ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その45)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/11/16)






私は・・・・GSが嫌い・・・だから・・・────────あなたとは友達にはなれない、なりたくない────










トントン・・・

夕暮れに照らされる教室でひのめは教科書の角を揃えながら幸恵の言葉を思い出した。
拒絶────もしかしたらここまでハッキリ言われたのは生まれて初めてかもしれない、
ひのめは今朝と打って変わって雲一つ無い夕空を見ながら自分の心は曇り空だと呟いた。
にしても・・・

「何よ!私がGSってわけじゃないのに何なのよ!八つ当たりじゃない!もぉ────っ!」

ムキーとヒステリックな叫びと共に乱暴に席を立つひのめ。
こんな日は友人を連れて帰りに買い食いしたいところだがクラスメイトは全員部活に行ってしまったようだ。
ちなみにひのめは道場通いなので学校の部活はしていない。

「はぁ〜、今日の晩御飯って何にしよう・・・一人分作るのってめんどくさいのよね〜」

母である美智恵が不在の場合選択肢はいくつかある。
1、自炊
2、コンビニ弁当
3、外食
4、デリバリー
5、横島邸に行く
6、レトルト

「う〜ん、1はめんどい、3は今日は予習が結構あるから行ってる暇がない、
 5も同様・・・6はウチってそういうの置いてないのよねぇ・・・ま、結局2か4ね」

取りあえず今日の晩御飯を決定してからどこのコンビニがおいしいかなぁ〜と思っていたとき。

「あ、あの・・・美神さん」

「え?」

自分の名を呼ばれ振り向くとクラスメイトの一人がおずおずと立っている。
そして何かに怯えたように言った。

「あの・・・あの人達が美神さんをよんで来いって」

「あの人達?」

クラスメイトの視線の先を見てみる、そこいたのは・・・チャラチャラ(死語)した男子生徒3人と女生徒が3人。
それはあの日幸恵を苛めていた女生徒とそのツレだった。

「はぁ〜またベタな・・・」

この後の展開を予想して思わず頭を抱えるひのめ。
生意気な女を懲らしめるため男たちを呼んで痛めつける・・・そんなところだろうとひのめはヤレヤレとタメ息をつく。

「あの・・・先生呼んで来ようか?」

「あぁ〜、いいからいいから。余計ややこしくなっちゃうし」

ひのめはクラスメイトに心配しないでと肩をポンポンと叩くと不良グループに首で合図され屋上へと連れて行かれる。
そんなひのめの背にクラスメイトの心配そうな視線が向けられるのだった。











ドガッ!バシィ!!


「ごはっ!」


みぞおちに拳が打ち込まれ呼吸が止まる、その的確な打撃から息苦しさで男子生徒は立っていられず膝を折った瞬間・・・

ゴキッ!

落ちてきた顎をカウンター気味に打ち上げてKO。
その容赦ない攻撃を放ったのはもちろん・・・美神ひのめだった。

「悪いけどこれでも去年の空手全国大会小学生の部3位だよ、私」

「て、てめぇ・・・」

その言葉を残しガクリと意識を失う二人目の不良男子、
既に一人はひのめのハイキックでカクリと壁にもたれかかっている、そして最後の一人は・・・

ガッ!

