ザ・グレート・展開予測ショー

続々々・GS信長 極楽天下布武!!


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 2/ 7)

露と墜ち
露と消えにし
我が身哉

浪花の事も
夢の又た夢















武田総合病院での一件から,一夜明けて。
日曜日。
藤吉郎は,例によって重治に叩き起こされた。
「今日は近場で済ますんだぞっ!?」
「はいっ!」
「近場ってのは,三里以内だからな?」
「う……分かりました……」
「『う』って……」



四時間後,織田除霊事務所。
「着いたでござるよ,先生」
「……あのな」
「はい?」
「三里以内ってのは,半径三里の中ならから出るなって意味じゃなくて,走る距離が三里以内って言うつもりで言ったんだけど……?」
「え,あ〜……そうなんですか!?気付かなかったでござるよ〜」
「……ホントに?」
「本当でござる!」
「……」
「ふむ,良うやるのう」
「天回」
「良く身体が持つものじゃのう」
「あー,ホント。自分じゃひ弱だとか思うんだけど」
「まあ,現代は戦国時代とは違うからのう。単にお前が,底抜けにお人好しなだけかもしれんがな」
「そうでもないよ」
「ん?そうか」
「あんたの事,殺したし」
「そう言えばな」
「……って,でもあんたの幽霊が居るって事は,此処は俺達の居た時空と違う訳?」
「いや,そうではないぞ」
「と言うと?」
「ふむ。実を言うとな,お前達に殺されたあの時,儂の霊体もお前達と共にタイムゲートに吸い込まれたのじゃよ」
「……全然気付かなかったよ?」
「まあ,あの時のお前達には霊能力等無かったからの」
「そっか。で?」
「で,石川五右衛門と共にあれから三十年程後の時代へ落ちたのだよ。何故か霊体が異常に安定しておったでの,暫く彷徨うていたら,山崎の戦いで敗死した明智光秀の死体を見つけたのだよ」
「十兵衛様の……?」
「……その辺は後で歴史書でも読め。兎に角だな,その明智光秀の身体と,儂の魂は波長が非常に合ったのじゃよ。それで,その身体を拝借した訳だ。……自分でも,何故その様な事をしたのか分からんがな。その後,徳川家康に拾われ,彼の政治顧問として生きた訳じゃ」
「……竹千代様のねえ。相変わらず,底知れぬお方だなあ」
「そう言うお前達も,こうして儂と普通に話しとるではないか」
「あー,そうだねえ。まあ,お前,友達いなさそうだし」
「……余計なお世話だ。天才は,何時の世も理解されぬものよ」
「自分で言ってて,悲しくなんない?」
「五月蠅い……」
「所で,何で彼処(陸軍の研究所)に居たの?」
「ふむ……。まあ,色々と心残りだったからだろうな。家康は儂を信用してはくれたが,研究や執筆はさせてくれなかったでな」
「ふうん……」
相変わらず訳の分からない奴だが,取り敢えず藤吉郎の嫌いな“猿”には分類するべきでないらしい。
「あ,来てたの。日吉」
「ヒナタ」
今日は日曜と言う事で,ヒナタ(とヒカゲ)も朝から出勤している。
「女狐は,未だ寝てるでござるか?」
「官兵衛ちゃん?うん,未だ布団の中だと思うけど」
「ははは。野良狐はだらしが無いでござるなあ」
「殿は?」
「信長様?あの方はアレよ。ほら,デート」
「ああ,濃姫様と」
「そう。信長様も,奥方には敵わないわね〜」
「だね……」
「ま,そう言う訳だから今日はそれ終わる迄――多分夜迄ね,お休みだって」
「へーい」
「で……さ。日吉」
「何?」
「如何せだから,私達もどっか行かない?」
「どっか?」
「あ,先生。それなら拙者と一緒に……」
「駄目よ,半兵衛ちゃん。じゅ・ん・ば・ん!」
「くぅーん……」
「ええっ!又た走るのぉ!?」
「違うわよ!」
「でも,だったらみんなで行けば……」
「私は二人で行きたいの!ね!?」
「は……はひ……」
ヒナタ……,何か恐い……。
「あ,でも……」
「心配するな。急な依頼が有ったら,電話してやる」
「……何か,いやに優しいね?」
「仕事は,きっちりやらねば気が済まぬ性分なのじゃ。何事もな」
「だからって,時空移動とかないでしょ……」
「……まあ,それを抜きにすれば,お前を嫌う理由も無いでな」
「ああ,そう」
「よしっ!じゃ,善は急げよ。行くわよ,日吉っ!」
「えっ,今すぐ?」
「如何せあんた,お洒落なんかしないでしょ?ほら,行きましょ」
「如何せ俺は百姓の小倅だよ……」



