ザ・グレート・展開予測ショー

ちょっとだけの勇気。


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(04/ 1/ 1)



「美神さんからもらったお給料、随分たまっちゃったなぁ……」

おキヌちゃんの目の前には一枚の貯金通帳。
GSのアルバイトをしているおキヌちゃんは美神さんから毎月ちゃんとお給料をもらっています。
だけどおキヌちゃんは美神さんの事務所に住み込んでるし、
質素な生活ぶりもあって美神さんからもらっているお給料にはほとんど手を付けていなかったのです。


「うんっ!みんなにプレゼントでも買っちゃおっかな?」


そうと決まれば、さっそくお気に入りの洋服に着替えて街へお買い物にやってきました。
世間はもう新しい年。駅前のショッピング街は振り袖のカップルにあふれ、みんな幸せそうな表情をしています。
ホントは今日おキヌちゃんも弓さんや魔理さんたちと遊びに行くとか
横島クンとどこかに出かけるとかしたかったのですが弓さんも魔理さんも今日はデートとのこと。
そして肝心の横島クンはというと補習。あまりにも出席日数が足りないために冬休みは補習だそうです。


「………いいなぁ。みんな幸せそうで。」

こんな時はちょっとだけ寂しい気持ちになってしまうものです。


それはともかく、気を取り直してショッピングを楽しもうと一軒のブティックへ入りました。
いろいろな服や貴金属を扱っているお店で
美神さんやシロちゃん、タマモさんへのプレゼントを買うにはピッタリのお店です。

「シロちゃんは普段から精霊石のネックレス付けてるからなにか他のアクセサリーがいいかしら……?
 タマモちゃんはちょっと大人っぽいものがいいよね。
 美神さんはなに着ても似合うから………」

ここでも一着一着ていねいに誰になにが似合うか選んでいきます。
一通り選んで、何を買うか決まったようです。


「やっぱりみんな、キレイだなぁ。
 美神さんはもちろんだけどシロちゃんやタマモちゃんだって………
 やっぱり横島さんはああいう方が好きなのかなぁ?」

たくさんの紙袋を抱えながら雲一つない冬の空を見上げるおキヌちゃん。
呟いたときにはきだされた白い息がすこしだけ悲しそうです。

もちろんおキヌちゃんは清楚な所が魅力なのですが、
なかなか自分で自分の長所というものは気が付かないものです。


そのとき立ち止まっていた場所でふと横に目をやると
ショーウインドウの中に1本のルージュが置いてありました。
色は赤を基調としたかなり派手派手しいものだったのですがなんだか気になったのでした。




「……………たまには、自分にプレゼント買うのもいいよね♪」


☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  



「ただいまー。
 みんなにプレゼント買ってきましたよ〜。」

「ホントでござるかっ!!
 拙者、荷物を運ぶでござる〜。ありがとうでござる、おキ…ヌ……殿………?」


荷物を持ちながらしげしげとキヌちゃんの顔を見つめるシロちゃん。
なんだかいつもと違う感じがしているみたいです。

「……あれ?
 おキヌ殿でござるね。なんだか今日はいつもと違うような………?」

「ええっ!?ひょっとして変………かな?」


おキヌちゃんは顔を赤くしてちょっとあわてた顔。
実はルージュを買った後でちょっとだけ試し塗りしてから帰ってきたのです。

「そんなことないでござるよ。
 いつもより色っぽくてこっちのおキヌ殿もステキでござる♪」

「え、ええ?なんだか照れちゃうな(赤)」


二人で談笑しながらリビングのドアを開けると
補習が終わって事務所に来ていた横島クンも驚いた顔をしています。


「……えっ?
 おキヌちゃん………だよね。なんか今日は…………」


横島クンもここまで言って言葉に詰まります。

おキヌちゃんなんだけどおキヌちゃんじゃないような不思議な感覚なのです。
それはきっと普段おキヌちゃんがおとなしい感じのイメージがあるからなのでしょう。
ルージュを付けたおキヌちゃんはいつもより明るいイメージを受けたのでした。

ただ言葉に詰まった横島クンがシロちゃんと違うところは
赤い顔をしてこれ以上しゃべれなくなったことくらいでしょうか?


