〜『影とキツネと聖痕と 最終話』〜
投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 1/24)
喫茶店ではすでに半刻ちかい時間が流れていた。
タマモが怒るかな、と・・そんなことが頭をかすめて・・・
横島は、心のなかで頭を下げた。
「・・つまり・・、あのじいさんは上かの命令で動いていたと・・そういうことか?」
「ああ・・、しかもかなり大きな組織のな。率いているのは魔神クラスの魔族らしい。」
美しい少女の姿をしているとの情報もあるが・・所詮、噂の域を出ない。
・・ただ1つ確かなのは・・・・
「・・奴らは近頃、戦力をかき集めることに、やっきになっている。
今回もその一環・・・多少、強引な手段も使うことを厭わないらしい・・。」
何故、前ぶれもなくそんなことを始めたのか?
一体、何が目的なのか?
・・いずれにしろ、このまま平穏無事に日常を送れるとは考えにくい。
「・・・はぁ。また闘いの日々に逆戻り・・ってか。今回もただじゃ済みそうにないな?」
「・・不本意ながら・・・ね。」
二人はそろって苦笑する。
こうやって軽口を叩き合うことも、そうそうは出来なくなるのではないだろうか?
――・・。
喫茶店を後にして、横島と西条は事務所の前に立っていた。
「タマモに詫びいれるのはお前だからな。オレのせいじゃねぇんだから。」
「・・分かった分かった。かまわないよ。彼女は君が相手でなければ、別に炎までは出さないしな。」
ニヤニヤと笑う西条に横島はなぜか居心地が悪い気分になって・・・
タマモがどうしたというのだろう?自分相手だと何か違うのだろうか?
「・・・ただいま〜」
彼は・・首をかしげながら扉を開けて・・・・
・・・・・・で・・・
・・・・。
「・・・遅い。」
部屋には、器用にもベッドに横たわったまま、火球をかかげるタマモがいたりして・・
「うおぉぉぉ!?ちょっと待て!!違う!!!これは西条が・・・・・って居ねぇし!!!
えっと・・・あっと・・・・イヤー!!!!炎イヤー!!!!」
「・・た・・・タマモ・・待つでござる!!いくら先生でも死んでしまうでござる!!」
「・・・・・問答無用。」
・・・・・。
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!」
・・・結局こうなったのは言うまでもない。
◇
「・・・ったく・・。具合悪いんなら狐火なんて出すなっつーの・・。」
あれからすぐ、タマモは目を回して倒れてしまい・・、
病みあがりの上、無理をしたのがたたったのだろう・・すっかり大人しくなってしまっている。
やれやれ、とばかりに口にする横島に、タマモは少し目を細めて・・・
「・・らしくもなく、はしゃいじゃったのかもね。
ああいう乱闘みたいなことも、しばらくやってなかったから・・。」
「・・・バーカ・・・・。」
言葉とは裏腹に、横島は気遣わしげにタマモをのぞきこむ。
まだ少しつらいのだろうか?苦しげに息をする彼女の額には、うっすらと玉の汗が浮かんでいた。
「あと2、3日もすれば元の調子に戻ると思う。
・・やっぱり、あんたは信用できないわね。油揚げは自分で買いにいかないと・・。」
「・・・ああ・・そうしろよ。店のおばちゃんも心配してたぞ?」
・・・・・。
部屋の外から聞こえるいくつもの声。
どうやら、美神、おキヌ合作のおかゆをシロが取り落とし、あろうことか西条の頭にそれがかかるという・・
・・とんでもない状況が出来上がってしまっているらしい。
いずれこの部屋にも騒ぎは飛び火してくるだろう。
・・・。
事務所の中には、ずっと変わらない・・優しい空気が流れていて・・・
心地よい感覚。
・・それに横島は目を閉じる。
「・・・強くならなきゃな・・。」
ポツリと1つ、つぶやいた。
強くなる・・・今はそれぐらいしか思い浮かばない。
「・・?なに?急にどうしたの?」
それに、タマモは怪訝そうな顔を向けて・・・・
「今回の件で自分の実力不足を痛感したよ。・・もう少しでお前を失うとことだった・・。」
弱々しげに語る青年に、タマモは思わず言葉を失ってしまう。
そんなことはない、と言いたかった。
横島はちゃんと自分を守ってくれたのだから・・・。
迷惑をかけたのは・・こちらの方なのに・・・・。
「・・横島・・。」
「・・・だから、まだまだ・・・強くなろうと思ってる。
妙神山ってトコにいるオレの師匠に言わせれば、『信念さえあれば、強さの上限はない』んだと・・・。」
生真面目な上、少し考えの古くさいあの竜神様のことだ。
いまいち信憑性に欠けるが・・・・・今は、一応信じておきたい。
この日々の暮らしを守りたいから・・。
・・・・二度と・・・・・大切なものを失いたくないから・・。
・・。
「・・呆れた。今でも充分強いのに・・・」
「・・あいにく、オレは欲張りなんだよ。」
ペロっとしたを出しながら言った後、彼は勢いよく立ち上がった。
・・・・・。
「ん。硬い話はこれでお終い。・・あ!その稲荷寿司1つくれよ。腹減ってんだよ。」
「・・え?・・あ!な・・・なにするのよ人の食べかけ!」
――・・・穏やかな時間は・・・もうきっと長くは続かないかもしれないけれど・・・
「?なんだ?なに赤くなってんだよ。」
「・・う・・うるさいわね。・・何でもない。」
――・・それでもせめて・・・・今だけは・・・・
・・・だが・・
それでも刻は動き始める。
全ての・・・あらゆる人の何かを、確実に奪い去りながら・・・
無数の痛みをともなって・・・・
世界は・・・その時から、少しずつ変わり始めていたのだ。
〜おしまい〜
『あとがき』
〜おしまい〜って・・・ちっとも終わってないじゃん>オレ(笑
というわけで、スケールが無駄に大きくなってきましたね〜
神でも悪魔でも人間でもない敵って1度やってみたくて・・・・(爆
今回登場のドゥルジさんが登場するのも当分先の予定ですし・・まとまるのかなぁ・・。
来回は、小休止もこめて、ライトでラブコメチックな話にする予定です。
タマモには今度も存分に空回ってもらおうという・・(笑
なにはともあれ、最終回です。読んでくださった方ありがとうございました。
コメントをつけていただいた
誠さん、ヒロさん、GTYさん、BOMさん、ヴァージニアさん
gosamaruさん、羅綺紫好姫さん、U. Woodfieldさん、斑鳩冥さん、あらひさん
浪速のペガサスさん、紅蓮さん (抜けてないか不安です(汗)・・これで全員・・ですよね?)