同じ頃,東京デジャヴーランド。
地下,メイン・コントロールルーム。
「――この遊園地が極度に電子化されているのは分かったわね?地上の遊園地を支える為に,地下では更に大掛かりな設備が活動しているの」
そう語るのは,I.C.P.O.超常犯罪科(通称オカルトGメン)の西条鍋子捜査官。
信長の父,織田信秀に師事し,ロンドンの留学し彼の地のオカルトGメンで輝かしい実績を残した才女。一年程前に,日本にオカルトGメンの支部が出来た折,其処に配属される形で帰国していた。正にオカルト業界のエリートである。
「デジャヴーランドの入場者は,一日平均二万人。その全ての面倒を,地下施設が見ている訳ね。所が――」
その台詞とタイミングを計ったかの様に,オペレーターの一人が監視カメラの画面を変えた。
「此奴を見て」
「此奴ぁ確か……ボガード(性悪な妖精)?日本では珍しいとかって言う……」
信長がそれを見ると,其処には,木で作った槌の様な物を持った,人の顔程度の大きさの妖怪が居た。他に比べ異常に大きい頭には,小さいが角も見える。
「此処は世界的に有名な遊園地だし,言わば毎日お祭りをしている場所でもあるわ。あの手の妖怪は,そう言う“気”に惹かれて発生するの。――今の所,大した被害は無いけど……」
「確か,昨日読んだ本に拠りゃあ,ボガードは悪ふざけや破壊工作が趣味って……」
「ええ。今すぐ此処を閉鎖して,退治するべきね」
「退治はして頂く。だが,閉鎖は出来ませぬなあ」
「何故?」
「麿のデジャヴーランドの使命は,お客様に完璧な夢を提供する事じゃからして,其処には一片の曇りもあってはならぬ。妖怪が出現して閉鎖等,デジャヴーランドに有ってはならぬのじゃ」
そう力説するのは,株式会社・日本デジャヴーランドの創業者にして現社長,今川義元である。
落ちぶれた旧華族の家に生まれながら,一代で日本は疎か世界のレジャー企業の重鎮たる『日本デジャヴーランド』を築き上げた大経営者だ。そこはかとなく雅な喋り方なのは,生まれによるコンプレックスの所為である。
「何としても,極秘裏に処理して頂きたい。その為なら,金に糸目は付けぬぞよ」
「デジャヴーランドは巨大企業だから……。私にも,警視総監から圧力が掛かっててね」
「けっ。下んねえ……」
「……は,良いんだけどさあ」
「ん?何だ,帰蝶」
「何だじゃなくて。なーんで私達,こんな所に居んの」
そう。デートに出た筈の信長と帰蝶は,何故か鍋子と一緒にデジャヴーランドのコントロールルームに居た。
「ボガートを探して監視カメラの映像を覗いてたら,偶然貴女達を見つけてね。“こんな所”に世界トップクラスのゴーストスイーパーが二人も居るんですもの。ご協力願うのは当然の事でしょう?」
「そんな事言って,私達のデートを邪魔したワケ!?」
「あらあら,邪魔なんて。こんな真っ昼間から“こんな所”に来てる暇なスイーパーさんに,お仕事回してあげようとしたんじゃないの」
「それは如何もご親切に。でも,こんな程度の霊障に民間スイーパーの手なんか借りてちゃ,只でさえ殆ど無いオカG(オカルトGメン)の信用が又た無くなるんじゃなくて?」
「おい,お濃……」
信長の諫める声等,完全に無視して帰蝶が続ける。
「ああ,そっか。オカGは働かなくても給料貰えるんでしたっけ。じゃあ,信用なんか無くても平気ですね。流石は道楽公務員」
「ええ,まあ……。手が後ろに回る様な,汚い仕事は引き受けなくてすみますしね。例えば,何処かの呪い屋さんが一週間前に引き受けた仕事の様な」
「ギクッ!」
「変死と言う事で捨て置かれてるみたいですけど,警察やオカGがその気になれば,“彼女”の身元の特定もすぐでしょう」
「ほほほ……。そうねえ,警視庁と言えば私も“お得意様”だから。是非,頑張って欲しい所ですわねえ」
「ほほほほほ……」
「ほほほほほ……」
皮肉と恫喝の応酬である。
「こ,此奴等……」
「と・に・か・く!私達は他に用が有りますので。此処で帰らせてもらいますわ,おばさん!」
「お,おばっ……!?私は未だ,二十九よっ!」
「ええ,“私達”より八つも年上ですわねえ。そろそろ結婚を焦る年かしら?少なくとも,他人の男の愛人なんてやってる場合じゃないですよね」
「貴方ね……!」
「信長は,私が先に手ぇ付けたんだからね!?お・ば・さ・んッ!」
「目を付けたのは私が先ですっ!」
「だから如何した,このショタコン!」
「黙りなさい,小娘ッ!」
「……おーい……」
「この者等に任して,本当に大丈夫なのかのう……」
思わず漏れた義元の呟きは,至極妥当なものだった。



