ザ・グレート・展開予測ショー

きっと いつか(前編)


投稿者名:SooMighty
投稿日時:(04/ 1/ 8)

あんたが望む物なんて、今の世界には何処にも無いってわからないの?

思い出という河に溺れてることに速く気づけ!

今ならまだ間に合うはずでしょう!?

生きる事に疲れたなんて嘘はもういいからさっさと立ち上がってみせろ!








だけど いつか(前編)












「お前なんで先生のことを避けるでござるか?」
バカ犬の突然の質問に私は面食らった。

がすぐにその質問をするまでに至ったかは理解できた。
こいつはあの男を尊敬・・・いや崇拝していると言ってもいいぐらいだから。

「別に避けてなんかいないわよ。」 
軽くいなすことに決めた。あくまでクールに。

「嘘を言うな。先生とお前が喋ってるのほとんどみたことないでござるよ。」

「私はあんたと違って無駄なお喋りはしない主義なのよ。」

「そう言うな。最近、先生は・・・あの出来事もあって、
 かなりやつれてるでござるよ。」

「なにそれ?あいつまだあの大戦のこと引きずってるの?」

「見てわからぬでござるか!? この鈍感狐!!」

「何よ!! そんなんわかるわけないじゃないの!! わかりたくもないし。」

「ん〜〜〜!! なんて冷たい女狐でござろう。」
バカ犬は苛立った表情で頭をボリボリ掻き始めた。

冷たいと言われようがなんだろうが、あいつの考える事など理解できないのだ。




あいつはナントカという強力な魔神との世界を巻き込んだ大戦の末、最愛の人
ルシ・・・ナンタラってのを失ったらしい。

おキヌちゃんとバカ犬から耳タコになるほど聞いた話だ。


別に私は大して興味を示さなかった。
確かに悲劇だと思うが、未だにその事を引きずってるのはどうかと思う。
人間・・・いや妖怪や魔物、神様ですら大なり小なり抱えて生きてるのだ。
誰だって過去と向き合って自分なりの決着をつけなければいけないのだ。
そう自分一人の力で・・・
周囲の支えは立ち直るきっかけにはなるものの、結局最後は自分の力で
立ち上がるしかないのだ。




それは生きとし生きるものの義務とすら思っている。

まあ・・・私の勝手な美学というか価値観なんだが。
とりあえずシロの質問に答えることにした。

「確かにあまり好きじゃないけどね。あいつのことは。」

「むっ。やっぱりそうでござるか。」

「だって情けない男は嫌いだし。」

「せ・・・拙者の先生に言うにこと欠いて情けないだと〜〜!!」
バカ犬がもの凄い剣幕で私に迫ってきた。

「いくらお前でも今のは言い過ぎでござろう!」

「情けない奴よ。その大戦の事は詳しくは知らないけど、もう一年近く
 経つじゃない。それをいつまで引きずってるの?」

「いや、それはそうでござるが・・・」

「涙が枯れるだけの期間はもう過ぎてるはずよ。それでも目が覚めて
 ないというのはあいつが弱く情けないからよ。」

「・・・」
シロに口を挟ませないよう語気を強めた効果が出た。
バカ犬は押し黙った。

「それに一人で部屋で閉じこもって悶々としているなら、まだ許せる
 けど、あいつの場合仕事場でもそれを振りまくからねー。実際
 美神さんとおキヌちゃんはもう内心ウンザリしてるんじゃない?」

「そんなこと・・・」
一応否定はするものの、その言葉に覇気は無かった。

「現実を受け入れることすらできずに、それで勝手に一人で孤独に陥る
 なんてバカよねー。まああんたも、あんな情けない男はさっさと
 見限った方がいいわよ。」

「でも先生は拙者に色々教えてくださったでござる。その恩を返したい
 でござるよ。」

「それはあんたの自由だけど、あまり賢い行動とは思えないわね。
 確かにあんたはあいつに借りがあるのかもしれないけど、自分の
 人生をかけてまでやることなの? 下手したらあんたも堕落の道
 を通る羽目になるかもよ?」

