ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その46)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/11/22)



「さっちゃんは・・・・・・どうしよもなく優しいんだね」

「!?」

幸恵の目が大きく開かれる・・・息切れと鼓動が早くなり薄っすらとぼやける視界に入る少女を見ながら。

「でも、もういいんじゃないかな・・・そろそろ自分の心に素直になっても・・・」

ひのめの言葉が・・・心に染みるような優しい声が幸恵の動きと瞳が一瞬止める。
ああ・・このまま全てを任せれたらどんなに楽だろうと・・・だが・・・

「美神さんには何が分かるの!?何が出来るの!?
 くっ・・・あなたといると調子が狂う・・・いつもはこんなに感情が・・・」

「・・・・・・・・」

頭を抱えて苦しむ幸恵からひのめは思わず目を逸らしてしまいそうになる。
どうしてこんなにも優しい子が傷つかなくてはいけないんだと・・・
だから・・・だからこそ今救ってあげたい。そして・・・ひのめは決意した・・・

「・・・・・・・・あなたはそれでいいの?」

「はぁ・・・はッ・・・何が・・・」

「そんな人生でいいのかって聞いてるの」

「ぐっ・・・ハァハァ・・・あなたには・・・関係ないことだわ・・・」

一体この人は何が言いたいんだと幸恵は暴走しそうな感情を抑えながら睨んだ。
しかしひのめの口調は幸恵を挑発していく。

「そんな諦めたような人生でいいかって聞いてるの?好きな剣道も出来ないし、笑うことも出来ないじゃない」

「やめて・・・」

ますます息が荒くなる幸恵、それに比例にヒートアップしていくひのめの口調。

「まぁ、あんたの人生だから〜、関係ないけど〜・・・私ならそんな負け犬人生まっぴら」

「あ、あなたに何が分かるっていうの・・・」

「分かるわけないじゃ〜ん、負け犬さんの人生なんて」

「うぐ・・・いいかげんに・・・ぐううう」

怒りの感情で暴走しそうな頭を抱える幸恵、このままひのめを襲いたい衝動を必死にこらえる。
だが、視線はテーブルの上に置いてある果物ナイフに向かっていた、破壊衝動、いやもは殺人衝動の域かもしれない。
それを拾い目の前の少女の柔らかい肌に突き刺す、そんな行き過ぎた激情・・・

(そんなことになるくらいなら・・・・・・・・、・・・・・・・私なんかいなくても・・・・)

人を殺めるくらいなら自分の命を絶ってしまおうか・・・
そういう極端な思いが沸き起こるのも理袋のせいだろうか。
そしてひのめは・・・

(もう少し・・・お姉ちゃんが言ってた特殊除霊法・・・私の体にお札貼って・・・)

ひそかにひのめは自分のお腹にお札を貼り付ける。
失敗すればあとがない・・・でも・・・苦しむ幸恵をこれ以上をほうっておけない、
一日、一時間、一分一秒でも早くその苦しみから開放してあげたかった。
そして・・・覚悟を決める。

(これだけは言いたくなかったけど・・・)

「本当あんたみたいな子供を持つと親が苦労するようね〜、それとも親も負け犬?」


────プチ  


そこで幸恵の何かが切れた。

「うあぁぁぁああぁ────ッ!!」


一直線にナイフを拾い上げる幸恵。
もはや理性の効かない幸恵は拾い上げたナイフをひのめに突き刺そうと視線を向けた瞬間!
その手はひのめに押さえられる。
そしてひのめは幸恵の右わき腹に素早く一枚のお札を貼り付けた。

その瞬間・・・・・怒りに身をまかせていた幸恵の意識が戻り、手の力が抜けナイフがストンと床に落ちた。

「あ、あれ?」

張り詰めた空気が和らぎ突然訪れる開放感に幸恵は戸惑いながらも幸恵はひのめの腕の先、自分の右わき腹を見ると・・・
そこにはビチビチとまるで陸に上がった魚のようにお札に挟まれもがく理袋の姿が。

