ザ・グレート・展開予測ショー

GS信長 極楽天下布武!!


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 1/21)

「下天は夢だ!!細かい事は気にすんな!」














「!」
藤吉郎は目を醒ました。
「気絶していたのか……」
寝起きは良い方だ。新鮮な酸素は瞬く間に脳を駆け巡り,思考を覚醒させる。
「そうだ,俺は……。ヒカゲと一緒に殿を迎えに行って……,それで……」
それで……?
それで,如何したんだっけ……?
「その後の,記憶が無い……?」
辺りを見回す。
……全く知らない所だ。少なくとも“もんごる”では無いだろう。
「南蛮……?とも違うな……」
良く見ると,自分の着ている服さえ,最後の記憶と食い違っている。
「な……何なんだ。一体……?」
頬を抓ってみる。痛い。夢じゃない。
「!そ,そうだ,殿は……!?」
見ると,隣りに信長とヒカゲが倒れている。二人の服装も,あの炎上する寺院で見たものとは違う。そして,それは藤吉郎が見た事も無い様なデザインだった。生きている……らしい。
「殿!起きて下さいよ,殿!」


「……で?お前ぇにも判んねえのか,オカルト女」
「……残念ながらね。只──」
「只,何だよ?」
「此処が日本だと言う事は確からしいわね」
「あ?何でだ」
「この部屋に有る本……全部日本語よ。あたし達の使ってたものとは,若干違うけど……」
「ふん……。成程な」
「……」
藤吉郎は,起きた信長やヒカゲに現状説明をした。その後3人で話し合ってみたが「銅鐸が機能せず,妙な所にタイムジャンプしてしまったのだろう」と言う事以外,何も判らなかった。
「蘭丸が居ねえな……」
「!そう言えば……」
「……ま,何が如何なったのか判んねえ以上,何時迄も此処に居ても仕方無え。外に出て見ようぜ」
「はい,殿」
「そうね……」
窓から垣間見える下界も,今迄自分達が見た事のない不思議な風景だ。
「んじゃ……」
と,3人の足がこの部屋の出口であろう扉へと向かおうとした時……
バン!
扉は,外側から開いた。

「先生えぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「!?」
乱暴に開けられた扉から入ってきた少女は,一直線に藤吉郎に飛びついた。
「気付いたでござるね,先生!このまま先生がお気付きにならなかったら,如何しようかと思ったでござるよ〜」
言いつつ,その銀髪の少女は,頻りに藤吉郎の顔を舐め上げる。
「え?あ,はい。……何?」
「先生え〜〜〜〜!」
「あの……?」
ゴゴゴゴゴ……
「はっ!?」
殺気を感じた藤吉郎が少女に押し倒されたまま振り返ると,何時の間にかヒカゲと入れ替わったヒナタが,ひたすら不機嫌な顔で此方を睨んでいた。
「ひいっ!?」
「日吉……?此方,どなたかしら……」
「え!?いや,俺はこんな娘知らなっ……」
「先生〜〜〜〜!酷いでござるよ。何時もあんなに可愛がってくれてるではないですか〜〜〜〜」
「……ふ〜ん……?」
「ちょっ……本当に知らないって!人違いじゃ……」
「ま,馬鹿犬は兎も角」
「え?」
「狼でござるッ!」
部屋に入ってきたのは銀髪の少女だけではなかった。もう一人,金髪の少女も居たのだ。突如発生した修羅場に,信長と共に日和見を決め込んでいた彼女だったが,此処に来て話に割り込んできた。
「私の事も覚えてないの?」
しゃがみ込み,藤吉郎を覗き込み,問う。
「……御免。判んないや……」
「そう……」
「他の二人は?私達の事,判んない?」
金髪の少女は,信長とヒナタにも同じ問いをする。
「俺ゃあ,お前等なんざ知らねーぞ」
「……あたしも……」
「……」
「え?如何言う事でござるか?」
混乱する銀髪の少女に,金髪の少女が答える。
「さあね……記憶喪失って奴じゃない?」


織田信長(21歳)
 世界でもトップクラスの辣腕ゴーストスイーパー(除霊屋)。
 織田除霊事務所の所長。
 報酬は高額だが,仕事の腕は確か。
 短気で横暴で乱暴だが,根は優しい。

豊臣秀吉(17歳)
 信長以外で只一人の織田除霊事務所所属ゴーストスイーパー。
 臆病で情けないが頭は切れる「先生は勇敢でござるよう!」。
 世界で唯一の“文珠”使い。
 文珠とは,霊力を固めた珠で,念を込める事により万能の力を発揮する。
 
時読ヒカリ(16歳)
 信長,秀吉のアシスタント。
 六道女学院“霊能科”所属。
 世界でも珍しい,ネクロマンサー(死霊使い)。
 性格は大人しく,優しい。

「……これが俺等のプロフィールだってか」
「そうよ」
「ふん……俄にゃ信じらんねーな。だとしたら,この俺達の記憶は何なんだ?」
「さあ?テレパシーで,同時に同じ夢でも見たんじゃないの?」
「馬鹿言え」
「……俺達,別の時空のそっくりさんと入れ替わっちゃったって事ですか?」
「或いは,これがあたし達の生まれ変わりとか……ね」
「ヒカゲ?」
「其処の娘達の話によると,あたし達,仕事で死にかけて此処迄運ばれた訳でしょ?死の危険に際して,前世の記憶が甦ったのかもね」
「じゃあ俺達は,タイムゲートで死んじまったって事?」
「……かもね。でも,違うかも知れない。正確な事は判らないわ……」
「……そんな……」
「……」
「えーい,猿もオカルト女も沈んでんじゃねえッ!」
「殿!?」
「うだうだ考えたって仕方無ーだろ。着いた世界で天下盗りだっつったろ!?」
「はあ……」
「まあ,確かにその通りではあるわね。取り敢えず,この世界の事を色々教えてくれる?」
「……良いわ」
「じゃあ,先ず貴女達の事を教えてくれる?如何やら人間じゃないみたいだけど……」
其処で,今迄話に入れずふてくされていた銀髪の少女が手を挙げた。
「拙者,豊臣先生の一番弟子で,人狼の竹中重治でござる!半兵衛と呼んで下され!」
金髪の少女も後に続く。
「……私は金毛白面九尾の妖狐。名は黒田考高。……官兵衛で良いわ」
「人狼に妖狐……ねえ」
「訳有って,此処で世話になってるの。……言っとくけど,今迄私の言った中に一欠片の嘘も無いわよ」
「……そうか」
「信じるんですか?殿」
「信じる他に無ーだろ」
「はあ……」
「で,如何すっかな。これから」
「そうねえ。こんな事を相談出来る人と言えば……」
「織田殿のお師匠様は如何でござるか?」
「……そうね。神父なら……」
「俺の……師匠……?」


「この建物は……」
「殿?知ってるんですか?」
「いや……けどこれは,切支丹とか言う,南蛮の宗教の寺だぜ」
「へえ。じゃあ,殿のお師匠様って人は,南蛮のお人なんですかね」
そんな事を話しつつ,5人(3人と2匹)は教会へと入って行った。信長の師匠であると言う“神父”には,既に連絡を入れておいた(この世界では,離れた相手と会話が出来る,藤吉郎等からすれば不可思議な機械が有る。他にも色々有り過ぎて,この程度のカルチャーショックでは今更と言う感じではあったが)ので,問題は無いだろう。
「……」
信長が辺りを見回すと,随分と頭の後退した中年の男が立っていた。
「やあ,良く来たね。織田君」
「手前えは……!」
「ええっ!?」
「嘘……!?」
そう,信長達も知っていたその顔は……
「蝮!?」
「?おいおい織田君。仮にも師匠に向かって何て事を言うんだい」
その顔は,“美濃の蝮”斎藤道三だった。
「!?手前えこそ,何日和った事ぬかしてやがんだ!」
「……斎藤神父殿は,元々こういう性格でござるが……」
「ええ。真面目でお人好しで生活力が無いって,何時もオダさん,言ってたわね」
「何い!?」
「お,おいヒカゲ……。あの人も,道三様の生まれ変わり……?」
「う,う〜ん……。如何かしら?判んないわ……」


……結局,道三からも,有力な案は出なかった。
「すまないね,織田君。力になれなくて」
「構わねーよ。したら,この世界で生きてく迄だ」
「うむ……。やはり強いな,君は……」
「けっ,止してくれよ。蝮の面でんな事よお……」
さて,じゃあ仕事も有るし事務所に戻ろうかと言う事になった時,一人の少年が場に現れた。
「あれっ,織田さん達,もう来てたんですか」
その顔を見るなり,信長は彼に飛び掛かった。
「手前えーーーーーーーーっ!金柑頭ーーーーっ!!お前,よくも……」
「うわあ!何ですか,織田さん。僕,何か気に障る事しました!?」
「ま,まあまあ殿……」
「お,織田君,止めたまえ……」
「今度は明智光秀のそっくりさんね……」
「舐めやがって,手前えーーーーーーーっ!!」

