ザ・グレート・展開予測ショー

B&B!!(2)


投稿者名:フル・サークル
投稿日時:(03/11/21)





・・・ぼどっっ!!



「おい、また右腕落ちたぞ?」

「ア・・・スミマセン・・。」

ぴとっ・・・・・ぐじゃぐぢゅめりぎちゃっ・・・!!

「・・・そんな付け方で大丈夫なのか?」

「ハイ・・・何トカ・・・」

“何とか大丈夫”だったらここに来るまで何度も・・マンションの前や電車の中で落としたりする筈がねえ。

「ったく、しっかりしろよな。」

近くにいた何人かが俺達の様子に気付いて「ヒッ」とか声を上げていたが、構うもんか。
昼前の人でごった返す秋葉原を俺とそいつは並んで歩いていた。
サングラスでその虚ろな目を隠した所で、そいつの姿は十分怪しい。
こんなもん単独で長時間歩かせるな。この街のどこかにいる、そいつの主に文句を言ってやりたかった。
男は主の霊気を辿るようにフラつきながらも歩を早める。俺達はいつの間にか裏路地に入り込み、
小さなゲームショップが立ち並ぶ、建物の中なのか外なのかも分からない所をさ迷っていた。
「あのGSゲーム 独自のルートで全シリーズ入荷!!」
そう手書きされたビラが大量に貼り付けてある一軒の前で俺は足を止めた。前を歩いていた男も立ち止まり、
辺りをしばらく見回してから俺と同じ場所に顔を向ける。その狭い店の奥、ゲームソフトや周辺機器が乱雑に
積まれた一角で背中を向けながらわさわさと動く小さな姿。俺は店内に足を踏み入れた。

「・・・ふんふん、プレイヤーの霊力に応じてキャラクターの数値も設定できるリアルモードには専用の
バーチャ神通棍が必要でちゅか・・対戦でプレイヤーの霊力を立体映像に具現化する結界モニター・・
私とおじいちゃんでは壊れちゃいそうでちゅね・・買うのは止めときまちょう。
まったく、お金をたくさん使わせる様に出来てるゲームでちゅ・・・あの女が監修したゲームから始まって
いるんだから当然でちゅね・・・。私のお小遣いはデジャブーランドまで足りるのでちょうか?あいつが
その分のお金を持って来ていればいいのでちゅが・・・・」

「こら」

ゴッッ・・

「人呼び付けといて何勝手な事ホザいてんだ、このチビ。」

「痛いでちゅ!お前にチビとか言われたくないでちゅ。私の身長には未来があるでちゅよ!
お前みたく終わってないんでちゅ!」

「こ・・この野郎・・・」

相変わらずムカつくガキだ。ガキと言ってもこいつは最初に出くわした十数年前からこの姿のままだし、
俺が生きてる間で目に見えて成長する事は恐らくないだろう。

「でも良いタイミングで来たでちゅ。ちょうどお金以外の事でも困っていたんでちゅよ。」

「何だよ?」

パビリオは自分の背後の棚を指差した。そこには店頭の広告にも書かれていたゲーム、「NO.1GS美神令子監修
バーチャGS体感ゲーム 祓うぜ極楽一直線!!」を始めとした各社競作のGSゲームが並んでいた。
4年程前立て続けに発売されたこれらのGSゲームは一時は社会現象にまでなったが、プレイ中の危険性が問題視
され、半年で全て発売禁止となり回収された筈だった。俺はその頃上海に滞在し、連絡も絶っていたので監修の話が
来なかったが、あらゆるGS―俺の周囲の連中は皆声を掛けられていたという。
引き受けたのはその半分くらいだったが。

「店員が、ヨコシマのを売ってくれないんでちゅ・・・」

横島の奴が監修したゲーム・・・GSゲームの中で唯一「成人」指定を受け、アダルトソフトコーナーに並べられていた・・。
棚の横の張り紙「法令により、横島忠夫氏監修のGSゲームに限り、未成年者への販売をお断り致します。」
・・・GSゲームの販売自体が今では違法なんだけどな・・?

