ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(6)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(03/12/ 8)



「わぁーーー、お城、お城でちゅよ。」


道の横に広がるだだっ広い更地。その向こうに西洋風の巨大な城―と、立ち並ぶ様々な奇妙な形の建物。
パピリオは車の窓にへばりついて、その光景を覗き込んでいた。

・・ゴンッ・・ゴンッ・・ガンッッ・・

「でも、あまり強そうじゃないでちゅね。・・空とか飛ばないんでちゅか?」

「飛ばねーし・・強いとか、関係あるのか?あれに。」

その城は、俺の思い描いていた「心の中のデジャブーランド」そのままの姿だった。

ドゴッ・・・・ガコンッ・・・・

「でもマニーキャットはマッキーキャットよりも強いでちゅうよ?
浮気もののマッキーをいつも“シバき倒し”ているってデジャブーランド攻略本にも書いてありまちた。」

「そ・・そーゆー世界だったのか・・?デジャブーランドって・・?」

ドガンッ・・・・ドゴォッ・・・・

「・・・・・お客さん。」

今まで黙ってハンドルを握っていた運転手が口を開いた。

「これって・・・やっぱり現実なんですか?映画の撮影じゃなくて?
・・後ろの車の中でヒゲのフランス人がカメラを回してたりとかしないんですかい?」

ガンッ!・・・ガンッ!・・・ガンッ!

「・・まあ、そーゆー事にしとこーぜ。もしそうなら、このタクシーとあんたとで主役だ。・・・夢があるだろ?」

「だったら、300キロ出せるプジョーに乗っとくんでしたよ・・・・
・・・・150キロしか出ねえっっ!!チクショォォォォォォッ!!」

・・・ゴッッ!!・・ゴリゴリゴリゴリッッ!!

後半の叫びには夢よりも、痛々しい程のリアリティがふんだんに詰まっていた。10キロ近い道のりを、
後ろから4WD車二台に何度も当てられながら張り付かれていたら、当然出てくる叫びだろう。
これでここまで無事だったってだけでも凄腕のドライビングテクニックだと言えるかも知れない。

「とにかく走れるだけ走ってくれ。損害分は全て俺の事務所に請求してくれて構わねーからよ。」

勿論、その全額、猿に回してやる。
―とは言え、どうしたものか。こちらから反撃を仕掛けたら、この速度だ、向こうの誰かしら―悪けりゃ全員―死ぬ。
乗っているのは、多分、“人間”だ。奴らの狙いは俺たちを別の「夢の世界」へ御招待する事だろうが、
人間界の法律はともかく、パピリオをめぐる神族共の駆け引きに多分、「正当防衛」と言う単語はない。
どこかで車ごと吹っ飛ばされて―運ちゃんと俺達は無傷のままで―奴らが油断して車を停めた所を仕留める
つもりだったが予定が狂った。
このまま行けば三台仲良くデジャブーランド御到着だ。それもちょっとな・・・・。


パァーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!


背後からとんでもない長押しのクラクションが響いた。二台の4WDは慌てて両脇に寄せ始める。
その間から一体何キロ出しているのか分からない猛スピードの黒い車―ロールスロイス・リムジンが
俺達目掛けて突っ込んで来た。


ドゴォォォォォッッ!!ベキベキベキッ!!ガリガリガリッッ!!


すぐに結界を張り、その中の3人には衝撃が伝わらなかったが、車の後ろ半分が瞬く間に鉄屑と化する。
そのスクラップと結界とを押し出す様に200キロ以上の速度で疾走し続けるロールスロイス。4WDはどんどんと
後ろへ遠ざかって行った。
アメ車にしても頑丈すぎる。耐熱・耐衝撃・防弾加工がくまなく施され、まるで装甲車だ。おまけに霊的防御まで
コーティングされている。フルミラーで車内は見えないが、こんなふざけたロールスロイスは日本に二台しか
存在しないし、その持ち主は両方知っている。一つは六道家現当主、そしてもう一つは・・・。

「雪之丞!!貴方、何をデジャブーランド前なんかで命、狙われてるんですの!?」

「よおっ、お前が運転してる所なんか久し振りに見たぜ。随分、“お姉さま”じみた事するよーになったんじゃねーか?」

「ああ、やっと思い出したんでちゅ。メフィスト探しの待ち合わせ中に見付けたハズレ1号でちゅね。」

「ちょっと・・・!そのコ!?」

「だからてめーは人の彼女捕まえて“ハズレ”とか言ってんじゃねーぞ・・・あー、いやまあ、ワケあってこーゆー事で・・。」

「わにひゅんへふゅひゃ、ひゃひょあひゃひょへひゅ(何すんでちゅか、ザコはザコでちゅ)。」

「ワハハハハハ、見たかダニエル!?人間は四本足から二本足へと進化したがあっ、この俺は、
四輪から六輪へと足を換えてこんなに、こんなに迅くなったぜぇーーーーーーーっ!!」

窓から顔を出し、その表情が固まっている弓。その凝視する先にパピリオの顔を引っ張りながら苦い愛想笑いを
浮かべている俺と、まだ何か言いたげなクソチビ。その背後、タクシーの残骸の先頭には、取れたハンドルを握ったまま
車と同じくらいに壊れているタクシードライバー。
前方には、あの夢の国の城。時速200キロで俺たちに近付いて来ていた。


