ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(23)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(04/ 1/30)



予感がした。
その根拠も内容さえも見えてなかったが。

・・・・・「ここは、俺が思ってる様な場所じゃないし、俺が思ってる様な状況でもねえ。」と。

予感なんてものを鵜呑みにしてしまうのは無謀だが・・・こんな時には尚更・・・
奴の精神波による誘導かもしれねえだろ?


  違うって。こっちは何もしていない。キミが自分で気付いたのさ。断言しても良いね。


「そうですよ、雪之丞さん!小竜姫様はそんな冷たい人じゃありません!
いつだってちゃんとみんなの事、考えてくれてるじゃないですか。勿論、雪之丞さんの事だって・・・!」

おキヌが俺の前をふよふよと飛びながら訴えている・・・人魂と一緒に。現在じゃない、昔、幽霊やってた時の姿だ。
・・・だから小竜姫が何を考えてるかなんて分かんねえっつうの。・・・いや、少なくとも他の奴よりは分かるか。
―こう言う非常時でのあいつは、秩序の為に理解も感情も捨てられる・・・
ある意味、ラケリエルとか反デタント神族と腹ん中の作りが同じとも・・・・

「――だから、違いますっ!!」

それを、どーやって確かめられるって言うんだ?
身体も動かねえし・・・いや、何度も言ってる通り、あるって感覚すらねえんだ。

更に何かを言おうとするおキヌを制し、六道冥子が現れた。・・いつのか分からねえ、この女は昔も今も変わんねえからな。
・・・マジで本当はピートや横島の助手の人狼とかと同類項なんじゃねえのか?

「それ〜ほめてるのかしら〜けなしてるのかしら〜?」

後ろで式神十二神将がわさわさ言ってやがる。偽者のこいつも興奮させるとヤベえのかもな・・・。

「ほんと〜に〜ないのぉ〜?どこも〜動かないの〜?動かして〜見た〜〜?」

だから、どこを・・・本当に意識だけが浮かんでる感じなのに・・・・・意識・・・・そうか!!
意識があるって事は、脳が機能してるって事だ。・・・・もしくは、少なくとも、霊体が、活動してるって事だ。
間違いなく、この空間内に存在している。俺の体も、霊体も・・・俺の力、霊力も。

霊力霊波のコントロールは呼吸とイメージが基本だ。・・・呼吸だって、元はといえばイメージの為のものだ。
呼吸が出来ない時は、呼吸をイメージすれば良い。
俺は普段の、力を引き出す手順をイメージし、“気の流れ”を、思い浮かべる。

――――その時、数ヶ所に小さく霊気の塊が生成されて行くのを感じた。塊はぽつぽつと徐々に数を増やして行く。

「生成された・霊気の位置に・雪之丞さんの身体と霊体が・存在している可能性は・98.726%・です。」

左でマリアが霊気の塊の集まり―俺、を指差した時、右にはメドーサとエミが腕を組みながら並んで立っていた。

「フン、やっと分かったか間抜けめ。元々お前の頭など大して期待してなかったけど、期待以下だったのかい?」

「こんな所でいつまでも油売ってないで早く助けに来てほしいワケ。・・・何十年ぶりだろーと、ベリアルのツラは
懐かしめそーにないからね。」

そう、やっと気付いた。この封印は岩に身体や霊体を同化させて塗り込める方法のものだ。
猿程の大物ならどうだか知らねえが、普通なら霊力を放つ事も出来なく・・・・意識さえ働かない深い眠りに落ちる筈・・・・
そうじゃないって事は・・・・そこに空間の、封じる力の隙間があるってことだ!

これも会ったばかりの頃・・・ワンレン・ボディコン姿の美神が肩をすくめながら言う。

「一回解除された使い回しの封印だし、それから千年以上も経ってちゃねえ・・・
いくら頑丈でも細かな所が老朽化してるんじゃない?」

・・・・・って事は・・・・その隙間一杯に霊気を満たして、更に流し込むと・・・・
隙間の周囲に小さく無数に広がっていた亀裂に沿って、霊気が流れて行き始めた。
その流れは闇の中で白く網状に光って見える。

「やるじゃない、さすが私の認めた男・・・・悟るのが早いって言うか・・・か・ん・じ・や・す・い、のね?」

勘九郎・・・何度も言っただろ・・・耳に息を吹きかけながら喋るのやめろ・・・・ん?耳、だって・・・?
それに、見させられてる幻影以外に“光が見える”って・・・・!?
部分的にだけど身体のイメージと感覚が戻って来ている。
・・・霊気の溜まったポイントを中心に、俺がここに存在しているって手応えが甦って来たんだ。

