ザ・グレート・展開予測ショー

帰還者(3)


投稿者名:よれよれパンダ
投稿日時:(04/ 2/ 1)

帰還者第三話「死神」







道を風のように駆けていく横島。

「失敗した。こんなことならタクシー待たせとくんだったな。」

彼は当初成田空港からタクシーで目的地に向かっていたのだが、その途中強力な霊気を感じ取りタクシーを降りたのだ。

「あと何キロあるんだ。まったく。」

とグチをこぼしながら走っていると

「きゃーーー!!ひったくりよーーーー!!誰か捕まえてーーーー!!!」

バイクの男にバッグをひったくられた恰幅のいい女性――オバチャンが悲鳴を上げる。

『ひったくりね・・・。どこの国でも人間のやることはいっしょだな。
 かかわらないほうが得策か・・・・ん、まてよ。』

何か思いついてバイクに向かって行く。

そしてバイクの前に立ちはだかる。

「おらおら、どけーーージャマだーーーー」

バイクは横島にかまわずにさらにスピードを上げる。

バイクが横島の直前までくると

「フッ」

バイクが当たるギリギリで少し横に避ける。

次に男の胸倉を掴み強制的にバイクから降ろし地面に叩きつける。

操縦者を失ったバイクは道路を転がった。

ガヤガヤと野次馬が集まってきた。

横島は犯人に近寄りヘルメットを脱がせる。

するとヘルメットの下から茶髪の若い男の顔が出ててきた。

「おい!起きろ!!」

気絶した男の頬を叩いて起こす。

「う、うーーん、えっと俺はいったい?」

「バカ野郎!!あのご婦人からバッグをひったくりやがって、ひったくるときご婦人がケガしたらどうするんだ!!」
(注)そんなこと思ってません。

かなり棒読みな横島。

「は、はい?」

突然のことに混乱する犯人。

するとオバチャンが野次馬をかきわけて走ってきた。

「ありがとうございますーー!」

「いえいえ、人として当然のことをしたまでですよ。はっはっは」
(注)そんなこと全然思ってません。

再び棒読みで話しだす。

「ああ、あと俺の名前は西条、西条 輝彦です。」

「はあ?」

いきなり名前を名乗る男に首をかしげるオバチャン。

そう言うと横島はスタスタと歩いていき、道に転がっているバイクにまたがる。

そして犯人から盗ったヘルメットをかぶった。

「というわけでこのバイクはこの西条 輝彦がもらっていく!」

再度西条の名前を出して、宣言した。

『『『『『『どういうわけだよ!!』』』』』』

心の中でツッコム犯人とオバチャンと野次馬たち。



ブロロロロローーーーーーー

「俺の名前は西条 輝彦だーーーーーーー!!」

西条の名前を強調しながらバイクで駆けていく横島。

『『『『『『なんだったんだいったい?』』』』』』

あとには小さくなっていくバイクを呆然と見つめる人々が残された。






《写真の女性サイド》




マンションの前にたたずむ女性、しかしどこかしんどそうな雰囲気である。

「やられた・・・・・」

女がマンションを目にして嘆く。

このマンションは数十分前に女が不動産屋でかなりの安値で買ったものだ。

しかし、契約前に物件を見ないという条件付だった。

女はさすがにあまりの安値と変な条件にあやしさを感じ店主に尋ねたが、
店主が言うにはこの建物は作られたのもごく最近で構造になんら欠陥はないと言った。

さらに建物の構造に何か問題でもあれば契約金をそっくり返すとまで言ってきたのだ。

その言葉を聞いて欠陥住宅ではないだろうと考えた女はこの物件を買ったのだった。

「確かに・・・・・・確かに《構造》は問題ないかもね。」

そう言い、拳を握りわなわなと震えだした。

「けどね・・・・・・」

今度は頭に青筋が浮かび上がる。

必死に怒りを抑えているようだ。

「霊的不良物件じゃない・・・・・・・・・はぁ。」

なんとか怒りを押さえ込んだようだ。

そう、この物件には悪霊が住み着いており、それも十数やそこらではなく建物の外からも大量の悪霊が確認できるほどだ。

もともとこの物件には悪霊が住んでいなかったのだが最近の悪霊の大量発生で霊的不良物件になってしまったのだ。

霊的不良物件を持つことは不動産屋にとって他の物件の信用も下がるなどかなりのマイナスになる。

そのため不動産屋の店主は初めオカルトGメンに依頼したのだが、最近の辻斬り騒動で忙しいためとりあってもらえなかったので、
高額な民間のGSに依頼したのだがそのGSは除霊に失敗し死亡したのだった。

