ザ・グレート・展開予測ショー

記念日


投稿者名:DIVINITY&麻呂麻呂
投稿日時:(03/11/19)




ここはある某有名デパート前。
そこで私は自分の彼氏に対し怒りを露わにしていた。
理由は本当にささやかな事。
彼が約束の時間を四十分程遅れてきただけの事だ。

「なんで遅れたのよ!」

「す、すまん。仕事が長引いちまって・・・・」

「仕事?今日は無かったはずでしょ?」

だから、今日デートの約束したんでしょ。

「いや、それがだちに助っ人を頼まれてよ・・・・」

どうも彼の友達の仕事を手伝ったせいで遅れたらしい。
実に友情に厚い彼らしい行動だ。
それは褒められるべきものですけど・・・・でも、でもですわ!

「ふ〜〜ん・・・・・私よりそのお友達を選ぶんですの。こんな可愛い〜〜〜彼女よりその友達の方が良いんですの・・・・」

彼女としては、嫉妬せずにはいられません!

「そ、そうじゃない。ただ、あいつが余りにも困ってたから・・・・これで手助けしなきゃ男が廃るってもんなんだ。なあ、分かってくれよ」

不機嫌そうな顔で彼を見ていた私には必死に弁解するその姿があまりにも滑稽で悪いと思いつつ可笑しくて吹き出してしまった。

「なっ!」

「ご、御免なさい。貴方がそこまで慌てるのはちょっと珍しくてからかってしまったの」

私の言葉に彼の顔が歪む。
拗ねたような脹れた顔で私を睨む。

「くそっ。なら今度は俺がからかい返してやるぜ。ふふふ・・・・俺に隙は見せない方が身の為だぜ。そして夜も寝ずに怯えるがいい」

「ちょ、何ですって!」

「彼氏をからかうなんて何て残虐な仕打ち・・・俺の繊細な心が大いに傷ついちまった。だからこれは正当な復讐さ!」

そこで一拍の沈黙が訪れる。
そしてお互い突き出した頬がリスのように膨れて破裂した。
洩れた空気は楽しげな幸せな笑いへと変わり、やがて甘くて温かいほんわかとした空間が二人の間に形成される。
この狭くて、落ち着ける雰囲気が私は大好き。

「じゃあ、行こっか・・・」

一頻り笑うと、どちらからともなく歩き出す。
私は会話しながら隣を歩く彼の掌を見た。
規則的に動く足に合わせ、腕も一緒に揺れる。
私の手は紅葉のように小さくて、彼の大きな掌で掴まれたら隠れてしまうんだろうな。

(手、繋ぎたいな)

(・・・・・・)

(・・・・女は度胸よね)

私は覚悟を決める。
気づかれないように呼吸を整え、バクバク鳴る心臓に酸素を送り込んだ。
そして落ち着くのを見計らって、私は神風特攻隊の気分で彼の掌に自分のを重ねる。

「・・・・」

「・・・・」

最初は淡い粉雪のように重ねるだった掌が、彼がぶっきらぼうに力強く・・・・でも痛くは無い心地良い感触で包み込んでくれた。
私も負けないぐらいしっかり握る。
子供がお母さんの掌を握るとは違う、お互いを支えあうような力のバランスで私達はお互いの存在を確かめ合った。





彼が小腹がすいたというので、最寄のファーストフード店で軽く食事をとった。
そこで彼は今日あった仕事の話をし、私も学園であった色々な話をした。

―――笑いの混じるその会話は今までで一番私の心を満たしてくれる。

食事を終え、私は欲しい本があると彼を連れ、書店に入る。
探していた本はすぐ見つかったが、だからとすぐ店を出るのも味気ないので店内を冷やかして回った。
彼は最近の漫画や小説に疎く、つまらなそうだったので私はお薦めの本を紹介したりもした。
でも、彼の反応は実に微妙。

(BLってやっぱり男性は引くものなのかしら?)

{注意。BLとはボーイズラブの略である。知り合い曰く、「BLは女性の多くにとってロマン溢れるもの」だそうだ。}



店を出ると、今度は手を繋ぎウィンドーショッピングを楽しむ。
人込みに飲まれながら、気になる服や装飾品が飾られている店を覗いていく。
私がこれが欲しい、あれって綺麗、と言うと彼が「買ってやろうか」と言ってくれた。
気持ちは嬉しかったけど、私は丁重にそれを断る。

(お金がないって事、知ってますもの)




気がつけば時間は六時に差し掛かっていた。
周りの人波は相も変わらず激しいが、私にしてみればそろそろ限界だ。

(門限が六時半ってどういう事ですの!)

内心愚痴を零しつつ、彼にもう帰る時間だと伝えると彼は送ってくれると言った。
まるでまだ離れたくないと言っているみたいで、私はなんだか嬉しくなり、あくまで自然な動作で彼に凭れるように身体を密着させる。
彼が真っ赤になって照れているのが見なくても分かった。

(・・・・初心で、可愛いですわ)









そのままの格好で帰路につき、あっという間に家の前。
これで今日の楽しいデートは終わりだ。
私は自分でも驚くくらい落胆しているのが分かった。
お別れを言って、家の門をくぐろうとする。

「・・・・弓」

彼の声が背中にかかった。
振り向くと、彼の顔が目前にある。

「・・・・ユッキー」

そして、彼と私の唇の距離が零になる。






















今日は彼との仲が大きく進展した大切な記念日。

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