亀裂の中を流れた霊気は離れた所にある他の隙間に流れ込んで溜まり、また新たな亀裂へと流れて行く。やがて、隙間や
亀裂は四方にどこまでも広がっているのではなく、一定の幅を持つ巨大な通路の様に分布している事に気付いた。
これは・・・つまり・・・・かつて去るがここから抜け出したときの跡・・・?玄奘三蔵法師に導かれて・・・。

拍手の音が二つ重なって聞こえた。六道冥子と、今度はその隣にGジャンを着て赤いバンダナを頭に巻いた十代の若造が。

「また〜ひとつ〜発見ね〜」

「な?あきらめないでやってみれば、何か良い事が必ずあるのさ。」

・・・「あきらめないで、やってみれば」、か。たとえ幻でも、何度も不可能を可能に変えて来た男の声で言われると
かなり説得力があるぜ。


  クスクスクス・・・そーだろ?まったく同感。あーゆー、ここぞって時の彼は本当サイコーだよ。
  君も良い友達を持ったねー?・・・・・あのオカマくんの事は残念だったけど、まあしょうがない、そんな時だってやっぱり
  あるって事だったのさ。・・・・全身全霊かけてその人に何かを伝えようとしても伝わらない・・・救ってやれなかったって
  時が・・・・・たまにね。


一瞬、このテレパシー野郎の人をナメた口調に何か真剣な感情が横切った様な気がした。こいつにもあったのだろうか?
俺が勘九郎にそうだった様に、誰かの目を覚まさせてやれなかった事が・・・・・?


  でもまあ、こう言う清純派天然系って感じの子や男の子の役は少し苦労するね。やっぱり、ナイスバディで中身も
  バリバリなおねーさんの方がこっちとしては楽だよ。何か相通じるものがあるって言うかね・・・・。


俺は一体、誰に、どこへ導かれているんだろうか・・・・・・・?



そんごくうは、とてもあばれんぼうなかみさまだったの。
だからおしゃかさまにいわやまへとじこめられちゃった。
それをおぼうさまのさんぞうほうしがたすけてあげたの。

そこからたびがはじまったのよ。



  ・・・・だから、こーゆーのもアリかな?


俺がかつて夢中になっていた香港の女優が、日本GS出演作「GS白麗 香港の休日!」の時の衣装で現れた。
中国語で俺に呼びかけている。・・・何度も、「もう少しです」と。

・・・・何が「もう少し」なんだ?

闇の中から浮き上がる様に、陰念がズタボロになったタイガーを引きずってこっちへ歩いて来た。
タイガーが顔を上げて振り絞るように呼びかけて来る。

「もう少し・・・・もう少しですけん、頑張ってつかあさい!わしの敵を取ってつかあさい・・・頼みますけん!」

「へっ、そうだ・・・もう少しだ・・・さっさと片付けて、来い・・・俺様との勝負を付けに来い!!」

だから・・・・・・何が・・・・・?

突然、亀裂に囲まれた闇の一片が“剥れ落ちた”。そこから白く、眩い光が差し込んで来た。

―――――!
思わず両手で顔を覆った・・・・手が、動いた・・・・!

試しに、足を”踏み出して”見た。・・・動く。・・・・移動できる・・・!
俺が手や足を伸ばした所から空間と闇とが安物の漆喰の様にボロボロと剥れ落ち、そこからも光が漏れて来た。
闇の欠片を掻き分ける様に両手両足を動かすと、俺の全身はゆっくりと前に進んだ。冷たくない氷の浮いたタールの中を
潜っている感じだった。進みづらい・・・・だが、不思議な事に疲労感は全くなかった。

本当に不思議だ・・・・あれだけ霊力を放出したのに何で尽きねえんだ?何で相応の疲れが起きねえんだ?
光と闇の欠片の中を漂いながらドクター・カオスが顎に手を添え、興味深そうに見回している。

「ふむ・・・良く出来ておるわい・・・。この中で放たれた力は損失にならん・・・増幅されて戻って来るらしいの。
局地的とは言え、エントロピー無視じゃわい。・・・ここが封印だったのは昔の事、今は霊力のトレーニングマシンとして
再利用されとる訳か。資質がなけりゃ永遠に出て来れないって辺りがトレーニングの常識から外れとるがの。建前として
ここに『禁固』して、パワーアップさせてから脱走して来てもらおうって事じゃな。・・・・あの姫様も師匠譲りの腹芸じゃ。」

ピートがカオスの言い草を咎めながら言葉を繋ぐ。

「そんな悪巧みみたいな・・・雪之丞、これはきっと“試練”なんですよ。彼女も君が行く事を望んでるのです・・君の付ける
決着を望んでいるのです。彼女だけじゃありません・・・・・みんな、君を待っているのです!」

