ザ・グレート・展開予測ショー

傷ばかりの天使!!(その26)


投稿者名:TAITAN
投稿日時:(03/12/11)

「・・・・気付いていたか。」
ギルファは言った。
「お前、いや君ほどの腕の持ち主なら、いつでも僕の命を奪うことが出来たはずだ。」
西条は言った。
「それに、殺意がまったく感じられなかった。」
「そこまで気付いていたとはな・・・・・。」
「何故だ?何故僕を殺さなかった?」
少しの間、沈黙が訪れる。
そして、ギルファは口を開いた。
「簡単なことだ・・・。私は、君を殺す気など持っていなかった・・・。」
「!!」
驚きの表情となる西条。
「どういうことだ!?」
「私は・・・・・、1人の女性を殺した・・・・・・・。」
ギルファが言った。
「その時から、もう醜き者を殺した時の快感は、無くなっていた・・・・。」
ツゥ・・・・・
「!!」
西条は驚愕した。
ギルファの目から、涙が流れ落ちたのだ。
「私は、美を求めるあまりに、大きな罪を犯していたことに気付いた・・・・・。」
「・・・・・。」
「すべてが、すべてが遅すぎた・・・・・。」
「・・・・・その女性とは、誰なんだ?」
「・・・・エリー・ルナ・メタリア。メタリア王国の女王だ・・・・。」
「!!」





マチュアが、メタリア王国国王ガルス・ゾト・メタリアを殺害した時と同じ時刻、
王宮から数キロ離れた場所にある花畑に、メタリア王国女王エリー・ルナ・メタリアがいた。
花を採る手をピタリと止めたエリーは、森の方を見て言った。
「・・・・・・そこにいるのは分かっています。」
「・・・・・・ばれていましたか。」
木の陰から、ギルファが姿を現す。
「王宮から黒煙が上がっていましたが、もしや・・・・・。」
「そのもしやですよ、女王陛下。貴女の住んでいる王宮は、我々の手によって制圧しました。」
「・・・・・。」
「しかしご安心を、女王陛下。美しい貴女は、充分に生きる価値があります。」
ギルファはエリーの近くまで移動する。
「さぁ、行きましょう。美の世界へと。」
「・・・・・・。」
エリーは無言のまま、ギルファの頬に掌をつける。
「?」
「・・・・・貴方にも、良心はあります。」
エリーはニコリと笑った。
「ただ、それに気づいていないだけ・・・・・。」
「フッ、私に良心などはありません。」
エリーの言葉に、ギルファは笑った。
「美しいものが生き、醜いものは滅びる。それが私の考えです。」
「・・・・・それは違います。」
エリーは言った。
「美しい、醜い・・・・。それは外見だけです。人は人、魔は魔、神は神・・・・。命あるものに、美しい、醜いという言葉は必要ないのです。」
「・・・・・。」
エリーは1輪のバラを採り、ギルファに見せた。
「"バラは美しいために咲いているのではない、生きたいがために咲いているのだ"。」
「?」
「ある、喜劇俳優の言葉です。」
エリーは微笑む。
「この花畑に咲いている花は、美しい姿を見せようと咲いているのではありません。精一杯生きるために咲いているのです。」
「生きるために・・・・。」
「貴方の美は、本当の美ではありません。」
「!」
「貴方の美は、外見だけの美で、本当の美ではありません。」
エリーは言った。
「人や、花や、動物や、この世に存在する全ての生き物が、今日を精一杯生きようとする姿こそが本当の美ではないのですか?」
「黙れ・・・・。」
「貴方の行っている行為は、美を汚す行為だというのが、何故分からないのです!?」
「黙れ黙れ黙れ!!私の美を侮辱するなーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
ギルファは激怒した。






ザシュッ
「!?」
ギルファが気づいた時、彼の手は、エリーの胸を貫いていた。
「あ、あぁ・・・。」
体から手を抜くギルファ。
その手には、エリーの血が付いていた。
ゆっくりと倒れるエリー。
「わ、私は・・・・。」
「・・・・いい・・・・ですか?美という・・・ものは、意外に・・・身近に・・・あるのです・・・・。」
小さな声で、エリーは言った。
「命を慈しみ、愛する心・・・・・・。貴方には・・・・、それが・・・・あります・・・・。」
「・・・・・・。」
「もう、人を殺めるのは・・・やめて下さい・・・。」
フッと微笑むエリー。
「私を・・・、最後に・・・・。」
それが、エリーの最期の言葉となった。
エリーは、美しい花々に囲まれて、夫ガルス・ゾト・メタリアのいる天国(ところ)へと旅立った・・・。
ポタッ・・・
「?」
地面に、1滴の雫が落ちる。
「何だ?」
ギルファの目から、幾つもの雫が地面に落ちていく。
「止まれ・・・。何故だ、何故止まらない・・・・。」
ギルファは両膝をつき、両手で顔を覆って、叫んだ。
「うぉ、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーー!!!」