ひのめの背後からその右腕を掴んだ。

「へへ!やっと掴まえたぞ!組み合えば女なんざ・・・あれ!?」

最後の不良男子がマヌケな声を出した瞬間その視界がグルっと逆さまに回る。
世界が回転したと思った瞬間、その背に走る衝撃にその男子生徒も痛みで動けなくなった。

「あ、言い忘れてたけど私柔道も習ってんだよね」

『言うの遅せぇ・・・』そう呟くと最後の不良男子もガクっと地に伏した。
ひのめはパンパンと手を払うと残りの女生徒達をキッと睨む。

「あんた達・・・こんな事私にしてタダですむとは思ってないわよねぇ・・・」

指を鳴らして近づいてくるひのめに不良女子達はもはや恐慌状態だった。
その結果・・・

「ひぃ!化け物!」
「に、逃げようよ!」
「は、早く!」

と、我先に逃げ出す始末。
そんな女生徒の一人の首根っこをひのめが掴まえると他の二人はこれ幸いとばかりに逃げ出してしまう。

「うわぁ!は、離してよ!いやぁ!」

「コラァッ!こんな美少女捕まえて『化け物』はないでしょう!大体私は弱い者イジメの趣味はないわよ!」

「じゃ、じゃあ!早く離して!私はこんなことするの嫌だって言ったんだからぁ!」

「落ち着きなさいって・・・・ちょっと聞きたいことがあるだけなんだから」

何もこんなに恐がらなくてもいいじゃないかとひのめは少しショックを受けているのだが、
取りあえず不良女子の首根っこから手を離すと疑問に思っていたことを聞いてみた。

「まぁ、取りあえずあんた達がさっちゃんを苛めたことはあとで制裁を加えるとして・・・
 何であの子がGSを嫌いかって知ってる?」

「さ、さっちゃん・・・?ああ、あいつのことね・・・何でそんなことを・・・」

「いいから早く・・・」

ひのめのジロっとした眼差しに女生徒は恐怖に押され渋々知ってることを洗いざらい話した・・・
そこにあったのは・・・とても13歳の少女が背負うには苦しい理由、GSを嫌いになっても仕方ない理由・・・
全てを聞いたときひのめの中には怒りという感情とますます幸恵に対する思い入れが強くなっていた。

「そんなこと・・・って・・・」

「まぁ、だからあいつはGSが嫌いなのよ・・・にしてもあんたも何であんな子に入れ込むかね〜、
 それに私達がしてるのだってただの『遊び』じゃん」

女生徒がそう言った瞬間ひのめの拳がスガンっとコンクリの壁に叩き込まれた。
その瞳はそれ以上言ったら・・・と言う意味が込められている。

「・・・・いい?これ以上あの子に何かしたら絶対許さないわよ・・・これは注意でも忠告でもない、命令よ・・・」

ひのめの強烈な視線に女生徒は震えながら頷くしかなかった。























ちゃ〜ら〜ら〜♪ちゃ〜ちゃ〜・・・ピッ!


「はいはい、もしもし」

横島・・・いや、仕事のときは『美神』令子か、
とにかく令子が出張先でかかってきた携帯を取ったのはPM8:00、
会議も終わりそろそろお風呂にでも入ろうかとしたときだった・・・・電話の相手は・・・


『あ、もしもし・・・ひのめだけど』

「お?どうしたの?ママならウチの旦那とまだ打ち合わせしてるけど」

『あ、違うのお姉ちゃんに用があって』

「珍しいわね、小遣いの相談ならごめんよ?」

『違うって』

電話越しに聞こえる妹の苦笑いに案外元気そうだと安堵する令子。
取りあえずそれは置いといてなら一体何の用なのか尋ねてみる。

「で、どうしたの?」

『うん・・・ちょっと聞きたいことが、お姉ちゃん・・・理袋(ことわりぶくろ)って知ってる?』

「あんたまた珍しい妖怪の名前知ってるわねぇ・・・あれでしょ?人間の激情を大きくするっていう」

『うん、それそれ』

ひのめの明るい返事とは逆に令子の表情は厳しくなる。
昔から無茶なことをするのがお家芸みたいなひのめのことだまた何かやらかすのではないかと。
とはいえ、無茶をやってきたのは自分も母も同じかと令子は少しだけ笑みを浮かべた。

「で、その理袋がどうかしたの?」

『いやぁ〜・・・その除霊法を知りたいなぁ〜なんて、しかもちょっと特殊な方法』

「特殊な?」

一体妹は何を考えているのだろうと令子は眉間にシワを寄せる。
理袋の除霊法は家に置いてある魔道書でも見ればちゃんと書いてあるし、
もちろん一流のGSである人達はみんな知っている・・・だが特殊とは・・・

「理袋の特殊な除霊法・・・確かにあるけどそれはよっぽどの症状にしか使わないし、
 裏技的なものだから知ってる人も少ないわね・・・で、それがどうして必要なの?」

『え、ええとぉ・・・ちょっと気になっただけでぇ・・・』

「・・・・・・・・・・正直に言いなさい・・・・」

『いや、ほ、ホントだって!もうこれっぽちも自分の力で除霊しようなんて思ってないから!・・・あっ!』

「・・・・あんたねぇ・・・この除霊法がどのくらい危険か分かってるの!?
 それを興味本位でやるなんて絶対許さないわよ!」

ここまで言っておけばさすがに大丈夫だろう・・・・・と思った令子が甘かった。

『何よ!興味本位なんて一言も言ってないじゃない!
 事情も知らないくせに勝手に決め付けて怒鳴らないでよ!お姉ちゃんのバカ!アホォ!』


ブチ!


