ザ・グレート・展開予測ショー

横島先生のためにできること


投稿者名:G-A-JUN
投稿日時:(03/12/28)


目を覚ますと部屋が、まだ少し薄暗かった。
時間を確認しようと布団から時計に手を伸ばしていると、いつもより体がだるい気がする。
まだ眠いだけだと思いながら、気にしないで時計を見るとまだ5時過ぎだった。

「シロじゃあるまいし、何でこんな時間に・・・」

寝直そうと布団を掛け直していると、不意に寒気を感じた。
布団にくるまっていても、寒気が消えない。
まさか風邪か? とも考えたが、軽い気持ちで寝ていれば治っているだろうと、そのまま寝た。


・・・目覚ましが鳴っている
本来の起床時間に目を覚ましたが、明らかに容態は悪化している。
最初の症状の他に頭痛も加わっていた。
さすがに今日は学校もバイトも無理だと判断し、なんとか気力を振り絞って、美神に電話を掛けると言い終わる前に 「伝染さないでよ!」 の一言で切られてしまった。
相変わらずだよなぁ。そう思いながら、まだ眠気があるため、再び寝て安静にすることにした。


一眠りして、ふと目が覚めると時刻はちょうど昼時になっている。
朝よりは、少しマシになったかもしれない。
軽く体を起こしてみる。

空腹感があるが、食事を作る程の気力が出ない。
手をついて立ち上がろうとするが、途端に目眩がして立っているのがつらい。
仕方なく、また寝ようと思っていると直感的に何かを感じた。

「まさか・・・」

耳を澄ましてみる。
するとアパートの階段を駆け上がってくる音が聞こえてくる・・・それが、こっちに向かって来ている?
玄関のドアが開く音が聞こえる。
多少、頭痛と目眩がする頭を手で押さえ、ふらつきながらも必死に玄関の方まで様子を見にいった。
そこには予想を裏切る事なくシロが立っている。
ちょうど玄関のドアを閉めてこっちを振り返ったため偶然、目が合った。

「横島先生・・・ムリしちゃダメでござるよぉ・・・」

横島をひと目見ただけで、すぐに体調がよくないことに気づいたようだ。
気のせいか少しだけ目が潤んでいるように見える。

   っていうか、コイツどうやって入って来たんだ?
   確かにカギはかかっていたはずだぞ。

気になりながらも、シロに布団に入るように言われ、考えるのをやめて布団に入り横になる。

「で? 何しに来たんだ?」
「先生のお見舞いに来たんでござるよ!」

まぁ、コイツのことだから予想はできる。
暴れなければ、本当に看病ぐらいはしてくれるだろう。
そして袋を持って来ているが、何が入ってるんだ?・・・いや、深く考えないでおこう。

気づくとシロが黙ってこっちを見ている。

「ん? どうした?」
「拙者のヒーリングは効かないでござるか?」

そう言いながら少しずつ近づいてくる。

「い、いや! 多分ムリだろ? ヒーリングが効くんだったら、お前が来てから俺は風邪なんか引かなくなるだろ?」

今この状態で顔を舐めにこられたら、抵抗ができないため必死にそれを阻止しようとする。

「そうでござるな!」

照れた様な笑顔を見せながらも、やはり少しずつ近づいてくる。

「あ、あまり近づくなよ。お前にも風邪が伝染るぞ」
「その時は、先生に看病してもらうでござるよ♪」

気にせず近づき、手を伸ばしてきた。
そして、その手が横島の額に触れた。

「やっぱり少し熱があるでござる・・・」
「へ? あ、そ、そうか・・・」

一気に気が抜けたが安心した。
・・・ただちょっとだけ残念な気が・・・って何を考えているんだ俺は!!
惜しいなんて思ってなんかないぞ!!

「先生、大丈夫でござるか? 少し上がっちゃったでござる・・・」

横島の微妙な表情の変化(葛藤)と熱の上昇を感じ心配する。
思っていた以上に心配してくれていたことに気づき、それがうれしかった。

「横島先生、拙者に何かできることはないでござるか?」
「う〜ん・・・そうだなぁ・・・」
「何でもいいでござるよ。拙者、先生のために何かしたいでござる!」
「…って、いわれてもなぁ〜」

その時、腹が盛大に鳴った。
突然の来客(シロ)に忘れていたが、腹が減っているのに朝から何も食べていないことを思い出した。
これまでのシロの料理を振り返ると、さすがにシロに頼むのは気が引けるが、多分シロにも聞こえてしまっただろう。
その証拠に、シロは横島のためにできることが見つかったと、ニコニコとしている。

