ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(3)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(03/11/23)


「フォフォ、相変わらず修練を重ねとる様じゃの・・・キキーーッ!!キーーッ!!」

「・・・猿、話する時ぐらいゲームやめてこっち見ろよ。」

「5日5晩通しでプレイしとるんじゃ、そうすぐには終わ・・キッ!?キキッ!!ウホッッ!」

パピリオが印を結んで用意した立体映像に映し出されたのは、ゲームにハマった猿。
猿はコントローラーを放り投げると両手を大きく叩き始めた。





これがそんごくうよ。
そんごくうはね、おさるさんだけど、せいてんたいせいというなまえのかみさまだったの。
でも、とてもあばれんぼうなかみさまだったの。
だからおしゃかさまにいわやまへとじこめられちゃった。
それをおぼうさまのさんぞうほうしがたすけてあげたの。
そこからたびがはじまったのよ。

・・かみさまなのにおさるさんで、あばれんぼうなの?

そうよ。かみさまなのにおさるさんであばれんぼう。かみさまも、いろいろいるのよ。


そう、いろいろ・・・・・。





・・ったく、ママが絵を描きながら聞かせてくれた「西遊記」のイメージをことごとくブチ壊しにしてくれる姿だぜ。

「(パンパンパンッ・・)ホーーッ!ホーーッ!ウキィーーーーッ!!・・・すまぬ、
つい興奮し過ぎた様じゃ。」

「パピリオにシンバルも買って来てもらえよ・・・。それで?・・・なあ、俺に何か言う事があるとは思わねーか?」

「おお、そうじゃ。見ろ、ついに無敵の32連コンボを発見したぞ。人間共もやるもんじゃのう。
ちゃんと、それを使いこなせる強者の出現を見越してゲームを作っておる・・・。」

「・・・帰るぞ?」

「まあ待て待て。相変わらずお主はせっかちじゃ。昔もその短気で、霊力の増幅が中断された事が
あったじゃろうが。・・・良く画面を見ろ。」

猿の向いのモニターにはさっきまでの格闘ゲームではなく、何か、強烈な光を放つ物体が映っていた。
それが人・・・いや、人間に近い形の神族であると気付くのに時間はかからなかった。

しかし、何つー神気の放出してやがるんだ。
立体映像、更にその中のディスプレイからなのに俺の所にまで霊圧が伝わって来る。

ディスプレイの中の奴の顔はその凄まじい光でおぼろげにしか見えない。
何か模様の入った布で全身と顔の下半分を覆っているらしい。
パピリオが体をがくがくと震わせた。
人間界と神界の中間である妙神山で修行を積んでいるとは言え、これ程の神気は、
魔族として生まれたこいつの身体には毒だろうな。
そいつの声・・・これもまた尋常じゃない霊波動を伴う・・が流れて来た。


「・・・・我らの父は・・・今、迷われている・・・神界と魔界とのデタントは・・・宇宙を混沌に帰す・・
滅びと過ちの門だ・・・我は問う・・正しきものと悪しきものとを・・・汝に問う・・・光と闇とを・・・
・・・剣を取れ・・・・業火を焚け・・・斬り払うべきものがそこにある・・・焼き尽くすべきものがそこにある・・
・・・我が父の名において・・打ち倒されるべき者、滅ぶべき者を示せ・・・我らの父に思い出させるのだ・・・
・・『塵は塵に、灰は灰に』・・我らは敢えて今、我らの父に逆らおう・・その従順と永遠の忠誠の為に。」


一音一音が霊体を揺さぶるような声だ。

「お・・じいちゃ・・も・・もう・・限界でちゅ・・やめ・・くだちゃ・・」

パピリオが印を結んだまま崩折れた。身体のあちこちから煙の様な気を上げている。
呼吸困難を起こしたかの様に噎せ、顔は涙と冷や汗でぐしゃぐしゃだった。

「やれやれ、ぱぴ坊もまだまだじゃな。音を上げるのが早過ぎるわい。」

猿がそう言いながら画面を切り替えるとそいつの姿は消え、ディスプレイには再びゲームのデモが
表示された。

「一体何だったんだよ?今の、『子供に有害なテレビ番組』は。」

「パピリオは・・子供じゃ・・ないでちゅ。」

そんな減らず口を叩けるようなら多分心配ないだろう。・・・・このチビの心配だって?俺が?
猿がやっとこちらを向いた。

「神界の中心人物の一人で、あらゆる反デタント勢力の事実上のトップ・・天使長ミカエルじゃよ。
これは二週間前に奴が全ての神族に向けて霊波放送を通じて行なった声明じゃ。」




俺はパピリオに一旦猿との回線を切らせ、化粧室借りるのと避難とを兼ねて向こう側のコンビニへ
行くように言うと、自分で繋ぎなおした。さっきの声明をもう一回見る為だ。

「・・・ミカエルの声明に内容なんぞありゃせん。斬るだの焼くだの言っとるが具体性など何も無い。
昔からの原理主義者の繰り言みたいなもんじゃ。・・だが、奴が今顔を見せ、改めて声明を出した、
その事こそが重大な意味を持っておる。奴の下にある全ての反デタント勢力・・神界内の派閥も、
表に出ない大小様々な過激派組織も、じゃ・・それが一挙に活気付き、行動に出る事が多くなる
じゃろう。」