「こ、これは・・・」

「こ、理袋が深く取り憑いた場合ってのはこうやって感情を爆発させて活性化してる間に取り押さえるのよ・・・」

「じゃあ・・・今までのは!」

本心で挑発していたのではない、あくまで除霊作業の一環だと幸恵は気付く。

「まぁ・・・プロのGSなら最後まで一人でやるんだけど・・・
 私は霊力が弱いからこうやって抑えてるだけで精一杯。んで、今から私のほうにこいつを転移させるから・・・」

「え?」

「私のお腹にお札が張ってあるでしょう?今手を離したらこいつはそこに目掛けて飛んでくるわ!
 その飛んでる間・・・その瞬間にあなたがそのナイフに霊力をこめてコイツを貫くの!」

「で、でも霊力なんて・・・」

「だ、大丈夫・・・こいつは元々霊力が中途半端に強い奴にしか取りつかないから!
 それに幸か不幸か理袋がチャクラまで取り憑いていたおかげでさっちゃんの霊力が引き出されてるはずよ!
 あとはあなたが一箇所に霊力を込めてやればOK!」

「霊力を込めるって・・・」

自分は霊能力者なんて自覚したことはない、才能があるって言われても出来るかどうか・・・
失敗したらどうする・・・そう思っていたときひのめと視線が交わった。

「剣道やってたんでしょ?それと同じ!集中してナイフに力を溜める感じで・・・
 大丈夫・・・私一人じゃ、さっちゃん一人じゃ無理かもしれない・・・でも」

ひのめは微笑みながら言った。

「二人の合わせた力を信じよう♪」

不安を溶かす優しい笑み・・・温かい言葉・・・そんなひのめに幸恵はウンと頷く。

「よ、よし!じゃあ3つかぞえるから・・・」

「分かった」

「1・・・」

カウントスタート

「2・・・」

振り上がるナイフ・・・そして・・・







「3!!」






















































「ぷはぁ〜〜〜〜〜な、何とかなったわねぇ!」

息も絶え絶えにひのめは床に腰を下ろした。
なけなしの霊力を使い切ったうえに一か八かの大賭け勝負、肉体的にも精神的にも疲労でいっぱいだった。
それでも心地よいその疲労感に浸っていると・・・

「なんとかって・・・もしかして成功率ってよっぽど低かったの!?」

「いやぁ〜〜、私って何でも思いつきでやっちゃうから♪」

ケタケタと笑うひのめに幸恵はアングリと口を開けたまま動けない。
もし失敗してたらと思うと恐くて考えたくもなかった・・・・でも・・・
過程はともかくとして今こうして文字通り憑きモノが落ちたようなスッキリとした感じは現実・・・
だから・・・

「思いつき・・・って!ったくぅ・・・まぁ、でも上手くいったから許してあげる♪」

大きく頬を緩ませた笑顔を浮べた。

「へぇ・・・さっちゃんってそうやって笑うんだねぇ〜、あとメガネよりコンタクトにしたほういいんじゃない?♪」

「あ、いや・・・べ、別にいいじゃない!」

なぜか顔をカーっとさせて顔を逸らす幸恵。
どうも今まで抑えてた感情を開放したせいかコントロールが微妙につかないらしい。

「ま、いいやこれにて無事解決・・・ほら、ナイフ」

ひのめは床に突き刺さったナイフを引き抜くと柄の部分を幸恵に向けて渡す。
何気ないこの行為・・・だが・・・

「・・・うん・・・どうも」

ナイフを受け取った幸恵の声のトーンが低くなりさっきまで浮かべていた笑みが消えさり再び暗い無表情なツラになってしまう。
そんな感情の変化に今度はひのめが口をアングリとさせる番だった。
そのとき幸恵の手が滑りポロリと再び床にナイフが落ちると・・・

