまだ釈然としないものはあるものの自分の態度一つでこうも情けなく動揺する横島がおかしくて、そしてそれだけ自分が彼の心の中に入り込んでることに嬉しくなる。
その思いと比例するかのように膨らんだ頬はしぼみ、代わりに口の端が持ち上がり笑みがこぼれた。

「くすっ・・・、行きましょうか横島さん。」
「えっ!?・・・あっ、うん。」

横島はさっきまで怒っていたおキヌの機嫌が良くなり突然嬉しそうに笑ったことに疑問に思うがとりあえず彼女の雰囲気が軟化し、無言の沈黙から解放されたことに喜々として返事を返しおキヌと事務所に向かって歩く。







〈PM6:00 美神除霊事務所〉


今この中ではあるセレモニィが行われていた。

【横島忠夫GS見習い卒業 & 正社員おめでとう】
という何とも捻りのない名前の歓迎会だ。

―――ワイワイ、ガヤガヤ―――

事務所内部はなかなかの広さだが、それでも今この中には人がひしめき合っている。

その出席者達は皆、あの大戦を戦い抜いてきた者達だ。

美神が『乾杯』の音頭を取り終えると集まったメンバーは、横島に『おめでとう』と伝える。


「ファリハッ!ほほタッハーひ、ふへこへふふんだへつへほめふんはッ!!(訳:マリア!このタッパーに、詰め込める分だけ詰め込むんじゃ!!)」
「イエス・ドクターカオス。」


「くっ、このままじゃ令子ちゃんが・・・こうなったら後ろからズバッと・・・」


・・・まぁ例外もいるがとりあえず横島も嬉しそうにそれに返していった。




しばらくたった今、此処は凄まじい酒の臭いに包まれていた。

理由といっては『美神』が異様なほどにご機嫌だったから。
そして“いつになく”機嫌の良い美神は尋常じゃないペースで酒を飲んだ。そして“いつになく”酔った。

だから何だ?と思うかもしれないが酔った美神は“絡む”のである。


「こぉらーー!あたしの酒は飲めないのかーー!!」
―――このように。アルコールに弱い者はすぐにリタイアするが、


「ボクは強くなったよ、ママーー!!」
この幼児退行したマザコンみたいになまじ酒に強い奴もいるのでさらに悪化する。こうなると手がつけられない。



何とか無事だった横島とおキヌは悪酔いどもから逃げ夜風に当たっていた。(ちなみにシロは美神にタマモは酒に対する興味で手を出し早々にノックダウン)

「大丈夫か?おキヌちゃん。」

決死の努力で何とか『魔の手』を防いだおキヌに心配そうに尋ねる横島。

「う〜気持ち悪い〜。」

おキヌはどうやら臭いだけで酔ってしまったようだ。口を手で押さえ、横島の肩に手を回し体を預けた。

そうして目をつぶり体を預けていると、横島のぬくもりが嬉しいのか顔色がよくなってきた。

介抱してくれた横島にお礼を言おうと重くなってきたまぶたを開ける。そこには月を見上げている横島がいた。


アルコールと横島によって暖められた頭と体が一気に冷めた。
自然と横島の服をつかんでいる手に力がこもる。

・・・そこにいた横島さんは見たことのない顔をしていた。いつもと違ってなにを考えてるのか解らない


ううん・・・違う、本当は知っている。でも、認めたくないだけ・・・だって


・・・この顔は・・・・・・
・・・・・・この目は・・・・・・



―――ルシオラさんを思い出しているとき―――

「横島さん?」

いつの間にか、自然と声が出てしまっていました。横島さんの顔が、あまりに儚くて・・・どこかに行ってしまいそうで

「えっ?・・・おキヌちゃんもう良くなったの?」
「はい。もう、・・・横島さんは・・・大丈夫ですか?」

言われて気付いたのか横島さんはキマリが悪そうな顔をしました。


ルシオラさん、あなたが羨ましい
横島さんにここまで思われているあなたが・・・・・羨ましい



私の中に黒いものが生まれる。



「横島ぁあーー!!勝負だぁーーー!」

中から聞こえる突然の大きな声で現実に戻された。

「雪の丞・・ありゃ、相当よってんな。」
「・・・横島さん。もう大丈夫ですから行って下さい。」

見られたくない。

「でも・・・・・」
「本当に大丈夫ですから・・・。」
「わかった。ごめんね、すぐ戻るから・・・。」


きっと私の顔は嫉妬に満ちている。

だけど嫌いじゃない。この感情はあなたへの思いを気付かせてくれたから。
“好き”だという証明だから・・・・・・・

貴女がルシオラさんを忘れていないことは・・・今でも好きだと言うことは知っています。



それでもこの思いは止まってくれそうにありません。
だからいつの日にかきっと私は貴女に『こう』伝えます


横島さん、わたしはあなたが



「大好きです。だからそのときは・・・・・」





貴女のそばに――――

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