ザ・グレート・展開予測ショー

シロといっしょ。 ―この白い雪のように―


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/12/24)


《 ‥‥で、それ以来シロは戻って来ないのですか。 》
「 ああ。 」

12月24日、みぞれに近い雨が降りだした頃、小竜姫・ヒャクメが横島のアパートを訪問していた。
あいかわらず2人共、無意味なサングラスをつけているが‥‥

「 ‥‥そりゃちょっとは言いすぎたかと思ったけど、
  発信機がついてる首輪はずしてるみたいだし、どこいったかわからないんじゃあな。 」
《 居場所ならわかるのよねー。 》
「 え!? 」
《 私の能力、見くびらないでほしいのよねー♪ 》

―――と言いながら、ヒャクメは目をキョロキョロさせ、周囲の散策をはじめた。
一方、小竜姫はフッと笑うと‥‥

《 でも―――シロがそんな風だとは意外です。 》
「 え‥‥!? 」
《 部隊では彼女、本当に優秀で、命令に反抗するなんて考えられない模範犬なんです。
  今回、外出許可が出たのもそのためで―――
  でもあんなに楽しみにしてたのに 問題を起こすなんて‥‥ 》
「 そ そうなのか!? 」
《 ええ。 でなければ犬佐になんかなれませんよ。 》

《 ‥‥部隊じゃわたしたちはただの道具だからね。 優秀でなければ存在価値はないわ。 》
「 !? 」


小竜姫が持ってきたフロシキの中から、女の声が聞こえてきた。
小竜姫がフロシキの包みを開けると、なかにはオリに入れられた仔狐が1匹いた。


《 タマモ犬尉(けんい)! 人間の会話に口を出してはいけない規則ですよ。 》
《 わるいわね。 私はどうも、シロ犬佐ほど優秀じゃ‥‥‥‥‥‥ 》

そこまで言うと、タマモは急にからだを振るわせだし―――

《 ―――ってなんで私があのバカ犬より下なわけ!? 絶対キャスティングミスよ―――っ!! 》
《 ‥‥わかったから話し続けて!(汗) 》

仔狐の姿のまま泣き叫ぶタマモを小竜姫がなだめる。 しばらくしてタマモは落ちつくと‥‥

《 ‥‥まあ、あいつよく言ってたわよ。 『家族はいい』って。
  『そこじゃ誰も自分が有能かどうかなんて、問題にせずつきあってくれる』って―――
  あいつ1日も早く帰りたくて、その分シャカリキに任務をこなしてたのよ。
  8年かかって思いがかなって―――タガがはずれて、昔に戻ったんじゃないの? 》
「 ! 」

《 あっ! 》

そのときシロの居場所を探していたヒャクメが突然驚きの声をあげた。

《 どうしたのヒャクメ!? 》
《 シロ‥‥公園で刃物もって暴れているのよねー 》
《 暴れてるって‥‥どうして? 》

「 ‥‥俺行ってくる! 」
《 まって横島さん! 》

小竜姫は横島を呼び止め、タマモのオリを開けた。

《 タマモ犬尉、出番よ。 》

ぼんっ☆
オリから出てきた仔狐は、金色の髪を9つに束ねた、美しい少女へと変身した。

《 私やヒャクメは表だって行動出来ないから、あなたが横島さんを手伝ってあげて。 》
「 まったく世話のかかる上司ね。 協力してあげるから感謝しなさいよ。 」

やれやれといった感じで、髪をかきあげながら言うタマモ。 すると横島は―――


「 ずっと前から愛してました―――っ!! 」
ぐしゃっ!
《《《  お約束はやめいっ!!!  》》》


タマモに飛びつこうとする‥‥が、
小竜姫・ヒャクメ・タマモのトリプルツッコミにより、タタミに踏みつけられるのであった。






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             シロといっしょ。 ―この白い雪のように―

