ザ・グレート・展開予測ショー

知ってるようで知らない世界―15―


投稿者名:誠
投稿日時:(03/11/24)





美神除霊事務所。横島、美智恵、小竜姫が車に乗り込み移動を開始した頃ここではある事件が起きていた。

「それで、今日はなんの用でいらしたんですか?おばさま。」

令子が十分に警戒しながら六道家当主・六道舞子・・・つまり冥子の母親に尋ねる。

「あら〜そんなに警戒しなくても〜いいじゃないの〜。おばさん悲しいわ〜。」
「令子ちゃん〜わたしもいるのに〜。」

笑いながらしゃべる舞子と多少泣きそうに訴えかける冥子。
冥子泣く=暴走。この方程式を思い出し令子は冥子にも話し掛けてやる。

「はいはい、冥子。いらっしゃい、よく来たわね。」

どこか疲れたような顔で言う令子。

「ありがとう〜だから〜令子ちゃん好き〜。」

とたんに上機嫌になる冥子を見て令子は頭を抱えた。

「はぁ〜。それでおばさま、今日は何の用ですか?これから来客があるんですが・・・。」
「大丈夫よ〜来客って〜小竜姫様でしょう〜?わたしも〜今度の事件の事は〜聞いてるもの〜。
それでね〜令子ちゃん〜。明後日六道女学院で〜クラス対抗マッチがあることは〜知ってるわよね〜。」
「はい、そりゃ前から見に来てくれっておばさまが言われてたしおキヌちゃんも出場するから知ってますけど。」

令子はそれが何か?と言った風に舞子を見る。

「実はね〜令子ちゃんに〜クラス対抗マッチで〜優勝した子達と〜試合をしてもらいたいの〜。」
「えっ!いやですよそんなの。もしかしたらおキヌちゃんと試合しないといけないかもしれないじゃないですか。」

去年おキヌ達のクラスは準優勝だったが実際実力にたいした差はなかった。今年はおキヌ達が勝ってもおかしくはない。

「そうね〜。でもプロの強さを生徒達に教えておきたいのよ〜。」
「でも・・・・・。そうだ!わたしの所の助手も今度参加するんですよ。彼なら適役ですよ。」
「助手って横島君ね〜。彼なら強いけど・・文珠なんか使われたらうちの生徒達が自信を失ってしまうかもしれないわ〜。」
「そんな危険な文珠は使わな・・・ってなんで横島君の文珠の事知ってるんですか!」

横島が文珠を使える事はいつまでも隠していられる事ではないだろう。
しかし、今のところはトップシークレットになっている。

「だって〜協会とかにばれないようにしてくれって〜美智恵ちゃんに頼まれたんですもの〜。知ってるわよ〜。」

美神除霊事務所は業界での知名度はかなり高い。だから助手が一人増えたというのも知れ渡り、どんな力を持っているのか?というのも協会の方から照会があった。
だが美智恵の判断で霊波刀が使えるだけという事にしておいたのだ。
もちろん霊波刀が使えるというだけでも十分に凄い事だ。

「令子ちゃん〜、横島君って〜そんなに強いの〜?」

ここまで黙っていた冥子がたずねる。

「う〜ん。妙神山に一ヶ月間行ってたし強くなってると思うわよ。今日帰ってくる予定だけど・・・。」
「こんにちわー。」

その時ちょうど横島の声が聞こえ、横島、小竜姫、美智恵が部屋に入ってきた。

「美神さん、冥子ちゃんお久しぶりです。えっと、そちらの人は・・・?」

横島は雇い主の令子そして友達の冥子に挨拶をした後冥子の隣に座っている着物姿の女性に気づいた。

「わたしは〜冥子の母親の〜六道舞子といいます〜。初めまして〜、横島君の事は美智恵ちゃん達から聞いてるわ〜。
これからよろしくね〜。」

「あ、冥子ちゃんの・・・。よろしくお願いします。」

二人はとりあえず初対面の挨拶を済ませる。

「横島君、今度の六道女学院のクラス対抗マッチの優勝チームと試合してほしいらしいのよ。だからお願いね。」
「えっ、美神さんそれはちょっと・・・。女の子と試合なんてしたくないっすよ。」
「横島君も〜次のGS試験でるんでしょ〜?彼女達も出るんだから〜いい経験になるわよ〜。」

舞子が説得するが横島は承諾しない。

「でも優勝チームが相手って事は相手は一人じゃないんでしょう?三対一じゃ勝負になりませんよ。」
「大丈夫です、横島さん。妙神山で修行したんですからそう簡単には負けませんよ。」

小竜姫が横島の言い訳を無にしてしまった。

「横島君〜、令子ちゃんが断っちゃったし〜横島君も断ったらわたしがやらないといけないの〜。お願い〜。」

冥子が涙目、上目使いでお願いをする。
この攻撃を受けて横島が断れるはずが無かった・・・。

「は〜、分かりましたよ。」
「横島君、文珠は使っちゃだめよ。GS試験でもね。文珠のことは魔族にはまだ知られていないはずだからいざというときの切り札にするのよ。」

美智恵の言葉に横島はショックをうけた。どんな強い選手が出るか分からないのに文珠を使ってはいけないなんて・・・。
膝を地につきこれからを考えて少し憂鬱になっている横島・・・。
だがそんな横島には女神がついていた。

