ザ・グレート・展開予測ショー

知ってるようで知らない世界―17―


投稿者名:誠
投稿日時:(03/12/18)




一回戦、まず一日目はこれで終わる。だが、横島はなぜか30分も相手が来るのを待っていた。

「っだーーーー!遅いっ。」
「まあまあ、そろそろ不戦勝が決まるよ。」

横島の横にいる審判があくびをしながら言った。
もうすでに試合はほとんど終わっている。タイガー、弓、一文字、ピートも試合を終えてそれぞれ他の試合を見ている。
大きくため息をついた横島は先ほど自分が座っている横の結界で行われた試合の事を考えていた。
まさに圧倒的といってもいい物だった。勝者はあの怪しい変態、雪之丞だ。
相手も弱いわけではなかった、だが雪之丞の攻撃は容赦なかった。
試合開始と同時に連続で霊波砲を放ち、そして一気に距離を詰めると激しいラッシュを浴びせて勝負を決めた。
そして横島の方を見ると雪之丞は

「俺と戦うまで負けるな。」

と言って去っていった。
雪之丞は強い、それにまだ本気は出していないだろう。・・・だが

「まだ、文珠無しでも勝てるな・・・。」

横島はそうつぶやいた。
確かに雪之丞の連続攻撃は凄まじい・・・しかし

「横島選手、相手が来ましたので試合を始めます。」
「あ、はい。」

横島の前に現れた相手は身長二メートルはあろうかというほどの大男、なぜか上半身裸だ。

「ふははははは!!待たせたな小僧。お詫びに最初から50パーセントの力で戦ってやろう!」
「・・・どうでもいいけど遅れてきたくせに態度でかいな。」

横島はそう言って客席の方を見る。
おキヌ、弓、一文字の三人がこちらを見ている。おキヌは拳を振り上げて応援している。
そして雪之丞がその近くでやはりこちらを見ている。側にいる二人は仲間だろうか?同じ胴着を着ている。

「では・・・始め!!」

審判の合図で横島の試合が始まる。もうすでに他の試合は終わっているのでこれが今日最後の試合だ。

「うおおおおおお!!」

叫び声をあげて大男が横島に向かって突進してくる。
横島は男の拳が届く直前に信じられないスピードでかわし、男の背後に移動する。
猿神に教えてもらった技だ。足に霊力を集めて弾けさせ、移動する技。超加速とまではいかないがかなりのスピードがでる。
男の後ろに回りこんだ横島は男の背中に右手をそえて霊力を弾けさせる。
―――ドンッ―――
激しい爆発音がして男が崩れ落ちた。