一方,藤吉郎とヒナタは……
「馬っ鹿ねー」
「そう言うなよ」
「馬鹿以外の何者でもないわよ。朝ご飯も食べずに十数里を全力疾走だなんて」
「御免……だからさ。どっかで飯食わせてへえ〜」
「仕ょうが無いわねえ……!じゃあ,丁度其処にレストランがあるから,其処は入りましょ」
そう言う訳で,近場のレストランへ入る事にした。

カランカランカラン……
「いらっしゃいませ〜……あら?豊臣さんに時読さん」
「・……」
「?如何かしましたか。私の顔に,何か付いてます……?」
そのレストランの女店主の顔は,二人――特に藤吉郎には馴染み深い顔だった。
「え……ま,万千代様!?……じゃ……ない,よ……ね?」
「いや,違う……でしょ?だってこの人,女の人だもの……」
丹羽万千代――後に惟住長秀と名乗った男である。……いや,彼に良く似ていたのである。長秀に,良く似た妹がいたらこんな感じだろうか。
「如何したんですか?様付けなんて。……ああ,そうか。お二人とも記憶をなくされたんでしたっけね」
「えっと……で,貴方は……?」
「はい。私はこのレストランの主で,魔女の万千代めぐみと言います」
「ま,“万千代めぐみ”ぃ!?」
「そんな無茶な……」
「無茶とは?」
「いや,だって『ま』しか合ってな……」
「何言ってんの?ヒナタ……」
「いや……」
そう言えば,店の前の看板には『魔法料理・万千代』と書いてあった。
「しっかし……」
「何?」
「糸目なのに美人てのも凄いね……」
「あら。お上手ね,豊臣さん」
「いや,世辞って訳じゃ」
「くすくす。嬉しいですけど,可愛い彼女の前でそう言う事言っても言いんですか?」
「え?」
「良くないです!」
「いだだだだっ!何すんの,ヒナタぁ〜?」
藤吉郎が激痛を感じ隣を見ると,ヒナタが思いっ切り足を踏んでいた。
「ふんっ!」
「あらあら……」

開店時間直後と言う事からか,客の座っているテーブルは少なかった。
「一益様に続いて,万千代様迄……」
「いや,だからたまたま似てるだけでしょ?もしかしたら生まれ変わりとか言う事も有るかも知れないけど,気にしたって仕ょうが無いじゃない」
「まあ,それはそうだけどね」
テーブルに着きそんな話をしていると,猿がメニューを持ってきた。
「いらっしゃいませ。メニューを如何ぞ」
「うわ!猿が喋った!?」
「て言うか,サスケ!?」
「サスケが何かやらかしましたかー?」
「万千代様。いや,そう言う訳じゃないんすけど。此奴が知り合いの猿に似てたもんで」
「て言うか,喋っ……!」
「ああ。彼は私の“使い魔”なんです」
「使い魔?」
「ええ。東洋風に言うと,要するに式神みたいなものです」
「式神ってーと,あの五右衛門みたいな?」
「五右衛門……?ああ,鬼道さんの。ええ,そんな感じですね」
「へえー」
「で,何になさいますか?」
「えっと……分かる?ヒナタ」
「私に分かる訳ないでしょ。何でも良いんじゃない?」
「う〜ん……。万千代様,オススメのメニューとか無いすか?」
「どれもオススメですよ。ウチの料理は薬草やハーブを使ってるから,体に良いですよ」
「はあ……」
「うーん。でも,こういう外国の料理ってやっぱちょっと慣れないなあ……」
「おいおい,何て事を……。いや,俺もだけど」
「ウチはそれ専門ですからねぇ……」
「あ,いや。万千代さんの料理が嫌って言ってる訳でなくて……」
「そ,そう。そうですよ」
「くすっ。分かりました。じゃあ,何か適当に作って持ってきますね?」
「すいませーん。お願いします」