「横島さんは強くなりました。そこら辺の人間には文珠が無くても負けませんよ。一ヶ月修行したでしょう?」
「小竜姫様・・・。」

妙神山で時折生じたいい雰囲気をここでも二人は作り始めた。いつもはヒャクメに邪魔をされるのだが・・・。

―――ばたんっ―――

「ただいまー・・・って横島さん、小竜姫様なにやってるんですか?」

帰ってきたおキヌが見たものは見詰め合っている横島と小竜姫だった。

「な、なにをしてるんですか二人とも!」
「いや、これは・・・。」

横島が慌てておキヌに何があったのかを説明する。

「そうだったんですか・・・わたしはてっきり・・・。」

そう言っておキヌは小竜姫を睨む。その眼光は神を怯えさせるに十分だった・・・。

「そ、そういえばおキヌちゃんヒャクメは?」

横島が慌てて話題を変えるがこの話題も・・・

「あ、ヒャクメさまですか?なんか気分が悪くなったからちょっと休んでから来るそうですよ。」

おキヌはニッコリと微笑んで言った。なにをやったのか・・・横島達は考えない方がいいと判断した。







そして・・・

「遅刻だ〜〜〜〜!」

横島は走っている。目的地は六道女学院・・・。
もう試合はほとんど終わっているだろう。
なぜこの大切な日に横島が寝坊したかというと前日に冥子の仕事の手伝いをして精神的にかなり疲れてしまったのだ・・・。

「美神さん達怒っているだろうな〜。」

横島は雇い主の怒りの表情を思い浮かべた・・・。




「まったく!なにやってんのよあのバカは〜!!」

令子は怒っていた。横島が来ないのなら自分が優勝チームと試合をすることになってしまう。
しかも次の試合が決勝戦だ。対戦カードは去年と同じでおキヌ、弓、一文字のチームと獣化能力者、巫女服を着た幻術を使う少女、そして霊体を操る触手を使う少女の三人のチームの組み合わせだ。
昨年も対戦しているので両チームとも相手の能力、戦い方を理解している。
相手の裏を突く戦術が優勝チームを決めることになるだろう。

「まったくあいつは〜。」

令子はまだ怒っている。その時ついに決勝戦が始まってしまった。

「はじめ!」

鬼道教師の合図で試合が始まった・・・。





「うおおおおおお!!やっと着いたー!」

横島は六道女学院の門をくぐり、グラウンドへと向かう。

しかし、グラウンドに着いた横島が見たのは相手と霊体の触手で結ばれながら必死でネクロマンサーの笛を吹いているおキヌだった。

「ちょっと横島君!あんた何やってたのよ!」
「す、すいません。ちょっと寝坊しちゃって・・・。今どうなってるんですか?」

怒っていた美神だが今現在の状況を横島に説明してやる。

「今決勝戦で、おキヌちゃんとあの子の一騎打ちなのよ。去年も最後はこの二人の一騎打ちだったんだけど・・・。」

美神は険しい顔になって二人の試合を見る。どうやらおキヌが押されているようだ。その時・・・。

「おキヌちゃんがんばれー!」

横島の声がおキヌの耳に届いた。

(横島さん!やっと来たんだ・・・。)

おキヌは横島の方を見ると懐から三枚の破魔札を出して相手に投げつける。

「なっ!」

触手と笛との精神波の応酬に集中していた相手の少女は不意を突かれもろに食らってしまった。
その隙をおキヌは逃さない。今まで以上に笛の音に霊力を込める。

(倒れなさい!地面に横になりなさい。少しの間だけ・・・。)

破魔札の直撃を受けて弱った相手の少女はそれに耐えることなどできなかった・・・。



「やりましたわね!氷室さん!」
「おキヌちゃん!よくやった!」

弓と一文字が駆け寄ってくる。
クラス対抗戦の優勝は彼女達にとってGS試験への最高の自信になる。三人は喜びを噛み締める・・・が。

「それでは〜続いて本日のメインイベント〜!今度のGS試験に出る〜横島忠夫君対〜優勝チームの〜試合をはじめたいと思います〜。」

理事長が突然生徒達に発表する。
それに一番驚いたのは弓と一文字だ。

「横島ってあのパイパーを倒した横島さんですの?」
「ちょっとまってくれよおきぬちゃん知ってて黙ってたのか?」
「すいません言うの忘れていました。」

慌てる三人組。当然一緒にパイパーと戦った時に横島の強さを弓も一文字も見た。おキヌとしても横島が文珠を使わないとしてもおキヌの能力では横島に対抗することは出来ない・・・。