「……で,何なんだ手前えは?」
「はい……。僕は斎藤先生の弟子で,ヴァンパイア・ハーフのミツヒデ=ド=コレトーと言います」
「やっぱ,金柑頭じゃねえか!」
「ま,まあまあ殿,落ち着いて。十兵衛様も,そんな逃げなくても平気っすよ」
「ちっ……」
「あ,有り難う御座います,豊臣さん。でも,何時も通り『ミツヒデ』で良いですヨ」
「で!何でその台詞を言いながら赤面するのよっっ!?」
「ヒ,ヒナタ……?」


と,まあ一騒動有り。
信長達“織田除霊事務所”の面々は,今日の“仕事場”である古いマンションへと向かった。
「……で,此処に出るとか言う亡霊を,この棒でしばきゃ良いんだな?」
「良いんだなって……貴方が取ってきた仕事なんだけど……」
信長の問いに,考高が答える。
「けど,この棒って如何やって使うんですか?」
藤吉郎が,武器として使うには明らかに短いその棒を見て言う。
「それは“神通根”と言って,霊力を込めると刀の如くなるでござるよ」
重治が答えた。
「ふーん……」
「!」
「どしたの?ヒナタ」
「いや,何か寒気が……」
「……来たみたいね」
「え?」
「来るでござる!」
考高と重治の合図と共に,壁を擦り抜けて妙なモノ・・悪霊が,丁度信長の眼前に現れた。
「来たな!?……って……」
突然,信長の動きが止まる。
「殿!?」
「……霊力を込めるって,如何やるんだ?」
だああっ
信長以外の4人が一斉に転けた。
「れ,霊力を込めるというのは……その〜……」
「言葉にするのは難しいわね……」
・・とか言ってる間に,悪霊は信長に襲い掛かる!
「殿っ!危ないっ」
「ああ!?」
ビクッ!
振り向いた信長の眼光に射竦められ,一瞬悪霊の動きが止まった。
「手前え!俺様を殺ろうってのか?良い度胸だ!」
「い,いえそんなっ!滅相も有りません!!」
続いて畳み掛けられた怒鳴り声に,悪霊は思わず土下座して許しを請うてしまう。
「す,すいませんでしたっ!今すぐ成仏させて貰いますっ!!」
「……けっ」
その時,藤吉郎が信長に声を掛けた。
「と……殿……?」
「何だ?猿」
「その……神通根……」
「ん?お,こりゃあ……」
その視線を追ってみると,信長の手に握られた神通根から光の棒が伸びていた。
「へえ……これが神通根か……」
……………………試し斬りしてみるか。
「おいっ!其処の悪霊!」
「は,はいっ!」
「お前,念仏の坊主か?」
「い,いえ。違いますけど……?」
「そうかあ〜……」
「……?」
「仏教徒でなきゃ,成仏はできねえなあ?」
「え?いえ……」
「じゃあ,俺が引導渡してやるぜ!!」
「い,いえ結構です。自分で逝けます……」
「遠慮すんな,行くぜッッ!」
「う……うわああああっ!?」




「是非に及ばず!」(決め台詞)




ドガアアアアアッ!
「ぎゃあああああああ!!」
悲痛な断末魔の叫びを残し,哀れな名も無き悪霊は天へと上って行った。
「殿……」
「……猿」
「は……」
「気持ち良いな,これ……!」
「へ?」
「確か“俺”はこの世界でトップクラスの除霊屋とか言ってたな?」
「え,ええ……」
「て,事は“天下一”ではないってこった」
「と,言う事は……?」
「天下一の除霊屋を目指せって事だ!!!」
「ええっ!?」
「そうよね,他にやる事も無し」
「ヒナタ迄!?」
「喧しいぞ,猿!今更ガタガタ言ってんじゃねえ!お前えは俺に,付いてくるのかこないのか!?」
「……一生涯,お供させて頂きます!」
「よおーし,良く言った!先ずは『天下の為に,その一』ッ!」



「下天は夢だ!!細かい事は気にすんな!」
この日,織田除霊事務所は新たなる,そして巨いなる一歩を踏み出したのだった。

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