ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(19)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(04/ 1/20)



限界まで煮え返ってた俺は考えるより先に構えていた。

「俺がわざわざてめえのクソ正義まとめてやったのはな、てめえにそれ以上胸くそ悪い演説してもらいたくねえからだ!!」

「馬鹿者が・・・そこまで真の霊的秩序の到来を拒むか。そこまで天地に及ぶ我が父の栄光、神曲と黙示録とに謳われし
我らの理想を憎むか・・・愚かさとはげに恐ろしきものなり。この地に、この人間どもに災い及ぼすのは汝らぞ。・・・現に我らの
忠実なる従者が何人もその魔族によって毒を受け苦しんでおる。」

「・・・そりゃてめーらが先に仕掛けてきたからだろーが。狙撃するは、街ん中でチャカぶっはなすわでよ。」

「この魔族が徘徊するから、汝らが抗うから我らはそれに応じたまで。」

「『どっちが加害者か分かんねえ』ってか?昔のどこかの防災大臣かてめーは?」

ツッコミ入れながらも目で距離を測る。
七角水帰白鷺尊までは4m、ラケリエルまでは5m・・・白鷺野郎からだと2〜3m。
ボンベと毒ガス散布班へは・・・7m・・・白鷺野郎からだと・・・やっぱり7m。
構えを取っているのは白鷺野郎。ラケリエルは何の構えも見せない―偉そうにして眺めているだけ―。
手を出すつもりがないのだろうか。・・・猿から何か言われてたっけな・・・。

「雪之丞。・・・ヴァンパイア・ミストである程度までならガスを押し返したり、誘導する事が出来ます。
・・・この付近でだけですが・・・。」

ピートがそっと耳打ちする。―ダンピール・フラッシュはこいつらには有効だろうか?いや・・・、向こうにエネルギー補給して
やるようなもんだ。弓の水晶観音での攻撃・・・これは有効だろう。威力はともかく。唐巣・・・悪いが、「難しい」な。
能力的にも・・・・・精神状態的にも・・・・。パピリオ・・・一撃でまとめて片付けちまいそうだが・・・論外だ。
こいつに手を出させない為に人間だの半妖だの集まって来てるんだから。


やっぱり、こんな時には“あいつ”がいてくれないと・・・・。

脳裏を横切った想念を思い切り振り払った。確かに、仲間を信頼し、「背中を預け合う」のも悪くはない。“あいつ”だって
そんな仲間だ。しかし、今の想念は・・・ただの依存だ。かつて人間代表で魔人を倒した男に何もかも任せてしまいたい。

――これは俺が任され、俺が引き受けた、俺の仕事だ。・・俺のトラブルだ。・・・最後に片を付けるのは俺だ。

俺は顔を白鷺野郎に向けたまま小声でピートと弓に作戦を説明する。


俺は白鷺野郎に向かう。弓は教団員を倒して逃げ道を作り一般客を避難させる。逃げ道のキープと客の誘導は唐巣に。
弓は戻って来て毒ガス班へ。ガスが撒かれたらピートは霧になってガスを人気の無い所へ流す。その間に弓は毒ガス班を
潰しボンベを使用不能にする。それぞれ片付いたら俺と白鷺・ラケリエルのところへ。・・・見た所・・・所詮、最下級神族だ。
今の俺ら3人で倒せない相手じゃねえ・・・小竜姫の何十分の一ぐらいの力しかねえぞ、あいつら。そこらの悪霊や妖怪に
毛が生えた様なもんだ・・・ああ、でもピート、ダンピール・フラッシュとか使うなよ。吸血鬼の力主体で行け・・あの時見たく
「ダブルGSキック」でキメよーぜ?
見てはいねえが二つの頷く気配を背後に感じた。俺はタイミングを測り、号令を出す。


「―――――いっちょGOだぜっっっ!!」

俺はまっすぐに白鷺野郎へ向かってダッシュした。奴は僧衣を脱ぎ捨てると両翼を広げて勢いよく羽ばたき真上に飛んだ。
俺は地面を蹴ってジャンプする。奴は中空で止まり翼から霊気を迸らせ、一声大きく鳴いた。

「ケェェェェェーーーーーーッ!!」

翼から放たれた霊気は雷撃となり何本もの筋を描きながら俺に向かって来た。俺はシールドを張ってそれをガードする。
そのまま裏側からシールドに向かって霊気を溜めたパンチを・・・・。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・・・・!!」
 ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコ・・・・・・!!