「あ・・・」

キーンと響く耳鳴りとプープーと鳴る携帯電話を耳から話すと令子はマズったぁという表情を浮かべる。

「・・・はぁ、あの子ったらいつからあんなに口が悪くなったのやら、ったくママはどんな教育してるのよ」

そう呟きながら、ひのめの先程の言葉を思い出す・・・


────事情も知らないくせに!


ひのめがここまで必死になっているのも珍しい、そして・・・大抵ひのめが必死になるのは『誰かのため』だ。
母・美智恵から『リアリスト』と『冷徹』を抜いた性格が今のひのめなのだから。
そして令子は大きなタメ息をつくと携帯のボタンをプッシュした。





















『と、いうのが特殊除霊法・・・言うのは簡単だけど実行するのは難しいのよ、そこらへん分かってるわね』

「うん、分かった・・・お姉ちゃんありがとね・・・」

携帯に向かって怒鳴りつけた1分後にかかってきた令子の声にひのめは心から感謝した。
これで幸恵を救えると・・・

『ひのめ・・・いい?絶対に私達が帰ってくるまで何もするんじゃないわよ・・・別に急いでるわけじゃないんでしょ?』

「う、うん・・・」

『よし、ならいいわ。じゃ、そろそろ明日の予習でもして寝なさいよ?ママに代わる?』

「いいよぉ、あさってには嫌でも会うんだから。・・・ねぇ・・・お姉ちゃん・・・」

『ん?』

「一流のGSでも・・・除霊に失敗したり、治せない霊障ってあるのかな・・・」

妹の突然の質問に令子は少しだけ言葉が詰まった。
ひのめの問いはGSという職業に付きまとってくる永遠のテーマなのだから・・・

『・・・あるわ。人間は神様じゃない、GSだって万能じゃない・・・救えない人だっている・・・
 ときには正しいと思うことも現実の目の前には潰されることもある・・・誰かを傷つけることだってあるわ』

「・・・うん」

『でもね、救った救われたを決めるのは結局本人だわ・・・少なくとも私達の父親はそうでしょ?』

「あ・・・・・うん、そうだよね」

令子とひのめの父・公彦は強力な精神感応者だ、現在の心霊治療でも未だに完治の見込みはなく鉄仮面の小型化が精一杯。
それでも・・・彼は満足している、GSとしては救えていないかもしれない、
でも家族を得てその存在をかみ締め人生を精一杯生きている・・・それは公彦が幸せを感じているから。

『だから・・・私達はGSは出来ることを精一杯やればいいのよ・・・・それに見合う代金でッ!!!』

「お姉ちゃん・・・最後のセリフがなければ格好いいのに」

『まぁ、しゃーないじゃない。これが私の精一杯の人生なんだから、それじゃあそろそろ切るわよ?』

「ん、ありがと。お休み」

ひのめは令子に就寝の挨拶をするとプチっと携帯の『電源』を押すとふぅと一息つく、そして・・・・・・・・静かに呟いた。

「・・・ごめんね、お姉ちゃん・・・」




その日・・・ひのめ部屋は明日の授業の予習と言われた特殊除霊法の準備で深夜まで明るかった・・・






















翌日・・・

ピンポーン

一般住宅街にある二階建て一軒屋の江藤家のチャイムが鳴り響いたのは午後4時半だった。
その日一家の家事を一切取り仕切る江藤千穂(旧姓・佐々木)が誰だろうと玄関の扉を開けると、
そこには娘と同じセーラー服を着ている一人の少女が立っていた。

