ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(14)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(04/ 1/ 4)

「なあ、兄貴よ、どうなんだよ!?あの女がヤられまくって俺らのガキ妊娠したりしたらよ。やっぱりあの修道院みたいな所を
欲しがる様になるだろ!?汚された女も汚ねえガキもまとめてぶち込んで忘れてしまえるような場所がよ・・!?

・・・・ククッ・・それとも、お前の場合、やっぱり喜ぶのかよ?・・・“ますますママとそっくりになった”つってな!!」





「・・・・能の無い駄犬に出来るのは手を噛む事だけさ。」

顔色を変えたのは奴の方だった。
・・陰念、人の精神を刺したかったらこの位の事をスッキリと言えなきゃ駄目なんだぜ。

「あいつなら万が一・・お前らじゃ有り得ねえけど・・そんな目に合ってもその事を分かってビシッと構えてられる筈さ。
そして、そんなあいつに俺は“ますますママとそっくりになった”と思うだろーよ。・・・俺は昔も現在も未来も俺の立場だ。
そしてあいつはあいつだ。あいつが何を考え選ぶかまでは知らねーが、どんな場合でもいつかあいつが産むのは、まず
第一に“あいつの子供”なのさ。・・・俺はただ、自分で望んでそいつらと『共に歩いて行く』だけさ。
馬鹿なマネした所で“お前のガキ”なんてどこにも出来やしねえよ。・・・“この俺”が言ってるんだ。間違いねえ。」

「下らねえ事言ってんじゃねえっ!!」

下らねえ・・挑発目的で出来もしねえ、やる気もねえ事言ってるのはお前の方だろ・・?陰念は再び俺の腹に突きを
入れようとして来る。俺は体内でスタンバイさせた霊気を少し放出して、ワイヤーを軋ませてみる。「糸使い」の女が
顔色を変えた。しかし、陰念もそれ以上に顔色を変えた。手が止まった。奴は反射的に後ろへ下がって間合いを置く。


「・・壊す?・・汚す?ハハッ・・犬がキャンキャン吼えて噛み付くってだけじゃねーか。お前、心理戦のセンスも悪過ぎだ。
・・・てかよ・・・・・・・そんなにガタガタ震えながら言うんだったら、最初から言うな。踏みたい地雷踏んでも台無しだぜ。」


挑発の間中、奴はクククと笑いながらも・・・無意識で小刻みに震えていた。
奴の態度・そして表情に浮かんでいた感情・・・「怯え」は隠し様がなくなっていた。



「ククッ・・・クククッ・・・そうかよ?・・・・そうか・・震えてたのか、俺様は・・・?ククク・・・なーに、気にするな・・・
こんなもの・・すぐに収まるぜ。・・・・てめえを・・・・余裕カマしてないで本気出したてめえを・・
ぶっ倒して這いつくばらせたら、すぐにでもなあっ!!」


怯えと、それを指摘された屈辱感とはそのまま悪意に転じた。――分かりやすい所も相変わらずだぜ。
陰念は再び猛連打を仕掛けて来る。出力は更に上がっていた。
このままだとマジで体内にダメージを受ける所まで行くかもしれない。

「何で怒らねえ!?何でいつまでもスカしてんだよ!?いつまでもてめえの下にいる俺じゃねえ!!
いつまでもてめえにビビっている俺じゃねえ!!・・・昔とは違うんだ!・・何もかも!!
・・・来いよ!!マジ切れして掛かって来い!!――――その上でぶち殺してやるからよ!!」

このまま頭に血の上った奴にワイヤーを破壊させるってのも手だが、「糸使い」が先に気付くだろう・・・それに・・これだけ
サンドバッグにされてるといい加減、こっちからも仕掛けたくなって来たしな。
聞き出せる事は大分聞き出せた様だし、―陰念の、GS協会とは別の雇い主が見えて来ないが―余興はお開きにさせて
もらうか。全てが終わってから陰念も鍛え直してやりたいものだ。初歩から。