そんなときに外国人の女性が現れた。

外国人は不動産などで冷遇されているからもしかしたら売れるかもと思った店主は必死にこの物件をすすめたのだった。


「まあ、ものはそう悪くないから掃除をすればなんとかなるわね。・・・とりあえず霊衣に着替えるか。」

そう言うと自分の荷物をあける。

中から黒い修道服が出てきた。

「さーーてと、どっか着替えれそうなところわっと。」

辺りを見渡し着替えられそうな場所を探す。

「あ!あそこがいいわね!」

通りの人から見えないような場所を見つけ、修道服を持って行った。






数分後



修道服に身を包み女が現れた。

修道服の黒が女の肌の白さをひきたてる。

霊衣に着替えた女は再び荷物をあける。除霊道具を探しているようだ。

そして出てきたのは五望星が描かれたお札に眼鏡それと布製の袋に包まれた細長い物体だった。

お札を懐にしまい眼鏡をかけると、袋に手をかける。

袋を取るとグリップの付いた金属製の棒と刃物が出てきた。

女は右手で棒のグリップを握り、刃を棒の上の側面につけた。

すると棒と刃物が共鳴を始め輝きだす。

光が収まると、刃のついていた棒は女の身長と同じくらいの大鎌へと姿を変えていた。

「道具はこれでよしっと!」

鎌に変わったのを見とどけると、女は両手で鎌を持つと大きく背伸びを始めた。

除霊にそなえ準備運動をしているようだ。

彼女が念入りに準備運動していると、彼女の近くを一組の親子が通りかかった。

通りすがりの親子が女を見て

「ママ―あの人なんかへんなの持ってるよー。」

女の鎌を指差す子供。

母親は子供の指差す先を見る。

「ヒッ・・・もしかして辻斬りなの・・・・・イヤーーーーーーーー!!誰か助けてーーーーー!!殺されるーーーーー!!」

子供を抱えて女から全速力で逃げる。

彼女を最近起こっている辻斬りと勘違いしたらしい。

「・・・・・・確かに私はこんな大きい鎌持ってるけど、悲鳴をあげながら逃げなくてもいいじゃない。(涙)」

ガックリうなだれる。かなり気にしているようだ。





「・・・・はぁ」

ゆっくりと立ち上がる。

そしてマンションに向かって歩いていく、すると彼女に悪霊が集まってきた。

彼女は目を閉じ腕かかげた。

「肉体を失いなおこの世にとどまる者どもよ。」

大鎌を前方にかまえた。

「汝らがまだこの世にとどまると言うのなら。」

腰を落とし、鎌の刃に霊波を込める。

「この私、テレサ=シュバイッツァーが」

目を開けるとそこにはさきほどの落ち込みを感じさせない鋭い目があった。

「冥府におくってあげる!!」

その言葉とともに彼女の舞が始まった。










《オカルトGメン日本支部》



オカルトGメン日本支部長室でオカルトGメン本部と電話をしている女性が一人。

彼女は美神 美智恵、今はアシュタロス戦の功績でオカルトGメン日本支部長となっている。

《「困りますね美智恵さん、辻斬り事件が始まってもう十日以上になるというのにまったく成果があがらないとは。」》

「はい、ですが犯人を捕まえるために霊視をしてもなんらかのジャミングがかっかているために犯人はわかりません。」

《「まったくアシュタロス戦を勝ち抜いたあなたがこのザマとはどういうことですか?
  私達ICPO本部のメンツがたちませんよ。」》


『あんたたちのメンツなんて知らないわよ!!』

心の中で毒づく美智恵。


「このままでは事件はいつまでたっても解決できません。以前のように民間のGSに協力を要請するべきです。」

《「民間のGS!? それはいけませんねー。アシュタロス戦で民間のGSに協力を要請したためにオカルトGメンを
  無能呼ばわりする輩がでてきました。今またそんなことすればますます我々の立場が悪くなってしまいます。」》

