ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(11)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(03/12/24)



大広間のシャンデリアが一斉にかき消え、辺りは闇に包まれる。中空に不吉な模様の魔法陣が光を放って浮かび上がり、
その向こうに巨大な影―マント姿の人影―が微かに照らされた。しわがれた哄笑がその場に大きく響く。


「うわっははははははああっ!!ワシが、ワシこそが“ヨーロッパの魔王”、ドクター・カオスじゃあああっ!!」


――おい待てよ、ここの城の魔王は「ボンドキング」っつうんじゃなかったか・・・?

「ええとですね・・声優やってくれたおじいちゃんがちょっとボケてて・・何度注意されても名前の所で間違えちゃうからって
代わりの人が見付かるまでしばらくそのままでって・・声に迫力はあるんですけどねえ・・」

同伴しているナビゲーターに尋ねて見ると、申し訳なさそうにそう答えてくれた。
「ヨーロッパの魔王」も老後は仕事を選べない。貯えが無いとツラいってのは他人事じゃないかもしれねーよな・・?


「楽勝!・・行くでちゅよー!!」  「待ってよ!!今度は私の出番だよ!」

とたたたたとたたた・・・

「わーっ!パピちゃんも理沙ちゃんも待ってえ!・・ここ怖いよー!」
「落ち着いてアメ食べてから行こーよ?・・・はい、パイナップル味。」

「ちょっと!明るくなる前に駆け出したりしては危な・・・」

どかべきぐしゃっ!!  × 2

再び照明が点灯し、弓はハリボテの壁に頭から突っ込んだ二人を引っこ抜いていた。母親役と言うか、引率の先生役が
板に付いている。

「・・・・(冷汗)さ・・さあ、それでは、何が起こるか分からない、ラジカルワンダーツアーのス、スタートですっ!!」



「水無月さん、どこか痛い所はありませんの?」

「常世川小学校4年2組水無月理沙、どこも痛くありませんっっ!!」

「メリーは弱っちいから、すぐ痛い痛いって泣くんでちゅよねー?」

「常世川小学校4年2組水無月理沙、泣かないっ!」

「こらっ!!・・・だめですわ水無月さん。ケガしていたり、どこかが痛い時はきちんとそう言いませんと。
他の人には貴方の痛みが分からないのですから、言ってもらえないと何もしてあげられないし、
放っておくともっとひどくなる事だってあるんですのよ?」


――遠回しに俺に向けても言っている様な気がする・・・いや、多分、そうなんだろう。
さっきのちょっとしたケンカから、俺は何となく弓と距離を置きながら後ろを歩いていた。―――。





―――バシッッ!!――

「どうして・・・そう言う事まで・・自分一人で答えを求めようとするんですの!?」

城に入る直前、俺は弓に改めて今回の成り行き・・パピリオを連れ歩くようになった経緯、猿と話した事、これから
起こる事、片付けるべき事を順序立てて説明した。少し調子に乗っていた俺は、猿からの「特別な報酬」の話をも
自慢気に話しちまった。
「これでお前の親父さんにも認めてもらえるかもしれねーぜ。」とか言いながら。・・・すると弓は無言で俺に強烈な
平手打ちを食らわせてきやがった。

「なっ!?・・・何しやがる!?」

「貴方・・・一度でも私に、その事、話してくれました?・・一度でも!その事で悩んでいるとか・・どうにかしたいと
思ってるとか・・・一度でも!?」

確かに、一度も言った事はない。だけど・・それは・・・。

「何だよ?そんな話、お前にしたってしょうがねえだろ?」

「・・・・何が・・“しょうがない”、のよ?」

「問題があって、その原因が俺にあるんだからよ、俺が結果を持って来なければどうにもなんねえだろ?お前に悩み
グチってどうなるってんだよ?そこで、今、猿がイイ話持って来たって訳だ。めでてー事じゃねえか・・何、怒ってんだよ?
訳わかんねえぞ!」

俺は頬を押さえながら弓に反論した(・・結構痛い)。弓はこっちを睨み付けたまま両手でこぶしを握り仁王立ちしている。
その黒目がちの両目が潤んで来た。こーゆー時のこいつはかなり感情が昂ぶっている。