ディスプレイの画面が変わった。画面いっぱいに何かの紋章が表示される。
白地に奇妙な装飾が施された十字架のデザイン。その紋章は縮小されて画面の隅に移り、
数枚の顔写真画像が中央に並んだ。
人間・・天使らしき姿の奴も竜族らしき姿の奴もいる。見た事のない連中だ。さっきのミカエルや
目の前の猿と比べると・・・いや、小竜姫やヒャクメと比べても格下そうな、明らかな「雑魚」だ。

「こやつらは反デタント勢力の中でも中堅クラスのある組織に属している、行動役の下っ端どもじゃ。
・・人間界で畏れ崇められるに充分な力量は持っておるようじゃがな。日本国内で人間相手の活動
ならば、組織内どころか反デタント勢力内で最も“動ける”連中でもある。
・・・こやつらが一斉に姿を消した。この声明の二日後、ぱぴ坊の下山が決まった日にな。」

俺は溜め息をついた。猿――画面のミカエルにも引けを取らない神界の実力者、天地開闢の直後に
石から生まれた石猿の神、斉天大聖――もやはりボケちまっているのか。

「神界の頭の固いテロリストがあのガキを狙っている可能性がある。だから俺にボディーガードを
やれって?・・そんな必要はねえな。話はもっともっと簡単だ・・。パピリオを小竜姫の所に帰せ。
ワガママなクソガキはたっぷりお仕置きを食らってから安全に妙神山へ戻る。
これで全て終わりだぜ。」


「・・否、それは問題じゃよ。」

「・・・どこがだ!?」


「分かっておらんな・・・・・・・デジャブーランドはどうなる?」


「・・し、知るかああああああっ!!」

「ぱぴ坊は小僧と嬢ちゃんの娘・・姉の生まれ変わりに会う次に楽しみにしていたんじゃぞ?
本当は一緒に連れて行きたがってたけど、小さすぎるからってそれは諦めさせたんじゃ。」

「だから知るかああああああああああっ!!」


猿・・・・ガキに甘いのも限度と常識があるだろ?

「何の為のスケジュールと監視だ?余計な危険作って俺の手を借りてたら世話ねえぜ。
奴がそんなに行きたがっているなら、ほとぼり冷めてからデジャブーランドでもデジャブーシーでも
連れて行ったら良いだろ?何もこんな時じゃなくてな。」

さすがに猿もそこまで言えば気が付くだろう。わざわざそんな要警戒時に身内のボディーガード
欺いてまで遊びに行く必要などどこにも無い。危険を犯して通して良いわがままではない。
そんな事も分からなくなったのなら見た目どころか中身も猿になっちまってるって事だ。

だが、猿は・・猿の分際で、逆に俺に向かって首をすくめ、溜め息をついて見せやがった。


「やはり、お主は何も分かっておらんようじゃな・・・何一つのう。結論を急ぎ過ぎるのは人間全てに
見られる性じゃが、お主はそれにしても短気過ぎる・・。」

「分かってねえのはてめえだろうが、このエテ公。俺が分かってないだと?
俺が何を知らないって言うんだ?」



「・・確かに妙神山では重要人物に監視を付ける。それが護衛である場合もある。天龍童子の時には
総出でじゃったのう。しかしお主・・・ぱぴ坊に付いている監視がそれと同じだとでも思うか?そして・・
いつ“ほとぼりが冷める”のじゃ?・・“ほとぼりが冷めてから出歩けば安全”と申すか?」


「・・・猿?・・てめー、一体何を、言いてーんだよ?」

「儂もお主の頭が理解できるように儂の考えた事を教えてやりたいが、それも詮無きようじゃの。
・・まったく、人間界はせっかちに出来ておる。・・・・・・・小僧、・・“来る”ぞ?」

「??・・・何が“来る”って?」



「―――ジョン!!、伏せでちゅ!!!」

いつの間にか戻っていたパピリオがそう叫ぶと同時に、俺の足元の地面が爆ぜた。

一発・・・、二発・・・、遅れて来た空気の軋む音。


高性能ライフルでの遠隔狙撃だ!!


パピリオの背中に一発が命中した。

「痛いでちゅねえっ!!」

顔をしかめて怒鳴る。大してダメージはない様だ。
だが俺に当たればきっと「痛いでちゅ」じゃ済まない。

「通常の弾丸にしては痛過ぎるでちゅ・・多分、法儀礼済の銀弾でちゅね・・。」

「・・・・・だからよ・・誰が『ジョン』だよ・・?」

どさくさ紛れのクソチビの言い草に怒りながらも俺は理解していた。
法儀礼済の銀弾、ライフルでの狙撃。
――狙いはパピリオ。それも、準備された計画的なものだ。
二人同時に駆け出す。三発・・四発・・五発・・着弾は続いていた。


(続く)
―――――――
地の文がいまいちゆっきーぽくなくなっているかどうかが気がかりです・・。

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