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◇◇公園◇◇

ビュオォオオオオオオオオオオオオ――――――−−‐

日も暮れかけ、みぞれ交じりの雨が徐々に雪へと変わってきた頃、横島とタマモは公園にかけつけた。
そこで彼らが見たものは‥‥

≪≪ ぐふ‥‥ ぐふふふ‥‥ いくさはどこじゃ〜〜〜! ≫≫

それは刀を持って、刀の“意思”に反抗しようとしているシロの姿だった。
刀といっても、刃が30センチもない短剣に近い長さなのだが‥‥

「 あの刀は‥‥!? 」
「 妖刀シメサバ丸の包丁!? なんであれをあいつが!? 」

ガタガタガタガタガタガタ‥‥‥‥
「 タダオどの〜〜〜 助けてほしいでござるよ〜〜〜!!(泣) 」

びしょぬれになりながら寒さに震えてるシロ。 彼女は泣きながら横島に助けを乞(こ)うた。

「 シロ!? おまえなんでそれを持ってるんだよ!! 」
「 実は――― 」




前回横島と別れてから、シロはこの公園でずっと野宿をしていた。
そして今朝から雨が降りだし、寝床を変えようと公園裏手の森のほうを移動していたら、森の中から何者かに呼ばれる声がした。
探してみると、そこには土や枯れ葉のなかに埋もれた1本の短刀がそこにあったのである。
それがかつて美神が封じた“妖刀シメサバ丸”。
その後おキヌが包丁として有効利用していたが、事務所の爆発と共に行方不明になっていたものである。
どうやらその時のショックで封印が解けたらしい。(ということにしておこう。)
探索能力に長けているシロだからこそ、見つけられた代物なのかもしれない。
そしてそれを手にしたシロは、シメサバ丸の支配下に‥‥




シャキンチャキンシャキン! シャキンチャキンシャキン! シャキンチャキンシャキィィィンッ!

「 ―――というわけで拙者、この刀の意思に逆らえなくて‥‥ううっ!(泣) 」
「 どーでもいいから刀を降りまわしながら回想してんじゃねえぇぇっ!!(大泣) 」

回想している間、シロはずっと横島に斬りかかっており、
横島は“栄光の手(霊波刀)”で、シメサバ丸の攻撃をかろうじてかわし続けていた。
※ちなみにこの横島は『バトル・ウィズ・ウルブス!!』あたりの強さで、文珠はまだ覚えていない。


「 はっ! そうでござった! 止まれシメサバ丸!! 」
≪≪ むぐっ‥‥! ≫≫

シロが全霊力をこめ、シメサバ丸の動きが一瞬鈍る! だが―――

「 タダオどの〜〜〜 もう限界でござるよ〜〜〜! 」

これまでずっとシメサバ丸を抑えていたシロの霊力は、すでに底を尽きかけていた。

ビュンパシュビュンパシュビュンパシュッ!

≪≪ おぬしできるな〜〜〜っ! いざ 尋常に勝負じゃ〜〜〜! ≫≫
「「 うわあああああああっ!!!!(泣) 」」

シロはシメサバ丸を振り回しながら、公園内を逃げまわる横島を追いかけていた。
シロの意識がほとんど消えかけていることに気づいたタマモは―――

「 いけない! 犬佐の霊力が弱まっている! このままじゃ犬佐は‥‥! 」
「 ど どうすりゃいいんだタマモ! 」
「 どうすりゃっていったって――― 」

( 意識が‥‥くっ やむをえないでござる! こうなったら最後の霊力を増幅させて、
  シメサバ丸をコントロールして拙者の腹をかっさばいてもらうでござる! )

シロが何らかの行動をとろうとしていることを、直感的に察知した横島は―――

( あのバカ‥‥! 『待て』!! シロ!! 」
ぴくっ
「 !! 」

シロの動きが一瞬止まる。 横島はタマモの元へ近づき―――

「 頼む! 俺がシロの手からシメサバ丸をはたきおとしたスキに、シメサバ丸を封印してくれ! 」
「 あんたなんかにムリよ! 今の犬佐には――― 」


「「「  頼む、タマモ! シロは――― シロは俺の家族なんだ‥‥!!  」」」


「 タダオどの‥‥! 」
「 ヨコシマ‥‥‥‥ 」

真剣な顔で頼まれたタマモ‥‥彼女に家族はいない。
だが家族というものの良さについては、シロからいやというほど聞かされていた。
自分のために、ここまで真剣になってくれる家族を持つシロ犬佐を、ちょっぴり羨む彼女であった―――

「 ‥‥‥‥了解! 」

すると横島は、霊波刀を放出させ、シロに向かって走りだした! 後ろからタマモも続いてくる!


