ザ・グレート・展開予測ショー

続々・GS信長 極楽天下布武!!


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 2/ 1)

人間五十年
下天の内を比ぶれば
夢幻の如く也

一度生を得て
滅せぬ者の有るべきか
















信長達の人格が変化してから二日が経った。……まあ,要するに前回の翌日である。
信長達の人格が入れ替わった事について,意外な事に余り混乱は無かった。
何故かと言えば,信長も秀吉(藤吉郎)も,前の人格と似た様な性格をしていたからだ。
本人は「俺と此奴は別人だ」と思っていても,周りからすれば何ら変わりない・・単に少し記憶を失っただけの信長であり秀吉であった。本人さえ気にしなければ,何ら問題は発生しなかった。
下天は夢だ。
信長はそう割り切る事の出来るポジティブな男であったし,藤吉郎にしても幾ら悩んだところで解決策が沸いて出るわけでもないので,現実を甘受する他なかった。
藤吉郎さえ,身に覚えのない事で慕われる罪悪感と居心地の悪さを我慢すれば,全ては何事もなかったかの様に回っていくのだ。藤吉郎に,選択の余地はなかった。
結局の所,「俺はゴーストスイーパー豊臣秀吉だ」と言う現実を受け入れ,割り切る他に無いのだ。

……とまあ,信長と藤吉郎については特に何も問題は起きなかったのだが。
人格が入れ替わったのは彼等だけではないわけで。

「……まあ,兎に角ね。ヒカゲちゃん」
「何?ヒナタ」
「今のままじゃまずいって事よ」
「何が」
「何が……って,ネクロマンサーの笛の事よ」
「ああ。使えない事には役立たずだものね,私達」
「そうよ!荷物持ちなんて嫌っ」
「良いじゃない。体育会系なんでしょ?」
「あのね……」
「それが嫌なら,仕事場変えるとか」
「嫌よ。日吉の側に居れなくなるじゃない」
「そうねえ。ライバル多そうだしねえ」
「うん。初めに唾付けた効果が何時迄保つか分かんないしね」
「て言うか……私もライバルの一人だって認識してる?」
「えっ……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……まあ,それは置いといて」
「そう言う所がいけないんだと思うわ」
「いや,それ良かネクロマンサーの笛の事なんだけど」
「はいはい」
「ヒカリなら吹けると思うのよね」
「ヒカリ……ねえ」
「うん」
「まあ,あれは……私達であって私達でないというか……」
「記憶が有る様な無い様ななんだよね……」
「統合された本来の人格……だっけ?」
「ゴテン○スとかベ○ットみたいなものね」
「……」
「て言うか……如何やってフュージョンしたんだっけ?」
「フュージョンとか言わないの!……えっと。そうね,確か天回に……」
「天回に……」
「って……」
「え?」
「居るじゃないの,天回」
「あ,じゃあ……フュージョン出来るんじゃない」
「かもね……」
「やった!これで役立たずの汚名を返上出来るね」
「……でもさあ」
「何?」
「ヒカリって明らかに私達より性格良いし,しかも優秀なのよね……」
「?」
「そしたら,私達の存在価値って……何?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「ま,まあ良いじゃない!何とかなるなるッ!」
「だから,その根拠を教えて欲しいわ……」

「こらっ!時読さん。授業中に居眠りしないッ!」


この日は土曜日である。
公立校に通う藤吉郎は,休日なので朝から事務所に来ていた。
……ら,重治に捕まった。
「先生ーーっ!散歩行こ,散歩っ!退屈でござるよっ!」
と喚く重治に付き合ってしまう,元来お人好し気味な藤吉郎。そんな彼の現在位置は,愛知県の町外れ。
「いやー。こうして見ると,東京にも結構緑が有るでござるな」
「……良く分かんないけど,此処は東京じゃ無いと思ふ……」
「思ふ……?」
「……」
「……たっ,偶には息抜きも必要でござるよ!ねっ!?」
「何が偶にはなのか,そしてこれの何処が息抜きなのか……」
「あう……」
「……」
「……あっ!あっちの丘で休むでござるよ!そしたら,気分も良くなるでござるっ!」
「……はいはい」

その丘は,芝生に大木が一本生えているだけの,眺めの良い場所だった。この町を設計した者が,市民の憩いの場としてこの公園を配置したのは想像に難くない。
思わず,「この〜木,何の木,気になる木〜♪」と口ずさみたくなる様な景観である。
「ほら,此処なら少しは楽になるでござろう?」
「ん……」
「あう〜……」
「あれ,此処って……」
「?先生,如何かなさったでござるか」
「いや……」
そうだ,此処は……。
「此処は……」
「先生?」
此処は,俺が名を変えた場所だ。
「……」
全く関係の無い世界じゃなかった。
俺達のやった事の,続いた一つの結果だったんだ。
「……先生?」
「……」
「大丈夫で……ござるか……?」
「え?あ,うん平気。御免,心配掛けた?」
「え,いや,その……」
「って!腹減ったな。どっかで飯でも食おうか。俺,奢るよ」
「ええっ!良いんでござるか!?」
「おうっ!何でも良いよ」
「じゃ,じゃあ拙者,ステーキが食べたいでござる!」
「良いよ!どんと来いだ!」
「やった〜!」

