ザ・グレート・展開予測ショー

彼等のその後の話


投稿者名:竹
投稿日時:(04/ 1/19)

伊達雪之丞は,久しぶりにその電話番号を押した。
その電話番号の主に,特に用事が有った訳ではない。今日は恋仲である弓かおりとのデートなのだが,彼女の学校が終わる迄の間,雪之丞はこの喫茶店で待って居なければならない。手持ち無沙汰に惚けているのも何なので,暫くご無沙汰だった“彼”にちょっかい出してみようかと思っただけだ。
なあに,如何せ“彼”は暇だ。電話の一本位で迷惑にはならんだろう。
『はい』
案の定,3回のコールで“彼”はあっさり電話に出た。余っ程暇なのだろう。
「応,俺だ」
『雪之丞?何か用?』
「いや,別に用って程のモンでもねーけどよ。如何してっかなって」
『……相変わらず』
「……アシュ派狩りって奴か。大変だな」
彼の大戦でアシュタロスに従っていた魔族は,今,結構大変らしい。
彼等への風当たりは強い。ベスパや土偶羅はアシュタロスに作られた物だから,それなりに平気だが,自分の意志でアシュタロスに仕えていた者はキツイ。デタント派魔族から命を狙われたりする事も有るらしい。
“彼”も,そんな一鬼だった。
『折角魔族になったって言うのにねえ』
「……だな」
『まあ,雪之丞の子や孫や曾孫や玄孫や……(中略)……の顔を見るのを楽しみに頑張って生きるわよ』
「やめてくれ……」
『やあね,照れちゃって』
「あのな……。っと,悪ぃ,弓の奴が来た」 
『デート?頑張りなさいよ』
「へいへい」
『じゃあ,又た電話してね?』
「ああ。んじゃな,……勘九郎」



【彼等のその後の話】



イタリア,ブラドー島。
「な……な……」
久々に里帰りをしていたピエトロ=ド=ブラドーは,驚愕に双眼を見開いた。とんでも無い物を見たのだ。
「こ……これは一体……?」
それは,全く悪夢の様な光景だった。
「私が本物だ!」
「いーや!私が本物だ」
「私だ!」
「私だ!」
……全く目を背けたくなる光景である。只でさえ迷惑で恥曝しな自分の父,ブラドー伯爵が,
「黙れ偽物め!」
「偽物はお前だろう!」
二人も居るのだから。
「一体,如何して……?」
と,言いつつピエトロには半ば真相が解っていた。
この二人の父の内,一人はアレである。アシュタロスのコスモ・プロセッサで再生された奴なのだ。
あの時,ニューヨークに父が現れたと言う話を小耳に挟んだ時は,「何時の間に死んでたんだ?あの馬鹿親父」と気にも留めなかったが,如何やら死んでた訳ではないらしい。そして,再生された奴も。
そして,その馬鹿二人が,今現在自分の目の前で醜く不毛な言い争いを繰り広げている。直視したくないが紛れも無い現実。
「今こそこの私が,世界に君臨する時なのだッ!」
「馬鹿を言え!アシュタロス様の後ろ盾を無くした今,島に籠もり力を蓄えるのが得策だ!」
如何やら再生親父はパラレルワールドの住人らしい。あっちの世界では,ブラドーはアシュタロスと組んだと言う訳か。こっちのブラドーより,少しは頭が良いらしい。とは言え,世界征服を企んでる辺り,馬鹿なのに変わりは無いが。
「兎に角!私が本物のブラドーだ!何なら息子に訊いてみるが良い」
「そうだピート!どっちが本当の父か,お前なら判ってくれるよな!?」
「え!?」
そう来るか!?
「「さあ!どっちだ!?」」
……判り切ってる。先に喋ってる方が父だ。しかし……
「……えっと……」
再生親父の方が未だマシかも知れない……。と思ってしまうピエトロだった。

日本,人狼の里。
その日,この静かな隠れ里に,予期せぬ訪問者が有った。
犬飼ポチである。
「犬飼……!?お前,如何して……」
「……」
「……そうか……」
「うむ,そうなのだ。それで……」
「アルテミス様に振られたのだな……!」
「へ?」
「やっぱり男なんて認めないッッッ!!とか言われて,天界から落とされたんだな?」
「いや,そう言う訳じゃ……」
「すまない。だが,人狼族の娘は少ない。お前にやる娘はおらんのじゃ」
「いや,あのな?」
「シロは諦めてくれ,ロリコン!」
「誰がロリコンだーーーーーー!じゃ無くて!ああ!!結界を閉じるな〜!」
…………………………。
ポチは別に嫁を探しに来た訳ではない。
只,気付いたら何故か突然俗界に居たので,途方に暮れていたのだ。其処で,恥を忍んで生まれ故郷迄帰って来たのだが……
「追い出されちゃったみたいじゃん」
「……ハーピー」
ハーピー。こう見えてもアシュタロス派魔族の端くれであり,それなりの実力者。何故か,ポチと行動を共にしている。
「行く当て無くなっちゃったじゃん」
「……だな。如何する?これから」
「取り敢えず,桃と猿を探すじゃん」
桃と……猿?それって……
……。
「俺は狼だ!」
誰かと似た様な台詞を叫ぶポチ。彼が人間の御伽話を知ってるかは別として……。

花屋に入ったのは何と無くだ。偶にはあの殺風景な事務所に花の一輪も活けてやろうかと思ったのだ。
だが,氷室キヌは其処で信じられない物を見た。
「あれは……!」
死津喪比女。
嘗て,東京を廃都と化した大妖。自分が,そして美神と横島が命を賭けて葬り去った敵。
それが……
「鉢植えに活けられてる……!」
何で!?
そう言えば,例のアシュタロスの乱の折り,彼女も復活したと言う話は聞いていたが……,何でこんな花屋の店先で鉢植えに植えられてるの!?
「……うわあ〜」
何故か満更でも無さそうな死津喪比女は未だこちらに気付いていない。気付かれたら,それはそれで厄介な事になりそうだ。自分と彼女の因縁は深い。
と言う訳で,さっさと立ち去る事にする。
立ち去り際に死津喪比女の値札が目に入る。買うつもりの無い物でも,ついつい値段に目が行ってしまうのは,女の子としては(或いは主婦としても)仕方の無い事だろう。
「……」
¥500
五百円。それって詰まり,私の命って五百円の価値しか無いって事かしら。
それから暫く,キヌはブルーな気分が抜けなかった。

ブーーーーーーーン…………
「おい」
ブーーーーーーーン…………
「おい」
ブーーーーーーーン…………
「おい!」
ブーーーーーーーン…………
「喧しいっつってんだろ!」
「何だよ,デミアン」
「俺の周りを飛び回るんじゃないッ!鬱陶しいんだよ,ベルゼブル!」
「そう言うなよ。俺は蠅の王なんだからよ」
「知るか!今,俺は人間の子供に化けてんだ。でけえ蠅がブンブン周りを飛び回ってたら,イジメの対象になっちまうじゃねーか!」
「そんな目つきの悪い子供が居るか」
「いや,居るだろ」
「そういや,彼奴は如何したんだろうな」
「彼奴?」
「ほら,マッチョでグラサンで羽の生えた……」
「ああ,彼奴か。ワルキューレに机ぶつけられて殺された」
「そうそう,其奴」
「そう言えばなー。如何したんだろうな」
「うむ……」
「……再生もさせて貰えなかったんじゃねーの?名前すら無かったし」
「……そうか……」
「……」
「……」
「……哀しいな……」
「ああ……」

悪魔バイパー。
その昔ヨーロッパを荒らし回り,国連が賞金を懸けて世界中のスイーパーに抹殺を呼びかけている悪魔族。魔笛の音と分身を使い,あらゆる物を幼児化する。
その悪魔バイパーは今……!
「兄ちゃん……又た会いたいよう……」
「……チュウ」
……ケイの玩具になっていた。

「今は1月……なのに……」
「……」
「何でこんなに暑いのよォーーーーーーーっ!」
オーストラリア。
「ぶっ潰す!吹雪にしてやるわ!散れえ,観光客共!さっさと北半球に帰って長く厳しい冬を甘受しなッ!」
「夏なんてかーーっ!夏なんかーーっ!」
「サッキャー!」

極貧の錬金術師ドクターカオスも,偶にはきちんと料理した物を食べる時も有る。その場合,料理を作るのはカオスの最高傑作たる,奇跡の人造アンドロイド『マリア』である。
「……おお,マリア。今日の晩飯は随分と豪勢じゃのう」
「イエス,ドクター・カオス。蛸鍋・です」
「ほほお,これはまた立派な蛸じゃのう。一体,如何したのじゃ?こんな物」
「突然・襲って来たので・仕留めました」
「ほほう……?」
「姫に殺されるなら本望……!」
……。

「ふう〜,やっと着いた。美神さんてば,相変わらず人使い荒いんだから……」
そう言うレベルの問題では無いと思うが。
兎も角,横島忠夫は,自宅であるボロアパートの一室へと帰ってきた。時既に深夜三時。疲れ切って,後は寝るだけだ。
「はあ〜……」
溜め息をついてドアを開ける。もう良いや。さっさと寝よう……
「よう,お帰り」
「ああ,只今……。……って,え!?」
いやいや,待て。何だお帰りって。この部屋には自分しか住んでいない筈だ。じゃあ今のお帰りは空耳か?それともイ○ジンの河馬か?
いや,違う。聞き覚えの有る,この声は……
「女蜴叉!?」
「久しぶりだねえ」
「おまっ……何でこんな所に居んだよ!」
「いくら文珠とは言え,このあたしが一撃で殺られると思うかい?単にあの場から姿を“消”しただけさ」
「……で……,何で此処に……。まさか,俺に復讐しに……?」
「……匿って貰おうと思ってね」
「は!?」
「アシュ様派だったあたしには居場所が無いのさ。神界にも,魔界にもね」
「……で?」
「つって,人間界を彷徨いちゃいるが,ヴァチカンの牢にぶち込まれんのは御免だ」
「……それで?」
「ま,一番安全なのはお前ん所だと思ってね。悪いが暫く居候させて貰うよ」
「何でじゃああああああああ!!!!」
「……今言ったろ?」
「理由になって無え!て言うか,OKしてねえよ!」
「五月蠅いねえ。過去の遺恨は水に流してやるってんだから良いじゃないか」
「何がだあああああああああ!!!!」

キヌが,シロから横島が自宅で白い蛇を飼い始めたと聞いたのは翌日の事だった。
何か妙に嫌な予感がしたが,「ま,横島さんだしね」ですませてしまうキヌであった。

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