ザ・グレート・展開予測ショー

バッドエンド


投稿者名:SooMighty
投稿日時:(03/12/19)

バッドエンド そういう言葉が世の中にはある。
そこでそのまま終わるならまだいいのかもしれない。
だけどこの道に終わりは無く、その悲しみまで背負って生きて行かなくては
いけないのだ。










バッドエンド












ここに来るつもりは無かったのに・・・

あの日、そうルシオラを失ってから毎日のようにこの思い出の
場所・・・東京タワーに来てしまう。


今日は平日ながらもここは日本で最も都会な場所。
忙しそうながらも充実そうに歩いているサラリーマン。
二人で寄り添うように、そして幸せそうに歩くカップル。
今の俺の心理状態なんかに関係なくまわりは今日も慌しく動いているのだ。


いつからズレ始めたのだろうか?
やはり俺はあの時の選択を間違ったのだろうか?
今俺が突き進んでる道は、最近はバッドエンドまっしぐらとしか思えないのだ。
こんな精神状態で毎日過ごしているんだから心にも体にも良くない。
あの時、アダムとイブになる選択をした方がハッピーエンドだったんじゃないのか?




・・・いけねぇ。
こんな事を本気で考えるあたり、相当俺は参ってるみたいだ。
俺があの日から足踏みしている間に周りの知人たちは既に
一歩一歩前進しているというのに。

美神さんは家族との和解を果たし、おキヌちゃんは学業と両立しつつ
GS免許をとるために霊力の修行をしている。
シロは天狗を倒した日から、目覚しい成長をとげ、タマモは人間社会の
常識と知識をどんどん身につけている。

そう結局は俺だけ、あの日から何も前に進めてないのだ。
ただそれよりもなにより悲しいのが、この場所に来るたびに
あいつの泣き顔しか思い出せないのだ。
はっきりいってこんな自分が嫌になる。
過去にとらわれていても、あいつをいつまでも泣かしている
事を痛いぐらいにわかっているのに。





とりあえず今日は疲れた。
帰って何も考えずにグッスリ寝たい。
もはや寝ることぐらいしか安息を得られないだろうし。







目が覚めて外を見渡すと雨が降っていた。

冬と雨。

両方とも好きにはなれない。
特に冬の風は冷たすぎて、非常に心地悪い。
しかも最近は寒風と雨が同時に来ることがなぜか多くて本当に腹が立つ。
こんな憂鬱な気分で学校に行く気になんか到底なれず、二度寝する事にした。

最近は学校にもほとんど行ってねぇな・・・
こりゃあ堕ちるとこまで堕ちてきたか?
本当にどうしようもない弱虫だな俺は。













昼の1時頃に目が覚めた。
そういや今日は3時に事務所に集合だったけ?
遅刻しないように今から出発しておくか。
仕事をしていれば全てとは言えないが、それでも多少は気は紛れるからな。



事務所からは二駅しか離れてないのでそんな時間もかからず20分程で到着した。
いつまでもこの寒さの中にいるのはナンセンスなので、とっとと事務所に入った。
中は暖かく、少しだけ心も温かくなった気がした。

しかし全部屋完全暖房とは・・・
あの人はもうちょい節約という事を憶えてもバチは当たらん気がするが。

人工生命一号によるとまだ美神さんはきてないらしく、とりあえず
彼女の部屋で時間を潰すことにした。
その辺に落ちてるファッション雑誌でも読むことにした。




30分程たった後に美神さんが到着したみたいだ。
「うー寒む寒む! あ、横島君来てたのね。」
「おはようございます。美神さん。」
「相変わらず、冴えない顔ね。あんたはだたでさえ不細工なんだから
 顔つきぐらいは明るくしておきなさいよね。」
いきなりの先制パンチ。だけどこの女の口の悪さは別に挨拶みたいなもので
特に悪意はないのはわかってる。というか最近の俺の事情を知っているのだろう。
だからあえてきつい言葉で叱咤しようとしてくれているのはわかっている。

周りではまだ子供だのなんだの言われてるが、なんだかんだで結構この人は
大人なのだと思う。少なくとも俺にはこういう気の回し方はできない。
「それは言わんといてぇ〜」
こっちもせめて心配だけはさせたくないので軽口で返しておく。

最近は事務所の同僚にも心配される始末だ。
ただそれが情けなくもあるが、心地良くもあるのだ。
つくづく俺は支えなしでは生きていけないと痛感している。
「ところで今日の仕事はどういった感じなんですか?」
少し溢れそうになったので誤魔化すために自分から話を切り出した。
「別に大した仕事じゃないわよ。私とあんたならまず楽勝ね!」
「ん?私とあんたって・・・今日は二人だけですか?」
「だってこの時間じゃあおキヌちゃんは学校じゃない。」
「あ・・・そうでしたね。」
ちなみにシロは人狼の里に帰郷している。タマモも面白そうだからと
ついていった。そうなると確かに二人っきりだな。

そういえばこの人と二人っきりで仕事するのはかなり久しぶりだな・・・









仕事自体は本当に大したことなく、はっきりいってしまえば、俺か美神さん一人でも
大丈夫だったろう。



「今日は楽勝でしたね。」
「そりゃあギャラがギャラだからね。ところで横島君。」
「ん?なんスか?」
「まだ7時になったばっかだし、ちょっと飲みにいかない。」
「え?それって・・・」
「いやあね。別に他意はないわよ。ただね・・・」
「ただ?」
「最近のあんた見てるとどうもねー。」
「はは、やっぱりわかります?」
「そりゃあね、今のあんた見てればどういう心境なのかサルでもわかるわ。」
「最近は自分でも隠しきれてないっての薄々感づいてたんですけどね。」
「そういう悩みは酒でも飲んで吐いたほうがいいわよ!」
「まあ、美神さんが奢ってくれるなら喜んでいかしてもらいますよ。」
「あーあんたの安給料じゃあ酒なんか飲めないもんねー。ホホホ。」
「そういうなら給料上げてくれー。」
これは本気でそう思うぞ。
「まあまあ、とりあえず今日はパッーとやりましょう!いい店知ってるのよ。」
「じゃあゴチになります!」


思えば俺は誰かにこのどうしようもない思いを吐き出したかったのかもしれない。



ハッピーエンドに続く













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