ザ・グレート・展開予測ショー

バレンタイン快勝!モテモテ横島くん


投稿者名:ギャグレキスト後藤
投稿日時:(04/ 1/14)

公立音沙汰高校。
横島やピート、タイガーらの通う学校である。

朝8時20分。
いつもは横島とピートがやってきて丁度すれ違うところだったが、今日は様子が違っていた。
校門にピートが後ろに手を組み、日光浴をしているかのように寄り掛かって空の方向に顔を向けている。
横から見ると、それは2枚目に爽やかな顔をしていた。

「………」

今日はいい天気で、太陽光がピートのより2枚目な顔を照らしている。
その横から、とある女生徒が不意に声をかけた。

「あのー…」

三つ編みに、眼鏡をかけた女の子。
ピートは横を振り見ると、左頬が耀いてさりげない笑みを見せる。
女の子は照れくさそうにして、鞄から素早くカンペン位の大きさの包みを取り出すと、ピートの胸間辺りに差し出した。

「…これなんですけど…」


   ?

ピートには初め、その包みが何かはわからなかった。
が、回りの女性の余りに強く甘い視線からすればプレゼントである事は推測できた。
そしてその後の言葉でようやく判明したようだった。

「チョコレート、受け取ってください。」

そうかと認識したピートがありがとうとにこやんだところで、その渡した子は真っ赤になって思わず早足で歩き出した。
しかし、その直後がピートにとって地獄絵図ととっても良かった。
一人が歩き離れた後ろに、1、2、3、Four、Five、6、Sept、Huit、Nine……
十数人……いや、数十人といった数の女生徒が待ちに待ち構えて準備を終えており、あとは一斉に襲い掛かってくるだけ…で…
毎年恒例の、ピートを巡るチョコ合戦が繰り広げられたのだ!

「ピートくぅぅん、チョコ受け取ってーーーえ!」
「私も!」
「いや、私が先よ!」
「あたしよ、邪魔だからどいてよ!」
「アンタこそ邪魔ーー!」

数十人の女生徒が群がって、チョコレートを渡しにピート目掛けて押し倒しかかる。
女生徒はピートが腕の中に抱えてまでなかなか受け取れないのを知っているせいか、次々に、
あちらこちらに手当たり次第ピートを押し倒して入れていくのだ。
あるものは胸ポケットに、そして内ポケットにズボンのポケットに、制服の袖、そして大胆にも…

「わっ!ち、ちょっと!ズボンを脱がさないで下さいっそんなところに入れないで下さーーーーい!」

…そう、ズボンを降ろして膝とズボンの間に入れるものまでいた。

「誰か助けてーーー!」

揉みくちゃにされるピートは、女生徒の抗争に巻き込まれながらも、周りの人間に求めようと手を出す。
しかし助けるものなどいない。
その筈、殆どの男は、チョコが貰えないと言う理由からもらえる奴を阻害していた。
創作者からしても、同様の理由だろう。(←ほっとけ!)
数分の揉みくちゃのあまり、着衣が脱げたピートの側にようやく横島が慌てて校門をこぐろうとしていた。

「遅刻だ、遅刻だー!
 って、あれ、ピート?何してんだ制服を脱いだりして…」
「…あと…数分早く来てくれたら、私も助かったんですけどね‥‥」

苦笑して事情を話そうとしたピートだったが、その必要はなかった。
横島は浮かれて「女性からチョコが…チョコが…」と呟きはしゃいでいた。

しかし!


『ええーー!こりゃまたビックリ紋左衛門!』


横島の体を叩く姿があった。
振り返る横島の顔には、きりりと締めた真剣なまなざしがアッタクッタ。

「なんですか?」

聞き返すと、鞄から包みを取り出す女生徒の姿が。

「はい、横島くんにもチョコレートあ・げ・る!」

聞きなれない言葉を聞いたような感覚に襲われていた。
おかげで混乱した横島は、もう一度さり気無く聞き返す素振りを見せた。
でも、同じような返答が聞こえたのは辛うじて確認できた。

「チョコレート。横島くんにあげる!」

そう言った途端、横島の背後から驚きとドヨメキの混ざった声が百数人分になってサラウンドになって聴こえた!