「しょ、勝者横島!!」

審判の声が響き一日目の全試合がが終わる。

「つ、強い・・・。」
「一文字さん、どうやって後ろに回りこんだのか見えました?」
「いや、見えなかった・・・。」
「おれは見えたぞ。」

弓と一文字が客席で話し合っていると雪之丞が会話に割り込んできた。

「足だ、横島は足に霊力を集めてそれを弾けさせて高速移動をしたんだ。まあ言うほど簡単な事ではないがな。」
「あなたにはできますの?」
「できん!!」

弓の問いに雪之丞は自信満々で答える。
嫌な沈黙が周りを支配する・・・。

「そ、そんなので横島さんに勝てるんですの?」

弓の問いに雪之丞はニヤリと笑って答える。

「ふ、心配するな奴と同じ事ができなくともおれにも奴にはできないことができる。」
「・・・まあ別に心配なんてしてないんですけど・・・。」

弓は訳が分からないといった感じの目で雪之丞を見てそっぽを向いた。

「雪之丞〜、行くわよ〜。」
「お、仲間が呼んでるから行くぜ。まあ明日はおれが横島を倒す所を見せてやるよ。」

そう言って雪之丞は去っていった。

「あの人が横島さんと当たるとはまだ決まってませんのに・・・。」

弓のつぶやきは雪之丞には届いていないようだ・・・。



「ねえ、小竜姫・・・。」
「なんですか?美神さん。」
「メドーサの手下は確かにそいつ等だと思うけど・・・そこにあんたと神父、それにママの三人だけで大丈夫なの?」

事務所に帰ってきた一行はすぐに話し合いを始めた。
とりあえず全員一致で「白龍」という道場、そしてもう一つ「黄天」という道場だ。
白龍からは三人が出場している。三人ともかなり派手に一回戦の勝利を決めた。
だが黄天の二人は地味に、しかし一瞬で勝利を決めたらしい。
その試合を見たのは小竜姫、そして美智恵だけだがその二人がそろってその二人調査もすると言った。

「黄天・・・どんな試合だったの?」

令子が多少深刻そうな顔で美智恵と小竜姫に尋ねる。

「う〜ん、なんか二人とも不気味だったわ。一瞬で相手の懐に飛び込んでチャクラに一撃。それで終わりだったわ。
不気味なのは二人とも勝ったのに顔色一つ変えなかった事よ。勝って当然とかでもなくてまるで感情がないみたいだったわ。」
「そうですね。しかもあそこまで正確に敵のチャクラを攻撃するなんて・・・ヒャクメ並みの目がないとできません。」

美智恵は人間観察的な視点で相手を見ていたのに対し、小竜姫は武道家らしい見方をしている。

「小竜姫、わたしの目はそんなもんじゃないのね〜。小竜姫が懐に妙神山で横島さんと撮った写真を持っているのを・・・―――ビュン!―――

ヒャクメのセリフが終わる前にヒャクメの目の前を小竜姫の神剣が通り過ぎた。

「・・・避けましたね?」
「よ、避けなかったら死んでるのね〜〜〜〜!!」
「そうですか・・・じゃあ死なない程度に・・・。ちょっと来なさいヒャクメ。」

そう言って小竜姫はヒャクメを部屋の外へと引きずっていく。
ヒャクメは部屋にいる令子、美知恵、神父に助けを求める視線を送るが三人はヒャクメと目を合わせないようにしている。

「ひどいのね〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

廊下の奥のほうからヒャクメの絶叫が聞こえてきた。

「・・・まあそれは置いといてだね。明日は白龍と黄天の本拠地に行ってからわたし達は会場に向かうから何かあったら連絡をしてくれたまえ。」

神父が冷や汗を流して隣の部屋から聞こえてくる『グシャ』とか『バシュッ』とかいってる音を無視してしゃべる。

「分かったわ。でも・・・何が起こるかは全く予想できないわね。会場でも、そっちでも。・・・無理・・・しないでね二人とも。」

不器用で天邪鬼な令子の精一杯の気遣い。それが分かるから神父も美智恵も口元が緩んでしまう。

「・・・なによ!ニヤニヤしちゃって!!」

令子の抗議を受けて美智恵が真顔になって口を開く。

「大丈夫よ令子。わたし達が何年前からGSやってると思ってるの?それよりそっちはわたしがいないんだからあなたがまとめるのよ令子。
あなたならできるわ。頑張りなさい。」

心温まる親子の会話、それなりにシリアスだ・・・隣から妙な音が聞こえてこなければ・・・。

『それは、それだけはダメなのね〜〜〜〜!!』
『いや・・・キャーーーーーー!!』

何をしてるんだろうあの神様二人は・・・。
それは永遠の謎だ・・・。





「あと一回勝てば資格取得ですね。」
「そうだな。おまえなら楽勝だろ?」
「そうでもないですよ。今日も少してこずってしまいましたし・・・。横島さんの方こそ楽勝だったじゃないですか。」
「う〜ん、でもこれからの相手にもよるしな〜。それにメドーサの手下と当たったらやばいだろ?」