「・・・・あの・・・大変っす。まずいっす。」

「・・・・何だよ!?」

どこからともなくスーツ男の不安気な声が響いて来た。怒鳴り返したのは陰念ではなく「人形使い」。

「あーー、異常っす。結界があ、何か、変なの入って・・・」

「この馬鹿、はっきり報告しろつってんだろ!?」

「いやあ、マジ変なのなんすよ、見た事ねえよこんなかき回して・・・・」

男の声にノイズが走り、途中で掻き消えた。薄暗い天井にこれまで見えなかった稲妻が頻繁に走る。衝立に書かれた
文字や人形が時折ゆがんで見える。・・・何かかなりの異常事態が侵入者によって引き起こされた。と言う事らしい。
掻き消えた男の声に代わって、女の何かを読み上げる声が響いた。聞き覚えのある女の声。聞き覚えのある呪文。





     虎よ

      虎よ

   ぬばたまの夜に

    燦爛と燃えて





畳の一角がゆがんだ。透明な気配・・巨体の存在を思わせる気配。
虎の吼声が響き、気配が素早く俺と陰念の間に移動した。

「雪之丞サン!雪之丞サンがいるですけん、エミさん!!・・・・そして・・・こ、こいつはっっ!?」

「・・ああ、そうだタイガー。・・・・昔、お前をボコった奴だな。」

天井の一角から青白い光を発しながらさっきの声の主― 小笠原エミ ―が姿を現した。
エミは全身に装飾とペイントを施し、呪術用の衣装を纏っていた。

「何、ゆきのじょー・・・って誰だっけ?そのゆっきーが何でここにいるワケよ?・・・・・おや?
・・おたく、何だか懐かしい匂いがするワケね。」

エミは陰念に視線を向けるとそう言った。
陰念はにやりと笑う。

「そうですけんエミさん!わっしは・・わっしは初めてのGS試験でこいつにぃぃーーーーっ!!」

「そんな事知らないワケっ!!・・・そうか!おたく・・・!!」

エミの陰念への視線にじわりと緊張が走る。
陰念は口元を歪めて笑いながら言葉を発した。

「女、お前からも少しだけするぜ・・・あの方の気配が・・そうか、てめえか。あの方の言ってた『人間の女』ってのは・・・・!」

エミは陰念の雇い主に心当たりがあるらしい。
「人形使い」が顔をしかめた。

「私らは公安からの依頼で鷺之塚天空へ呪いを掛けに来たワケだけど、馬鹿でかい邪魔な結界が張ってあるなと思ったら・・
アイツが絡んでいたって、ワケね。
・・・・陰念、だっけか?・・・・・アイツは・・・ベリアルは相変わらず意地汚くやってんのかい?」


「クククッ・・・ベリアル様は、てめえの事を忘れられねえってよ・・・!!」

「ベリアル・・・・・・魔族か!!」


――この件に魔族が関与している。
その事実は俺にとってかなり驚きだった。・・確かに陰念の雇い主なんつったら、天使なんかより魔族の方がしっくり来るが。
猿の話にも神界の過激派は出て来ても、上級魔族ベリアルなんてこれっぽっちも出て来ちゃいねえ。
・・・猿でさえ知らねえって事なのか?・・知ってても滅多に言えねえって事かも知れねえがな。
・・・・・・・神界内の反デタント勢力が共通の目的で魔族とさえ手を組んでいるなんて。

「ああ、そうだ。アシュタロス様亡き後の空位を巡って今魔界では上級魔族が凌ぎを削っている。ベリアル様は
その最有力候補の一人だ。決め手となる格上げや手柄の為には人間界での騒乱や神界との戦争が必要なのさ。
デタントやその先の共存路線なんかを進められると非常に迷惑なんだよ。
だから、このいけすかねえ神魔仲良し関係を台無しにする目的でベリアル様は、協力される事にしたんだ。」

「・・・・ミカエルにか?ミカエルや真神聖霊十字軍は戦争やる為にベリアルと合意したってのか?」

「おっと、そこまでは知らねえな。・・・仮にそうだとしても、誰が『はい、そうです』なんて答えるんだつうの。・・とにかく、
俺はベリアル様の手引きでGS協会に所属して、協会直属の非公式部隊を編成したのさ。少なくとも人間界は融通が
利くって言うか、利害の一致する話に弱いからな。それがGS協会であってもベリアル様の顔が通じるんだぜ。」