「貴方分かってない・・そう言う事じゃないでしょ?・・・・もし・・もしその話を、聞かせてもらえてたら、私にだって色々と
言いたい事、ありましたわ・・そんな事気にしてるのって貴方らしくない、落ち着き過ぎても困るけどもっと大きく構えて
欲しいとか・・肩書きを手に入れるとかじゃなく・・例え・・多分ダメでも・・一度はそのままの貴方で、お父様にぶつかって
行ってみて欲しいとか・・私から見ればお父様が貴方を排除してる以上に、貴方がお父様を避けてるのですわ・・とか、
・・・・二人の事なんだから、そうやって二人でいろいろ話を出し合ってっ・・」

両のこぶしがわなわなと震えている。涙が一筋、零れ落ちてきた。

「・・・貴方はそうする事すら・・拒むのです?じゃあ・・じゃあ私は、貴方にとって、一体、何だと言うのです?」

俺は言葉を返せない・・・いつものやり方だ。自分で状況を把握し、問題点を見付け、自分で片付けられる事は全て
自分で片付け、最高の「結果」を携える・・失敗する事も無くはないが・・“一匹狼”な俺のいつもの、昔からのやり方
・・・だった筈だ。

「貴方があの子をここまで連れてきたのは貴方なりの考えもあるのでしょうけど・・それでも、大聖様のお話は・・貴方に
とってあまりにも危険過ぎますわ・・。何の保障も無いまま多くの人たちと端くれとは言え神様を敵に回して、最悪、人類の
敵の烙印を押されたまま命を落しかねないなんて・・大聖様の理想も分かります、貴方が決めた事にも頭から反対する
つもりはありません・・でも、どうして・・ここに来てさえ自分一人で背負い込もうとするのです?私に何も頼んでくれない
のです?」

頼りにしているから、呼んだし、こうやって状況を説明したんじゃねーかよ・・・。パピリオと連中を直接カチ合わせれば
それこそ神界魔界の関係に重大な影響を及ぼしかねない戦闘になるだろうし、人間側の死傷者も多数出るだろう。
それをさせない為にこっちの動きにノータッチでノホホンと遊ばせているんだ。
・・・そして、俺一人でそんな環境作りは出来ない。

当初の目的とは違って来ているが、俺は十分、お前を頼りに、必要にしているんだぜ?

「貴方のお母様の話にしたってそう。貴方が何でもない事の様に軽口で喋る程、私には貴方が口を固く閉ざしている様に
見えますわ・・。痛いのに痛くない振りをするのが、貴方の言う強さなんですの?
・・・ここぞと言う場所で互いに背中を預け合ってる、と思えたのは私の思い込みに過ぎなかったのかしらね・・・?」

弓はしばらく立ち尽くしていたが、踵を返し歩いて行ってしまった。

・・・・何で、伝わらねーのかな・・・・?






「魔王と戦う為には伝説の勇者の剣、『プラチナ・エクスカリバー』を手に入れなければなりません。その在り処を書いた
地図が何と・・・ここに!(ガサゴソ)・・・あれ・・あれ?・・・(ピッ、プルル・・・)ごめーん、ちょっとそこに地図置きっ放しに
なってない?忘れちゃったみたいでー・・」

「これでちゅね?(ガサガサ・・)」

「!!」

「洞窟の中だって。」 「途中に森もあるみたい。」 「(モグモグ)ろおいれえ・・(遠いねえ)(モグモグ)」
「遠くたって手に入れるわよ!・・・お父さん、お母さん、前田先生、常世川小学校4年2組水無月理沙は今から、
伝説の勇者になりますっ!!」

「ふう、面倒くさいでちゅねえ・・そんなものなくたってこれ一発で・・(バチバチバチッ)。」

「(ゴリッ、ゴリゴリ・・)一発で、何だよ?え?何だよ?城ごと粉砕か?(ゴリゴリ・・)」

「分かったでちゅ・・それ、痛い・・ギブ、ギブ」

「・・・・・さあ!第一の冒険、帰らずの森と海賊王の洞窟へ行きましょう!!(・・疲れた)」



コンピューター制御のトロッコと動く歩道、徒歩を組み合わせて数百メートルの道のりに様々な風景と出来事が
目まぐるしく展開されていた。恐竜にガイコツ姿の船員に道案内をするドワーフ達・・パピリオや理沙たちは景色が
変わる度、がやがやと騒ぎ、歓声や悲鳴を上げている。
―ここで「どうせ全部作り物」と子供がシラけるのは最早昔の話で、今日びの子供には「嘘を嘘のままで楽しむ」芸当が
備わっているらしい。

