ザ・グレート・展開予測ショー

傷ばかりの天使!!(その27)


投稿者名:TAITAN
投稿日時:(03/12/20)

「・・・・・・ん。」
西条は、ゆっくりと瞼を上げる西条。
視界を、眩しい光が支配する。
光に慣れてきた西条は、周りの様子を見る。
病院で見る医療器具が幾つかある。
そして、横のベッドには・・・、
「横島クン!?」
城の中で逸れた横島が大きな鼾をかいて寝ていた。
その横島が寝ているベッドから少し離れた所にある椅子に座ったまま、寝息をたてて女性が寝ていた。
「よかった、気が付きましたか・・・。」
「!?」
西条が横を向くと、包帯やはさみなどを乗せた盆を持った男が立っていた。
男はニコリと笑う。
「エリッサの心霊治療(ヒーリング)で傷は全て塞がりましたが、まだ痛みは残っています。」
「エリッサ・・・・。あそこで寝ている女性のことか?」
「えぇ。傷を全て塞がるまで心霊治療しましたから、疲労が溜まったのでしょう。椅子に座ったら、すぐに眠ってしまいました。」
「君は・・・・?」
「申し遅れましたね。僕は魔界軍第13小隊担当戦医ダンテ軍曹と言います。」
「!!」
驚いた西条は上体を起こすが、それと同時に体に激痛が走る。
「ぐっ!?」
「まだ動いてはいけません。」
西条は再びベッドに横になる。
「しかし、何故魔界軍が僕と横島クンを治療したんだ?」
「ギルファ様の願いを叶えて貰わなくてはいけませんからね。」
「ギルファ様?」
「僕とエリッサは、ギルファ様の直属の部下です。」
「!!」
驚愕する西条。
そして、暗い表情に変わる。
「・・・・すまない。君が仕えていたギルファを、僕が殺してしまった・・・・。」
「いえ・・・・。ギルファ様は、貴方に裁かれるのを望んだのでしょう・・・。同じ、美しき者の手で・・・・。」
「・・・・・・。」
西条はダンテを見る。
「さっき魔界軍だと言ったが、何故ギルファの部下になっているんだ?」
「・・・・助けてもらったんですよ。ギルファ様に。」
「ギルファに?」
「えぇ、とある任務の時に、敵に急襲され、仲間は死に、自分も瀕死の重傷を負ってしまったんです。その時に、ギルファ様が助けてくれたんです。」
「・・・・。」
「それに、魔界軍では僕は死んだことになっていますからね。」
苦笑するダンテ。
「それじゃあ、あのエリッサという女性もそうなのか?」
「えぇ、彼女も魔物に襲われているところをギルファ様に助けてもらったんです。」
「・・・・そうか。」
西条は再び暗い表情になる。
(多分、ギルファに恋心を持っていたんだろう、あの娘は・・・。本当は、僕を殺したかったに違いない・・・・。)
女性の気持ちを良く知っている西条は、ダンテの話を聞いて思った。
「・・・・・・。」
西条は顔を上げる。
「教えてくれ。ギルファが言っていた"あの方"とは誰なんだ?」
「・・・・・・。」
沈黙が訪れる。
そして、ダンテが口を開く。
「・・・・・・"あの方"とは、アメリヤ・シルクハイトという少女です。」
「アメリヤ・・・・?」
西条には聞き覚えのある名前だった。
そして、西条は思い出した。
「そうだ、あの時の・・・・・。」
前に横島と一緒に黒ずくめの男たちから助け出したアリス、リナに仕えるメイドの少女の名前だった。
「ご存知なのですか?」
「あぁ、確かアリス王女、リナ王女に仕えるメイドのはずだ。」
「その通りです。彼女は、アリス王女、リナ王女に仕えるメイドです。しかし、彼女には、もう1つの姿があります。」
「何?」
「アメリヤ・シルクハイトという名は偽名です。」
「!?」
「本当の名は、アメリヤ・ラティル・バルチザン。バルチザン王国を築いたバルチザン家の末裔です。」
「!!」





「私の名前を覚えていてくれたのですか?」
「えぇ、貴女がバルチザン家の血を引いていることもね。」
アリスは地下牢の前にいるアメリヤに言った。
「・・・・そこまで知っていたのですか?」
アメリヤは驚いた。
「・・・・私たちをさらったのも、貴女の仕業?」
「はい。」
アメリヤは答えた。
「・・・・・・・メタリア家への復讐?」
「・・・・えぇ。」
「?????」
2人に勝手に話を進められて、頭の上に?マークをたくさん浮かべているリナ。
「何?どういうこと?ワケが分かんない!?」
「リナ、現在バルチザン王国を治めているのは、私たちメタリア家の分家だということは知っているわね?」
「え?う、うん・・・。」
「けど、昔は違った。」
「え?」
「そして、メタリア王国も昔は存在していなかった。」
「ど、どういうこと!?」
「元々メタリア王国は、バルチザン王国の領土を奪って建国したのよ。」
「!!??」





