ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(22)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(04/ 1/23)









「あなた達・・・強くなって何をしたいの?」

「・・・・・ああ!?」

力の限り打ち合ってへたばっている俺と陰念に、3人の中で最強ゆえ一番余裕の残ってた勘九郎が声を掛けて来た。

「そんなの決まってんだろ兄貴。強くなって・・・・強くなって・・・・あれ?」

金・・・女・・・権力・・・名声・・・そんなものを漠然とイメージしてたのだろう。陰念が即答しようとして言葉に詰まった。
違和感を感じたのだ。

「雪之丞、あなたは?」

「――お前はどうなんだよ?」

「質問に質問で返すのはずるいわよ?・・・まっ、ずるいのはお互い様ね。
だって私にも答えられない質問だもの、それ。」

ただでさえへたばっている所、ますます脱力して行った。

「「あのなあ・・・・・・・・」」

「でも、これって重要よ。
いい?・・・結局、メドーサ様にここまでついて来れたのはこの『答えられなかった』3人なのよ?
雪之丞も陰念もこう思った筈よ。『強くなって・・・・もっと強くなる』。
答えになってないけど・・・これが私達の本質、他の連中との違いなのよ。だってそうでしょ?
他に目的があって力を求めてた奴はそれを叶えるだけの力を手に入れたら、後は要らないんだから。
私達が力を求めるのに他の目的なんて存在しないのよ。力そのものだけが目的なんだから・・。
・・だからどこまでも強くなれるのよ・・・・。」

勘九郎はそこで言葉を切り、少し躊躇ってから付け加えた。

「・・・・人間の限界まで。」

「・・・人間を、超えてえのか?」

「そうねえ・・・・・・。」

このまま行けば、俺達はきっと人間が到達しうる中で最高の力を手に入れるだろう。・・・だが、その先は?
・・これ以上強くなれないって時に「強くなって、もっと強くなる」俺達はどうなる?
その場所はまだ・・あのメドーサからも遠いのに。

「俺も・・・・超えてえぜ。」

陰念が呟いた。

「あら、あなたにはまだまだ先よ?」

「分かってんよ・・・・でも、超えてえぜ。」

人間を超えて強くなる・・・・・人間じゃなくなる。俺はまた、「あの日」の感覚を思い出した。
・・強くなって・・あの破壊衝動と憎悪に、血と肉片の海に立ち返るのか?
人間を超えてメドーサに近付く・・・・あいつの同族になるってのは、そう言う事だ。

あの時、俺は確かにそう言う力を求めた・・・求めて来た。
だけど俺が誓ったのは・・・ママに誓ったのはそう言う強さだっただろうか?


ゆきくん、あなたにはつよいひとになってほしい・・・つよくなれる


・・・・・そんな意味だっただろうか?



 + + + + + + +



時間の流れも定かじゃない暗闇の中、過去の情景はその感情さえも妙に鮮やかに蘇ってくる。
こーゆー場所に30分もいると普通の人間は壊れてしまうらしいが・・・修行の成果だろうか・・いや、本当はまだ5分も
経っていなかったりするって事もありなんだよな。それが、こーゆー場所の怖さだ。
何も考えないのが一番だ・・・心を空にして・・・・、・・・・・・・・駄目だ。精神修行はやっぱりなってないぜ、俺。

色々と気になる事が浮かび上がり、それらが全て後ろ向きな方向へ流れ出す。

あいつらはもうパピリオ救出に出発しただろうか・・・まだ見つけられずにいて・・クソチビは哀れあのメギドフレイムの
灰となり・・・・いやいや、今ごろは救出成功して・・・あいつは・・俺が来ていないのを見て幻滅し・・・・・
「やっぱり、ジョンでちゅねーーー」とかホザいて・・・・

俺はいつまでこうしていれば良いんだろうか・・・・猿が帰って来ればそれなりに話通して、釈放される筈だが・・・
すっとぼけられちまうか・・・?一生出られねえ・・とか・・・?そもそも奴らがパピリオを処刑すれば・・既成事実が出来て
妙神山悪者論とか活発になって・・・もう俺を出すどころじゃなく・・・。

何せあの猿が入ってた所だからな・・・時間の流れが外とは違うって事もありえるぜ・・?もう100年くらい経っているとか・・
いや、2、3秒とか・・・?・・・・こんなところで体感時間2ヶ月なんて冗談じゃねえぞ・・・!


いや、助けに行くんだろ?あのドチビを?・・ママの様に。
陰念とケジメ、つけるんだろ?
・・・・・行けるさ、って自分に誓ったじゃねーか?下手な口約束より、大事なんだぜ?そーゆーのは。


いやまあ、そうだけど、どーやって?


それを考えんだよ、自分で。・・・・一匹狼だろーが?
「決して流されず、状況を見極め、判断し、実行」しろよ。


状況、か・・・・・。


そうだぜ。「見えない。」「聞こえない。」「時間の感覚がない。」じゃねえぞ。
・・探せ。自分の知覚できるものを。見出せ。自分の動かせるものを。
でなければ何の為の霊力だ。何の為の修行だ。・・・・・何の為の「強さ」だ。


・・・・・・・・・一つ、見つけたぞ。


うん、いいぜ・・・その調子だ。・・・何だ?言ってみろ。


お前・・・・・・・「俺自身の心の声」じゃねえな?
巧みにカモフラージュしてあるけど、・・・れっきとした、俺以外の他人が送り込んで来た精神波だ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



・・・・・・・・誰だ、てめえ・・・?どこから、送ってるんだ・・・・・・?




