ザ・グレート・展開予測ショー

タコ焼き


投稿者名:BOM
投稿日時:(04/ 1/22)



『じゅ〜っ』と音がする。
部屋の中に何かが焼ける音がする。
それと共に『ふわっ』と美味しそうな匂いも溜まる。
遂に彼女はたまらなくなって台所へと向かった。

「なーに、この良い匂いは?」
「ん、ルシオラ?どうしたんだ?」
「ヨコシマ、この良い匂い・・・何?」
「ああ、たまに作るんだよ」

そう言って横島はくるっ、くるっとそれをひっくり返す。
穴の中に引かれた生地が固まってクシでひっくり返される。
ちょうどいい焼き加減だ。

12個ひっくり返されたそれは例えるなら小さな山。
湯気がモクモクと立っていて、今にも中にある美味さが爆発しそうな山。

やがて横島はそれを皿に盛りつける。
ルシオラは盛りつけられたそれをじっくりと見ている。
そしてまた横島は新たに手慣れた手つきで穴の中に生地を入れていく。

『じゅ〜っ』と、音がする。
生地が焼けて固まっていく音がする。
そして横島はその生地の中に一番核となるものを入れていく。
これがなければ・・・ただの「焼き」になってしまう。

やがてある程度生地が固まったところで再び横島はそれをひっくり返す。
くるっ、くるっとひっくり返す。
そしてまたできた、12個の山。

「・・・ヨコシマ?これ・・・何?」
「ああ、ルシオラは知らないのか。こりゃタコ焼きっつーんだよ」
「タコ焼き?」
「そう。あ、今できたら持って行くから戸棚から青のりとソースとって待っててくれよ」
「うん。わかった!」

ルシオラもやはり興味があるらしい。
今まで自分が食べたことのない食べ物。調べ甲斐があるというものだ。
戸棚から横島に言われた青のりとソースを取って居間へと向かう。
コタツに入って横島を待つことにした。

(タコ焼き・・・聞いたこともないわね。でもヨコシマが好きなものなら・・・楽しみね♪)

そう思ってるうちに横島がタコ焼きを載せた皿を持ってやってきた。
コタツの上にそれを置いて自分もコタツの中に入る。

「ルシオラ、ソース使うか?」
「使うとどうなるの?」
「んー、なんつーかその・・・美味くなるとしか言いようがないな」
「う〜ん・・・いいわ、まずつけないで食べてみる」

そう言ってルシオラはタコ焼きに楊枝を刺して自分の口に持って行く。

ぱくっ。

口の中に入れての第一声は・・・

「はふっ!?はふ、ほふ、はふ・・・」

言葉ではなかった。多分熱いとか言っているのであろう。ほのかに顔が赤くなってるし。
口の中でタコ焼きを転がすルシオラ。ようやくそれを飲み込んで一言。

「・・・・・・熱い・・・・・・」
「いや、そりゃ焼きたてだから熱いのは当たり前だけど・・・」
「でも・・・・・美味しい!美味しいわよ、ヨコシマ!!」
「そ、そうか?いやぁ、作った甲斐があるなあ!」

照れる横島。それなりに自信はあったのだが他の人からの評価はやはり嬉しい。
ましてや甘いもの好きのルシオラからそう言われるとなおさらだ。
ルシオラはタコ焼きを刺した楊枝を口にくわえながら、ちょっと上目遣いで一言。

「ねえ、ヨコシマ?・・・ソース・・・つけてもいい?」
「え?ああ、いいけど?」
「ありがと♪」

ルシオラはタコ焼きにゆっくりとソースをかけてまた口へと運ぶ。

ぱくっ。

「はふっ、はふっ、ほふっ・・・・」

ごくん。

「・・・どうだ?」
「・・・・・・」
「ル、ルシオラ?」
「・・・美味しい!ソースのちょっとした甘みがからんでとっても美味しいわ!」

凄くご満悦な表情のルシオラ。横島も美味しそうにタコ焼きを食べる様子を見て嬉しいものを感じる。

(やっぱ作ってよかったなあ、うん)

何て思いつつ、横島もタコ焼きを口に入れる。もぐもぐと口を動かして、

「う〜ん、やっぱり美味いなあ」

などと言いながらもう一個食べようと楊枝を伸ばす。だが・・・

コツン。

「・・・あれ?」

視線を皿の方に向ける。でもそこにはなんにも無かった。
そこにあるはずのタコ焼きがない、というか皿すらない。
一体どこに?横島がそう思ってキョロキョロすると・・・

「ル、ルシオラ?・・・それ・・・?」
「え?何、ヨコシマ?」

見るとそこには皿を持ったままタコ焼きを食べてるルシオラが。
皿の上に乗っかっているタコ焼きはどこにもなく、楊枝に刺さっているのだけで最後だった。
そしてその最後のはもちろん・・・ルシオラの口へ。

ぱくっ。

もぐもぐもぐもぐ・・・

ごくん。

「あー!美味しかった!それにしてもヨコシマってこんな美味しいもの作れるのね!・・・って、アレ?」
「ルシオラ・・・それ・・・最後の・・・ってか、俺まだ一個しか・・・」
「あっ・・・・・・ゴメン」

口に手を当ててハッとなるルシオラ。てへっ、と笑って横島に謝る。
もちろん横島は納得いかない・・・ハズなのだがどうもこの笑顔には弱い。
ルシオラを責めようとした気持ちなんてどこかに飛んでいってしまった。

「う〜ん・・・ま、いいか。また作ればいいだけだしな」
「ほんと、ゴメンね?ヨコシマ?」
「いや、いいって」
「じゃあ今度は私にも作らせてちょうだい?」
「そうだな、材料無くなったから買いに行ってからにしようぜ?」
「そうね。じゃあ早く行こう!ヨコシマ!」
「あ、ちょっと待てっての!おーいっ!」




























甘いもの好きな彼女が何故かタコ焼きを好きになった。

彼の作るタコ焼きが好きになった。

一体どこに彼女が惹かれたのかはわからない。

だけど、彼女は好きになった。

温かいタコ焼きのおかげで、

2人の温かかった心がもっと温かくなった。

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