「わ!危ない危ない!・・・私って昔から何でもポロポロ落としちゃうんだよね!」

てへっと言った表情を受かべる幸恵。
そんな友人を見てもしかしてとひのめは一つの推論を立てるとナイフを拾い上げて再び幸恵にナイフを渡す。

「はい、どうぞ」

「・・・ありがと」

今度は幸恵からナイフを取り上げてみる。

「ん?どうかしたの?」

もう一回渡してみる。

「・・・何してるの・・・」

取り上げる。

「だから、何がしたいのぉ〜〜!?」

渡す。

「だから何をしたいの・・・」

「後遺症!?何か性格が!でも面白いわ!」

ひのめは結局ナイフを机のうえに置いて今の変化を幸恵に話すとケタケタと笑った。

「う〜ん、どうやら感情のコントロールがまだ上手く出来ないみたいだね!?
 多分例の事件のときと今の除霊作業の過程のせいかも・・・、刀剣形式のものを持つと性格が変わっちゃうのかな?
 もしかしたら刀剣の種類でいろいろ違うかも!今度実験してみようか」

「私で遊ばないでよ!?それに何かあんまり実感ないなぁ〜」

ひのめに理由を説明されても幸恵はイマイチ実感がわかなかった。
確かに今ナイフを持ったとき、高揚感を感じているのに不思議と冷静になる自分を認識していた。
もしかしてそれのことかなと首を傾げる。

「でも、これで終わったんだよね・・・ありがとね『ひーちゃん』」

「!?・・・・・・・・・・・クス、あれ?美神さんって呼ばないの?『江藤さん』」

二人はお互いの呼び名を聞いてプっと噴出し・・・

「くくく・・・あははははははは!」

「くす・・・ははははは!!」

声を合わせて笑いを上げた。
そして・・・・

「あ、あれ?私笑ってる・・・・笑ってる・・・笑えてるん・・・だよ・・・ね・・・う・・・ぐっ・・・ひぐっ・・・
 嬉しい・・・嬉し・・・いなぁ、う、うぅ!うあああぁぁぁぁああああぁぁ────ん!!」

今度は一転し涙をポロポロ流す幸恵はひのめの胸に抱きつきその瞳から溢れて止まらない雫でひのめの胸元をぬらした。
大声で笑うのも、感極まって泣くのも、それが嬉しいと思えるのも・・・まるで生まれて初めてような感覚。
今幸恵の胸の中は言葉には表せない様々思い、気持ち、感情が溢れて混ざり・・・形にならない。
そして幸恵にはそれが気持ちよくて仕方なかった・・・


「うん・・・もう我慢しなくていいんだよ・・・」

ひのめは自分の胸で泣く新しい友人の頭をそっと撫でながら耳元でそっと囁いた。
その一言がさらに幸恵の瞳から涙を溢れ出させる。

「うあぁぁあ゛あ゛ぁぁぁん!私・・・わた・・・しホントはぁ!ホントは────────────」






































「って、ことだったよね〜〜!?」

「「・・・・・・・・・・・・・」」

「あれ?」

幸恵が話しを明るく締めたとき二人は沈黙のままあさっての方向を見ていた。
ひのめは少し顔を赤くしながら、京華はどこか寂しそうな目をしながら。

「どうしたの二人とも?」

「ちょっと私見張りに行って来るわ!」

「え?ひーちゃん・・・もしかして、トイ・・・いだ!」

「見張りつってんでしょう!ったくぅ・・・」

ひのめは幸恵へに脳天チョップを食らわすとさほど深くない洞穴を少し早足で出て行く。
ちょっと困った表情それでいて赤い頬で・・・なぜなら・・・

「何か、さっちゃんの思い出話って美化されてて聞いてるこっちが恥ずかしいわ・・・」

『うんうん、下手したら幸恵のチャクラがグチャグチャになるか、あんたが取り憑かれるかの状況・・・よぉやったわねぇ』

「うっさいわねぇ!若気の至りよ、上手くいったんだから流してよ。
 私だって今聞いたら背中に寒いものが走ったんだから!」

怒りと恥ずかしさで顔を赤くしながらひのめは心眼を睨むのだった。
そして・・・その姿を含み笑いで見送りながら幸恵は『ひーちゃんらしいなぁ』と呟いた。

「くす、ひーちゃんって面白いでしょ?」

「・・・・・・・・」

ひのめの去った洞穴に残った幸恵と京華。
赤々と燃える二人の間には会話が成立せず、いや京華が一歩的に沈黙を保ったままだった。
京華はゆらゆらと煌くその炎をどこか遠い目で見つめ続ける。