≪≪≪  返り討ちにしてくれるわ〜〜〜!!!!!  ≫≫≫

「「「  うぉおおおおおおおおおおっ!!!!!  」」」

「「「  タダオどの――――――――!!!!!  」」」








キィィン‥‥‥‥








雪降る薄暗い空に、金属音が鳴り響く。
空高く舞い上がったシメサバ丸は、そのまま地面にわずかに積もった雪の上に落ちた。
そしてタマモは封印の札を素早く使い、シメサバ丸封印に成功する。
一方の横島とシロは―――

「 くっ‥‥シロ!? 」

横島の額のバンダナは真っ二つに斬られていたが、かすり傷程度ですんでいた。

「 タダオどの‥‥無事でよかったで‥‥ござる‥‥ 」

どさっ‥‥倒れかかるシロを横島が抱きとめた。
シメサバ丸と霊波刀が交わる瞬間、シロが全霊力を用い、シメサバ丸の動きを鈍らせていたのである。
もしも、シロの想いが少しでも弱まっていれば‥‥

「 バカヤロウ、無茶しやがって。 こんなに冷たくなって‥‥ 」
「 タダオどの‥‥額から血が‥‥ 」


ぺロッ‥‥ペロッ‥‥


シロは横島の額の傷を舐めた。
横島はからだを硬直させたままじっとしている。 しばらくして舐めるのをやめたシロは―――

「 これで大丈夫でござる‥‥ 」

そう言うと、徐々にシロのからだが透けだしたのである。

「 おい! まさかこのまま消えるんじゃないだろうな! おいシロ!! 」
「 ‥‥‥‥ 」

ゆっくりと目を閉じるシロ。 後ろからタマモが近づく――

「 落ちついて、ヨコシマ。 」
「 落ちついてられるかよ!! 俺はまだこいつに謝っちゃいねえんだ!! 」

どんどん透明化していくシロを、横島はおもいっきり抱きしめた。

「 ごめん‥‥! 俺が悪かった‥‥バカ犬なんてもう言わねえ。
  ‥‥おまえがどんな姿だろうと、そんなの関係なしに俺は‥‥俺はおまえのこと‥‥ 」

パアアアアアアアアアッ!

横島が言い終わる前に、シロのからだが消えようとする―――


「「「   消えるな‥‥ 消えるなーシロ――――――!!!!!   」」」


―――しんしんと降る雪の中、横島は慟哭した。 そして―――

































 ぽんっ☆








「 !? 」


シロは人の姿から、前髪だけが赤く染まった白い仔犬(狼)の姿に変身し、横島の腕の中におさまった。
その姿は8年前と変わらない、幼き頃いっしょに遊んだ友達の姿だった。
まるで、この白い雪のように真っ白い‥‥

「 シロ‥‥? 」
「 霊力が弱まって、一時的にケモノになっているのよ。 まあ回復するまで当分その姿ね。 」
「 ‥‥‥‥ 」
( ? ヨコシマ‥‥‥‥ )

横島の後ろに立っていたタマモは、彼の反応のなさに疑問を持ち、横から横島の顔を覗いてみた。

「 ‥‥‥‥シロ‥‥‥‥ 」

涙を流しながら、眠ってるシロを抱きしめる横島。
その表情に幾分驚いたタマモは、フッと微笑むと‥‥

( わたしも昇進しようかしら‥‥ )

そう考えながら、音を立てずにその場から去っていった。

イブの夜、横島はシロの看病をずっと行っていたという―――










―――後日談。


あのあとタダオどのは、フトンでねていた拙者に、コンビニのからあげをたくさん買ってきてくれたでござる。
タダオどのは、拙者の看病をしてくれながら―――

「 クリスマスは“家族”と過ごすもんだ 」

と照れながらいってくれた‥‥
拙者は‥‥拙者は‥‥最高にうれしかった‥‥
なぜかタダオどのは、サイフのなかをのぞきながら泣いていたけど、たぶんうれし泣きでござろうな!

あれから拙者は、人間に化けずに狼の姿のままでいる。
人に化けた状態でだきついたら、タダオどのは柱に頭をぶつけて叫んでいるのでござる。
でも狼の姿ならタダオどのはだいてくれるし、いっしょにねてくれるのでござるよ〜♪
ここだけの話、銭湯でこっそり拙者のからだを洗ってくれたこともあるのでござる♪(もちろん狼)

しかしそんな幸せな拙者たちの前に、“机妖怪”“隣の女子高生”に続く、新たなる“敵”が現れたのでござる!
ある日拙者とタダオどのがサンポから帰ってきたときのこと―――


「 あ、お帰りなさい横島さん。 」


なんと巫女服着た幽霊が、拙者とタダオどのの部屋を掃除していたのでござる!
おまけになにやらいい匂い‥‥この幽霊、なんとずうずうしくも料理まで作っていたのでござる!
拙者は料理ができないというのに‥‥!


がるるるるるるる!!!!!!!!
「「「  敵性巫女幽霊!! 拙者と勝負でござる――――――!!!!!  」」」


タダオどののまわりには妙にまとわりつく女が多くて、けっこう大変でござる。
 

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