「「「ウッッッッソーーーーーーーーーー!!!」」」
「「信じられなーーーーい!」」
「あの、ロクデナシの」
「妊娠魔獣の…、エロザル…、色情…スケコマシの……」
「「「あの横島が、おキヌちゃんと愛子ちゃん以外からチョコレートをもらうなんてーーーーー!!!」」」


学校中の人間が衝撃に走るあまり、失神するものもあれば、気が狂って暴れ出すものもいた。
あまりにも異例すぎた。
横島が感激のあまり、涙を見せた。

「今まで生きてきて…この世界に17年生きてきて…生まれて初めて他人から貰ったチョコレート…
 感激ッスーーーー!!」

思わず、その娘を抱こうとしてしまう辺りは横島っぽいのもあったが、冷静さを取り戻すと、
歯をきらりと輝かせ、キザなセリフを吐いていた。

「ふ…こんなチョコレートなんかな…愛情を飾るホンの一欠片にしか過ぎないのさ。
 それでもこうしてクレるなんていうのはな…それなりに…俺に気があるってことなのさ。」

このセリフに騙されたものは、果たして何人いるか?
いないはずだが、今年のバレンタインは本当に快勝だった。
この目の前にいた、三つ編みの眼鏡をかけた女の子は、横島のセリフにオチたようで、
ピートに渡した時よりも顔の赤みが強くなっていた。
この子は、横島とピートの背後を見送るように玄関に入っていった。

ピートと一緒に生徒用の玄関に入ると、ピートの下駄箱ははみ出そうなほど入っていて、上履きがチョコまみれになりかけたところだった。
しかし、横島も下駄箱を開けると、十数人分のチョコが入っていた。

「今年はモテますねー、横島さん。」
「そーだな。一体何があったのか、サッパリ分からないけどな…」

自分の分のチョコを両腕で抱え、横島は廊下を歩きながら考える。
思い当たる節もないのに、こうももらえるのは不自然だ。
でもって、教室前に来てドアを開けると、さっきの子がいた。
思わずコケた。

「横島忠夫さん、私のチョコ全部受け取っていただけましたか?」

ピートは、ようやく理解した。
数十人の分のチョコレートは、すべてこの女生徒が流していた事に。
我等が横島はというと、いつもの脳内停止モードに入っていた。

そこを女生徒が軽く胸をさわると、横島は息を吹き返したように喋りだした。

「はっ!
 ところで、お前誰なんだ?前にどこかであったこと…」

横島の問いに答える前に、それを塞ぐように一方的に喋りだした。

「一昨日は、有り難うございました!」
「お…おととい?」

          ☆                 ☆                ☆

話は遡る。

一昨日といえば、美神さんがとって来てくれたワンステージの仕事をした日だ。
それも、除霊を知ってもらうための、子供向け舞台アクションのアトラクションだ。
そこでやったのは、横島さんが主役となったオリジナルストーリーだった。


    『ザ・グレート・ヨコジパンショー』


キヌがマイクを持って舞台下へ話し掛ける。

「ねーえ、良い子のみんなー?
 除霊刑事ヨコジパンって知ってるーーー?」

キヌがしきりにお姉さん役をこなし、マイク越しに訴えていた。
耳に手を丸め宛がい、反応をうかがいながら。
その反応はいまいちであった。

「知らなーい!」
「知るわけねえだろ、メタルヒーローシリーズか?」
「ザ・カゲスターが好き〜!」

汗ジトのキヌに、舞台裏で転ぶ横島。

「どーせなら、戦隊刑事あ〜るだよなーー!」
「うんうん。」

・・・
聴こえている横島は、舞台裏で怒りに震えていた。
キヌは、その横島を「もう少しの辛抱ですから」と何とか押さえつけながら、話を進めていた。

「そう。とっても有名なのね〜〜除霊刑事ヨコジパンって!
 では早速呼んでみま……」

そこに、タマモが舞台の外で犠牲者の男と、人質役の女を選んでいた。
が、選んでいる途中だったにも関わらず、シロが超A級の上級悪霊の入った封印札を破って舞台上に投げてしまった。