「魔物が“話せば分かる”様になったらこの業界、先細りだよ・・・・。」

疲れた様に「人形使い」が話を続けた。

「聖書にある最終戦争なんて起こされちゃあたまらんがね、今ある緊張緩和や共存路線は後退してもらわなくちゃ
GS全体の危機なのさ。うちらを動かしているのは特にこうしたデタント後退により魔物や妖怪が現在以上に危険視
され狩り立てる必要が生じた時、特需利益を得る層のお偉方さ。勿論、真神十字聖者友愛会とも、・・・・“彼ら”とも
そうした層は連絡を取っているようだね。」

「ふん、それでデタントが台無しになった暁にはそれぞれ殺し合い、狩りまくるって寸法なワケね?」

更にワイヤーが全身に食い込んで言葉が出なくなった俺に代わって、エミが陰念に訊ねた。タイガーが俺のワイヤーを
解こうと手に取った為、「糸使い」が慌てて急に締め上げたのだ。両者はそのまま威嚇し合っている。
「糸使い」にガン飛ばしながらタイガーが尋ねて来た。

「雪之丞サン、何でここに?」

「ちょっと、デートとか・・子守とかでな・・・。」

「何だか分からんのじゃが、ここを出たら急いでデジャブーランドから逃げた方が良いですけんの。鷺之塚天空は、どうも
とんでもないものをここに持ち込んだらしいとの情報が入ったですけん。」

「既にとんでもねえだろ、連中・・・?」

「そんなものじゃ済まないワケ・・・・天空が持ち込んだのは・・・・・・・マスタードガスよ。」

「何だと・・・!?」

「クククク・・・もっと“とんでもねえもの”だって持ち込まれてるぜ?人間には作れねえ様な、とんでもねえものがな。
神族と魔族との戦争ではあんなモンが使われるのかと思うと、さすがの俺様でもぞっとしねえぜ。
まあ、ベリアル様の下でもっともっと強くなれば屁でもなくなるだろーがな。
殺し合う、だと?違うぜ・・・強くなった俺様はベリアル様達と共に調子こいた天使も神族も一方的に虐殺するのさ。
『メギドフレイム』なんかメじゃねえんだよ。」

「・・『メギドフレイム』?・・・・・何だよ、それ?
・・・そして、陰念。・・お前が"ベリアルと共に”って・・それは、一体どう言う意味だ?」

「へっ、雪之丞の兄貴は『メギドフレイム』も知らねえでこの件に首突っ込んでいらっしゃるのかよ。呆れたもんだ。
雪之丞・・・俺様はもっともっと、もっと強くなるぜ。
この仕事がうまく行ったら、俺はベリアル様にきちんとした魔族にしてもらえるんだ。
あの時みたいな事故での不恰好な形じゃなく・・・・勘九郎がメドーサ様にしてもらったようにな。
どこまでも強く、強く・・人間を超えた究極的な力を・・・!これが俺達3人の夢だっただろ?
今度は俺がその夢を果たすんだよ・・クククッ!!」






「・・・陰念、てめえ・・・この・・・・・ばっかやろおおおおおおおおおおうっっ!!」



どんな地雷もやり過ごせると自分でも思っていた。奴にしても俺がここで切れるなど予想してなかっただろうが。

俺は一瞬で体を縛っていたワイヤーを弾き飛ばすと、陰念の目の前まで迫り、奴を全力で殴り飛ばしていた。

陰念は衝立を3個ほど引きずりながら転がって行った。4人のGS達は一斉に構える。それぞれの攻撃ポジションに
すばやく移動した。エミも構える。タイガーはその脇に立ち4人の様子を窺う。






馬鹿野郎。

どいつもこいつも・・・何で、気付かねえんだよ。

俺達の求めていた強さは、最後に魔族になる事なんかじゃねえんだって。

人間のままで、人間として強くならなくちゃいけなかったんだって・・・どうして・・・・


お前は、俺達3人で昔見ていた間違った夢を、未だに見続けているんだ・・・・!

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