ザ・グレート・展開予測ショー

非日常(4)


投稿者名:ゴン太
投稿日時:(04/ 1/26)

この話は前作と同じころ、事務所は?という設定です。
後、読みにくいかと思いますが『美神』は美神令子、『美智恵』は美神美智恵さんという風に考えて下さい。大変申し訳ありません。

――― 美神除霊事務所 ―――

幼い赤ん坊を抱きかかえそこに向かって歩くご婦人が一人。
彼女が事務所の前まで来ると虚空から、

『お久しぶりです、美智恵さん』

と、無機質の声が響く。

「久しぶりね、人工幽霊一号。みんなはいるのかしら?」

美神美智恵はそれに驚いた風もなく返し、質問を投げかける。

『いえ、おキヌさんと横島さんはまだ学校にいると思われます。タマモさんとシロさんは散歩に出かけました。』
「そうよかった。じゃあ今は令子だけしかいないのね。」
『はいそうですが。何かあったんですか。』
「別に大したことじゃないわ。ただ久しぶりに令子と話したくてね。」

薄く笑みを漏らしながら人工幽霊と会話する美神美智恵。話している間も止まらない足はそのまま娘のいるであろう部屋に向かっていた。

ドアを開けるとこの事務所の所長である美神令子が書類の束を相手にしていた。
そんな真剣な娘の姿がうれしく笑みをそのままに娘の名を呼ぶ。

「がんばってるわね。令子。」
「ママッ!?どうしたの?」
「ちょっとしたお知らせにね。それにしてもしっかりお仕事してるのね。」

そういうと嬉しそうにしていた娘の表情が急に硬くなる。不審に思い手元に視線を戻すと手がせわしなく動きたくさんある束の中から何枚かの紙(国税局やマルサが見たら涙もの)を抜き取っているところだった。
その娘の挙動を見て考え察した美智恵は、青筋を立て笑みを深くする。

―― ビクッ ――

それを見た美神令子は次に降りかかるであろう母の怒声に体をこわばらせる。
しかし予想に反し返ってきたのはため息と呆れた表情だった。

「まあ、とりあえず座りなさい。」

そう言うと彼女はひのめを抱きかかえたまま近くにあったいすに座り、テーブルを隔てたいすに座るように促す。
美神令子は、説教を聞かずにすんだと喜々として座ろうとするが「今のことは後でしっかりと話してもらいますから。」という言葉でうなだれながら席に着く。

「で・・お知らせって何なの。」

母のカミナリは避けられないと分かった美神はどうでもいいという風に尋ねる。

「落ち着いて聞きなさいよ。横島君にライセンスが発行されたのよ。」
「・・・・・・はっ?ちょっ、ちょっと何いってるのよママ。そんな冗談楽しくないわよ。」

予想していた娘の反応にため息が漏れる。

「楽しくなくていいのよ、冗談じゃないんだから。」
「・・・・なっ!?何いってるのよ!あいつはまだ見習いなのよ!!」
「見習いでいる段階はとっくにクリアーしていると思うけど・・・・あなた今の横島君に勝つ自信ある。」
「・・・・・・」

・・・・もうあなたも分かっているでしょう令子。横島君は昔とは違うのよ・・もう少年じゃないのよ。

「・・・っだけど!あいつの師匠は私なのよ!!私が認めない限りあいつは一人前じゃないの!!」
「それなら今すぐ認めなさい。」
「なっ!?・・・・・・なんで?なんでそんなにあいつを・・・・・・!?」

仕方ないわね・・・頑固な所は私にそっくりなこの子が、訳も話さずに納得するわけないか。

「・・・アシュタロスのことは覚えているわね・・・」
「!?・・・もちろんよ。・・・・・・でもそれと横島君は関係ないでしょ?」
「それが関係あるのよ。横島君はアシュタロスを倒したのよ。」
「?・・・でもみんなは知らないわ。」

