ザ・グレート・展開予測ショー

鳥瞰


投稿者名:SooMighty
投稿日時:(03/12/23)

空と雲が私の頭上を通り過ぎていく。
あなたと出会えた私はあの空や雲とともにはばたけると思っていたのに。


冷たい涙に濡れて飛べない羽を持つ私には叶わぬ夢物語。














鳥瞰







あの人にとって私はルシオラさんのかわりでしかなかったのだ。
寂しさを紛らわすための恋愛。
そんな恋愛が永く続くわけもなく、お互いに孤独を感じながら別々の道を歩んだ。


不思議と涙は出なかった。
世界全体を・・・そう大空を飛び立てる鳥のような視点で見れば
誰にでもあるような別れの一場面でしかないと分かっていたから。

そうどこにでもある場面だ。
私たちが別れたからといって世界はいつもどおり流れていく。

そうこの冬が過ぎて、暖かい春が来るだけのことなんだ。





今日は雨が降っていた。
そういえば別れた時もこんな雨が降っていたっけ?
これだけ雨が降っていたら鳥も空を飛べないだろう。
私と同じように。

いや・・・違うわね。
鳥はこの雨が通り過ぎればまた元気に羽ばたける。
だけど、私にはもう・・・







あの人と付き合っていた頃の私はほとんど笑わなかった。
寂しさを紛らわす為に与えられる愛。
それはまるで鳥カゴに閉じ込められた感じだった。
鳥カゴの中の鳥でもいつかは大空へ、あの人の空へと
飛び立てると思い必死に羽を広げていた。


でも現実での私の羽は既にちぎれていた。







ふとなぜかこの雨にあたりたいと思い、外に出た。
まるで私の今の心境を描いたような冷たい雨だ。
今更、涙が溢れていた。とめどなく涙が。

思えばあの人も寂しそうな顔をよくしていた。
あの人も同じように大空を夢見ていたのだろう。
付き合った時はルシオラさんという鳥カゴから羽ばたきたかったのだろう。
結局は二人とも鳥カゴの中の愛を見つけれなかったけど。



確かにあの人は別れる最後の時に私を抱きしめてくれた。
そこで私は初めて飛べることに気付いたのだ。
あの人を痛いくらい愛しているのにようやく気付いたのだ。
もう遅すぎるのに。
これからは最後まで最後まで一人を貫き通さないといけないのに。

そんなことはお構いなしに泣き叫んだ。
愛しくて涙が止まらなかった。
悲しくて涙が止まらなかった。

今になってようやく飛べることに気付いたのに。




悲しみの雨と涙はいつまでも振り続けていた。






そんなどこにでもあるような悲しみの一瞬だった。











END

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa