ザ・グレート・展開予測ショー

続々・GS信長 極楽天下布武!!【午後の部】


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 2/ 4)

織田除霊事務所,総従業員数・3人と2匹と1霊。
かくも平和な土曜の昼下がり。

















……は,サイレンの音で突如破られた。

ピーポーパーポー……

「……?何だあ?」
「ふむ……救急車だの」
「救急車?天回,何だよそれ」
「怪我人や病人を,医者の所迄連れて行くものじゃよ」
「ふーん……」
「……は,良いんだけどさ」
「仔狐,如何した?」
「ウチの前で止まったよ?救急車」
「え?」

間も無く,救急隊員が部屋を訪ねてきた。
「すいません,ゴーストスイーパーの織田信長さんですね?」
「お,応……。そうだが?」
「付いてきてくれませんか?」
「……?そりゃ又た何で」
「……それが,貴方の同業者の方に貴方をお連れする様言われまして」
「同業者あ?誰だよ」
「さ,私共では其処迄は……。その方も救急車に乗っておられるので,詳しくは其方からお願いします」
「お願いしますってお前な……」
「良いから,早く!人命が掛かってるんです」
「お,応……」
「私達も行くの?」
「ふむ,恐らく仕事じゃからの。この世界の常識も満足に知らぬ信長を,一人で送り出すのもまずかろう」
「仕様が無いわね……」

信長達が言われるままに玄関迄出ると,其処に半ドンで帰ってきたヒナタと,散歩から帰ってきた(何と,愛知県から三時間程で帰ってきたらしい)藤吉郎に重治も居た。
「おう,猿。子犬にオカルト女も」
「オカルトって……」
「殿。何の騒ぎですか?これ」
「いや。良く分かんねーが,お前達も来い」
「はあ,御意に……」


ピーポーパーポー……

信長達を乗せ,救急車は走り始めた。
其処で,信長達を待っていたのは……
「信長君信長君信長君〜〜〜〜!」
「吉乃!?」
涙を浮かべた,六道吉乃だった。
「信長君〜〜。ぐすっ,ひくっ」
「な,何だよ。何事なんだ?」
「うえ〜ん……」
「ちょっ……ちゃんと話せよ。おい」
吉乃に泣かれる等,“前の世界”では滅多になかった事だ。信長は,らしくなく狼狽えていた。
「信長様もああ言う顔すんのね〜……」
「まあ……吉乃様そっくりだからね……」
「……んだよ,誰か如何したのか?泣いてちゃ分かんねーだろ」
「違うの〜〜!違うの〜〜!」
「んじゃ,何だって……」
「ややこしい仕事頼まれたから手伝って欲しいの〜〜。一人で心細かったわ〜〜」
……………。
信長は転けた。走行中の救急車の中で。
そして,同時に思った。やっぱ此奴は吉乃じゃない,と
「そんだけの事で,いきなり人をサイレンならしてる救急車に押し込んで泣き喚いてたんかいっっっ!何事かと思ったじゃねーか!!!!!」
「ああ〜〜,怒ってる〜〜!」
「当たり前だっ!」
「まーまー,殿っ。取り敢えず話を聞いてみましょうよ」
「有り難〜〜,豊臣君〜〜」
「いえ……」
「……」
別人と判っていても,“前の世界”の吉乃と声も名前も名前さえも同じ吉乃に,きつくは怒れない信長である。
「……ちっ。で,何なんだ?」
「原因不明の昏睡で入院してる人がいるのよ〜〜。でね〜〜,何かの霊障じゃないかって事で私が呼ばれたんだけど〜〜。調べてみたら……」




「我々は何だァーーッ!?」
「武田総合病院でありますッ!!」
「武田総合病院とは何だァーーッ!?」
「最高の病院でありますッ!!」
「我々の敵は何だッ!?」
「怪我と病気でありますッ!!」
「怪我と病気とは何だッ!?」
「道端の糞でありますッ!!」
「道端の糞はどォするッ!?」
「除く!!除く!!除く!!排除するーーーッ!!」
「風林火山の旗はーーーッ!!」
「早期治療,風の如しッ!!」
「快適な事,林の如しッ!!」
「医の道への情熱,火の如しッ!!」
「治療ミスゼロ記録!動かざる事,山の如しッ!!」
「優秀優秀優秀ッ優秀ゥウーーッ!!」