「あっっ!!あんな所に『プラチナ・エクスカリバー』が刺さっています!数百年間眠り続けるあの剣を
引き抜く事の出来・・ちょっ・・・」

ナビゲーターが言い終わらない内にパピリオと理沙が一目散に剣の所に駆けて行った。他の参加客の子供たちも
抜け駆けされてはかなわんとばかりに駆け出した。

「常世川小学校4年2組水無月理沙、勇者の剣、いただき!!」

一番乗りの理沙が剣に飛びつき引き抜こうとするが、何の反応も無く、地面に固定されたままだ。
当然だろう。ああいうのは確かコンピューターでロックされていて、ナビゲーターの合図で音と光を発しながら抜ける
仕組みになっている筈だ。彼女の話も終わらない内に飛びついたガキどもは、無駄足を踏んだって事だ。

「泣き虫メリーじゃ勇者は無理。私にまかせるでちゅ。」

「何よ、怖がりのパピちゃんにも抜けっこないよ!!」

「ちょっと貸してみろ!俺なら抜けるだろ?」

「あたしもー。」

ちょうど良くガキが群がった所で『プラチナ・エクスカリバー』は発光し、重低音と蒸気とを上げながら地面から離れ、
全員の手に掴まれていた。

「何と!みんなの力で剣が引き抜かれました!力を合わせたみんな、で、剣に認められたのです!
・・・だから、これから魔王と戦うには、ケンカしないで仲良くしてないと勇者にはなれませんよーー?」

さすが、プロ。聖書級崩壊ならぬ学級崩壊レベルのガキどもを上手くまとめてるぜ。・・・目尻に「もう、うんざり」と
小さく書かれている感じの笑顔だったけどな。





そしてツアーのフィナーレ。魔王との最終決戦・・・・・

「あ、雪之丞さん、弓さん、ミス・パピリオ。こんなところで・どうしました?」

「げっ!?・・そりゃこっちのセリフだ。何やってんだよ?」

魔王の側近としてマリア本人が出演していやがった・・・。

「レンタル・1週間で家賃・一ヶ月・払えます。ドクター・カオスの命令で・不定期に・出演・しています。」

「そうかそうか、大変だな・・・ところで、俺達がここに来ていた事は忘れろ。いいな?カオスに聞かれても、美神や横島に
聞かれても、“知らない、見ていない、来ていない”だ・・。」

「ノー。ドクター・カオスに・事実と違う報告・不可能。でもそれ以外へのノーコメント・可能。(ドシュッッ!!)」

「わっと!こっちにロケットアーム飛ばすんじゃねえ!!・・じゃあ、それで良い。カオスに報告する時は、“沈黙は金になる”
と、俺からの伝言だ。」

「イエス。沈黙は・金に・なる。伝えます。(――ピタッ)」

「・・・何やってんだ?」

「・・・・『プラチナ・エクスカリバー』からの・光が・当たったら・動かない。出演の・内容・です。」

「・・・まあ、がんばってくれ・・。」

子供たちはここまで全員で剣を持ちながらやって来ていた。普通は誰か一人が選ばれて剣を振るう筈だが、
全員の動きが合わない為、一振りする度にかなりの騒ぎだ。

「ぐああああ・・・おのれえ、このままでは済まさん・・出直して、いつかその剣も研究対象にしてやるからのう・・・!!」

セリフと言うより殆ど「素」な捨て台詞と共に魔王の姿が消え、辺りが明るくなった。

「勇者の・・いや、みんなの活躍で魔王は敗れて逃げ、姫は助け出され、この国に平和が戻りました!」


わーーーーーーーーーーーーっっっ!!


「やった!!常世川小学校4年2組水無月理沙、パピちゃんを見直しました!」

「やった!メリーこそお手柄でちゅよ!頑張りまちた。パピリオの愛情の賜物でちゅね!?」


ガキどもは一斉に歓声を上げた。「全員が勇者」なだけに普段以上の喧しさなのだろう。
一番言動の派手だったパピリオはここでも注目され、みんなに話し掛けられている。・・今度は例の法術も使っていない様だ。
あいつは特別な技を使わなくとも多くの人間から好かれ、魅き付けてしまう奴なのかもしれない。