「やっぱりお腹が減ってたんでござるな、すぐ作るでござるよ。横島先生♪」
「い、いや・・・違うんだシロ・・・これは・・・」
「遠慮しなくてもいいでござるよ! 拙者は先生のために来たんでござるから!」

横島の様子をほとんど気にすることなく、そのまま予想通り、手にした袋を持って台所に向かっていった。

「ま、待て!・・・待ってくれ!!・・・う!?」

いきなり起き上がったため、激しい頭痛とめまいに襲われ倒れこんでしまう。



ひょっとしたら、少しの間だけ意識が飛んでいたかもしれない。
さっきまでやっていた、シロとのやりとりを思い出し、首だけを動かして台所の方を見てみる。
背中を向けているため表情はわからないが、それでも自分のためにがんばって作ってくれているのがわかった。
横島の視線に気づきシロが振り返った。

「もう少しで、できるでござるよ!」
「あぁ・・・そうか」

さっきから、いいにおいがしていることから、お前の料理の腕が上手いことは認めよう。
だがしかし、偏り過ぎているということに何故、気づいてくれないんだ?

これから出せれるだろう料理をどう乗り切るかを真剣に考え、その時を待つ。

「できたでござるよ〜!!」

・・・そして、その時が来たようだ。

ゆっくりと体を起こすと、同時にシロも料理を運んできた。

鍋?・・・鍋物なのか!?

肉料理がのせられている皿を何枚も持ってくる姿を想像していた横島には、すごい衝撃を与えた。
そして、恐る恐る湯気が出ている鍋を覗くと、さらに衝撃を受けた。

「こ、これは!?」
「? 雑炊でござるよ」


・・・・・・・・・
言葉が出なかった。
それが、少しシロに不安を感じさせたが、シロは横島の口が開くのを待ち続ける。

「シロ!! お前にも、こんな料理が作れたのか!!」
「当たり前でござるよ!! 簡単に作れるでござる!!」

これでも料理は得意な方だと思っているシロにとっては、少し怒りたくなる一言だったらしい。

「あ! 先生・・・ひょっとして、やっぱり肉料理の方が良かったんでござるか?」

実は横島が風邪を引いていることを考えて、おキヌちゃんにも材料の選択を手伝ってもらっていた。
しかし、やっぱり自分が最も得意な料理にすれば良かったのかなぁ? と思い始めた。

「いや! 絶対にそんなことは無い!!」

真顔で尋ねてくるシロに全力で否定する横島。

「よかったでござる! それじゃ、先生! 早く食べよ!」
「食べよ…って、お前も食うのか?」
「うん。お昼は先生と食べたいでござる!」
「まぁ、お前が作ったんだから、文句は言えないが・・・本当に伝染ってもしらないぞ」

そういいながらも、シロではないが、1人で食べるよりも一緒に食べる方がおいしい気がしていた。
それに、ひょっとしたら普段とは違うものを食べたことで、もう少し食事を改善してくれるかもしれない。
淡い期待を持ちながら、ありがたく最初の一口目を食べてみる。

「? お前は食べないのか?」

シロは自分も食べると言ったのに、横島が食べているのを見ているだけだった。

「どうでござるか?」
「いや、美味いけど」

何故か真剣な表情で聞いてくる。
だからと言って真剣に返す必要もないと思い、素っ気なく返した。
美味いのは本当だし。
しかも、本当に風邪を気づかってくれているのか、丁度良い具合の薄味だった。

「ホントでござるか!!」
「うわっ! どうしたんだ!?」

素っ気なく返したつもりなのに、それでもこんな反応をされてすごく驚いた。

「よかったでござる〜♪」

横島から良い評価をもらえて安心し、そして自分でも食べ始める。
本当なら、すぐにでも抱き着いたり、顔を舐めたかったのだと思う。
それでも、体を気づかって抑えてくれていると気づいた。
横島も、せめて頭をなでてやるぐらいはしたいと思っていたから。


昼食を取り終えた後もシロは看病を続けてくれた。
体もずいぶんと楽になった。
ふと気になり、いつまでいる気なのかを聞いてみたら風邪が治るまでずっといる気だったらしい。
さすがにそれはダメだと言ったが、聞いてくれない。
しばらくしてから、おキヌちゃんもお見舞いに来てくれた。
おキヌちゃんの説得にして、ようやく納得すると、おキヌちゃんと一緒に帰る事になった。


二人が帰った後、静かになったこの空間に少し寂しさを感じた。
さっきまで、ずっとシロがいてくれたおかげ温かいものを感じていたからだろう。

・・・気持ちの問題だな。

寝る前に一度だけ、今日一日ずっとがんばってくれたシロの姿を思い返した。


・・・明日は元気な姿を見せてやらないとな・・・

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