「さっきの話なんだけどさ・・・」

「・・・・・・・・・・」

「感情を押し殺して、平気なフリしてたときもね・・・」

「・・・・・・・・・」

「ホントは・・・」

「────本当は・・・いつだって寂しくて、苦しくて、泣きたくて、誰かといつも一緒にいたかった・・・」

「・・・あ」

自分の言葉をスラリと自然に続けた京華に幸恵は少しだけ目を丸くして視線を向ける。
そんな幸恵の視線に気付いたのか京華はしまったと言った表情で急いでそっぽを向く。
どこか怒ったような、恥ずかしいような、悲しいような瞳で・・・

「私達似てるよね・・・」

「どこが、私はあんな弱い人の後ろ追ったりしませんわ」

吐き捨てるようなセリフ、でもそこにはどこか動揺が見られる。
少なくとも幸恵はどう感じた・・・

「私さ・・・かすみちゃんに三世院さんのこといろいろ聞いたんだ・・・
 おじいさんのこと、フラウさんのこと・・・かすみちゃんとどうやって育ってきたか」

「ふん、かすみのおしゃべりにも困ったものですわね。
 ・・・で?そんなことでわたくしの全てを分かったつもりかしら?」

「全て・・・じゃないけど、少なくとも・・・・ひーちゃんのことを嫌いじゃないってのは分かるよ」

「分かった口をぉ!」

怒りを込めた京華の眼差し、しかし幸恵はその視線をどこか穏やか微笑みで流すとさらに続ける。

「本当はもう分かってるんだよね・・・全部。
 ひーちゃんの強さも過去も、何で自分が美神家を恨んで、ひーちゃんにこだわるか全部」

「だから!それは!」

「だって、三世院さんが本当に認めたくないのは・・・」

「黙りなさいッ!」

パンっ!

乾いたその音は炎で赤く照らされる洞窟の中でエコーする。
頬を叩いたのは肩で息をする京華、叩かれたのはどこか冷めた表情の幸恵。
その表情がさらに京華をイラつかせる、その全てを分かっているような目が・・・そしてそんな目に声を張り上げる自分も。

「あなたに!あなたに何が分かるっていうの!?美神家のせいでお母様の失った私の気持ちがぁっ!!」

京華はギュっと朱色に塗られたロザリオを握りしめる。
そうだ・・・お母さんは・・・美神家が!と思った瞬間だった・・・


パン!!

二度目の音。
その音と共に京華の左頬に熱い痛みが走る。
一瞬何が起こったんだろうと京華は呆然自失の状態に陥るが、すぐに自分の目の前の少女が頬をぶったことに気付いた。
それがまた京華を困惑させる、ひのめならともかく江藤さんが?と。
さらに・・・目の前の少女・幸恵は京華の胸倉をつかむと・・・強い眼差しで叫んだ。

「いいかげんにしなさいよ!さっきから聞いてれば全部人のせいにしてぇっ!
 そうやっていつも逃げて逃げて!自分の殻の中に閉じこもって!そんなんじゃいつまでも強くなれるわけないでしょ!!」

「!!」

頬を走る痛みがあとをひく。
その熱さと怒りで言い返してやる!・・・なのに京華の口は一言も発さない、発せない。

「ひーちゃんなら・・・こう言うんじゃないかな・・・」

幸恵は表情を一転させ微笑みながらその手を胸倉から離した。
そしてそっと自分の右手を左手でさする。

「痛いよね・・・叩かれるって。でもさ、やっぱり叩くほうも痛いんだ・・・当たり前だけどね。
 私はひーちゃんに会う前はその痛さが恐くて、誰かを傷つければ自分も傷つくんじゃないかって、
 もちろん理袋のことはあるよ?それでも嫌だった・・・・でも・・・」

何かを思い出すような優しい瞳と声でそっと伝える幸恵。

「ときにはこの痛みも必要なんだよね・・・、それに気付かせてくれたのがひーちゃんだった。
 まずは認めなきゃ・・・何も始まらないと思うよ?ね♪」


軽いウインク・・・しかしその眼差しの先にいる京華は・・・
まるで力が抜けたかのように壁にもたれかかるとそのままズズっと崩れるように腰を地に下ろすと・・・ポツリと呟き始めた。