「それでも拙者は先生の力になりたいでござるよ。
 例え無駄だってわかっていても。」

「ふうん、そう。なら勝手にすれば。
 一応忠告はしたからね。」

「おう、勝手にするでござるよ。なーに拙者のプリチーな
 魅力にかかればすぐにあの頃の先生に戻るでござるよ。」
バカ犬はそう言って自分の胸を強く叩いた。
その後せきこむというお約束も忘れないでやっていたが。

「バカ犬・・・ま、でも私はあんたのそういうバカで無謀なところは
 嫌いじゃあないけど。」

「タマモ・・・」
今にも溢れてきそうな顔をしていたので

「まーバカ同士仲良くやれるといいわね。」
と世間では余計な一言と言われてる言葉をプレゼントしてあげた。
こういう雰囲気は苦手なのよ・・・。

「くっ。大きなお世話でござる。」
予想通りいつもの強気なバカ犬に戻った。
単純で扱いやすいこと。
まーこいつの場合はそれが美点とも言えるから
侮蔑の意味は特にないんだけどね。

「ま、せいぜいがんばんなさい。」

「ん。タマモ・・・かたじけないでござるよ。」
そういってシロは私の部屋を出た。







さてどうなることやら。

つってもまあ結果はわかりきってるんだけど。

あの男の目はもう既に半分人生を捨ててるものの目だった。
ただあくまで半分だから救われたいという気持ちもあるのだが。

だけどそういった人間には、もう慰めや同情の言葉は届かないだろう。
ああいう人間にはきつい現実を思い知らせてやるのが一番だと思うが
美神さんやおキヌちゃんはその大戦の当事者だから、辛辣な言葉を放つのは
当然の如く無理。

シロもあいつの事を尊敬しているから、そんな事は言えるわけがない。


そう結局あいつと近しいものでは、救って・・・いやわからせて
やることができないのだ。



シロはいい奴だと思う。
世の中ではヨコシマみたいなレールからはずれた人間は次第に
周りから相手にされなくなる。
はずれた人間は余計に孤独を感じ、ますます生きる理由が見えなくなる
といおう悪循環に陥る。

それは至極当然の事だ。
冷たい世の中と思う奴もいるかもしれないけどそうじゃないのだ。


堕落した人間に関わっていたら自分もドロ沼に飲み込まれるのだ。
人に足を引っ張られるのは誰だって御免だろう。
それにそうなるのは自業自得であり、誰のせいにもできない。


シロも本能的にはそれはわかっていると思う。
それでも、尊敬する者のために嫌味なく手を差し伸べようとしているのだ。

気持ちいいぐらいまっすぐな精神。
不器用だけど強さに満ち溢れてる。


世界広しといえど、あんなにいい奴は滅多にいるもんじゃないだろう。





それ故に救えないのはなんとも皮肉な話だろうか。

まあ、私がわからせてあげたところであいつが自分の足で立ち上がれるとも
思えないけど・・・むしろ余計にショック受けて本当に人生終わらせちゃうかも。


それはそれで全然構わないんだけど、そうなったら間違いなく
ここから勘当されるわね。
それはちょっと困るわ。

あー嫌な想像しちゃったわ。
気晴らしにちょっとコンビニにでも出かけようかしら。




























今の季節は冬。
外は当たり前の様に寒かった。

「う〜寒む寒む。こんな日には温かいきつねうどんでも食べたいわね。」
といっても私の財布もこの冬と同じぐらい寒かった。

「あ〜こんなん見たら心まで寒くなるじゃないの。」
しょうがないからコンビニのカップうどんで我慢しとくか。

そんなことを考えてるとふと後方にひとつの気配がした。



・・・どうやらつけられてるみたいね。

一瞬でつけてる人間にも予想がついたが。






とりあえず食事にありつけるのはかなり後になりそうね。
全く面倒なことになってきたわ。

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