「中世の頃、当時のヨーロッパでは2番目の兵力を持っていたバルチザン王国に、とある軍が侵攻してきたの。」
「それが・・・・、私たちのご先祖?」
「えぇ。その軍の将軍が、メタリア王国初代国王ハロルド・ギア・メタリアだったの。」
アリスは言った。
「そして、バルチザン王国は敗れ、領土の半分をメタリア軍に奪われました。」
アメリヤが言う。
「その領土を使い、ハロルド・ギア・メタリアはメタリア王国を建国しました。」
「ハロルド初代国王は善政をし、王国は栄え、逆にバルチザン王国は衰退の道を辿って行ったわ。」
アリスは言う。
「そしてある時、バルチザン家は歴史上から姿を消し、バルチザン王国は、メタリア家の分家が治めることになったの。」
「それが、貴女たちメタリア家と、私のバルチザン家の因縁の歴史です・・・。」
アメリヤは言った。
「私の先祖は、いつかメタリア家を滅亡させようと、復讐を誓ったのです・・・。」
「・・・・・。」
「けど、その復讐も終わりました・・・・・。」
「・・・・・メタリア王国を滅ぼしたの?」
「・・・・えぇ。」
「!!」
驚愕するリナ。
「それじゃ、パパは、ママは・・・・・。」
「・・・・・・。」
「イヤーーーーーーーーーー!!」
泣き叫ぶリナ。
アメリヤは哀しい目でそれを見た。
涙を流しながら、キッとアメリヤを睨むリナ。
「なぜ、なぜこんな酷いことをするの!?」
「私だってしたくなかった!!貴女方の傍で働いていたかった!!」
「!!」
「でも・・・・、バルチザン家の怨念からは、逃れる事が出来ないのです・・・・。」
アメリヤは、地下牢の扉を開ける。
「もう貴女方を捕らえておく必要がありません。早くこの城から逃げてください!」
「あなたは!?」
アリスが叫ぶ。
「・・・・・・私は、決着をつけなければいけません。バルチザン家の血に!!」
そう言って、アメリヤは走り去った。






「・・・・・・。」
西条はダンテから、メタリア家とバルチザン家の因縁の歴史を聞いた。
「あの人は、望んでいないのです。血で血を洗うようなことをして復讐をするのは。」
ダンテは言った。
「お願いです!"あの方"を、アメリヤ様を救ってください!!」
「・・・・・・。」
「いいぜ。」
「!!」
西条が声がした方向を見ると、横島が立っていた。
「起きていたのか。」
「あぁ、話は全て聞いたぜ。」
横島はGジャンを羽織り、小さなテーブルの上に置いてあるバンダナを巻く。
「ほらよ。」
横島は西条に、ベレッタM93Rを投げ渡す。
「・・・・・フッ。」
西条は、ホルスターに渡された銃を入れ、コートかけに掛けてあったジャケットを取り、それを羽織る。
「さて、行くとするか。」
「あぁ。」
横島と西条はドアに向って歩き出す。
「気をつけてください。城の中にはマチュアの部下が警備しています。」
「安心しろ、あの娘は俺たちが助け出してやる。」
「あぁ、バルチザン家の怨念からな。」
そう言って、横島と西条は去っていった。





「行ってしまったのですか?」
横島と西条が部屋から出て行った後、エリッサは目覚めた。
「あぁ、アメリヤ様を救いにな。」
ダンテは言った。
「・・・・・・。」
「あの2人なら、必ずやってくれる。」
ダンテはエリッサに言った。
「・・・私はまだ、あの西条という男を信用できません。」
エリッサは言った。
「・・・ギルファ様を殺した男だからか?」
「・・・・・・。」
「大丈夫だ。あの方々は必ずアメリヤ様を救ってくれる。」
ダンテは笑う。
「・・・・・・そうでしょうか?」
「エリッサ、あの方々を信じるんだ。ギルファ様の遺志を継いだあの方々を。」
「・・・・・・。」

空中庭園へと向う前、ギルファはダンテとエリッサに言った。
「私は、奴と決着をつけに行って来る。もしも私が敗れた場合、奴に私の意志を継がせてくれ。アメリヤ様を救う意志を。」

「・・・・・・どうか、お気をつけて。」
エリッサは呟いた。


続く

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