ザ・グレート・展開予測ショー

首謀者が消えた後で(その4)


投稿者名:ウェスペル
投稿日時:(04/ 2/11)



『ハハハハハ ベルゼブルの本体をとらえられない貴様が何を言っている。くだらん。
どうやら前回不意をつかれ負けたことで貴様を過大評価しすぎたようだ。』

「確かにオレ達じゃベルゼブルの本体を捕らえられない。」 横島は目を瞑り手のひらの文珠に念を込める。


「だからまとめて叩く!!」


横島が文珠を投げる。



文字は




『引』。


『ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』 ベルゼブルの大群がその軽い体重ゆえに次々と文珠に引き付けられる。

「今だ!ピート、雪之丞!!」 横島が叫ぶ。

「ダンピールフラッシュ!!」「喰らえ!ハエ野郎!!」

ピートのダンピールフラッシュと雪之丞の連続霊波砲がベルゼブルの固まりに放たれる。

『ぐがぁぁぁぁ!!ま、またこいつに・・・!?』 その叫びを最期に無数のベルゼブルは消滅した。




「やりましたね!横島さん!!」

「フッ、オレが本気を出せばざっとこんなもんさ。」

「それにしても随分あっけなかったわね・・・デミアンに至っては断末魔の叫びすらなかったわよ。」





そんなことを言って全員が安心している時だった。





<ボコッ!!>


突然、地面から触手が現れ横島を貫こうとする。

「のわぁっ!?」 人間離れした動きでそれを交わし横島は再び臨戦体制をとる。

『ククク・・・よく避けたな。やはり過大評価ではなかったかもな。』

地中から子供姿のデミアンの上半身が薄ら笑いを浮かべ現れる。

「な・・・!?あんたの本体はゼルゼブルと一緒に消えたはずじゃ・・・!?」

『フフフ・・フハハハハ・・・本当に私が浅ましいハエごときに本体を預けるとでも思ったか!?
教えてやろう、私に特定の本体などすでにない!言うなれば私の全てが本体だ!!
そして私には瞬間再生能力がある。つまり私は不死身なのさ!!』


「そ、そんなの嘘に決まってるわ!もし本当ならベルゼブルに本体を持たせたなんていう必要はないわ!!」

『フン、必要はあったさ。
お前らが何とかしてハエを倒すことは分かっていたからな。』

「なんで、それで必要ってことになるのよ!?」

令子は、分けのわからないことを言うデミアンに対し苛立ちを憶える。


『貴様らごときに分かってたまるか!不死身の殺し屋とも呼ばれていたこの私が
 たかが人間ごときに翻弄されあまつさえ殺されたこの屈辱を!!
 それに、そのバカが自給たったの255円だと!?ふざけるな!!労働基準法違反も甚だしいぞ!!
 だから、「ハエを倒せば私も消える」という希望をもたせたやったのだ!打ち砕くためにな!!
 絶望の先に待っていたのはさらなる絶望だった!面白い話だろ!!』

目を血走らせデミアンが熱弁をふるう。



「魔族にここまで言われるオレの給料っていったい・・・」

そうまではっきり言われてしまい、つい今までの自分の待遇を思い返してしまう横島だった。



「更なる絶望ですって? フッ、笑わせないで。
それぐらい乗り越えられない私じゃないわ!!」

横島を完全に無視した令子により振り下ろされた神通鞭がデミアンを両断する。


『ククク・・・そうやって足掻くがいいさ。
 そのほうが不可能だとわかった時の絶望が大きくなるからな!!』

その言葉が終わるのとほぼ同時に地中から無数の触手が出現した。










「そんな!? デミアン程度の魔族じゃそんなことできるはずないわ!!」 予想外の事態に美智恵が焦る。

「そんなこと言っても現に・・・!!」 オロオロしながらおキヌが言う。

『と、とにかく横島先生達に助太刀するでござる!!』 そんな中、シロが霊波刀を構え言う。

「そうね。いくら再生能力でも限界はあるはず・・・みんな行きましょう!!」

その後、バスの中にいた行動可能なGS達は令子達を助けに向かった。



タマモを除いて


「どうしたんじゃタマモ。おぬしは行かんのか?」 マリアを改造しながらDrカオスがたずねる。

『えぇ。ちょっと腑に落ちない事があって・・・』 タマモはすぐに言葉を返す。


『・・・ねぇ、Drカオス。ちょっといい?』







「チッ、いい加減にくたばれ!!」 雪之丞の連続霊波砲がデミアンの触手を消し飛ばし

『くらえ、化け物!!』 シロの霊波刀がデミアンの上半身を切り裂く。

「退いて!シロちゃん!!」

そして美智恵が、シロが退くのも待たず『精霊石ロケットランチャー』をぶっぱなす!