シールドは爆発的な勢いで雷撃を跳ね返しながら奴に向かって行く。

「ぬぬ・・・・・・・・っ!?」

シールドと俺は奴の目前まで迫った。押し返された雷撃が両者間の狭い空間から八方に散らばる。
奴が雷撃を止めた瞬間、俺はシールドを解除し、自分の両手に巻きつけた。そのまま連打を今度は奴めがけて続ける。
・・・奴が自分のシールドを張る番だった。

「オラオラオラオラオラオラ・・・!!」
 ドガドガドガドガドガドガ・・・!!

・・・やるな。奴は俺みたいに盾の様には張っていねえ。こっちのパンチを読んでポイントごとに防いでやがる。

「ケェェェェェーーーーッ!!」

二声目。直後、目の前に、爪を立てた奴の両脚。
両目を狙って来た。俺は避けたが頬を爪が掠めた。込められた霊力もあるが、深かったのだろう。熱く灼ける様な痛みを
感じた。手を当ててみると魔装術の顔面プロテクトが大きく抉れていた。同時に俺はジャンプ時の勢いを失い、落下した。
何とか着地する。奴も降下し、着地はせず再び雷撃を放って来た。今度はまとまった強力な一撃を―ヤベえ、防ぎ切れねえ。
マトモに食らっちまう・・・・!!

霊力を含んだ霧―ヴァンパイア・ミスト―が横から雷撃に絡み付き幾つにも分かれ散らばらせる。雷撃は続けて霧そのものを
捉えようとするが、すり抜けて行くばかりだ。
俺は横目で周囲を窺う。唐巣が信者達を牽制しながらゆっくりと一般客を避難させている。その向こうから見覚えあるオカルト
Gメンの連中―西条の留守を預かっている奴ら―が機動隊員と共に駆け付けて来るのが見える。
毒ガス班、そしてさっきの決死隊や能力者の集団が吸血鬼化して大人しく整列している・・・何人かは倒れ込んでいるが。
日本政府の何がバックについていようが毒ガス使用にデジャブーランドでの大量監禁だ・・・揉み消せる筈もねえ。
少なくともこの教団はもうオシマイだ。後はこいつらだけ。――ラケリエルが表情も変えずこっちを見てるのは気になるけどな。

霧の中から2本の腕が現れ、白鷺野郎を羽交い絞めにした。続けてピートの顔だけが現れ、叫ぶ。

「雪之丞!弓さん!・・今だっ!!」

腕と霧に押さえ付けられて奴は雷撃を放つ事も出来なくなっている。二人同時にダッシュした。

「――――お覚悟をっ!!」

「――――あばよっ、チキン野郎!!」



・・・・・・・・ぞくっ。



背筋に凄まじく冷たいものが走り、俺の足は止まった。・・弓も同じだったみたいだ。
ピートも白鷺野郎を押さえ付けたまま霧を収縮させて元の姿になり・・・顔を強張らせていた。

「な・・・・何だってんだ?・・これ・・・・?」

「わ・・・分かり・・・ませんわ・・・。」

「ククケケケケ・・・・ケェーーッケッケッ・・・・神に纏ろわぬ愚か者どもよ、自らの結末を魂で理解したのだな・・・?」

白鷺野郎だけが笑っていた。奴とピートの背後にラケリエル。剣を握っていた。無表情のまま目を閉じている。
――さっき見積もった時より高い霊力の持ち主に見えるのは・・・気のせいなのか?――

「収穫の時来たり・・良き葡萄を籠に入れ・・悪しき葡萄を打ち捨てよ・・主の怒り満ちて・・扉の外にて・・炎の中にて・・
絶える事無き永遠の苦痛に泣き、歯噛みするのみぞ・・・」

