ザ・グレート・展開予測ショー

続・GS信長 極楽天下布武!!


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 1/23)

           安土城の濃姫も,
   炎上する本能寺を見つめる光秀も,
高松城を沈める湖にその身を移す秀吉も,
        北陸で交戦中の勝家も,
            厩橋の一益も,
          勝家に従う利家も,
            機内の恒興も,
        瀬戸内海を睨む長秀も,
    女武将として名を上げた加江も,
     京の町に一人佇む五右衛門も,
             堺の家康も,一斉に空を見上げた。



光は,尚仄暗い天空を駆け上り・・やがて,消えた。















ドンドン,ドンドン,ドンドン……
「ん〜……?」
俺は,何者かが乱暴にドアを叩く音で目を醒ました。
「……」
思わず辺りを見回す。
「……やっぱり,夢じゃないか……」
そう,此処は昨日迄の自宅・・ゲルじゃない。確かボロアパートとか言う(ボロは余計)……まあ,貧乏長屋みたいなモノらしい。
そして,俺の名前は日吉でも藤吉郎でもなく……
秀吉。
あっちで“もう一人の俺”が使ってた名前だ。……そう言やあいつ,あの後どうしたかな。出世出来たのかな。あの殿の小姓があいつの名前を知ってたから,殿に仕えてはいたみたいだけど……。
「……」
ドンドン,ドンドン,ドンドン……
『先生え〜,先生え〜!起きるでござるよ〜!』
……兎に角,開けてやるか。自分を先生と呼ぶ,この声は……
ガチャ……
「お早うございます,先生!」
「お早う……竹中さん,だったっけ?」
「んも〜,先生ったら!半兵衛で良いと言ってるではないですか」
「ご,御免。で……半兵衛?こんな朝っぱらから如何したの……?」
「朝の散歩に行くでござる!付き合って下され!」
「……“俺”は,毎朝半兵衛と一緒に散歩してたの?」
毎朝散歩に付き合って……て……。それでこの子,こんなに“俺”に懐いてるのか?けど,俺はその“俺”とはやっぱ別人な訳で……う〜ん,良いのか?(何を)
「あ,はい。そうでござる。豊臣先生は,何時も拙者の散歩をしてくれていたでござるよ」
「ふ〜ん……」
…………え?拙者“の”散歩……?拙者“と”じゃなくて?
「さ,ロープを持つでござる」
「え?いや,ロープって……」
ロープの先は,半兵衛に繋いである。って,これじゃ丸で犬の散歩……
「しゅっぱーつ!」
「・・へ?」
瞬間,半兵衛が駿馬もかくやと言う速度で走り始め,俺の足は地を離れた。
「わんわんわんっ♪」
彼女のスピードに俺が付いて行ける筈もなく,凧の如く浮かんだ俺は,右に左にと振られ,あちこちの障害物(?)にぶつかった。
薄れ行く意識の中で,俺は思った。そう言えばこの娘,犬の妖怪だったっけ……と……。
「狼でござるッ!」