帰ってきたおキヌちゃんが料理をしているときも横島クンはずっとおキヌちゃんをチラチラ見ていて、
おキヌちゃんが『どうかしたんですか?横島さん。』と尋ねるとボンっと赤くなってやっぱり上手く話すことができないのです。

横島クンの頭の中は
『あぁー……キレイやキレイやキレイやー。今日のおキヌちゃん、めちゃくちゃキレイやー。だ、駄目だぞ俺っ!!おキヌちゃんは妹みたいな存在でこんなドキドキするとかそんな対象じゃないはずなのに何でこんなに今日はおキヌちゃん見てるとドキドキするんだ、あぁ!!もう自分でなに考えてるかわからんっ!!!!でもキレイやなー……』
と、いいかんじに混乱してたりするわけですが。


そのときは『変な横島さん………?』と気にしていなかったおキヌちゃんですが
翌日にもなればその理由も分かることになるでしょう。




〜翌日〜

今日はクリスマスの日に遊べなかった
弓さんと魔理さんと遊ぶために喫茶店で待ち合わせしています。
お気に入りの洋服と昨日買ったルージュを塗って。

先に喫茶店に着いたおキヌちゃんはミルクティでも飲みながら二人を待っていました。
でも、なにやらまわりの様子がいつもと違うようです。

いつもいるウェイターのお兄さんはおキヌちゃんに見とれてカップを割ってしまい、
他のお客さんもおキヌちゃんに見とれているみたいです。
ついでに喫茶店で飼われているジャック(4歳、猫:♂)まで見とれています。


「おぉ!?おキヌちゃん、どうしたんだい!?」

「驚きましたわ。氷室さんって化粧映えする顔なんですのね………」


遅れてやってきた魔理さんと弓さんも驚いている様子です。
それはともかく『女3人寄ればかしましい』とはよく言ったもので3人で喫茶店の中で話に花を咲かせているようです。


「雪之丞ったらデートの時間にも遅れてくるんですもの。失礼しちゃうわ!」

「昨日、タイガーの奴と映画見に行ってさー。
 アイツ、映画のラストでおもいっきり泣いちゃってなんか意外だったなー。
 ………そういえば、タイガーが言ってたけど横島ってやつは昨日補習だったんだろう?
 おキヌちゃん、昨日横島に会わなかったのかい?」


「は、はい……。美神さんの事務所で顔を合わせたんですが、
 なんか話しかけても赤い顔してソッポ向いちゃって返事してくれないんです。嫌われちゃったのかも。(ぐすん)」

ぐすんと答えるおキヌちゃんに意外そうに話を続ける魔理さんと弓さん。

「へぇ!?意外だね。
 あの煩悩魔人のことだから化粧したおキヌちゃん見たら飛びかかるかと思ったのに……」

「氷室さん、それは彼が照れてるのではなくて?
 実際、嫌われてるとかそういうことはあり得ないと思いますわよ。
 今日にでもデートとかに誘ってみたらいかが?」


☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  

と、まあ
弓さんの勧めもあって横島クンをデートに誘うために
横島クンの補習が終わるのを学校の校門の前で待ってるおキヌちゃん。

学校の中では
『あ、あれがおキヌちゃんっ!?なんかお化粧とかしてるじゃないかっ!?
 俺は横島のために休みを返上して補習を教えに来てるのに
 なんでその横島に彼女が迎えに来てるんじゃ―――――っ!?納得いか―――――んっ!!!!』
と、やつあたりされたのは言うまでもありません。




そして数時間後、
補習も終わって学校から出てきた横島クンに声をかけたのでした。。

「横島さんっ!!
 今日、これからヒマですか?一緒にどこか行きませんか?」

おキヌちゃんから横島クンを誘うなんて普段では考えられない行動です。
だけど親友の二人から薦められたこともあってちょっとだけ普段より勇気を出したのです。

それは初めて買ったルージュの魔法。
ルージュ自体はただの口紅にすぎないのですがお化粧したことで
おキヌちゃんは、ちょっとだけの自信とちょっとだけの勇気を手に入れました。