は
もちろんのこと、こっそり見守ってくださった方(いるのかな(笑))にも本当に感謝してもしきれません。
ありがとうございました〜
ご意見・ご感想があればお聞かせください〜それでは〜
今までの
コメント:
- 終わりですか?、それとも別のタイトルで続くのかな?とにかく一段落お疲れ様でした^^。 (羅綺紫好姫)
- 良かったです〜♪終わりとなってますが、まだ別タイトルでやられるんですよね?
一区切りついたという事で、お疲れ様でした〜。 (紅蓮)
- とりあえず一段落ですねー!!お疲れ様です。『聖痕』、良かったですねー!今回の話で一番、印象に残ったのは、最終回で書かれていた次回への伏線ですね。こんなに世界が広がるなんて、流石に想像できませんでした!この意表を突くストーリー展開がまた素晴らしいですね!!あと個人的には、横島や西条が新たに妙神山で必死に修練を積むってのも良いですね。これからもガッバッテください! (GTY)
- お疲れ様でした。『聖痕』楽しく読ませて頂きました。これで終わりじゃないですよね?伏線ばっちり!!ですものね。続き(別タイトル?)楽しみにしてます。 (taka)
- どもーヒロです〜
えー何はともあれ、完結ご苦労様でした。面白かったです。
裏では何かいろいろと大きなことがあるみたいですが、欲張りな横島君と(笑)タマモ達がどう立ち回ってくれるのか?首をナが〜くして見守りたいと思いますです〜
なにはともあれ、お疲れ様でした。
じゃぁちょっとハイテンションに、次が読みたいぜ!!!!と(汗)であであ〜次回作も期待しております〜ご苦労様でした〜 (ヒロ)
- まずは一言…『聖痕』完結、お疲れ様でした〜!Σ( ̄▽ ̄)b
アレですな、敵が神魔、人間でもないっていうのは新鮮です。これからのストーリー展開がメッチャ楽しみですw(伏線も含めて(ぇ
んで次シリーズはラブコメですねっ!?ラ・ブ・コ・メなんすよねっ?!
Σ(°▽°)ヒャッホーイ!来い、ハートフル!(笑)
完結おめでとうです、次回も期待してます。ではっ! (BOM)
- 連載終了お疲れ様でした(^^)
色々と複線を散りばめながらの完結、つまりはこの後さらに物語が複雑怪奇、そして面白くなっていくんですね(笑)!期待して待っていますよ(ニヤリ)。
人でも神でも、ましてや悪魔でもないもの。それとの戦いですか…。楽しみです!
ではもう一度、完結おめでとうございます。次回を期待しつつ…。それでは!!
|д゜)。○(俺としては西条と横島と雪之丞が次回から活躍してくれるといいなぁ…) (浪速のペガサス)
- 何だか壮大な事件の前触れのようなものがありますが、取りあえずは解決なんですね。
次はラブコメということですし、流れからいえば横×タマなのかな? 楽しみにしてます。
>「・・・うあ・・革命が早まりそう・・・・。」
ここ、ミラクルヒットでした。 (U. Woodfield)
- ―――またひとつ、横島とタマモの絆が深まりましたね。
<事務所の中には、ずっと変わらない・・優しい空気が流れていて・・・
2人は知らない。
裏ではアツアツ(多分)のおかゆを頭からかけられた西条が、優しい空気どころじゃないことに・・・(汗)
そしてラプラスにも見通せない時代・・・
そのことに2人が大きく関わってきそうですね。次回作への期待感が高まります。 (ヴァージニア)
- 初めまして。
ちゃくちゃ面白かったです。
ちゃっかりタマモの狐火から逃げておきながら、おかゆをぶっかけられる西条が最高でした(笑)
全てにおいてタマモに萌えました! (クホ)
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