気が付くと、弓が隣に来ていた。はしゃいでいるガキどもに視線を向けたまま呟く様に言う。

「・・・さっきは、ごめんなさい。・・ちょっと、言い過ぎたみたいですわ。」

「てめーが言い過ぎるのは今に始まった事じゃねーだろ?」

「・・何ですって!?」

「・・・こちらこそ、・・色々とブルーにさせてたみてーで、悪かったな・・でも、俺、こーゆー奴だからよ・・。」

「それこそ、今に始まった事じゃありませんわよ。」

しばらく沈黙が流れたが、どちらからともなく小さく吹き出して、くくく・・と笑い始めた。
顔を見合わせて、再び笑う。


「フフフ・・“みんなで力を合わせて勇者”ですわよ?」

「ハハハ・・係員のねーちゃんも言ってくれるぜ?・・今回のガキはちっと凶悪すぎたからな・・ハハッ」

理由も無いのに、可笑しかった。ケンカの一つや二つでわだかまっているのがとても馬鹿馬鹿しく思える程に。
まるであの法術が効いているみたいに。今まで分からなかった「心の開き方」を一つ気付いたような気分だった。




「法術なんかではなく、あいつ自身が、あの光る蝶なんだ」

笑いながら、そんな思い付きがふと頭を横切った。



 + + + + + + +



「冒険と空想の旅」が終われば日常の世界が戻って来る。
・・・いや・・・日常・・・・・少なくとも・・「現実」がやって来る。


ゆきくんとママはね、ぼうけんのたびをしているんだよ。
・・・・しあわせになるために。


ママは時折俺にそう語り掛けていた。
絵本を手に入れる暇も金もない逃亡と流浪の生活の中で、ママは画用紙を用意し、一枚一枚に絵を描きながら
色々なお話を聞かせてくれた。
「西遊記」・・「オズの魔法使い」・・「青い鳥」・・冒険や旅の話が多かった。どこかへ幸せになる方法を探しに行く旅。
何となく、物語の中の旅をする登場人物と自分達とを重ねてイメージする様になっていた。

旅人達は旅の終わりに幸せになったり、なり切れなくとも何かを得たりしていた。
だけど、俺とママの「旅の終わり」・・・ママは死に、俺には「現実」が待っていた。

警察で保護された俺を、あの土地から親戚だと名乗る白人夫婦が訪れて来た。俺を引き取って養う為に来たのだと言う。
・・半分は本当で半分は嘘だった。
奴等は確かに俺とママの親戚だった。しかし、あの土地に戻された俺は再び施設に・・・ヴァチカンの施設に放り込まれた。
「罪悪から生まれ出たもの」には日を見せる事なく、目立たぬ場所で朽ち果てさせるべき・・それが奴等の考える
「正義」と「信仰」だったからだ。

そこでの「現実」はこんな別名で呼ぶ事も出来た。・・・・「地獄」と。

その地をプロテスタントの国から独立させる為に戦いを繰り返していた組織は、俺の生まれる前から平和路線に移行して
いたが、本部の方針に折り合わず爆破テロや暗殺を続行しようとする勢力も少なからず存在していた。
俺のブチ込まれた施設は、そう言った連中と陰で繋がり、人材を提供していた。爆弾設置や狙撃の為に使い捨てられる
要員を。名前の要らないガキどもを。

「お前達は生まれ、生きている事自体が購い難き罪悪だ。そんなお前達でも神の栄光の為に、神聖なるカトリックの信仰の
為に死ねるのだ。これを教会の大いなる愛と言わずして何と呼ぶ?・・主、イエスに祈りを。感謝を。・・そして地獄へ落ちる
がいい、蛆虫ども。・・・エイメン」

一つ一つの単語の意味も分からない内から毎日復唱させられた。
ママと俺自身とを侮辱する、その命を侮辱する、「神聖なる誓い」を。

「私の母親は堕落した淫らな罪人で、裁きを受け地獄に落ちました。」
「私も生まれながらに母親の罪を背負った汚らわしい蛆虫で、死んだら地獄に落ちます。」
「だけど、死ぬ時だけは神の栄光の為に死にます。」

「エイメン!」  「エイメン!」  「エイメン!」     「エイメン!!」

そして、訓練。銃や信管、発火装置の扱い。幼児に教えるものじゃない。使われた教材も凄まじい粗悪品で、しじゅう暴発し、
腕や顔半分が無くなる事などざらだった。そうなったガキは当然、人知れず「廃棄処分」となる。