  フフッ・・クスクスクスクスクス・・やっと気付いたのか・・・けっこう鈍いよね、キミも。
  まあ、こっちのモノマネがバリウマだってのもあるんだろーけどね・・口調だって波長だってぴったりだったろ?
  クスクスクス・・・・・他にもレパートリーあるけど、キミのモノマネが一番自信作なんだよ・・・・クスクスクス・・・


妙に甲高い声を思わせる精神波だ。男か女か・・子供か大人かも判別出来ねえが。
状況からして人間かどうかさえも。・・・・・わざとそうしてるのかもしれない。
敵味方、妙神山の関係者すべての顔を思い浮かべてみた・・・そのどれとも一致しない・・。

だけど・・何か・・・引っかかる・・・・・・。全く知らねえ奴でも、ない様な・・。


  二番目の質問から行こうか・・・どこから・・・この岩山は精神波も霊波も完璧遮断だよ?外から送れるはずないじゃん。
  まあー、実は送ろうと思って送れない事もないんだけどねー。
  やっぱ難しいし、キミと一緒にこの中に入ってると考えた方が無難でしょう・・ククッ。


元からここにいたのか?あるいは俺と同時に入ってきたのか?だとしたら、いつ、どうやって?
そして・・・ひょっとしたらこいつはこうやって・・以前から、俺の中に入り込んだりしてるのか?
これ程の能力者なら気付かれずに俺の心の声を装って俺の思考をコントロールする事さえ可能だ・・・・!


  おっと、念の為に言っとくけど、キミとこーして話すのは今日この時が初めてさ。
  能力とかってのも違うんだよなあ・・・まあ、ちょっとからかって・・いや、遊んであげてるだけだよ・・。
  普段のキミにまでこんな事はしてない。今まで一度も。
  信じる信じないは勝手だけどね・・・・クスクスクスクス・・・・


  そして一番目の質問の答えだけど・・・・、
  ・・・・・・やーめたっ。「てめえ」なんて言う口の悪い奴には教えなーい。
  ・・ってのは冗談だけどね。
  お猿さんにも言われてるだろ?短気を起こすなって。モノを知るには順序がある・・・・ってね?
  キミの知り合いでこんな事言ってる人もいたねー?「絶対に不可能な事を消去して後に残ったものが真実」って。
  実に名言だよ、うん。


こいつは猿の事も美神令子の事も知っている。


  ・・・何で知ってるかって?クスクス・・キミの知ってる人なら全部知ってるさ。
  その人のモノマネも結構自信あるんだよ?


・・・・モノマネ・・・・・・・・――――!
つまり・・・美神令子ではないって事か・・!


「そういう事。・・・・なかなか分かって来たじゃない?」

俺の目の前、闇の中に美神令子が立っていた。・・・今のじゃない。会ったばかりの頃、GS試験でのあいつだ。
チャイナドレス姿で、ご丁寧に脇に変装用のウィッグまで抱えて着け外ししてみせる。
「見ている」ってのとも違うな・・・・頭に直接視覚イメージを送り込まれて「見させられている」感じだ。

「分かって来た・・?何をだ・・・・?」

「このゲームのルールよ。これ以上のヒントは情報料取るわよ・・・・?」

ああ、そうかい・・・・その「順を追って知る」ゲームの事か。
・・・・何でてめえが誰かを知るのに、そんな勿体付けられなければならないんだよ?


  あー、勘違いしないでほしいな・・・キミのゴールはこっちの素性じゃないんだ。・・それはおまけみたいなものでさ。
  ・・・・つまり、キミは“ある事”に気付かなくちゃならないんだよ。自力でね。


“ある事”・・・・・気付かなくちゃならない事・・・・?自力で・・・・?
どう言う事だ・・・?一体何をだよ・・・・?

俺の「肩に、何かが当たる」感覚・・知っている・・・・先が二つに分かれた矛。

「まだ分からないのかい?この間抜け。これがこーですって私が教えて良いモンじゃないって言ってんのさ・・!」

背後から俺の前に回り込んで来た。白く薄紫がかった長い髪、堀の深い面立ち、鋭く邪悪な気配・・・。



「メドーサ・・・」




―――いや、やはり違う。
メドーサの振りをした幻影だ。六道冥子の式神に小笠原エミがアテレコした様な・・・
あれよりよっぽど奴の特徴を掴んでやがるが。


  そうだろ?やっぱりこーゆー人達のモノマネが一番ピシッと決まるね。


「非情なんて言うのはやっぱり私の様なプロフェッショナルにこそ似合うのさ・・・多少腕が立つからって
エリート育ちのお嬢様なんかに使いこなせる心構えじゃない。・・・・奴が本気で体裁の為に人間を葬れると
思えるんだったら、お前は本物の間抜けだよ。」

メドーサは・・いや、メドーサに化けたそいつは辺りを見回しながら言葉を続けた。

「・・・何で、ここなんだい?人間を封じ込めるんだったらもっとそれなりの拘束設備がある筈だ。
何で・・・・千年以上も昔に猿神を封じ込めて・・・・一旦解除されてる様な大げさな年代ものを持ち出したのさ?」


小竜姫の考えてる事なんて俺に分かる筈ねえだろ・・・?
だけど、メドーサの・・そいつの言葉から、また別の考えが浮かんで来た。具体的にではないが・・


つまり・・・・・・ひょっとして・・・・!?



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 Bodyguard & Butterfly !!
 (続く)
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二転三転七転八倒な(ゑ?)この期に及んで謎の新キャラ出してみたり・・・・・嘘です。「新」ってあたりが。
(ああっ、卵投げないでくだちゃいっっ!!)バレバレかな?と思いつつもすっとぼけておきませう。
少なくともこのモノマネ好きなテレパシストは老師も美神さんもメドーサも知っていて、ゆっきーのポリシーも
分かっている様です。とまあヒントになる様で正解に対しては全然なっていないヒントを・・・・。

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