信長達を乗せた救急車は,近くの『武田総合病院』へと乗り付けた。
「……信玄のおっさんに武田軍団!?」
「又た,そっくりさん……?」
「……しっかし……」
「騒がしい病院もあったもんじゃのう……」
「うーん……」
「此処は何時もこんな感じよ」


「……で,如何かな。信長君〜〜」
「……て言うかな」
「うん〜〜」
「記憶無くしてる俺等に,呪いの解き方なんて分かるかアアッッ!」
「え〜ん。怒っちゃ嫌〜〜,信長君〜〜」
「……ッ」
昨夜からピクリとも動かない患者。医師によると,医学的には何も問題はなく,ただ寝ているだけらしい。
「勉強してたのではないのか」
「るっせ,糞坊主!あんなちこっと本読んだくれぇで如何しろっつーんだ」
「ふーむ……」
と言う訳で,速攻で行き詰まった信長達。
「……あの〜,殿?」
「何だよ,猿?」
「此処はやっぱ,他のゴーストスイーパーを呼んでみるしか無いんじゃないですかね?」
「他の……?」
「え,ええ。同業者って人に,何人か会いましたし」
「ふん……!吉乃と同じ手ってのが癪だが,他に無えか……」
「ええ〜〜,そんな事言わないで〜〜。酷いわ〜〜,信長君〜〜」
「あのな……ッ!」



「……敵は,織田信長を雇った模様です」
「……そう。ご苦労様,女華」
「はッ……」
竜穴。
万物を構成する“気”の集まる所。故に,呪法の類を施すのにも,適した地と言える。
とある竜穴。其処に魔法陣を描き,その中央に立つ女が居た。
彼女こそ,今回の霊障の正体。最高の呪術師である。
「ですけど,大丈夫ですかいノー。帰蝶サン」
「何がよ,マエダー」
「織田サン相手に」
「何言ってんのよ」
「いや,でも織田サンは……」
「良いのよ。恋人だろうがフィアンセだろうが,商売敵には変わらないんだから」
「はあ」
「それに……」
「それに?」
「あの浮気者に,一泡吹かせてもやりたいしね」
「え……」
「全く,私という者がありながら……」
「……ワッシは,まつサン一筋でいきますケン……」
「吉乃に味方して,私の敵に回るなんてとんでも無いわ!」
「でも,彼方は呪いを掛けてるのが帰蝶サンとは知らないんじゃ……」
「その位,信長なら判る筈よッ!」
「でも,商売敵には変わらないってさっき自分で……」
「……その位にしときな」
「女華さん……」
因みに,小笠原GSオフィスの諜報員・氷室女華は,“向こうの世界”の帰蝶濃姫の侍女・女華と瓜二つだったりする。
「見てなさい,信長アッッ!」
「……」
「……て言うか,信長サンは記憶喪失で……」
「言うなって,もう……」


再び,武田総合病院。
「……で,俺が呼ばれたって訳かい」
「はあ……」
「な,長政……?」
「あ,信長さん。ご無沙汰してます」
浅井長政は,恋人である小谷の影響か,信長を異常に慕っている。
が,信長から見れば,妹婿でありながら自分に背き窮地に追いやった憎い仇だ。いや,そっくりさんなだけだが。
「長政,手前ーーーーッ!」
「うわーーッ!何すか,信長さん」
「と,殿……」

「……結論から言って」
「……」
「俺じゃ無理っすね」
「何でえ,使えねえ」
「んな……。其処迄言わなくても良いじゃないすか……」
「るせえっ!又た杯にすんぞっ!?」
「???」
「と,殿……。何があったか知らないすけど,別人なんですから……」
「……ちッ」
「……えっと……」
「何だッ!」
「その……ヒカリ嬢のはやってみたんですか……?ネクロマンサーの笛……」
「……出来ねえんだよ」
「え?」
「いや,だから浅井さん」
「長政で良いって。敬語もいらねえ」
「……長政。俺等三人,記憶喪失になってて」
「記憶喪失……?」
「うん」
「つー訳だ。ま,もう猿は文珠出せる様になってんだがな」
「……あの」
「?何だよ,黒巫女」
「く,黒巫女……?」
「オカルト女は嫌なんだろ?」
「……。まあ,良いですけど」
「で?何だよ」
「いやあの,天回が居るから,ヒカリになれるんじゃないかと……」
「……?何だ,ヒカリって」
「……いや,あの」
「こっ,細かい話は良いじゃないすか。取り敢えず試してみましょうよ」
「……だな。偶には良い事言うな,猿」
「如何も」
「よしっ!やってみろよ,天回」
「……ふうむ」
「……」