結局,満身創痍の藤吉郎がアパート迄帰ってきたのは,出発してから3時間後……8時になってからだった。
「ひい,ひい,ふう……」
倒れ伏し,苦しげに妊婦の様な呼吸をする藤吉郎。重治,は朝食を摂りに住居である織田除霊事務所へと帰って行った。
「ど,如何したんですか。豊臣さん」
「え……?」
その秀吉に,セーラー服に身を包んだほのぼの系の美少女が声を掛けてきた。
「早くしないと,学校遅れちゃいますよ?」
「あ……うん……」
そう。“豊臣秀吉”は高校生。学校に行かなくてはならないのだ。……共学の。ホモばかりと言う事はないだろう。
「?」
「あ,えと……君は……?」
「あ……!そうだ。豊臣さん,記憶喪失だったんですよね。御免なさい,私ったら無神経に……」
「い,いや別に……。所で君は?」
「あ,は,はい!私,豊臣さんの隣の部屋に住んでる,浅野ねねっていいます!」
「ねねちゃんか。宜しく……ってのも君にとっちゃ変なんだろうけど,改めて宜しくね」
「は,はい。宜しくお願いします」
「ねね〜,どないしたんや」
「あ,貧ちゃん」
ねねの後ろから声がした。
「貧ちゃん?」
「あ,うちに取り憑いてる神様なんです。元は貧乏神だったんですけど,豊臣さんのお陰で福の神様にしてもらえたんですよ」
「俺のお陰で……?」
「はい。感謝してます!」
「……つっても,俺のした事じゃないしなあ〜」
「ねね?」
「あ,貧ちゃん。豊臣さんよ。記憶無くしちゃったんだって」
「ほおぉ〜,そりゃ大変やったな。坊主」
「って,あんたは!」
「ん?」
「豊臣さん?」
この声,この顔,そしてこの小さな図体は……
「竹千代様じゃないですか!」
松平竹千代・・徳川家康だった。
「たけちよ……?」
「……!何でそんな事知って……」
「お,俺っすよ!日吉です!」
「ひ,日吉にーちゃん!?てっきり顔が似てるだけや思とったら,本まに生まれ変わりやったんか!?」
「いや,か如何かは知らないすけど,今,俺の記憶は日吉っす」
「ほお〜。いや,まあ何でもええ。久しぶりやな,にーちゃん」
「お久しぶりっす。でも,竹千代様。神様って一体……」
「……ああ。秀吉はんの後,天下を取って神になったボクやけど神様としては未だ半人前なんや」
「秀吉の後……?」
「い,いや。それは気にせんでええ!……ま,それで修行って事でねねん家に福をもたらすんや」
「はあ。修行っすか。神様にもそんなんが有るんすね〜」
「せや。わいの事は,竹千代やなく東照大権現様と呼びい」
「こら,貧ちゃん。豊臣さんに失礼よ」
「いや,良いよ。そんな。どの道俺も,竹……大権現様を呼び捨てになんか出来ないし」
「はあ……」
「……にーちゃん」
「はい」
「にーちゃん,その身体の記憶は全く無いんか?」
「あ,はい。すいません……」
「……」
「?」
「にーちゃん……」
「はい」
「にーちゃんな,ねねと祝言挙げたんやで」
「・……?」
「び,貧ちゃん!?」
「本まのこっちゃろ?」
「い,いや。そうだけど,でも……ッ」
「マ,マジですか……?」
「お〜。マジもマジ。大マジや」
「ちょ,ちょっと貧ちゃん!?」
「何や,ねね」
「ほ,ホントの事だけど,でも,あれは……っ」
「……にーちゃんが欲しくないんか?ねね」
「い,いや。そりゃ……欲しい……けど……」
「なら,今がチャンスやないかい。記憶喪失(?)で今迄の女の子との思い出がリセットされたにーちゃんに,ねねとにーちゃんが(便宜的にとは言え)祝言を挙げたと言う事実。正に千載一遇,一発逆転の妙期や!今なら加江はんもヒカリはんも恐ないで!」
「あ,いや。うん,そうだけど……」
「ボクの役目はねねに福をもたらす事や。にーちゃんこそ,ねねが最も欲しいもんやろ」
「う……うん!」
「なら,頑張るんや!」
「うん!私,頑張る!泣いてたら,尾張の田舎者って都の人達に笑われちゃうもんねっ!」
「……何の話しとるんや……?」
「って,あ!もうこんな時間!豊臣さん,遅刻しちゃいますよ。早く学校行きましょう!」
「あ。う,うん……」
ねねに連れられ,藤吉郎は学校へ向かった。

「……高台院サマは,太閤はんの正室やった。相性はええ筈や。それに,高台院サマは太閤はんの死後,ボクに協力してくれたし……。ねねが高台院サマの生まれ変わりなら,恩返しもせなな」

「この勝負,勝つのはねねや。にーちゃんは,絶対ねねのもんにしてみせるで……!」


「よしっ。集まったな,除霊委員」
学校の授業は,藤吉郎にとって楽しいものだった。元々頭は良い。新しい知識を詰め込むのは,彼にとって苦痛では無かった。
そして昼休み。藤吉郎を含む“除霊委員”は,体育教師に放送で呼び出された。
「この体育倉庫に幽霊が出るんだ。除霊してくれ」
それだけ言うと,体育教師はそそくさと立ち去った。
「……」
「と,言われてもねえ……」
因みに除霊委員の顔ぶれは以下の4名。
顔は恐いが清貧を以て鳴る世界屈指のエキソシスト斎藤利政(クリスチャン名・ドウサン)の弟子,ヴァンパイアハーフのゴーストスイーパー・ミツヒデ=ド=コレトー。
呪いを専門に扱う『小笠原事務所』所属の見習いGSで精神感応能力を持つ,マエダー利家。
机の妖怪(藤吉郎の机),南。
そして,藤吉郎こと豊臣秀吉。
「如何すれば良いんですか,十兵衛様」
「ミツヒデで良いですってば。……そうですね,まずは幽霊に姿を現してもらわないと」
「なら,ワッシに任せてくんしゃい」
「犬千代様(のそっくりさん?)」
「フヌーーーーーーーーっ!」
「わわっ!何?」
「マエダー君の精神感応よ,豊臣君」
「精神感応?」
「他人の精神に干渉するの。今回はそれで幽霊の波長を崩して,姿を見させるのね。……まあ,あんまり長い間使うと正気を失うらしいけど。『セクハラの又左』って渾名も有るらしいわ」
「ふうん……」
まあ,あっちの彼もそんな(可哀相な)キャラだったけど……。
「!出た」
「あいつか……」
「あいつは……仁王!?」
「!豊臣君,何で仁王君を知ってるの?」
「え,いや……」
「仁王君はいじめっ子だったのよ。でも,ある日いじめてた子に此処で逆に殺されちゃって……。あれから16年,怨念が積もって自縛霊になっちゃったのね……」
南は,備品としてこの学校を何年も見てきていた。今は生徒として授業を受けているが,その切っ掛けを作ったのは“秀吉”だった。
「……」
此処は自分の居場所じゃない,自分のやってない事で感謝されても困る……。藤吉郎はそう思うが……。
「豊臣さん!文珠を!」
「あ,うん!」
天回の薬でも,飲んですぐに桁外れの力を発揮した藤吉郎である。文珠も,既に出せる様になっていた。
「えと……」
「『浄』の文字よ,豊臣君!」
「よ,よし。くたばれ,仁王ーーーーー!」