・・・・・・マスコミは、大衆は私たちを世界を救った英雄だと・・・横島君こそがそうなに・・・・・・でもそれからがすごかった。
どうやって入手してきたか分からないほどの膨大な資料をみんなに公開した。人に知られたくないことまで・・・・・・

だから横島君の名前は出さなかった。もしマスコミが彼のことを知ればきっと彼女のことを探り当てる。そうなってはマスコミにとって彼は恰好の餌食になるだう。

もしそうなっていたら・・・・・・考えてみると身の毛がよだつ。あのときの彼はきっと耐えられない。

―― でも ――

「横島君の情報を抑えるには限度があったの。抑え切れたのはマスコミに対してだけ地位がある程度より上にある人や、『耳』の利く人は横島君のことを知っているわ・・・それにマスコミだってバカじゃない、実際にいくつかは感づいてきていの。」

「――わかったわ。GS協会としては、横島君が見習いだと格好が付かないのね。」
「そうよ。『見習いにやられるような魔神に協会は後れをとったのか。』なんて民衆にまでしれたら協会の株は一気にガタ落ちですもの。だからこのライセンスはあなたに早く横島君を一人前と申請しなさいという要請のようなものね。」
「・・・・・・」
「で?正社員にでもするの?・・・それとも独り立ちさせるの。」

―― ビクッ ――

『独り立ち』の言葉に肩を震わす美神。

――あらら、どうも暗くなっちゃたわね。それじゃ話題をかえようかしら。


「・・・・ところで令子、最近横島君につらく当たってるって本当?。」
「なっ、なな何言っているのよママ、わっ、私がどうしてあっ、あんな丁稚なんかに当たらなくちゃいけないのよ!?」

・・・・・その反応だけで十分よ。

はぁ〜色恋の方面まで頑固だなんてね。だけどね令子、焦れったいからっていじめるなんて小学生じゃあるまいし・・・ずっとこんな事じゃ彼、離れていっちゃうわよ。それでもいいの?


まぁ〜、でもとまどうのも分からないこともないけどね。最近はめっきりおとなしくなってきたし顔つきも男の子から男になっているしね。
それにあの笑顔はちょっと反則ね。あんな包み込むような暖かい笑顔・・・・事務所の子達もあれにやられちゃったし、私もすこし年下もいいかな?なんて思っちゃったし。

ひのめも異様に懐いちゃているし・・・・・・・・・公彦さんより懐いているわね。ママの次に出た言葉『にぃにぃ』だし・・・・・・・・・・・・・・・・


改めて考えるとすごいわね。横島君と関わった女性ってほとんど彼になんらからの好意を抱いているなんて・・・・・・既婚者にとって彼と親しくなるって一種のバクチね。

気をつけないと!

などと美智恵が横島の危険性と今後の対応を考えていると上の方から、

『あの・・横島さんがここに向かってきていますが・・・・』
「あらっ、そうなの。教えてくれてありがとう。」

人工幽霊一号は横島本人にこの話を聞かせるのは得策じゃないと判断したようだ。
そして、美智恵もその配慮に礼を言って、まだ思考中の愛娘にむかって言う。

「じゃあ、私は仕事に戻るわ・・・令子、ライセンスの件は自分でしっかり考えて彼に伝えなさい。」
「・・・・・・」

厳しく言い放つ母を見つめる美神。その表情は普段の美神からは想像のつかない・・・〈強がり〉という仮面をはずした顔だった。そして母に向けた目は助けを求めるような縋りつくような視線だった。

「彼と離れるのが怖い?」

「・・・・・・」

またも無言で返す美神しかしその瞳は、いっそう揺らぐ。
今の令子なら横島君争奪戦にも勝てるだろうに・・・そう思う美智恵だがそれができたら苦労はない。

横島はあの大戦のあと良くも悪くも成長してしまった。横島が強くなるのは喜ばしいが、ずっと横島を見てきた美神には、横島の急成長は戸惑いしか生まれない。

しかしその間にも、他の人たちは素直に横島に好意を表す(横島は気付いていが)。
横島への戸惑い、他の人への嫉妬、そしてそれらを認められない自分への苛立ち、それらが横島への態度に転じていたことに美智恵は気付いた。

