ザ・グレート・展開予測ショー

青春クリスマス無宿!!


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(03/12/24)


12月21日―――


終業式やミーティングを終え、帰り準備でざわつく教室。
もうすぐクリスマス。それほど多くないとは言え、教室内カップルはその日のデートコースを打ち合わせ始め、
今の内から局地的な24日気分に包まれていた。
そして・・・・


「ピート君!クリスマスの予定はある?映画のチケットがちょーど二枚あるの!良かったら、ピート君どうかな?と思って!」
「私の家でパーティーやるの。ピート君にも来て欲しいなーーなんて。」
「あの・・ピート先輩・・・今年のクリスマスは・・その・・あたしと・・」

「えーと・・いや・・24日は唐巣先生のミサが忙しいから、僕、手伝わなくちゃいけなくて・・」

「嘘!あの神父さんにあらかじめ聞いて来たもん!この日はピート君と丸々遊べるって言ってたわよ!」

「え゛っ・・・・・・。」
(唐巣神父はこの日のピートの予定を貰う事を既に諦めていた。・・下手に教会内にいられると彼を拉致るつもりのエミに
呪術の標的にされたり、アンの「ゴリアテ号」で壁を貫通されたりする危険性すらあった・・・)


「けっ!・・・・なあタイガー、今日は何だかとっても胸糞悪い一日だと思わねーか?そこら辺機銃掃射してやりてー様な・・
この胸糞悪さがあと4日も続くって事なのか!?」
「こらえてツカーサイ、横島サン!横島サンはまだ良い方ですけんノー。ちょうど24日に仕事じゃないですカ?それに
夜には美神さんやおキヌちゃんとケーキを食べるんじゃないですカ・・わっしなんか・・わっしなんかーーー!!」
「うわーーっ!こんな所で虎化するなあああっ!!」


しかし・・タイガーでさえ「まだ良い方」である事を彼らはまだ気付いていなかった・・・・・。
教室の隅で目立たぬ様に、彼ら以上に、その日が来るのを歓迎していない者がいた・・・・。








「何が・・24日よ・・・?何が、クリスマスよ・・っ?何が楽しいのよ・・・?私にとっては・・・机にとっては・・・
ただの『冬休み』じゃない!!――――こんなの・・こんなの青春じゃないわっっ!!!!」

    ==============
       青春クリスマス無宿!!
    ==============




12月24日―――


きーん、こーん。 かーん、こーん・・・・。

人のいない(用務員さんや当直の先生は別として)学校内にチャイムの音が虚しく響く・・・・。
遠くからどこかの商店か車のクリスマスソングがかすかに聞こえて来る。
愛子はいつもの様に机に腰掛け・・誰もいない教室で一日中そうしていた。
もうすぐ日が沈む時間だ。夜になればますます外の音楽が耳に入る事だろう。

「青春と言っても、校舎の中だけなのね・・私・・・」

勿論、彼女は机を背負って校外に移動する事も可能だ。そうやって友達と一緒に登下校や買い物をする事だってある。
しかし、帰る場所も出発する場所も学校だ。
もともと学校の備品であった彼女は学校外の生活に何かを思う事などない―この12月24日を除いて。
「冬休み」と言う、学校がみんなから忘れ去られている時間の中で、青春最大のイベントの一つが行なわれている。
・・・それは彼女の理想にとっての矛盾だった。

「楽しそうだな・・・・。」

自分もあの中に入りたい。そして青春を満喫したい。・・物理的には不可能ではない(常識的にどうかはおいといて)。
だけど、自分が街に出てクリスマスを・・「青春」を味わえるのか?学校の机を背負って?セーラー服姿で?
友達にパーティーに出たいと言えば、多分快く迎えてもらえただろう。・・だけど、彼らは自分の姿を見てクリスマス
ではなく、普段の学校生活を連想してしまう。・・・それは多分、「青春」なクリスマスではない。



でも・・・・耐えられない。  こんな日に忘れ去られているなんて。
待ってなさい・・・・
「青春」な・・・クリスマスとやら・・過ごして見せるわ。



愛子は立ち上がった。机の上に。そしてこぶしを握り何かを決心する。



夕方過ぎ、暗くなりかけた渋谷センター街。交差点側入り口から奥の方までカップルで混雑・・いや、寿司詰め状態だった。
その中で「ぎゃっ!?」「痛いっ」「アブねー!」などの小さな悲鳴が所々から聞こえてきた。
一人でも何とか「クリスマスの青春」を味わえそうな場所を探して、机を背負った愛子があちこちぶつかりながら人ごみを
掻き分けていたのだった。
怒鳴ったりドツこうにも、その格好と一心不乱な様子から何か怖くなったのか事を荒立てようとする者はいなかった。
スカウトマンや指を三本立てて「どう?」とか聞いて来るおっさんにも声を掛けられたが、「それは青春な事なの?」と聞き
返されると、やはり何だか怖いと思ったのか逃げて行ってしまった。

「ダメね・・・・ここでは青春は味わえないみたい・・・。」



やはりカップルや女性客で賑わうお台場の某映画館。ここではクリスマス恒例のイベントを映画上映と別に行なっていた。
吹き抜けのホールから「幸運の白い羽」を落とし、それをカップルなどの客同士で競って拾う・・と言う、一見ロマンチックで
スカした内容だが、毎年2、3人は下敷きになって潰れる者が出ると言う、その実かなりバイオレンスで危険なアトラクション
だった。