『浄』

バシュアァァ……
「……これで終わりですね」
「相変わらず凄いですノー」
「お疲れ。豊臣君,マエダー君」
「て言うか,十兵衛様と南は何もしてないね?」
キーンコーンカーンコーン……
「あっ,予鈴」
「帰りますケン」
「ああ……。……南?」
机担いでる……。そう言えば彼女は机の妖怪……。
「……俺,運ぶよ」
「え?でも……」
「良いって。俺の机だし。よっと……」
「あ……」
そうだ。あたし,豊臣君の物だったんだ……。
「?」
ああっ。豊臣君の“モノ”が私(本体)に当たってるぅ……!……柔らかいけど。
「??南……?」

学校机と使用者生徒の禁断の恋かあ……。
青春よね〜。


「……ん?」
「どうした?ヒカリちゃん」
「いや,何か物凄い不快感が……。それと,ヒカリじゃなくてヒナタよ」
「ああ,御免。ヒナタちゃん」
その頃ヒナタは,友人2人と共に六道女学院の屋上で弁当を広げていた。
「でも,やっぱ性格変わったな」
「……あたしとヒカゲを足したのがヒカリだからね……」
「そ,そか……。いや,何か御免」
ヒナタ・・ヒカリの友人A。ヤンキー風霊能少女,篠原まつ。マエダー利家とは目下交際中だったりする。
「いや,いいけど」
「所で時読さん」
「何?」
「信長お兄様もお記憶を失われたと言うのは本当かしら?」
「え,ええ……」
「何て事……!」
ヒカリの友人B。市流除霊術後継者,市小谷。世界屈指のゴーストスイーパーとされる織田信秀が市家の跡取り娘に生ませた子で,信長の異母妹に当たる。
「市よお。織田さんは腹違いとは言え,あんたの兄貴だろう?」
「そんなの関係有りませんわ!お兄様以上の殿方なんて,この世に存在しませんわ」
「て言うか,お前も彼氏いるだろ」
「それとこれとは話が別です」
「そうかよ……。お,所でヒナタちゃんは?豊臣さんも記憶喪失なんだろ?」
「うん……。まあ,ね」
何だろう……?朝から何か,むかむかするなあ……。

ヒナタには,日吉浮気察知センサーが付いてるみたいね……。
                            byヒカゲ


一方信長は,事務所の応接間に客を迎えていた。
「聞いたわよ〜,信長君〜。記憶喪失なんだって〜?私,心配で看に来ちゃった〜」
「き,吉乃……?」
式神『十二神将』を操る女GS,六道吉乃だった。
「でも〜,以外と大丈夫みたいで良かった〜」
「あ,ああ……」
「私の事〜,覚えてる〜?」
「い,いや。すまん……」
似てる……と言うか,同じ顔の奴なら知っているが。とうに死に別れた吉乃の顔(しかも若い)をもう一度見れるのは嬉しいが,目の前の女は吉乃であって吉乃でない。
「じゃあ〜,思い出させてあげる〜」
「え……?」
信長は,一瞬固まった。
吉乃が,いきなり服を脱ぎ始めたのだ。
「ちょっ,待っ……!何やってんだ!」
「だって〜。最近信長君,吉乃の事可愛がってくれないんだもの〜」
「はあ!?」
やっぱり吉乃に手ぇ出してんのか!?こっちの俺!
「溜まっちゃってるの〜」
「い,いや,落ち着け!?」
「ホントよね,こんな昼間っから……」
「!?」
突然,背後から発された声に振りかえると,これまた見覚えの有る顔が立っていた。
「お濃!?」
呪いを専門とする女GS,小笠原帰蝶だった。
「怪我が治ったって言うからお見舞いに来てみたら,記憶も無いって言うのに私を差し置いて吉乃と……」
「ちょっ……いや,待て。違うってえぇっ!」
「如何違うのかしら……!?」
「そ,それはだな……。えーと……」
大魔王と呼ばれた織田信長も,惚れた女には弱いのでした……。


「……やっと帰りやがったか……」
どうにかこうにか2人を追い返した信長は,疲れ切った顔でソファーに身を沈めた。
「自業自得でしょ」
「……仔狐,居たのか」
「居たのよ」
考高が応接間に入って来た。……盗み聞きしていたらしい。
「なあ,仔狐……」
「何?」
「“俺”って,他にも手ぇつけた女とかいんのかな……?」
「さあ……。良く知らないけど,他にもいたんと思うよ?」
「そっか……。……まさか,事務所の連中迄ってこた無ーよな……?」
「事務所の娘は皆,トヨトミ狙いだから……」
「猿がねえ……。お前もか?」
「まあね。でも,私は皆程独占欲が強くないから……」

「愛妾ってのが,性に合ってるわ」

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