「・・・こんな事を言うと君は嫌がるかもしれないが・・・私にはこれ以上の君を励ます言葉を思い付けないのだ。
・・・・君に全能なる主イエス=キリストの祝福と聖霊の加護在らん事を・・・“彼ら”は別としてね・・・エイメン。」

唐巣が胸で十字を切った。


亀裂と隙間、そこに満ちた霊気で現れた道を泳ぎ、掻き分けて行くと、次第に空間のあちこちが触れてもいないのに
大きく剥がれ落ちて来た。今なら分かる・・・・この空間そのものが崩れ始めている・・・
そして、それは即ち・・「出口」が近付いているって事なんだろうか?
隙間に溜まっていた霊力はそれに伴い俺の体内に戻って来た。

泳いでいる俺の横を俺の知ってる奴が次々と現れ、声を掛けては消えて行った。――テレパシー野郎もやる事が雑に
なって来ているな。今、おキヌが「ガンバレ雪之丞!日本の雪之丞!」とか喚いてたぞ・・?

テレパシー野郎・・・・こいつは本当にこの中にはいないんだろうか・・・?だとすれば・・出て来ていない・・
妙神山関係者・・・小竜姫・・・・猿・・・・・?
・・・・・・・いや、こいつの言ってる事が本当だったら小竜姫は今頃外でパピリオとエミ救出、ラケリエル追討の陣頭指揮を
執っている筈だ・・・さっきの状態の封印に外から話しかける技術なども、持っていない筈。そして、猿・・・なら確かに可能
かもしれない、別人格の分身を封印内部に残したり、それでヒントを出したり・・・こーゆー曲がりくねった事が好きな辺りも
動機としちゃあ十分だ。
・・・・だが・・猿なら・・・・もっと上手くやれる。・・・気が付いていた。封印の解除されかけた今、こいつの念話能力や、
俺に幻影を見せたりする能力が急速に低下して来てる事を。


  その通りさ。みんな非常事態でばたばたしてるんだから、こんな所に潜り込んでキミとゆっくりお喋りしていられる程の
  ヒマ人なんかいないよ。
  ・・・勿論、君が見捨てられてるって事でもないよーだけどね・・・それは出てから確かめると良いさ。


俺はそいつに口で―初めて口から出した言葉で、問いかけた。

「じゃあ、てめーは何で、俺の相手なんかしていられるんだ。・・・なんで俺にここのからくりをわざわざ教えてくれるんだ?
確かに有難い事なんだろーし、一応の感謝はしておく・・・だがてめーはやる事為す事腑に落ちねえ。・・・・何でいちいち
俺をおちょくって来やがんだよ?」


  クスクス・・おちょくるだなんて心外だなー。キミとはこーやってよく遊んだじゃないか?

  こっちはキミに何かを教えたり、なんか一度もしてないよ・・・ここの切り抜け方については全部、キミが元々
  知っていた事、あるいはキミが自分で発見し、思い付いた事さ。こっちはキッカケをあげただけだよ。
  そのきっかけだってキミ自身が最初から予感していたから切り出せた訳で。
  何せキミの知ってる事しか知らないのだからね。何かを教えるなんて出来やしないさ。

  そして・・・こっちは“していられる”んじゃなくて本当は、キミと遊んでやるくらいしか、する事がないんだ。
  ・・・・もう分かってるんだろ?封印が解除されたらこの念話は消えてしまう事。
  この空間の中でだからキミとこーやって喋っていられるのさ。
  久しぶりだし、まだ物足りないくらいだけど、こーやってキミと話せただけでも良しとしとくか・・・・。


「こーやって遊んだ」?「久しぶり」?
俺は・・・・こいつと会った事があんのか?昔の俺に遊び友達なんてものはいなかった・・・・。
「こーやって」・・・・ましてテレパシー使って色々なものに化ける様な友達なんか・・・・。

・・・・待て。







わたしはだれでしょうっ?

・・・・ぞうさん。

はずれー。わたしはだれかなー?

・・・・わんこ。

はずれー。わたしはだれだろーなー?

