ザ・グレート・展開予測ショー

遠い世界の近い未来(13.2)


投稿者名:よりみち
投稿日時:(03/11/16)

遠い世界の近い未来(13.2)

時間をさかのぼって、事務所の屋根裏部屋。

「あたしたちは、今、何にやってんだ!」
 突然、薫が、強い語気で口を開いた。

お昼に何か悪いモノでも食べたかと思案する葵と紫穂。

「今は〜、おキヌちゃんが用意してくれたお昼を食べて一休みしているところ〜。」
自分を見まわしてから答える紫穂。

「うちは、テレビを見ている‥‥かな。」
 葵は、クライマックスに近づいた画面から目を離さない。テレビでは、少し古い感じのアクション番組が放送されている。
「主役の俳優はん、ええ男やな。そういや、この主役も”文珠”使ことるわ。」
 主人公は、大阪弁のGSで、相棒の辣腕女性GSとともに痛快に悪霊をシバき倒していくという内容である。

「でぇ〜、薫は、スタミナドリンクのヤケ飲みかなぁ〜 」
 紫穂の視線の先には、テーブルの上に転がる四〜五本の空き瓶がある。

「(そう)だろ。下では、あたしらを元の世界に返す方法を探して、おキヌちゃんが頑張ってるっていうのに、あたいらはここで、役に立つことを何にもしていないじゃないか。あの水元でも手伝ってるんだぜ。」
特に、後段が面白くないのか、薫の語尾に力が入る。

「と言ったって、薫ぅ。水元のようにコンピュータを操作できるわけじゃないから、下に行ったって邪魔になるだけよ。」
紫穂が意外に冷静なところを見せる。

「そんなことは、わかってるって。けど、ここいらで、一発、あたいらの力を見せておかないと、居候扱いまま終わっちまうぜ。」

‘賛成’という顔の葵。紫穂は、‘私、わかんな〜い’というおとぼけの表情。

「だから、あたいらで他の仕事を減らしてやろうと言うんだよ。」
薫は、おキヌが示した廃ビルの方向に視線を向ける。
「さっき、言ってただろ。この事務所が見張られているって。だったら、その見張りをあたしらでやっちまえば、あたしらの実力を示せるし、美神のねーちゃんの仕事も一つ減るんじゃないか。」
どうだという感じで、二人を見据える。

「薫、”やっちまう”なんて言い方してると、お嫁に行けへんで。」と葵。

「もともと、あたしらがお嫁に行けると思てるのか?」即、言い返す薫。

「勝手に、そこまで一緒にせんといて。それに、美神はんを見たら、薫だって相手ができるかもしれへんで?」

「そうかもなぁ〜 そういや、あれで、美神のねーちゃん、旦那が、一応、いるんだからなぁ。あたいにも、結婚する相手ができるかもな‥‥ でも、結婚した相手が、横島のにーちゃんみたいだったら‥‥ う〜〜ん、‥‥ 」
しばらく考え込む薫だが、本題を思い出す。
「それよか、さっきの話どうする。一口乗るか?」

「見張りをシバき倒す一件か。」

「葵も、そんな言葉遣いしてたら嫁さんに行くのは危ないんじゃないか。」
‘ざまぁみろ’と言う感じでつっこむ薫。

「心配あらへん。うちは相手、見て、言葉遣いを変えるよって。」

 テーブルに置かれた菓子盆が、葵めがけて飛ぶ。が、そこにもう葵の姿はない。

「あんたのアイディアとしたら、いけるんちゃうか。」
 薫の横で実体化し、肩を叩く。賛成ということだ。

「紫穂は、どうするんだ?」薫は、今度は、今ひとつ乗り気でなさそうな紫穂を見る。

「でも、美神のおねーさん、見張りはしばらく放っておくって言ってたよ、いいの? 」

 監視者については、自分たちが発見されたことを知らなければ、大人しく監視だけで満足しているだろうから、しばらくは、手を出さずにおくというのが、さっきの話の結論である。

「それは、美神のねーちゃんや横島のにーちゃんが手いっぱいだからだ。あたいらでやっちゃえば、喜んでくれるって。それに、特務エスパーのあたいらは、美神のねーちゃんの命令を聞く義理はないだろ。」

「そーねぇ‥‥ 」
 そこは、うなずく紫穂。だが、その理屈であれば、特務エスパーの行動は、主任の水元の指示なり承認がいるはずだが、誰の頭にもそれは思い浮かばない。
「なら、いいよわ〜、暇だし。」
 紫穂も座っていた椅子から立ち上がる。

「うっしゃあぁ! 決まったな。葵、戦闘モードでいくぜ!」

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