<ドゴォォッォン!!>


「こ、殺す気でござるかぁ!!」

(美智恵の計算どおり)すんでのところでシロは飛びのき、デミアンだけが爆散する。

「流石にこれをくらえば少しは・・・」 その美智恵の憶測はいとも簡単に破られた。


爆炎の中から無傷の状態で現れたデミアンによって。


『道具なんかに頼らず本気で来たらどうだ・・・?
もっとも・・弱点無き今の私を倒せる者などいないがな・・・。』

「まさか、これをくらって無傷とわね・・・。」

デミアンは攻撃を仕掛けようともせず暫し沈黙する。

『さてと・・・そろそろ貴様らのその顔を絶望に染めてやるとするか・・・。』

デミアンがそう言った直後、新たに現れた触手が一直線に伸びる。


その先にあったのは、




「え・・・?」


少しでも皆の力になろうと必死に心霊治療を行うおキヌの姿だった。



「危ない!!」<ドン>「キャッ!!」 とっさに、心霊治療されていたタイガーがおキヌを突き飛ばす。

<ザシュッ!>


「ぐっ・・!」 それにより触手はおキヌから外れ、僅かにタイガーの腕を切り裂くにとどまる。

「「『おキヌちゃん!!』」」『運のいい奴め・・・だが次で終わりだ!!』

令子・横島・シロなどがおキヌを守ろうと駆け寄る。
が、それよりも早く、倒れて動けないおキヌに新たな触手が迫る。

おキヌは迫り来る触手を前にして反射的に目を閉じる。


そして、まさに触手がおキヌを貫かんとした時だった。







『動くな!!・・・これが何かわかるでしょ。』

突然のタマモの言葉にその触手の動きが止まる。



その手に握られていたのは




「「「デミアンの本体!?」」」 その場にいた全員が驚く。


『おかしいと思ったのよ。さっき、もしベルゼブルが車に積んである爆発物でも使えば一網打尽に出来たのに
まるで、『近くにある大切な何か』を巻き込まないように戦ってるのを見てね。』

『ぐっ・・・なぜ私の正確な場所がわかった?』

『私やシロの嗅覚が働かないようにわざわざ燃料タンクに忍び込んでくれたところ悪いんだけど
改造中でもマリアのレーダーは作動するのよ。』

「よくやったわ、タマモ!!
さぁデミアン。あんたの知ってる事を教えてもらおうかしら?」


『・・チッ。ここでは心霊兵器の開発および上級魔族の再生を行っている。』

デミアンがいかにも不本意そうに口を開く。

「そんな事はもうわかってるわ。
私達が知りたいのは、その種類とあんたの御主人の目的それと西条さんの安否よ。」

『フンッ・・・私はただおまえ達を殺すために雇われただけだ。そんな事までは知らん。』

「チッ・・捨て駒だったか・・・。」


『・・これで知ってることはすべて話した。今なら殺さないでやるから本体をかえせ。』

令子の言葉に思いっきりこめかみをヒクつかせてデミアンが言う。



ちなみに、


下等な人間ごときがこの私をこけにしやがってぇ・・・
本体をかえした瞬間串刺しにしてくれるわぁ!!


とか、考えちゃいながら地中に残っている肉塊を禍々しいトゲにかえ全員に狙いを定めていたりする。

「OK・・・タマモもういいわよ!!」


バカめが!死ねぇぇ!!デミアンが心の中で叫ぶ。




そして次の瞬間







<ボッ>


『ヘ・・・?』



炎に包まれる本体とそれに連動して炎に包まれるデミアン・・・


『き、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』 燃えてゆくデミアンが叫ぶ。

「横島クンはともかく、おキヌちゃんや、ましてやこの私を殺そうとして生きていられるとでも思っていたのかしら?
それに・・どーせだまし討ちでもする気だったんでしょ。お互い様よ!!」

令子が勝ち誇った顔で当然と言わんばかりに言う。



『サ、サギだぁぁぁぁ!!納得いかぁぁぁん!!』

その(イヤな)断末魔の叫びを残して、デミアンは消し炭として崩れ去った。







彼女をよく知る一同は

「魔族にサギとか言われる美神さんって一体・・・?」 とはすでに思う気にもならなかった。










「はぁ・・・デミアンをたおしたのは良いんですけど、これじゃもう車は動きませんね・・・。」

燃料タンクに穴があき、ガソリンが漏れてしまっている車を見て横島が言う。

「ま、どの道こうなるんだろうし諦めて歩いていくか・・・。」

「そうね・・・車から必要なものだけもっていきましょう。」


しばらくして・・・


「・・・とりあえず武器はこんなもんでいいかな。じゃ、横島クン、シロこれをお願い。」

「わかりました。」『わかったでござる。』 横島とシロがそれぞれ指差されたリュックを背負う。

「ずいぶんかかったな・・・こっちはとっくに準備できてるぜ。」

待ちくたびれたとばかりに雪之丞が言う。

「あんたはもともと道具を使う気がないんでしょうが!」

ほとんど何も持っていない雪之丞に令子は反論する。

「ま、オレが使ったところで大した効果は期待できないからな。」



「カオスさん。マリアの改造はまだかかりますか?」

そんな彼らのやり取りを無視して美智恵はDrカオスにたずねる。

「すまんがもうしばらくかかりそうじゃ。先に行ってくれ」


Drカオスが答えたちょうどその時だった。



何かが一直線に彼らの上空に飛んでくる。



「何・・・まさかもう次の敵!?」 令子が神通棍を構える。

「いえ・・・違うわ。」 が、美智恵はそれを手で制す。

「よく来てくれたわね。魔鈴さん。」

そして、空から降りてきた主―魔鈴めぐみに話し掛けた。


「遅れてすみません・・ちょっと魔法薬の材料を調達していて・・・
 そんな事より・・・西条先輩が生死不明って本当ですか!?」 

いきなり血相を変えて魔鈴が言う。

「・・その確認と事件の解決に今から行くところよ。
 かなり危険な事になるだろうけど協力してもらえないかしら。」

「もちろんです!世のため人のため、そして西条さんのためにもがんばらせてもらいます!!」

その言葉のあと令子がなぜか引きつった笑いを浮かべていたのはご愛嬌。

「歩きならこの森を突っ切ったほうが早いわ、ついてきて!」


こうしてDrカオスとマリアを除いた一同は美智恵を先頭に研究所へと向かった。





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