現れる超A級上級霊に、観客の子供達はパニックになった。
そして、霊の方が勝手に好みの女を一人奪い取り、一人の男を取り込んだ。

「うぎゃあぁーー!」
男の悲鳴が上がる。
・・・・・・・が、我らがヨコジパンこと横島忠夫は無視した。

「きゃあぁーー!!」
今度は女の子の黄色い悲鳴が上がるのを確認したと同時、
声のする方向へ勢い欲・・・もとい良く走っていく横島。(・・・流石だ・・・・)
ここぞとばかりに、キヌが叫ぶ。

「お願ーーい、みんな!除霊刑事ヨコジパンを呼んで!」

「「「ヨコジパーーーン!!!」」」

すると・・・
横島の姿が、舞台上にようやく現れた。
そして見た光景は、超A級の上級霊が年上の男性と女の子を包み込んで生気を奪うとこであった。

「おのれ悪霊め、覚悟しろ。」
『うぬぬぬ、この私に歯向かうやつめ、そちらこそ覚悟しろ・・・・』

悪霊が言い終わる前に、こちらはすばやく威勢のよい態勢をとると、「ヨコジパンフラッシュチェイーーーンジ!」
と、叫びあげながらも同時に10mほど跳び上がって空中10回転!
その間5秒。
・・・そして7回転目にボディーがフラッシュして姿がチェインジ!
その変身のまま続けて、8回、9回、ラストの10回転・・・と反動で悪霊に3段蹴りを加えた。

『うぎゃああっっ!』

痛がる超A級の上級悪霊。
ザッと、華麗に着地すると口上を決めた。

「女との愛と来世とために、戦うために生まれた孤道の超戦士!
  この除霊刑事ヨコジパンがいる限り、この世の女は俺のもの!」

舞台下で拍手が起こった。
やっとの出番と口上で、子供達は大騒ぎだ!

『おまえが、あのヨコジパンとかいう小癪な敵か。あいつを倒せば、この手柄は俺のものに・・・・・』

超A級の上級悪霊が言い終わる前に、ヨコジパンはヨコジパンブレード(ハンズオブグローリー)
を両手に集中させ発動させる。
今度は15mぐらい高く跳んで、強力な斬りを喰らわそうと1回転しながら勢いをつける。

ズビズバァ、ズザァ・・・・・ッッ!!

右手のヨコジパンブレードが縦一の字にはいるかと思いきや、それは0.00000001秒の速さのこと。
続いて0.0001秒で左手で横井知事・・・・もとい横方向に一字が入る。
この0.00010001秒で悪霊の体がクルス形に光った。
さらにこの直後の0.99989999秒に左方下斜めに両手で一線一段する。

「・・・・・・ヨコジパンブレード・千の断ちッッ!!!!」
『もの・・・・・・え?うぎゃああああああーーーーーーーーーーっ!』

字のごとく、悪霊の体が「千」の形の白光を放つ。
それも、滑り込まれている女の子には絶対無傷であるプラナの光だ。
最後に、ヨコジパンはヨコジパンブレードを消して最後の口上を言い放った。

「・・・・・・ヨコジパンの前に、悪霊は即地獄に消えるんだ・・・・・!!」

そして、シュン!と、元の姿に戻る。
すると、佳代という女の子が横島の体に抱きついてくる。
「ありがとう、ヨコジパン・・・・」
強い男には憧れるというのが持論の横島は、やさしく佳代という女の子を介抱する。
男には一切容赦せず、見捨てるやつだけど・・・・・・!!!


だが、ヨコジパンの戦いはまだまだ続く。
世界中の女の生気をむしばみ実験台にする、最強の敵・CHAOS(カオス)の野望を打ち砕くために。
行け、除霊刑事ヨコジパン!!