・・・・かれーぱんまん。

フフフ・・・はずれー。







スケッチブックの一枚一枚に大きく描かれた、動物や変身ヒーローやキャラクターの絵。
それで顔を隠しながら質問。私は誰でしょう。
絵の通りに答えるといつもハズレ。でも次々と色んなものに変身して質問が繰り返される。いつもやってるのに、
俺はいつもわくわくしながらも不安にさせられていた。最後にスケッチブックが床に置かれたままで質問が来る。
そこで俺はいつも「アタリ」になる。

・・・・・・・その「最後の答え」はいつも同じだった。



断続的に重低音が響き、闇の残る空間が振動し始めた。俺の周りの空間に流れが・・押し出す様な・・・生じて来た。
手足で掻き分けなくとも俺は前へ―出口へ―向かって移動していた。
不意に背後から「ユキ」と呼ばれ、俺は流れに抗いながら振り返った。パピリオが立った姿勢で俺を見つめていた。

「ユキはどうして強くなりたいんでちゅか?・・・・・私たちは何の為に強くなるんでちゅかね?」

「何の為って・・・・・・お前・・・・・。」


ただの誓いだと思っていた。そこに理由なんか要らないと。どこまでも強くなる、それだけだと。
友達と出会って・・・・仲間と決別して・・・・・誰かを好きになり、パートナーとなって・・・・そうじゃなくなった。

「支え合い、ここ一番って時に背中を預け合う為・・・・。」

「何の為にそんな事するんでちゅか?」

「―――!」

「こう思いまちぇんか?・・・私たちが強くなるのは・・・・幸せになる為・・・支え合うのは、幸せにする為だって。」




わたしはつよくなる。つよく、ある。そうきめたんだ。
だからたたかう。せかいのはてまでだってにげきる。

じゆうになるために・・・しあわせになるために。

そしてゆきくんをしあわせにするために。




そう言ってた人がいた。・・・・何だよ、きちんと憶えてたぜ。忘れるもんじゃねえ。

「幸せになって・・・幸せにしてくれまちゅか?」

俺は無言でうなずいた。

「――――行きましょう。・・・私たちで幸せになるために。」

いつの間にか俺の隣に弓が立ち、俺の右腕を取って歩き始めていた。

最早、空間全体が白く眩い光に包まれ、激しく振動している。
やがて、後ろにいたパピリオの姿も、隣にいた弓の姿もその光に掻き消された。
俺は激しい閃光と振動と轟音の中、声を張り上げて“彼女”への疑問を口に出す。

「・・・俺は・・・どうして気付かなかった?・・・どうして、あなたの事が今まで分からなかったんだ・・・・!?」


  時間がいっぱい流れて、キミが色んな思いをしながら、色んな人と出会って、大人になったからさ。


光と音が頂点に達する刹那、俺は振り返った。
黒く長い髪と白い肌の少女が微笑んでいた。
水色のワンピース。俺を迎えに来てくれた時の。・・あの時と違って埃まみれではなかった。
俺とあまり似てない繊細に整った顔立ち。何となく俺に似た吊り気味の強さを表す様な目。


  ・・・・・つよいひとになったね、ゆきくん。


俺は限界まで張り上げた声で、彼女に呼び掛けていた。





  「――――――ママァッッッ!!!!」





 + + + + + + +


「――ママじゃないのねえー!」

「・・・・ヒャクメっ?」

視界が急に暗くなり、すぐ前にヒャクメの奴が驚いた表情で立っていた。良く見るとその後ろに横島もいる。
周囲を振り返る。ここはどうやら妙神山中腹の石段・・・下界の一歩手前付近だろう。

「どうしましょう横島さん。雪之丞さん、先に自分で気付いて出て来ちゃったのねー?」

「ヒャクメからこの封印のからくりと小竜姫様の考えについて見通しを聞かされて、出口の方からお前を迎えに行こうと
思ってここまで来たんだが・・・とっくに自力で気付いて出て来たか・・・さすが雪之丞と言うべきか・・・?」

「いや、自力って訳でもねえさ・・・。」

俺は苦笑して首を横に振った。二人はぽかんと互いに顔を見合わせている。
苦笑いしつつも気分はやたらと清々しかった。・・・そうさ、ママはずっと遠くから俺を見守っていてくれてたんだ。
そして、二度と会えないだろうけど、これからも・・・・。

「オラッ、何ボーっとしてんだよ!?どーせ今からドチビと黒いのを救出に行く所だったんだろ?
居場所の目処は立ってんのかよ。こっちはパワー有り余ってんだ、景気良く行くぜ!」

二人の背中を派手にドツいてから俺は石段を勢い良く駆け下りて行った。

――――――――――――――――――
 Bodyguard & Butterfly !!
 (続く)
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さーて、謎の解答編です。&いよいよ次回から最終決戦です。何と言うか・・派手にイきます。
今回は人物(?)配置だの、ゆっきーが気付いて行く段取りだので設計図まで作ったりして、
手を焼いた一話となりもーしたです。
あと、あまりオカルト的設定としてゆっきーママがどーなってるのか深く考えない方が良いと思います。
一応、裏設定で考えてはあるんですが。
「生前から超能力者だったわけではないし、普段からこーゆー超常現象を起こせたりもしない」
「未練が残って成仏できないってのとも微妙に違う」
とだけ念押しておきませう。

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