「それが、"涙"というものだと知ったのは、それからもう少し経ってからだった・・・。」
「・・・・・・・・。」
「グハッ!」
ギルファが血を吐く。
「おい、もう喋るな!!」
西条が怒鳴る。
「いいんだ・・・・・。地獄で、たくさんの人を殺した罪を受けるのだから・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・頼みがある。」
「・・・何だ?」
「"あの方"を救ってくれ・・・・。"あの方"は苦しんでおられる・・・・・。"あの方"を救えるのは、君と、君の相棒しかいない・・・・・。」
("あの方"?)
「頼む・・・・・。」
「分かった、分かったからもう喋るな!」
「ありがとう・・・・・。これで、もう・・・・・。」
ギルファは空を見た。
「・・・・蝶が・・・・飛んでる・・・・。キラキラして・・・、とても・・・・キレイだ・・・・。」
ギルファはそう呟いた。
西条は、ギルファの目線の先を見る。
しかし、蝶は1匹も飛んでいなかった。
視線をギルファに戻す西条。
「!!」
すでにギルファは、息絶えていた。可愛らしい少年のような微笑を浮かべたまま・・・・。
「・・・・・君は美しかった。この僕よりも・・・・。」
西条は、1輪のバラを、ギルファの傍に置く。
「ただ、涙を流すのが、あまりにも遅すぎた・・・・。」
西条の目から、涙が零れ落ちる。
そして、西条は空中庭園から出て行った。
西条が出て行った後、西条が置いたバラの上に、金色に輝く蝶が止まった。





ズル、ズル・・・・。
「くっ・・・・。」
体を引きずるように前に進む西条。
体中から、血が流れ出てくる。
「頭が・・・・・・。」
すでに西条の意識はもうろうとしていた。
「血を流しすぎたか・・・・。」
西条の視界の中は、蜃気楼のようになっている。
「くっ・・・・・・。」
バタッ・・・・・
意識を失い、西条は倒れた。






「この男が、ギルファ様を!!」
怒りの表情を浮かべた女性が、倒れている西条の傍に立っていた。
白銀の髪をした美しい女性で、銀の胸当てを見に付けていた。
そして、その背中には、大きな白い翼が生えていた。
「ギルファ様の仇!!」
女性は短剣を握り、西条の背中を刺そうとする。
「待て!!」
短剣を持ったその手首を掴む男。
紫色の肌をし、背中からは漆黒の翼が生えており、耳は尖がっている。
そして、ワルキューレやジークフリードが着ている魔族軍の戦闘服を身に着けていた。
「この方を殺して、ギルファ様が喜びになると思うか!?」
「!!」
「この方に、ギルファ様は"あの方"を救ってくださるよう頼んだのだぞ!!」
「・・・・・・くっ。」
女性は唇を噛む。
「とにかく、この方を医療室に運ぶぞ。・・・・あの男の方はどうだ?」
「傷はありませんでしたが、マチュアとの戦いで血を流しすぎたせいで失血状態でした。現在、輸血をしています。」
女性は言った。
「この方は、医療室に運んだらすぐに心霊治療(ヒーリング)を頼む。それと輸血も。」
「はいっ!」
「時間を争う!急ぐぞ!!」
西条を抱き上げ、男は走り出す。
女性も、その後に続いた。






ヴォォォォォォォォォ!!!
物凄いスピードで、スポーツカーが走っている。
運転しているのは亜麻色の髪の女性、美神である。
助手席には美智恵。後ろにはおキヌ、シロ、タマモがいる。
「ったく、あのバカたれが!!」
怒りの表情で、美神は怒鳴る。
「心配なんでしょ?横島クンと西条クンが。」
美智恵は言う。
「違うわよ!!私のコブラを勝手に乗ったから、お仕置きをしに行くだけよ!!」
「どうだか・・・・。」
「飛ばすわよ!!」
美神はアクセルを思い切り踏む。
ヴォォォォォォォォォォ!!!!!
(死ぬんじゃないわよ、横島クン、西条さん・・・。)


続く

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