「………えっ!?
 おおおキヌちゃんっ!?今、なんて―――――?」

「………もうっ!!
 何度も言わせないでください!!恥ずかしいんですからっ!!」



二人の間には幸せな時間が流れます。

いままではお互いにちょっとだけ勇気が足りないために、なかなか前に進めなかった二人。
おキヌちゃんのちょっとした勇気でようやく前に進めた二人。


これからも上手くやっていけそうですね♪



☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  


あれから数日が過ぎ
横島クンとおキヌちゃんの仲も順調に発展しているようでなによりです。
でもおキヌちゃんには最近、少しだけ心配事があるようなのです。
 




……ときどき不安になる。

今はとっても幸せ。
以前は自分に自信がなくて横島さんになかなか想いを伝えれられなくて
ちょっとだけジリジリしてたときもあったけど今は違う。


だけどそれはお化粧をした今の自分。
じゃあ、もしもお化粧をしなかったら?

以前みたいな関係に戻ってしまうかもしれない。
ううん、横島さんは落胆して以前みたいな関係にさえ戻れないかもしれない。


街を歩いていると声を掛けてくる男の人が増えた。
きっとその人達は私のお化粧した顔しか見ていない。
ありのままの私とか性格とかなんてきっと見ていない。


………横島さんも?





もちろん、そんなことはないのでしょうがそこは恋する乙女の悩む心の中。
悩み多きお年頃なのですからこんな事も考えてしまいます。
本来ならば横島クンがおキヌちゃんを安心させてあげるようなことを言ってあげれば
それが一番いいのですが、おキヌちゃんの変身に一番驚いている横島クンですから自分のことで精一杯なのです。

……いえ、実は横島クンも気になってるのかもしれませんね。


「………はぁ。
 実際のところ、横島さんはどうなんだろう……?」


自分の部屋でベットに座りながらためいきをつくおキヌちゃん。
大好きな人に自分はどう思われているのか?
そんなことを考えると、ためいきばかり出てくるのです。


コンコン


「おキヌちゃん?
 明日の除霊の件なんだけど美神さん、二日酔いだからキャンセルだって………」

横島クンが部屋に入ってきました。
自分の部屋でくつろいでいたときですからもちろんおキヌちゃんはお化粧なんてしていません。

「ちょっ………!!
 横島さん、まだ入っちゃ………………!!!!」


急にお化粧していない自分をだいすきな人に見せるのが恥ずかしくなってしまったのです。

それは、もしもお化粧のしていない顔を見せてしまえば
今、悩んでいることの答えを知ってしまうことになるからかもしれません。

それでも横島クンはそんなことも知らずにおキヌちゃんの顔を直視してしまいます。


(…………………………………っっ!!!!)


久しぶりに素顔を見られる恥ずかしさと
どんな反応するのかの恐怖で思わず身を竦めてしまうおキヌちゃんでした。


「…………二日酔いだからキャンセルだってさ。どうしたの、おキヌちゃん?」

横島クンは何事もないようにおキヌちゃんに話しかけるのです。
おキヌちゃんはそのことが不思議でなりません。


「横…島さんは……お化粧していない私はキライ…………ですか?」

とつぜん涙目で質問してくるおキヌちゃんにちょっと困った顔の横島クン。

「―――――そんなこと……………っ!
 ………おキヌちゃんはおキヌちゃんだろ?
 優しくて、明るくて、いつもみんなのことを心配してくれて。
 そんなおキヌちゃんが……そんなおキヌちゃんだから……………………


















 ……………………好き……なんだ。」

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  

〜数日後〜

今日もおキヌちゃんは魔理さんと弓さんと一緒にお茶を楽しんでる様子です。
話題はもちろんそれぞれの恋人のことについてです。


「あれ?おキヌちゃん、
 化粧やめちゃったのかい?もったいない……」

「いいんですよ。
 一番たいせつな人から一番たいせつな事を教えてもらいましたから。結局心が大切なんだって。
 うんっ!やっぱり私は横島さんが大好きっ♪」


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