横島とピートは家に向かって歩きながら話していた。
二人は同時に何かの気配を感じ取り立ち止まる。

「・・・つけられてますね。」
「ああ、気を付けろかなり強いぞ。」

二人は自分達に向けられている殺気に気を引き締め、いつでも戦闘に入れる体勢になる。

その瞬間後ろから二人に二つの影が迫る。

「早いっ!!ピート!右の奴を頼む。」
「はい!分かりました!」

横島は左からきた影と向き合う。
四本足で地面に立っているそれは真っ黒い犬のようだ。しかし、普通の犬の一周りも二周りも大きい。
しかも背中からは一対の黒い羽が生えている。
前傾姿勢で横島を見つめているそれは少しの隙も無く横島を睨みつけている。

「グアアアアーーー。」
「ピート!?」

横島はピートの叫び声を聞いて声の方を見た。
しかしそれがいけなかった。横島が高い霊力を感知して犬の方に目を戻すとまさに犬の口から霊波砲が発射されるときだった。

「クッ!!」

横島は右手に霊波刀、左手にサイキックソーサーを出し、霊波砲をサイキックソーサーで受け止めようとする。
しかし、細く集中された霊波砲はソーサーを貫いて横島の左肩に迫る。
だが横島は左半身を下げ、ギリギリでかわした。しかし、油断はできない。

「何っ!」

横島の右脇腹に向かって犬が大きく口を開けて突進してくる。
横島はバック転で犬をかわし、かわしざまに犬の左肩の部分を霊波刀で切り裂いた。

「ギャアアアアアア!!!!」
「チッ、浅い!」

横島の攻撃は浅かったがそれでも犬は大きいダメージを受けたらしく横島から距離をとった。

「覚えてろ!」

犬は苦々しげに一言つぶやくと背中の羽を開き真っ暗な空に消えていった。
逃げられた・・・しかし今はどうでもいい。

「犬が・・・喋った・・・?」

横島は呆然としている・・・が大事なことを思い出す。

「そうだ!ピートは!!」

横島は叫び声が聞こえた方へと走る。

「ピート!どこだーーー!!返事しろ〜!」

横島は気配を探りながらピートを呼ぶ。
しかしピートからの返事はない。
横島は右手から文珠を一つだし、『探』の文字を浮かべて発動させる。
横島の頭に少し離れた場所にある池が浮かぶ。

「そこか!!」

横島は池の方に向けて走っていった。



「う・・・どうにかまいたか・・・・。」

ピートは池から顔を出してつぶやく。ピートの左腕からは血が出ている。
その時、聞きなれた横島の声が聞こえてきた。

「横島さーーーん!ここです!」

ピートは感覚の無い左腕を抑え、池を出て横島と合流する。

「横島さん無事でしたか。」
「ああ、なんとかな。おまえは無事そうじゃないな。大丈夫か?」

そう言って横島は紫色になり腫れあがっているピートの左腕を見た。

「ぼくの相手は獣のような奴で頭からたくさんの蛇が生えていました。
爪と牙はかわしたんですけどその頭の蛇に噛まれて・・・。左腕が動かないです。」
「そうか、ちょっと待ってろ。」

横島は文珠を二つだして『解』『毒』の文字を込めるとピートの左腕に使った。
腫れ上がっていた腕が元に戻り、自由に動くようになった。

「ありがとうございます。でも・・・あいつはなんだったんでしょうか。」
「さあな。獣に恨まれる覚えは無いが・・・おれに覚えてろとかって言ってたぞ。」
「えっ喋ったんですか?」
「ああ、おれの相手は羽の生えた犬みたいな奴だった。」

ピートは少し考え込むような顔をしたが顔を上げて口を開いた。

「・・・とにかく一度事務所に帰って先生達に知らせましょう。メドーサに何か関係あるかもしれない。」
「そうだな。羽の生えた喋る犬・・・か。美神さんが捕まえたら見せ物小屋に売るだろうな〜。」

横島の視点は少しずれている・・・。
現在事務所ではヒャクメがお仕置きされている。そんな事全く知らない二人はそれなりにシリアスに事務所へと向かった。


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