「しかし!!」

憤慨する美智恵、本部の対応の悪さにかなりいらだっているようだ。

《「なら数日中に本部から数名派遣しましょう。それで何とかしてください。それではこれで」》

ツーーツーーツーー

「まったく何考えてるのよ!本部の連中は!!メンツなんてどうでもいいでしょうが!!」

ガチャン!!

受話器を叩きつける。

「ああもーーーーーーーーーーー!!」

かなりいらいらしている。

捜査は進展しないわ、上司にはいびられるわ、悪霊の大量発生には手が出ないわでかなりまいっているらしい。





そんななか彼女の弟子――西条が入ってきた。

「先生!!」

「ハァ、ハァ、ハァ、どうしたの?西条君」

息切れしながら尋ねる。まだ興奮がおさまらないらしい。

「つ、辻斬り事件の目撃情報です。」

美智恵にうろたえながら報告する。

「本当!?デマじゃないの?」

「いえ、それはないと思われます。通報してきた女性は息も絶え絶えでかなり怯えていたようですから。」

「で、どういう情報?」

「なんでもこの近くのマンションのあたりで外国人の女性が大鎌を持っていたとか。」

『外国人の女性で大鎌・・・・・・・まさか!?』

考え込む美智恵。

「どうしたんですか、先生?」

考え込む美智恵に話し掛ける西条。

「西条君、その女性は金髪の白人で修道服を着てた?」

「そうですけど、どうしてそれを?」

「ちょっとね。それで目撃されたのは女性だけ?他にはだれもいなかったの?」

「はい、女性だけですが。何か心あたりでも?」

「おそらく彼女はテレサ=シュバイッツァー。西条君も聞いたことあると思うけどあの『死神シスター』よ。」

「あの『死神シスター』ですか?確か死神を祖父にもつという裏社会の仲介屋の。彼女がどうして辻斬りなんて?」

「それはおそらく目撃者の見間違いでしょう。彼女が辻斬りなら目撃者を生かしておかないわ。
 それに彼女は横島君と関わりがあるようなのよ。」

「な!!横島君がですか!?まさか彼女が彼の失踪と何か関係が!?」

「その可能性は高いわね。仲介屋の彼女はハイレベルな仕事が多いために仕事人が見つからず、自分で仕事をすることが多かったみたいだから。アシュタロス戦以来『魔神殺し』と呼ばれた横島君に仕事を依頼しようと考えても不思議はないわ。」

「まあ美女なら横島君もついていくかもしれませんが、しかしあの横島君が裏社会で通用するんでしょうか。」

西条はマヌケ顔を思い出しながら尋ねた。

「私も横島君の捜索の報告を見たときはびっくりしたわ。彼かなり仕事こなしてるみたいよ。
 ザンス王国の開国反対派のクーデターを鎮圧したのも彼が関係してるみたい。」

「彼がですか!?」

信じられないとばかりに言う。

「ええ、あとなんでも裏の世界で『神風』なんて呼ばれてるらしいわね。昔の彼からは想像できないけど・・・・・・。」

「僕も信じられませんよ。彼が裏の世界の住人なるなんて・・・・・・・。」

室内に重い空気が流れる。裏の住人になるということは殺しなどもしている可能性があるということだ。

「そのことを含めて今から死神さんに事情を聞きに行きましょう。」

「令子ちゃん達には知らせますか?」

「そうね、あの子にも知らせましょう。もし死神さんが横島君を操ってるなら戦闘というのも考えられるわ。
 そうなると戦力は多いほうがいい・・・・。」

二人はこれから起こることに不安を隠しきれなかった。


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