何か,少し吹っ切れた気がするよ。


同じ頃,織田除霊事務所。
「……腹減ったな。天回,出前でも取ってくれや」
「その位自分でやらぬか」
「るっせーな,俺は忙しいんだよ。第一手前ーは此処の従業員だろ?雇用主の命令なんだ,つべこべ言わずに働け」
「やれやれ……二人分で良いのだな?」
「二人分て……そう言や,猿と子犬は遅ーな」
「あの二人なら,外で済ませてくると電話が有ったぞ」
「左様か。んじゃ,二人分で。お前は良いんだろ?」
「ふむ,儂は幽霊だからな」
嘗て不倶戴天の敵同士だった信長と天回だが,意外と上手くやっていた。
部下については能力重視な信長は,多少変な奴でも有能なら気にしないし,天回にしても,使われるのに抵抗はなかった。世界の王たらんと身に余る野望に人生を費やした彼だったが,元々つまらないプライドは持ち合わせていない。その野望さえも,何故にそんな野望に取り憑かれたのか,本人でさえ分からない様な代物であったし。
その野望が費えた今,ブッティストらしく成仏するべきなのだろうが,紛れもない天才である彼は,己の知識と理論をむざむざ散らせたくはなかった。まさか,生前の才能と蓄積が来世に持ち越される訳でなし,ましてや人に生まれ変われるかさえ分からないのだ。
なので,自分の“するべき事”が見付かる迄,信長の保護下に入る事にしたのは,止むを得ない事とは言え,賢明な判断だっただろう。取り敢えず,自分の研究を後世に伝えるべく,執筆活動に励む事にしたらしい。
……因みに,生前の霊能力の高さ故か,それとも志半ばに散った未練の思い故か,天回の霊体は非常に安定していた。即ち,見える触れる話も出来るのスーパー浮遊霊なのである。
「これで日給30円なら安い買い物かもな」
「……。まあ,良い賀がの」


さて,隣の部屋では。
「……貧乏神。あんた,何してんの。こんな所で」
「いや,ねねがバイト中で暇なんや」
「ふーん」
「姿を消せるとは言え,あんま俗界に居場所もないでな」
考高と家康の二人の暇人達が,暇な世間話に花を咲かせていた。
「そう言や,官兵衛はん」
「何」
「あんさんも,日吉にーちゃん狙いなんやろ?」
「日吉って……」
「豊臣はんの事や」
「……まあね」
「の割にはアプローチが足りひんとちゃうかな?」
「……するべき時にはするわ」
「ほう」
「それに,他人と男の寵を取り合うなんて柄じゃないしね」
「ふむ……」
「まあ,折を見て愛妾にでもなるわよ」
「せやけど,そううまくいくかな……?」
「……?何が言いたいのよ」
「せやな,例えばヒナタねーちゃんがにーちゃんの嫁はんになったとするわな」
「ヒナタって……ヒカリちゃんの変わりの黒い方?」
「せや。あん人が日吉にーちゃん握ったら,浮気なんか許さへんのとちゃう?」
「……だから?」
「その点ねねならどや。苦労してるし,少し位浮気された所でガタガタ言わへんで」
「……つまり?」
「……せやから,手ぇ組まへんか?言ーとるんや」
「私に,ねねちゃんが勝つ様に仕組めって言うの?」
「そう言うこっちゃ。全者睨み合いのこの状況じゃ,どの娘も決め手無しでライバル出し抜いてにーちゃんを手に入れんのは至難の業や」
「……だけど,中立の立場なら戦局を覆せる位に大胆に動けるかも知れないって訳ね?」
「そう言うこっちゃ。あんさんならにーちゃんに近しいし,味方に付けるなら他にはないで」
「褒めてるつもり?」
「勿論,ただとは言わん。協力してくれたら,漏れなくにーちゃんの2号さんの座を差し上げますで」
「……嫌な報酬ね」
「せやけど,悪い話やないと思うけど?」
「そうね……」
「どや?」
「……お断りするわ」
「何でやー」
「人に利用されるのは,好きじゃないの」
「……欲しいものが手に入るんやから,それでええやないかい」
「プライドを捨てて迄,欲しいとは思わないわ」
「さよか……」
「でも……そうね」
「何」
「考えといてあげても良いわ。必要と有らば,手を組む事も有るかもね?」



織田除霊事務所,総従業員数・3人と2匹と1霊。
かくも平和な土曜の昼下がり。

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