ザ・グレート・展開予測ショー

〜『影とキツネと聖痕と 5 後編』〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(04/ 1/20)




その日、タマモは夢を見た。

自らを包む漆黒の闇と、その闇を薙ぎ払う光の夢を。

・・不意に誰かに名前を呼ばれた気がして・・
彼女は光へと手をのばす。



・・その先には・・・・




〜『影とキツネと聖痕と 5 後編』〜



キツネの少女が静かに目を開いた。


眩い陽光。
たなびく風に、自前の金色の髪が揺れている。

・・・。

・・どうやら、本当に横島はあの状況をなんとかしてしまったらしい。
自分はタワーの鉄塔の上に横たわっているのだ。

「・・よっ。目ぇ覚めたか?」

すぐかたわらには・・

「・・横島・・・。」

いつものように、しまりなく笑う青年の顔。

・・・・。

「・・・おはよ・・・」
寝ぼけたようにそう、口にすると横島は何故か頬をゆるめて・・

「おう。おはよう・・ってかその前にもっと騒げよ。朝起きたら目の前に煩悩魔人が座ってんだぞ?」

「・・・そのセリフ・・前に聞いたわ。」
お互いに言い合って、もう一度だけ、笑みを交わす。




・・・静かな朝。

本当に静かな朝だった。

二人の息づかい以外は何一つとして聞こえてこない。
まだ太陽も顔を出していない・・・・うっすらと明るいだけの・・そんな夜明け。


そんな夜明けに・・・・・



「あ。」


不意に横島が声を上げる。

「どうかしたの?」

「いや、ちょっと思い出してさ。昨日、悪魔が来る前に、お前何言おうとしてたんだ?」
怪訝そうな顔で、そう言い出して・・・・

「・・え・・?」

・・・・・。
一瞬、脳内の思考が停止した。
・・というのも、今の今まで、自分でもそんなことはすっかり忘れていたからなのだが・・

そういえば・・そうだ。・・自分は昨夜もう少しで・・・・・


「・・・・・・・。」

冷水でもかけられたように意識が覚醒していく。
次いで、顔全体が急激に熱くなり・・・・・・・

「結局、何だったんだよ?教えろよ。気になるし・・。」

「・・な・・・何って・・・それは・・・・」

しかも告白された本人が(未遂だが)それに全く気づいていなかったりして・・・

・・・・・。


・・まずい。
それはもうこの上なく・・・。

第一、ごまかそうにも、うまい言い訳など一辺も頭に浮かんでこないのだ。
いや、あそこまでしゃべっておいて言い訳も何も無いだろう、というつっこみもあるが・・
・・とにかく、
多少、無茶でもこの場をなんとか切り抜けなければ・・。

・・・・。

・・切り抜ける・・・。

・・・・・・・。



・・・・?
・・切り抜ける?


(・・別に・・切り抜けなくてもいいじゃない。)

そうだ・・こうなったら開き直るのも悪くないかもしれない。(この判断を下す時点で彼女はいつもの平常心を失っている)

流れに乗じて、このまま一気に・・
・・拒絶されそうなら冗談だったということで済ませればいい。

一見、リスクが多そうだが、この男の鈍さを考慮に入れれば、分が悪い賭けでもないだろう。


・・・なんて計算高いのかそうでないのかよく分からない算段が彼女のなかで渦巻くのだが・・



「?もったいぶるなよ・・。早くしろって。」

「・・・こ・・こっちにも準備ってものが・・・」

「準備?」

「・・・・・・。」

・・思えば、昨夜はよくもあんな恥ずかしい台詞を真顔で言えたものだ。
たしか、あの時は微笑すら浮かべる余裕があったような気がするが・・・

その余裕の万分の一でも今の自分に注ぎたい。

「・い・・いい?一度しか言わないから・・・。」

「へいへい。いつでもどうぞ。」

デリカシーの無さ過ぎる男の態度にはこの際、目を瞑り・・



「・・・私は・・・・・・」

頬を赤く染めながら、タマモがそう口にしようとして・・・・





・・・。




「タマモ〜!!」
「タマモちゃん・・・!!」
「タマモっ!!」

・・・・。

・・・肝心なときに、遠くから声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声。

事務所の・・いつもの仲間たちの姿が見える。
(一部、お怒りの読者さまがいらっしゃると思いますので深く謝罪します(笑))