「『子供がそんなもの買っちゃダメだ』なんて言うんでちゅ。パビは子供じゃなく、大人のれでぃーなんでちゅよ!?」

・・・大人のレディーは秋葉原の奥地でエロゲ買ったりしないだろ、とか思うのは俺の偏見なのか?
パビリオの代りに横島のゲームをレジに持って行き清算してやると、店の外に出た。このガキはトランク数個分の
ゲームソフト以外にもかなり買い込んでやがった。周辺機器の数々は、車に積める限界すら遥かに越えている。

「おい、そいつにも持たせるつもりか?」

表で待っていた男―腐りかけの人形―がそのうちの何個かを抱え上げようとしていた。

「当然でちゅ。そのつもりで作ったんでちゅから。」

「無理だ。事務所からここに来るまで何度も腕や足落っことしてたぞ。
買ったモンまとめてオシャカにしたくなかったら諦めるんだな。」

パビリオはため息をつくと念動力で荷物を少し浮き上がらせた。

「しょうがないでちゅね・・自分で持ちまちゅか。・・お前もご苦労様でち。」

男の体の周りから10センチほどの紫色や赤色の光体―蝶の形をしていた―が幾つか舞い上がり、直後そいつは
人型の完全な泥の塊に変わった。

「ほら、人手が足りなくなったんだからお前も持つでちゅよ、ジョン。」

「俺が?・・・て言うか、ジョ・・・・ジョン?」


・・・このガキ、いつか殺す。絶対殺す。
死ななくても殺す。


「・・・荷物の前に答えろ。俺はその為に呼ばれたのか?デジャブーランドへの足と財布代りなのか?
だったら横島が適任だろ。家庭を持って昔より忙しいだろうけど、お前の面倒なら喜んで見てくれる筈だ。
なのに何故、俺なんだ?お前とは敵同士で戦った記憶しかないぜ。
そして、お前はゲームとデジャブーランドの為だけに人間界へ何年か振りに出現したって訳か?
一人で監視も護衛も付けずに。・・そりゃあ話が変過ぎるよな。小竜姫は一緒じゃなかったのかよ?」

頭を冷やして怒りよりもまずは、疑問だ。来る途中からずっと引っかかっていた。
「あのパビリオが人間界へ何をしに来たのか、俺に何の用があるのか。」

「ヨコシマにはもう会ってきまちたよ。・・・葉書が、来たんでちゅ・・・・『生まれた』って。」

疑問の一つは解けたようだ。先月、横島の娘が生まれた。・・「こいつの姉が」生まれた、とも言えそうだが。
パビリオの姉ルシオラ。横島の恋人として僅かな一時を過ごし、奴に文字通り命を託して最期を迎えた女。
横島、ルシオラ、そして美神令子、3人が何を感じ何を選び、どう決着をつけて来たのか俺は知らない。
俺は男と女の関係に外から口を出したり何かを考えたりしないようにしている。当事者から望まれない限りは。
とにかく、パビリオは会いに来たのだろう。横島蛍に。

「・・・・・当たり前だけどとても可愛かったでちゅよ。私に比べるとまだまだでちゅけどね。
ヨコシマも幸せそうでちた。」

このガキにしては言葉少ない語りだ。言葉に主語のつかない辺りが彼女の心境を表している様にも見える。
仮に、俺に奴の娘について感想を求めたとしても、こいつと似た様な言い方で答える事だろう。
「あいつらが幸せそうでよかった」と言う結論しか残らない。
まあ、それだけ残れば十分だろ?

「小竜姫は・・鬼門も、ヨコシマの所までは一緒だったんでちゅが・・撒いて来たでちゅ。
寄り道禁止とかカタい事言ってまちたからね。」

「・・・何だと?」

「ゲームの買い溜め頼まれてまちたし、人間界に来たのにデジャブーランドに行かないなんて、
まるでおトイレに入って拭かないで出る様なものでちゅ。天龍童子もそう言ってまちた。」

疑問のもう一つも解けた。帰る段になってバックレて来た訳だ。それが奴に監視のついていない理由。

「ヨコシマも、私と小竜姫ではどっちの味方するか分かったものじゃないから、撒いた後でも呼べなかったし
私一人で大丈夫だと思ってたでちゅよ。まちて、お前を呼ぶなんて考えてもいまちぇんでちた。」

「じゃあ・・誰が考えた?」

そう訊ねながらも俺の頭の中では、何となくこのガキの背後が見えていた。
パビリオは直接答えずに、小さな水晶球を3個取り出して地面に並べると両手で印を結び、俺もよく知っている
呪を唱えだした。妙神山である程度修行を積んだ者が日課のように唱える呪・・・・斉天大聖真呪。
水晶の上に青い光が走り、ホログラムの様に立体映像が浮かび上がる。
最後の疑問・・俺の予感は当たり。そこに現れた人物に俺は声をかけた。

「・・・・・・やっぱりてめーかよ、・・猿。」


(続く)
――――――――
ゆっきーはパビの背後の人物を予感で当てましたが、
私は、この話の展開が長く(遅く)なりそうだと言う予感がしてます。
せめてダラダラさせないよう気おつけます。

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