「私から言えることは『素直になりなさい』それだけよ。」
「・・・・・・・・無理よ・・・・・・・。」
「なにも今すぐなんていってないわ。少しずつでいいのよ。」
「・・・・でも・・・・」
「・・・・・・ならせめて笑って彼を迎えてあげて。それなら出来るでしょ?」
「・・・・たぶん・・・・・・。」

彼は感情にとても敏感だから。だから笑ってあげて。それが彼の力になるから。

美神と別れると美智恵は玄関に向かい事務所を出る。するとここに向かって話題の中心になっていた人物と娘のライバルである女の子が歩いてくる。

「あれっ、隊長!?」
「美智恵さん!?」
「こんにちは横島君におキヌちゃん。二人一緒にどうしたの?」
「さっきばったり会いまして、隊長は美神さんに?」
「あっ、あ〜・・・・・・」
「にぃにぃ〜、にぃにぃ〜・・・」
どう返そうか考えていると抱いていた我が子が、突然腕の中で暴れ出した。
ひのめの行動に心の中で喜びつつ、ひのめを横島に抱かせることでなんとかごまかす。

―― ひしっ ――

横島の腕の中に移った、ひのめは至福といわんばかりの笑顔のまま、横島の胸に顔を埋める。横島も自分に懐いてくれるひのめにうれしそうにする。
それを見たおキヌは羨ましそうに、美智恵はひのめの今後を考え冷や汗を流す。と同時にいつもより横島の顔に締まりがないのを不思議に思う。

「横島君、何かいいことあったの?」
「えっ、わかりますか!?いや〜前に助けた女の子からお礼だって事で弁当もらっちゃいまして。それもときどきまた作ってくれるらしくて、これで朝と夜の飯が豪華になると思うと嬉しくって・・・・・・・」

それを聞き美智恵は重大なことに気付いた。

・・・・・・・そうよ!まず給料を上げさせる方が大事だったわ。あまりないような真剣な空気についつい難しく考えすぎちゃったみたいね。ママうっかりしちゃってたみたい、ごめんね令子。

心の中で、今、横島のために笑顔を作ろうとしているであろう娘に謝る。
だから美智恵は気付かなかった。否、気付けなかった。おキヌの目が光っていることに。

と、そこにあわただしく西条がやってきた。

「先生!少し問題が発生しまして、すぐに来て下さい。」
「わかったわ。それじゃあ、ひのめ行きましょうね?。」
「やぁ〜・・にぃにぃ〜。」

愛娘があっさり拒否し横島に負けたように感じた美智恵は肩を落とす。

「あの〜なんだったら面倒見ておきましょうか。」
「そう・・・ごめんなさい、だったらお願いしようかしら。」
「全然いいっすよ・・・じゃっ、ひのめちゃん『ねぇねぇ』のとこにいこうか?」

横島達と別れると改めて横島の競争率の高さに驚き娘は勝利することができるのか不安になる。
そうして隣にいる自分の持つ弟子の中で一番有能で娘に好意を持ってくれている男を見る。

・・・・・う〜ん、西条君も良い子なんだけどね。でも令子相手となると・・・・・・一年持つかどうかよね〜。となるとやっぱり令子には頑張ってもらわないといけないわね!まぁ令子のことを大切に思ってくれるのはいいんだけど・・・横島君相手だと・・・ねぇ〜・・・

「ごめんなさい、西条君。」
「えっ?なにがですか?」
「でも、あなたもまだまだ若いし大丈夫。次があるわ!」
「?・・・いったい何の話しですか?」

見限られたことに気付かぬ哀れな西条でしたとさ。

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