「これは・・・!青春、かもしれないわね・・・っ!?」

羽が降って来るのを待ち構えるカップル達の中へ彼女は入って行った・・・机を背負ったまま・・・・係員に摘み出された。
(机などを用意しての参加はルール違反である上、押し合いになった時大変危険です。)



葛西臨海公園「ダイヤと花の大観覧車」――この大観覧車に乗って地上117mの上空から周囲を見渡すと、世界的に有名な
テーマパーク、レインボーブリッジ、アクアラインの海ほたる、都庁、東京タワー、房総半島から富士山に至るまで関東の有名
観光名所を一望でき、約17分の空中散歩を楽しんでいただけます。

・・・は、机を持ち込んでの入場を断られた。



―――ビュウウウウウウウウウウウッッ!!―――

夜のレインボーブリッジ。クソ寒くて風が吹き付ける中、肩を抱き合ったりして並んで東京の夜景を眺めている、カップル、
カップル、カップル・・・・と、机に座ったセーラー服・・・・・。

―――ビュウウウウウウウウウウウッッ!!―――
「きれい・・・・・・・・・・・とか言う前に寒すぎ・・・・。」
―――ドビュウウウウウウウウウウウッッ!!―――
「・・・・・・・・・・・青春・・・じゃないわね?・・・やっぱり。」




「青春どころか・・・・存在意義すらないって感じね・・・?」

とぼとぼと帰りの道に着く愛子。人気のない夜の通学路。背負った机には哀愁が漂っていた。
クリスマスの雰囲気は十分味わえた。
だけど、その空気の中にある筈の「クリスマスの青春」を味わう事はとうとう出来なかった。
どこまで行っても自分はその空気の前では「部外者」でしかない・・・そんな苦い感想が残った。

トコトコトコ・・・・
背後から小さな駆け足の音が聞こえる。振り返ってみると、たまに公園で見かける「ジャングルジムで遊ぶ子供の幽霊」
が走って彼女を追い越そうとしていた。・・・・・?彼は、公園から出る事は殆ど無い筈なのに、どうして?

「ねえ!・・どこへ行くの?」
「?・・僕が見えるの?・・・おキヌおねえちゃんがね、クリスマスだから一緒にケーキ食べようって。
幽霊の僕でも食べられるケーキ作ってくれるんだって。」
「あ、そうだったの・・・あれ?でもこっちは美神除霊事務所とは逆方向じゃない?」
「うん、あそこには幽霊は入れないからって学校で、って。」
「――えっ!?」

愛子は子供と一緒に走った。―学校。一ヶ所に灯りが付いていた・・・彼女の教室に。



「よおっ、どこ行ってたんだ?少し待ってたんだけど、先に頂いてたぞ?」

「横島君・・・・・!?」

「あっ、愛子さん、お帰りなさーい。」
「夜に教室上がりこんでドンちゃん騒ぎなんて懐かしいわねー?中学の頃良くやってたわ。
・・煙草やお酒持ち込んでだけど・・。」
「あー、やっぱり美神さんもですか!?私、今でもたまに六女の教室でやってんっすよ!」
「(ギロッ)一文字・さん・・・?」
「ああっ!冗談だって弓!冗談!・・・・・・(ゴニョゴニョ)と、言う事に・・」
「私ももっと懐かしいよ・・・しかし、大丈夫なのかね・・?当直の先生とか・・?」
「あっ大丈夫です。しばらく吸血鬼化させておきましたから。・・ヒック」
「ピート君・・・確かに君は20歳未満ではないが・・程々にね・・(汗)」
「こらうまいっ!こらうまいっ!(ガツガツ)・・・おキヌちゃんおかわりですけんノー!!」
「(―バキッ!)ケーキにおかわりとかないワケっ!!ピートの前で私にまで恥掻かせないで欲しいワケ!!」

教室内にはクリスマスのイルミネーションが施され、クラスメートや他校生・・高校生ですらない人も混じっていたが、
ケーキやシャンパン(以外のお酒も混じっているが)をたくさん用意して・・・
それは、クリスマスパーティーだった。・・ここでの、クリスマスだった。

「・・・何かよ、お前がクリスマスは冬休みだとか言って落ち込んでたの思い出してさ、だったら教室でケーキ
食べようかって言ってみたらみんな面白がっちゃって・・・騒がし過ぎたか?」
「ううん・・・・ありがとう、横島君・・・・本当にありがとう・・・。」

自然に胸が熱くなり、涙が溢れるのを感じた。愛子はそのまま泣き出しそうになるのを堪えながら、
その思いを言葉に代えた。





「――――これこそ、“青春”だわ!!」

<FIN>
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私なりにクリスマスらしい話を、って事でトライしてみました。・・元々今日は「B&B!!」のみを送る予定でしたが、
今回のそれがあまりにもクリスマス離れな内容(今日の雰囲気にドブを塗る勢いで)だったもので自己フォローの
つもりで朝ダッシュで構想し、書いてみたものです。
こっちでクリスマスらしさを感じていただけたら幸いです。で、「B&B!!」の方で黒くなる・・と。逆でも良いですね。

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