単語の意味が分かる様になった時も、復唱は続けられた。しかし、心の中では違う誓いを立てていた。


「地獄に落ちるのは貴様らだ・・・死ぬのも貴様らだ・・・俺が貴様らを殺してやる・・・・・・絶対に、殺してやる。」


だが、その誓いは果たせなかった。


その施設にいた連中・・尼僧も修道士も司教も、組織の兵士や工作員も・・他のガキどもも・・全員、死んでしまったからだ。
あの雨の夜に“あいつ”がやって来て・・・1人残らず、死んじまった。―俺を除いて。
俺は誓いを果たせなかった代わりに生き延びて・・・・・・・・「力」を手に入れ、「強さ」に目覚めた。



 + + + + + + +



「冒険と空想の旅」が終われば日常の世界が戻って来る。
・・・いや・・・・・・少なくとも・・「現実」がやって来る。

この場合の、今の俺達の場合の「現実」はこう言い換える事も出来る・・・・・「トラブル」と。


俺の携帯の留守電には20件以上の伝言が入っていた。1件目だけ聞いてみる。

「・・俺だ。横島だ。・・何やってんだよ雪之丞!?お前がパピリオや弓さんと一緒に東京デジャブーランドに入ったって
情報が届いているんだよ。今いるんだろ?デジャブーランドに?・・・小竜姫様はカンカンになってる。
これはオカルトGメンから入った情報なんだけどな、最近有名な宗教団体で真神十字聖者友愛会ってあるだろ?あれが
何か怪しい動きしていて、それにパピリオの外出が関係あるらしいんだよ・・・早く連絡してくれ・・・」

残りは聞かない事にした。
少し気になる事もある・・・教団の動きと横島達の動きがダブってねえか?
こうも考えられる・・小竜姫や横島がパピリオの捜索に使っているのがGS協会だとして・・・あいつらに情報を提供している
のは教団に情報を流しているのと同じ奴だと。とすれば・・横島達は結果的に教団に自分の情報を提供しちまっている
可能性もある・・・・。

「・・・弓、テレビをつけて見てくれ。」

ニュースを放映している局を探す。スクープ番組があった。
テロップ、「あの教団、デジャブーランドに大挙入場!!」
画面にはデジャブーランドの正面ゲートに押しかけている信者達と取り巻く警官達。讃美歌の替え歌みたいなのが
どこかから流れてきている。



殺気が近付いて来る。猛スピードで。まるで人ではない、攻撃の意思そのものが身を屈めて走っているかの様だ。
パピリオがぴくんと体を震わせ、その方向を睨み付ける。

「・・・どうしたの?パピちゃん。」

俺はパピリオを片手で制すると、弓に背中を向けたまま言う。

「ガキども連れて、他の客・・・教団にビビって帰ろうとしている連中に紛れて移動してくれ。
出来れば、常世川小学校の教員と連絡を。」

「ええ。」

――付け加える。

「文字通り・・・背中を任せたぜ。」

クスッと背後から小さく笑う声。そのまま遠ざかる気配。

殺気はますます近付いて来ている。身に覚えのある殺気。研ぎ澄まされた霊波。レストランで俺の背後にいた奴。
ギリギリまで近付いて来て――――植え込みの一角が弾けた!


「―――――シュアッッッ!!――」


裂帛の気合と共に殺気は形を持って現われた・・・・・二頭の・・狼!!半透明の、依と霊気で作られた・・「式」だな?
俺は瞬時に魔装術を装着。狼は俺の身体の両脇を掠って行ったが、ノーダメージだ。
狼たちの背後から、続けて植え込みを弾かせ、黒の戦闘服を着た男が飛び出て来た。こいつが狼の主だ。
手に霊波を纏わせたサバイバルナイフを構えていて、それをそのまま俺に突き出す。
俺はそいつを躱すと男の腹に蹴りを入れる。男は吹っ飛んだが体勢を直して姿を消した。
逃げた訳ではあるまい。奴の殺気は未だ俺の周囲をうろついている。
狼が吼えた。

戦闘開始のゴングだ。・・・ふん、やっぱバトルはこうでなくっちゃな。


――――――――――――――――――
 Bodyguard & Butterfly !!
 (続く)
――――――――――――――――――
クリスマスと無関係に・・途中どこか少し意識してますけど・・・最後らへんがアレだし、クリスマス台無しな一本。
だから短編も書いてみたりしたのですが・・・。
今日のゆっきー回想はマジで事実あった事と一切無関係です。・・ありえなくは無いと思ってるけど・・そんな
事例は私の知ってる限りで確認されてません。全くの私の作り話です。

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