          ☆                 ☆                ☆


「はぁーーい、どうだったかなみんな?」

キヌのリポーターをはさみ、実写張りの派手なアクションを復習させる。
でもその結果は、なかなかの評判だったようである。



「このスケベヒーロー!」


「皆さんは、こんなヒーローになっちゃ駄目よ!」


          ☆                 ☆                ☆

「ひょっとして…佳代ちゃん?」

思い出したように、横島は指差して言うと女生徒はうなずく。

「ほら、一昨日にあのあとワザとらしく落としていった生徒手帳。
 私の憧れの、ヒーローの着ぐるみの中の人……」

言うなり、横島の体にスリスリなすりつく。
そういや一学年下に、特撮ヒーローマニアとして知られる女の子がいて、「そういう人じゃないと付き合いたくない」とか
言って突っぱねるという噂があったのを思い出した。
どーりで・・・(汗)

          ☆                 ☆                ☆


その頃、コブラが学校に着いた。

「美神さん、今日はバレンタインですよねえ・・・」
「そーいやそーね。
 チョコ食べないと餓死しそうなのが約一名いたわよねえ。
 やっぱ上げるんでしょ。」

当のキヌと美神は校舎に入ると、違和感があるのに気が付いた。
なんだか、横島の教室の方が騒がしい。

「なにかあったのかしら?」

美神が不意に口走る横で、片手にビラがちらついた。
そのビラには、「号外」と書かれていて、横島の写真がデカデカと乗っていて、傍らに見慣れない女の子が抱きついている。

「何してんのよ、あのバカ!」

号外のビラを読んでいるキヌをあとに美神は教室のドアを明けると、とんでもない現場を目にした。
なんと、横島の体に女の子が抱きついて口説いていたのである。

「私、横島さんの為になら…何されても…」

美神は一瞬、固まった。
しかしそれは1秒のことで、直ぐに美神は半分ほどにっこりとして、その横島の下に近づいた。

「ちょっと、横島くぅん♪何をやっているのかなーー♪」
「げ、み、美神さん‥‥」

ポキポキ。
美神は拳を握っているところで、横島のダチがナレーションを勝手に加えた。

『おおーーーっと!ここで、横島の上司の美神がもとの妻に出戻ろうと話し掛けようとしてい…』


バギグワジャッ!!


ダチは10数リットルの血だらけになって伸びた。
つぎは、横島の番となろうとしていたが、佳代が横島の前に出た!


「ちょっと、退きなさい!」
「イヤ!私の大好きな横島君を殴らないで!」

佳代は横島を庇う。

「退かなきゃ力づくでどかせるわよ!」

美神は言い捨てるがそれでも一向に退かない。
佳代は、泣くフリをして横島の体を尚も庇い続ける。

「やれるもんなら、やってみなさい!お前は部外者でしょ!」
「わ、私に向かって…お前…って…!」

美神の頬の筋肉が痙攣を起こしている。
はっきり言って、美神にとってこんな言葉で侮辱されたのは初めてであろう。
美神のこのあまりに表現しがたい表情は、グラヴィトン以来だ。

そこに、キヌが止めに入る。

「美神さん、この場は帰りましょーよー!」
「何言っているの!こんな小娘にバカにされたまま引いてたまりますか!」

バチバチバチ・・・
佳代と美神の間には、未だ、火花が散っていたがキヌがもう一度言い直した。

「あの〜〜美神さん!
 ここで不祥事起こしたら、もっとビラでひどい事書かれて事務所に影響しかねませんよ?」





結果、横島はなんとかピンチをしのいだが。
キヌは哀しんでいるように見えた。

「良かったですね、今年は。
 他の人にもチョコレート貰っていたみたいですね。」

そうキヌはにこやかに言葉を残して行ったが、チョコを渡していく事はなかった。
しかし、帰る時には「今度は一番に貰ってくださいね」と横島の下駄箱に手紙と一緒にしまって行った。


Fin

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