「分かっ・・・・てた・・・本当は・・・美神家も美神さんも・・・悪くないって・・・
 でも、誰かを憎まなきゃ、恨まなきゃ・・・わ・・・たしの心が・・・潰されそうだったの・・・」

泣き声を押し殺した声・・・しかしその両眼からポロポロと涙が溢れはじめ頬を伝っていく。

「お母様が死んだとき何より無力で弱い私が嫌いで、逃げたくて、認めたくなくて・・・
 はじめはおじい様を恨んで、次は美神家を恨んだ・・・でも!いつも夢に出てくるの!8歳の私が!」

心の底から叫び・・・

「『お母さんを殺したのはお前だ!力が無いから弱いから!返して!お母さんを返して!』って!
 いつもそこで目が覚めて、起きると・・・いつも泣いていて・・・そのたびに『私のせいじゃない』って言い聞かせて・・・
 それから美神さんのことを調べた、心眼の力で過去を見るよりも前にケルベロスに襲われて霊力が弱いことも知ってた。
 だから、初めて会ったとき私と同じだと思った、弱くてそれを誰かのせいにして自分を保ってると思った!
 でも・・・違った」

震える肩・・・

「いつでも前向きで明るくて・・・私と違った。
 だけど!そんな美神さんを認めたら弱さを過去の自分を、お母さんを殺した自分を認めてしまう気がして・・・だって・・・
 私はあなた達みたいに強くないから・・・ぐっ、ぐううぅ!うあああぁぁああぁ────っ!
 ひぐっ、うえぇ・・・うぐくうああ゛あ゛あぁぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁッ!!」
 
止まらない涙・・・ 

「うん・・・。やっぱり似てるよ私達・・・。私はひーちゃんの強さに憧れて、あなたは嫉妬して・・・
 二人ともひーちゃんに影響受けてたんだよね・・・でも、もういいから・・・辛かったよね・・・
 大丈夫だよ、もうあなたを誰も責めたりしないから・・・」

背に当たる幸恵の掌の温かい感触が京華の凍てついた心も温めていく。

「うぐっ!ぐふ、わあああぁぁああああぁあ────ッ!!」


京華は泣いた、声の限り。
あとで思えば自分でもこんなに泣いたのは何年ぶりかというくらい。
素直になる、誰かを認める・・・簡単そうで難しい、だからこその慟哭。
その涙の一つ一つが京華の心の氷が解けた水滴に・・・・・・・・優しく微笑む幸恵にはそう思えたのだった・・・・。






















『だってさ・・・』

「うっさいわねぇ、聞こえてるわよ」

洞窟の入り口の影にもたれかかりながらひのめは心眼を睨んだ。
見張り・・・と言えば聞こえがいいが、コソコソ全てを聞いてしまった今の状態は盗み聞きと言ってもいいだろう。
しかし、今ひのめの中には不思議と京華を責める気持ちも恨む気持ちもない、
むしろすっきりした気持ちだった。

「心眼・・・あんた全部分かってたんでしょ?」

『まぁね、仮にも『心眼』だから』

「よく言うわよ、おおかた前に京華の記憶をみたときに深層意識まで覗いたわね」

『いくらあたしの能力でもそこまではいかんわ、あんたが鈍チンなだけ〜』

「このぉ!今すぐ燃やすわよぉ!」

ウニーと心眼(リストバンド)の頬(?)を伸ばしながらひのめは夜空に散らばる幾億モノの星を見つめる。
空気が澄んでいるせいか、排気ガスがないせいか少女の心に感動を与えるその星たち、
それを見てひのめは思う・・・この輝く星達でさえ同じ輝きを放つものはいない、
なら・・・人だってそうだ、同じ人間なんているわけない、違う誰かがいるからこそ自分が分かってくる・・・
そりゃ衝突だって、後悔だって、勘違いもする・・・それでも・・・

「いつか分かり合える・・・」




────まだ生乾きのジャージの上着を羽織りながらひのめは微笑むのだった。












                                 その47に続く




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