バチバチバチバチィッ!
「……」
天回の術がヒナタに掛けられ,ヒナタとヒカゲの魂が統合された。
「……ヒカリ……?」
「日吉……!会いたかった……っ!」
「え?会いたかったって,ずっと一緒に居たじゃん……?」
「あれはヒナタとヒカゲよ。彼女達の性格は私の中で統合されてるし,二人の記憶も有るけど,“私”と言う人格はヒナタでもヒカゲでもないわ……」
「……?良く分かんないんだけど」
「良いわよ,別に」
「そう……?」
「そんな事より,日吉」
「何?」
「前にも言ったけど,もう一度言わせて。あの時は,そんな場合じゃなかったし……」
「え,何を?」
「あのね,日吉。私……貴方の事が……」
「いい加減にしろッッッ!!!!」
「うわあ,殿」
「今も,そんな場合じゃねーだろーが!」
「ふむ。今の術では,暫くの間しか統合したままで居る事は不可能じゃな。早々に仕事を終えんと」
「そんな……」
「そんなじゃねえっ!早くやれ,灰巫女!」
「うん……じゃあ,やってみるね」
ヒカリが笛を銜える。

〜〜〜♪

「……!これは……」
「凄い……この音色……」
「ネクロマンシー……!」
すると,患者の中から何か黒いモノが浮き出てきた様な気がした。
「……!」
「何か出たぞ」
「ふむ,しかし……ネクロマンサーの笛は本来死者に呼びかけるもの。これが限界か」
「駄目なんでござるか」
「んな事,聞かなくても分かるでしょ。馬鹿犬」
「狼でござるッ!」
「馬鹿の方は否定しないのね?」
「そんな……って,先生?」
「おい,猿。何を……」
「これで……」
藤吉郎は,文珠をその“黒いモノ”に投げた。

『戻』

バチィッ!
瞬間,火花が散り“黒いモノ”の一部が千切れると,病室から出て行った。
「呪詛返し!」
天回が叫んだ。
「でかした,猿!子犬,仔狐!どっち行ったか嗅ぎ分けられるな!?」
「勿論でござる!」
「多分ね」
これで呪いを解く事は出来なかったが,術者に返された呪いを追っていけば,術者に辿り着く。術者に術を解かせれば,それで任務完了だ。
「んじゃ,行くぞ!二匹共ッ」
「承知したでござる!」
「ま,馬鹿犬だけじゃ不安だからね」


……………。
信長達が出て言った後の病室。
「殿達,大丈夫かなあ」
「大丈夫よ,あの人達なら。それより,日吉」
「何?ヒカリ」
「もうすぐ又た分離しちゃうから言うね?私,貴方の事が……」
「……あの〜……」
「何?」
「俺も居るんだけど」
「長政」
「私も〜〜,居るの〜〜」
「吉乃様……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……私,貴方が好きなのッ!」
「うわ,無視された!」
「スル〜〜されちゃった〜〜」
「あ,ヒナタに戻った」



そして,帰蝶の元へ向かった信長は……。
「嫌よっ!絶対,呪いは解かないわっ!」
「何でだよ,殴られたいのか!?」
「何であんたの言う事,聞かなきゃなんないのよ!」
「もう,勝負はついてんだろが!」
「何よ,吉乃の味方なんかしてっ!私より吉乃の方が良いって言うの!?」
「んな事,今は関係無ーだろが!」
「五月蠅いっ!何人に手ぇ出せば気が済むのよ,この色魔っ!」
「しっ,色魔だとお!?手前ぇええ!幾らお前でも聞き捨てなんねえぞ!」
「何よ,事実でしょ!?」
「何だと!?大体,記憶失ってんだから,見に覚え無ーよ!」
「又た,調子の良い事を……!そんなの,言い訳にもなんないわっ!」
「応!言い訳じゃ無ーかんなっ!」
「何ですってえ!?」
……信長と帰蝶の壮絶な痴話喧嘩に,重治と考高は物陰で震えていた(利家と女華はとっくに避難済)。
「……官兵衛〜……」
「……何よ……」
「恐いでござるぅ〜〜」
「……そうね……」
「うう〜……
「……あんたがトヨトミを手に入れるのは,難しいかもね……」
「む!?何故でござるか!」
「いや,だって……」
それとも,当事者なら平気なのかな?こういうのって……。


因みに,この件は「一週間の間,信長は毎日帰蝶とデートする」と言う事で帰蝶が呪いを解き,落着と相成ったと言う。

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