「どうしますの?」
「どうする?」
「どうしましょう・・・。」

三人は作戦を練り始めた。弓、一文字はパイパーとの戦い以来横島に勝つことを目標に修行をしてきたからちょうどいいと思ったようだ。
かなり本気で横島を倒す気だ・・・。



「では〜令子ちゃんの弟子で〜今度のGS試験での大活躍が〜期待されている〜横島君対〜六道女学院クラスマッチの優勝チームの〜試合をはじめます〜。
では、はじめ〜〜〜!」

理事長の間延びした声を合図に試合がはじまった。
横島が一瞬で右腕に漆黒の栄光の手を作り出す。それを見た観客達は霊気の収束の完璧さに驚きを隠せない。
霊気をここまで物質化させるなど一流のGSでも難しい事だ。それを一瞬で行っただけでも横島の実力が分かる。

「氷室さん!」
「はい!」

水晶観音を発動した弓がおキヌに合図を送り、おキヌは横島に向けて破魔札を投げつける。
しかし、横島は右手で全ての札を払いのけた。その瞬間横島の左側から一文字が木刀で切りかかった。

「くっ!」

とっさに左手に出したサイキックソーサーで木刀を受け止める。

「くらいなさい!」

弓が二本の腕で横島の右手を押さえつけ、残りの四本の腕で殴りかかった。左手はふさがっている。
三人は勝利を確信した・・・。

「甘い!」

横島が右腕を弓に捕まれたまま自然な動きで半回転すると一文字と弓がぶつかった。
その二人に霊波刀状態の栄光の手を突きつける。おキヌの周りにはサイキックソーサーを浮かべ動くことができないようにしてある・・・。

「そこまで〜。勝者は〜横島君です〜。」

理事長が横島の勝利を告げるまでもなく見ていた生徒達は圧倒的力の差を感じていた。

「この横島君は〜今度のGS試験に出場するのよ〜。とても強いでしょ〜?」

理事長はそう言うと生徒達を見渡す。

「わたしが〜みんなに分かってほしいのは〜この学校内の事ばかりにとらわれないでって事なのよ〜。
クラス対抗戦で勝っても〜この学校で一番ってだけなのよ〜。学校の外から来る参加者にも〜凄い霊能者達がいるわ〜。
みんなが一流のGSになりたいって思うなら〜学校の中なんかで満足せずに〜自分の力を磨いていかないとダメよ〜。」

理事長はどうやらこれが言いたかったらしい。
確かに生徒達の目的は最近GSになることからクラスマッチで優勝する事に変わってきていた。六女の卒業者の多くがGS試験に受かっているとはいえそんなに簡単にいくものではない事を皆忘れていた。

「横島さん、今回は完敗ですわ・・・でも!試験では必ず勝って見せますわ!」
「わたしだって!絶対に負けねーからな!」

弓、一文字の二人は横島に言って横島に答える暇を与えずにどこかへ行った・・・。

「・・・はー、またややこしくなってきたな〜。」

横島を見る生徒達の目には試験でのライバルになる者への警戒、そして自分達と同じような年頃で完全に上をいっている者に対する尊敬と憧れがあった。

これでGS試験、横島はかなりマークされることだろう・・・。

「横島さん、本当に強くなりましたね・・・。」

おキヌが横島に話し掛けてきた。

「う〜ん、二人とも攻撃が素直すぎたからね・・・。小竜姫様に比べたら・・・。」

そこまで言った横島は隣にいる少女がすさまじいプレッシャーを放っているのに気づいた。

「あの〜・・・おキヌちゃん?」
「はい?」

こめかみに青筋を浮かべるおキヌ。小竜姫と横島の一ヶ月間はおキヌの目の届かない妙神山で起こった事だけに不安だった。
ヒャクメを尋問した際にヒャクメから小竜姫と横島の間に何もなかった事を聞き出していたがそれでもやはり二人の距離が縮まった事は事実だ。

試合の時以上におキヌの霊力は高まっている。横島は蛇に睨まれた蛙状態だ・・・。
横島は試合以上の窮地に立たされている・・・



そして波乱のGS試験開始が始まる・・・。





ここは地図に載っていない島・・・人間が確認したことのない島・・・。

「ただいま参上いたしました。」
「うむ、メドーサ・・・わたしはまだ動くことができん。忌々しい神魔族の連中などではわたしにはもう手出しはできないだろう。
わたしは奴等にとっての天敵だからな・・・。」
「わたし達が今回の作戦でGS業界をコントロールできれば力を取り戻し計画を遂行するのはたやすい事かと・・・。」
「うむ、任せたぞ。」
「はっ、お任せください必ず成功させて見せます。」
「気をつけろ・・・選ばれし者に・・・。」


話しが終わり一人の魔族が飛び立った。
「ふん、選ばれし者・・・か。そんな奴がいるなら・・・・・。」

彼女は一瞬悲しそうな表情を見せたがすぐに楽しそうに笑った。

「さて、小竜姫そして美神令子・・・天竜童子の時はしてやられたが今度はそうはいかないよ!」

そう叫び彼女は日本に向かった。


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