 + + + + + + +


・・・・・ピッ

「もしもし・・・おう、どうした?新米パパ。またガキに手噛まれたか?
それとも、もう一匹がまたコアラのよーに腕にひっついて来て離れなくなったのか?」

「そんなんじゃねーんだ。・・・あのさ、雪之丞、・・パピリオ見なかったか?」

「パピリオ?」

「ああ、ちょっと今、人間界に来ていたんだけどな、帰る寸前にいなくなったんだ。逃げ出してどこか遊びに行ったんじゃ
ねーかって感じなんだけど・・それで、秋葉原の方で空を飛んだり蝶を操ったりする女の子を見たって情報が入って・・
その中に魔装術を装着して走る男の姿の目撃も報告されていた。だから・・。」

「ああ、見たぜ。」

「本当か?」

「ああ。機材の買い付けであの辺ブラついてたらよ、見覚えあるドチビがゲームショップの前でウロウロしてやがってよ。
何してんだって聞いたら、お前が監修したあのGSゲーム買おうとして店員に断られたってべそかいてたんだよ。」

「い・・いやあ、そ、そうか・・・。」

「で、奴には借りがあるからな、『てめーじゃあと数百年は売って貰えねえさ。何せミレニアムドチビだからよ。』
ってバカにしてやったらブチ切れやがって『お前だけは殺すでちゅ。』って蝶の群れけしかけて来やがってさ。
だから魔装術着けてダッシュで逃げたんだよ。」

「・・・何かひでーな・・大人のする事じゃねーぞ、それ・・。」

「ハハハハ・・だからよ、まだあの辺にいるんじゃねーか?俺もその後は分かんねえけどな。」

「そうか・・・ありがとな。もしまた見付けたら俺の所に連絡くれ・・・令子の所じゃなくてな。」

「おお、じゃあな。」


ピッ・・・・・・

電話を切ってチケット購入の列へと目を向ける。弓とパピリオは駐車場で始まった口喧嘩を
列に並びながら、まだ続けていた。

「人間がその年でパワーも美貌もそれしか伸びてないんでちたらもう未来はないでちゅ。
大人しくこの私に人生の花道を譲ったほうが良いんじゃないでちゅか?」(バチッ)

「・・・そういうセリフはね、せめて私と目線を並べられる様になってからにした方が
よろしいんじゃなくて?おチビちゃん。・・そんなズン胴小児体型で来てもいない未来の話なんかされたって
私には通用しませんわよ?」(バチバチッ)

(ピキッ!)「あーやだやだ、自分がザコのまま垂れ衰えて行く一方だからって私の無限の可能性に
嫉妬してるんでちゅね。困ったオバちゃんでちゅ。」

(ピキピキッ!)「た・・垂れ・・!?『無限の』と言うからには、大人になってもチビのままって可能性だって
あるんじゃありません・・・?」(ゴゴゴ・・)

「ぐっ!・・た、単に自分の彼氏がそうだってだけじゃないでちゅか!!・・あんなのとパピリオとを一緒にするな
でちゅよ!」(ゴゴゴゴゴ・・・)

さっきから同じやり取りが何度も繰り返されているような気がする。何の勝ち負けを争ってるのかも定かじゃない。
・・・この二人を「仲良く遊ばせる」のが非常に困難だって事だけは良く分かったが。

秋葉原での騒ぎは早くも横島達に伝わっている。東京駅での件やここでのカーチェイスが知られるのも時間の問題
かもしれない。嘘をついた事でこちらの退路は断たれた・・最悪、「脅されていた」と言う事ぐらいは出来るだろうが。
決めた以上、前に進む事だけを考えよう。俺は今回の仕事の“クライアント”と改めて話をしなくちゃならない。
物陰へ―こんな所で立体映像なんか出したら100%ガキが群がって来るぜ―。水晶球を並べ斉天大聖真呪を唱える。


猿―斉天大聖―は、姿が浮かび上がると同時に口を開いた。

「フォフォ、そろそろ呼ばれる頃じゃと思い待っとったぞ。ゲームもお預けにしてな。・・・フム、さっきよりも良い面構えに
なっとる。色々と物事を知り、自分の頭で考えて来た様じゃの・・・結構結構。そうでなくては“話”は出来んからのう。」

「まあな。色々と見えて来たし聞きたい事も一杯出て来たぜ・・・・・俺はパピリオを守る為に呼ばれたんじゃねえ。
パピリオに手を出させず、妙神山とも表向き無関係で、“人間 対 人間”の戦いをする為に呼ばれたんだ。
・・・なあ、こいつは完全な“裏”の仕事だ。そうだろ、猿?」

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 Bodyguard & Butterfly !!
 (続く)
――――――――――――――――――
下書きはこの先2話分くらいありますが打ち込む暇が・・(汗)いっぱいいっぱいです(泣)。
一行がデジャブーランドに着いて、ゆっきーが腹を括って、老師との交渉がまるまる1話以上続いて(うわ)
一応この話の一区切りです。勿論その後もただでは済む筈もなく・・。

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