ラケリエルは目を閉じたままぶつぶつ何事かを唱えている。その剣先に霊気が漂い始めた。剣先の霊気は光となって
刀身全てを覆い、更に膨張して行く・・・光と言うより、白い炎だった。揺らめいて断続的に上へ吹き上がっている。
ラケリエルの全身から放たれていた光もますます強まっていた。剣はその白い炎で数倍の大きさとなり、なお膨張を
止めようとしない。
俺はかろうじて声を出し、強張った表情のまま固まっているピートに言った。

「ピート・・・逃げろ・・・今すぐ、逃げろ・・・!いや・・・弓も・・・パピリオも・・・みんな、逃げるんだーーーーっ!!」

ラケリエルが目を開いた。

「思い知れ・・・これが栄光に満ちた軍勢の力、決して消える事無き我らと我らの父の怒りの炎だ・・・・!」

ラケリエルは剣を下に降ろしてから、そのまま下から上へと大きく振り上げる。その時剣が爆発した――いや、それ位の
勢いで炎が膨張した。見る見るうちに電柱大・・・電車2〜3両分の大きさにまで!!



「「「う・・・・わあああああああああああっっっ!!」」」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!



ピートが霧散したと同時に白い炎は白鷺野郎を直撃し、すり抜けて行った。
次の瞬間には俺と弓の眼前に。左右に飛んで避けた。その後ろの教団員達も伏せた。
ラケリエルが剣を振り上げ切った時、炎は剣から離れ、斜め上へ飛び去っていった。

「な・・・何だありゃあ・・・それに、今の力・・・どう見たって・・下級神族のパワーじゃねえっ・・・
何なんだよ・・一体、どうなってるんだよ・・・」

全身に震えが走った。・・・今頃になってやっと猿の忠告を思い出した。―「今のお主じゃ、ラケリエルには勝てん。」
気付いて、ラケリエルを見た―剣を振り上げた状態のままで―再び刀身が白く燃えていた―。

「――ハアッッッッッ――!!」

今度は一気に振り降ろす。炎は地面を舐めながら俺に向かって直進する。転がりながら避けるとそのまま直進した炎が
アトラクションを2つ3つ吹き飛ばしているのが目の端に写った。

「―ユキ!また来るでちゅ!!」

頭の後ろからパピリオの声。いつの間にかドチビズの前に来ていた・・・・・・ヤベえっ!!!

ラケリエルは白く燃える剣を横に払おうとしていた。

「これは丁度良い・・・まとめて焼き尽くしましょう。忌まわしき魔物もそれに惑わされた罪深い子供達も、愚劣な反抗者も。」

ガキどもの悲鳴が聞こえた。あれだけの「聖」系統のエネルギーを食らえばたぶんパピリオでも唯じゃ済まない。
背後に視線を向けた。ガキども・・・互いにかばい合おうとパピリオを中心にして肩を組む様にしがみ付いている・・・
脱帽モノの根性だが・・・ラケリエルが振り始めた・・また炎が巨大化する・・!
俺は大きめのシールドを広げ、身構え、目を閉じた。何人助けられるか・・持ち堪えるかどうかも分からない。


   ガッ、ガッ、ガッ、ガッ!!


4連発で激しいけど短い衝撃音が響いた。――シールドに当たった音じゃない。そして、こっちへはいつまでたっても衝撃は
訪れなかった・・・俺は恐る恐る目を開いた。

地面にあの白い炎が広く散らばっていた。炎の欠片は燃やす物も無いのに消える様子はなかった。
そして、その中に若い女―少なくとも、そう見える―が立っていた。
肩辺りでそろえた赤い髪、“外”へ出るときの定番になっているスポーティーなカジュアルジャケットとスカート。
髪止めのアクセサリーに見えなくもない一対の角。

小竜姫は自分の剣を片手に握り俺に背を向け、ラケリエルと対峙していた。ラケリエルの剣の炎は消えていた。

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 Bodyguard & Butterfly !!
 (続く)
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