「有り難う御座いました〜。又たのお越しを」
カランカランカラン……
「っふー。腹も膨れた事だし……」
「如何する?」
「如何しよっか」
「そう言えば,事務所でこんなの見つけたんだけど」
「『東京デジャヴーランド招待券』?……が,二枚。しかも,今日迄だし」
「うん。今日迄なのよ」
「ふーん。……で?」
「……折角だから,行く?」
「うん,行こうか。折角だから」
さて,腹ごしらえを済ませた藤吉郎とヒナタは,折角だからデジャヴーランドへと向かった。



「ったく,折角のデートだってのに……」
東京デジャヴーランド地下設備内エアダクト。
「あの年増,呪ってやろうかしら。こちとら,禿以外の警察関係者の髪の毛は全部コレクションしてあんだからね?」
本人に聞かれたらまずい様な事を,“呪術マスター”小笠原帰蝶が愚痴っていた。
「っ!見つけたッ」
バキッ
其処で,目標のボガードを発見した帰蝶が,金網を蹴破って飛び降りた。
「キュルルッ!?」
近接戦闘は,“呪い屋”である帰蝶の得意分野ではない。帰蝶の一撃は,気付いたボガードに避けられ床を叩いた。
「行ったわよ,信長!」
「任せろ!」
ボガードの進路を阻む様に,信長が現れた。
「キュ!?」
「是非に及ばず!」
バシィ!
「仕留めた?」
「応」
「でも,何?その決め台詞」
「……何でも良いだろ?何となくだ」
「何となくねえ……。ま,良いわ。これでデートに戻れるわね」
「おいおい。こんな事が有った後に,未だこんな所で遊ぶのかよ」
「勿論!」
「はあ〜〜。まあ,良いけどよ」
帰蝶の方は,マジでそっくりだな……。


一方,デジャヴーランドに入った藤吉郎とヒナタ。
「て言うか……入場券は有っても,自腹なんだよな……」
「如何せなら,一日券とかフリーチケットとかが欲しかったわね……」
「ま,贅沢言っても仕ょうが無いよ……。お金勿体ないし,適当にその辺ぶらつこう」
「そうね……」


再びメインコントロールルーム。
「終わったわよ。もう帰って良い?」
「待って。未だよ」
「あ?んだよ,もうボガード片づけたから良いだろ」
「……ボガードは二鬼いる事が判明したの」
「E―17ブロックでシステム異常発生!」
「て事は,もう一匹いんのかよ」
「セッサイ4号が『決して口にしてはいけない台詞』を連発しています!」
「ぬううっ!」
「……顔,恐ーぞ。義元のおっさん」
「モニター出します!」
オペレータが,監視カメラの映像を切り替える。
「あれか……」
「って,あのからかわれてる奴等,猿と黒巫女じゃねーか。あんにゃろ,俺が仕事してる間にイチャつきやがって。猿のくせに生意気な」
「……別に良いじゃない?豊臣君が何しようとさ」
「るっさい」
「それに,如何せ私達もすぐデートに戻るんだし……」
「そうね。此奴を退治し終わったらね」
「くっ……!このっ」
「ふふふ……」
「……って,おい。猿の野郎がやっつけちまったぞ」
「へ?」
「あ,じゃあ私達はもういいですねっ。行こ,信長」
「あ,ああ……。んじゃ,義元のおっさん。報酬は指定の口座にって事で」
「承知したぞよ」
「よーし,目一杯遊ぶわよっ!」














「……ちっ」

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