・・・。

「・・どうせこんなオチなんじゃないかと思った・・・。」

「・・オチ?」

「・・・なんでもない。」

前のめりに倒れそうになりながら、タマモが脱力したように頭を抱える。

「・・予定変更。やっぱり教えない。」

「へぇ!?なんだそれ!?あれだけ引っ張っといてそりゃねぇだろ!」

「そんなの私の勝手じゃない。」

しれっとした顔で言い放って・・・

・・しかし・・タマモの顔に浮かんだのは小さな笑顔。

・・・。
・・いつもの日常が戻ってきた気がした。
やはり、自分たちはこうでなくては・・・・


泣き顔の混じった三人の様子を目にしながら横島は軽く嘆息した。

「・・ううむ。騒がしくなりそうだな。」


「・・・そうね。」

それに・・・タマモは静かにうなづいたのだった。


             
                    ◇




〜appendix.8 『支配者の気まぐれ』〜


『お前についての話は全ては嘘だ。お前を見れば、皆、死んでしまうはずだから。
 そして死人が口を利く訳にもいくまい。』

                       ケベード「無題」



                    ◇


「くくっ・・今に見てろヨ・・。」

影から影へとつたいながら・・・
スティグマーターは闇の中をはぜていた。

その仮面のような顔面には薄笑みすらもたたえられ・・・

・・・・。

今回はしくじった。
まさか人間があそこまでやるとは夢にも思わなかった。


「・・だけド・・・」

こんな「奇跡」がそう何度も続くと思っているのなら・・それは大間違いだ。

自分を殺さなかったことを、程なくあの人間は後悔することになるだろう。


・・ただ・・一からやり直しになった・・・それだけのこと。

また誰かに乗り移って・・力を奪えば済むことだ。

力を・・・命を・・・奪って・・奪って・・・・いつかあの男を殺してやる。妖狐の力も手に入れてやる。


(ボクは認めないゾ・・・こんな屈辱・・認めなイ!)

歯ぎしりしながら毒づいた。


・・・静かな朝・・・本当に静かな・・・

その静寂には暗黒すらも息を潜める。


・・・・・。



「・・・・ここに居たんだね。」

声。

同時に・・周辺の空間が大きく揺れた。

世界が震える。
怯えるように・・・ゆっくりとその様を歪ませながら・・・


「・・・・・?」

スティグマーターが振り向くと、視界の先に「あるもの」が映った。
・・彼はわずかに狼狽する。

・・・・。

蒼い影。

限りなく澄んだエメラルドとは対象的に・・どこまでも暗い混沌の瞳。


「・・君は・・見ていてなかなか面白かったよ。」


「なニ?」

不可解な言葉を口にしながら、『ソレ』はゆるやかに口を開く。


無邪気に透きとおるような声で・・・・


「・・だけど・・少々、調子に乗りすぎた。」

・・・。


―――!?


・・世界が・・・震える。
音も、光も無く・・・ただただ、圧倒的な破滅がもたらされる。

次の瞬間、悪魔が見たのは・・・砂のように崩れる自らの体。

サラサラと音をたてて・・呆気なく・・全てが塵へと還っていく。

・・痛みはなかった。


「・・・ボクが・・・消える・・?」

驚愕の面持ちで前方を見すえて・・・しかし・・それもすぐに砂へと・・・

悪魔スティグマーターが最後に見た光景。
それを通して、彼は知ってしまった。

目の前の存在が・・決して触れてはならないものだったということに・・



「・・お前は・・・お前は一体・・・!?」


「・・・もう・・・お休み・・・・。」




・・・蒼い影。

蒼髪の、恐ろしいほどに美しいその少年は・・


・・・・最後に・・・・低くつぶやいた。


〜エピローグに続きます〜


『あとがき』

ご無沙汰してしまって申し訳ありません〜(覚えていてくださる方はいるのでしょうか?)

コンピューターが壊れる上、妹の受験と重なってしまい、
なかなか家族用コンピュータに触らせてもらえない状況が続いていまして・・
・・で、編み出した裏技がインターネット喫茶です。

これでなんとか、定期的にお話をお届けできるかも・・・・

というわけで、あとがきです。
また長いですね・・(笑)そして、タマモの告白はまた失敗(爆)
ここから彼女の片思い伝説が始まるという・・・・(笑

シリーズ全体を通してこれから何回も彼女は告白に失敗します。横島も少しは気づけばいいのに・・

蒼髪の少年大暴れですね〜スティグマーターもボコボコどころか塵になってしまいました(汗
う〜ん・・・設定がまだ固まってないのに・・こんなことさせてよかったのかな・・・。

しかし、最後に使った引用・・・ソウルキャ○バー2のせいで有名になってしまいましたね(汗
自分だけが知ってる格言だと思ったのに・・(泣

・・なにはともあれ、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

次回、最終回です。

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