「あら?どちら様かしら?」

亜麻色の髪に凛とした瞳のその少女を見たとき千穂は思わず高校のとき憧れていた先輩と錯覚をおこす。
そしてその少女はペコリと一礼すると自分の名を名乗った。

「あの私美神ひのめと言います、え〜と江藤幸恵さんのお見舞いに来たんですけど・・・いますか?」

「ええ、いるけど・・・美神・・・?あなたもしかして美神令子先輩の・・・」

「あれ?姉を知ってるんですか!?美神令子は私のお姉ちゃんですけど・・・」

「やっぱり!美神先輩に年の離れた妹が出来たっていうのは聞いてたけどもうこんなに大きくなってたのねぇ!」

千穂はまるで久しぶりに令子本人にあったかのようにはしゃぐと昔の思い出に少し浸ってみる。
あの頃美神先輩は私の全てで憧れで、そんな先輩と私も当時の自分達と近い年齢の子供と妹を持つようになるんて、と。
そして、思い出はそこまでにして憧れの先輩の妹が一体何用で尋ねて来たのか聞いてみる。

「それで・・・今日は幸恵のお見舞いって・・・」

「はい!さっちゃんとは友達になったばかりですけど、昨日は早退しちゃうし、今日は欠席だから心配になちゃって」

「あの・・・あなたは幸恵がどんな子か・・・」

「知ってます!でも、友達です♪」

明るい笑顔・・・そして事情を知っても娘を友達と言ってくれる・・・
そんなひのめの言葉に千穂は思わず涙を流した。

「あ、あの!私何かまずいこと言っちゃいました・・・?」

「ち、違うのよ・・・あの子の友達がウチに来てくれる何て久しぶりで・・・
 え、とひのめちゃんだったかしら・・・・・・・お願い、あの子と・・・すっと友達でいてあげて・・・」

涙ぐみながら手を握る千穂に・・・ひのめは優しい笑みで「はい・・・」と頷く。
その笑みにやはり美神先輩の妹だと感無量な思いの千穂だった・・・・そのとき・・・


「お母さん・・・PTAの会議に遅れるよ・・・」

千穂の背後からスっと現れたのは・・・
相変わらずの無表情な私服姿の幸恵であった・・・



























「でさぁ〜、理科の原田先生ったらチャック全開で授業してんのよ、もうみんな笑いこらえるの必死で!」

どうしても抜けれないPTA会議に千穂が出かけたあと幸恵はひのめを居間に案内すると、
無言のままおざなりに紅茶と果物をテーブルの上に乗せた、
あいにく茶菓子は切らしていたらしいがひのめはそんなこと気にせず今日の出来事をここまでずっと話していた。
だが幸恵から返って来る反応は『無言』、それでも諦めずひのめが語りかけていると・・・

「何しに来たの・・・」

と、一言だけ呟いた。

「何しにって・・・見舞いよ、見舞い!っても見舞い品はないんだけどねぇ〜今月お小遣いピンチでさぁ〜」

「私・・・あなたとは友達になりたくないって言ったはずだけど・・・」

相変わらずの拒否の言葉、しかし今日のひのめはここで引かない。

「それだけどさ、確かに私のママとお姉ちゃんはGSだけど私はGSじゃないのよ?
 だからいいじゃない、友達になろうよ、ね?♪」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

幸恵はひのめの言葉に冷たい瞳を向けてから温かい紅茶を口に含んだ。
そして・・・

「そうね・・・」

「あら、結構素直ね」

「確かに美神さんはGSじゃない・・・・・・・・・・・でも、友達なんてもういらない・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・みんな離れていくから?」

「・・・・・・・・・・・・・」

幸恵が理袋に取り憑かれてあの事件を起こして以来幸恵が友人と思っていた者は全ていなくなってしまった。
あの者は他の友人グループに入り、ある者は無視し、ある者は陰口を叩くようになった。
そして・・・今幸恵に近づくのはあのいじめっ子達と・・・ひのめくらいなものだ。

「本当にそれが本心?」

「・・・・・・・」

「まぁいいわ・・・でもさ、GSでもオカルトGメンでも、心霊治療しなきゃ絶対に治らないわよ?」

「GSの話なんてしないで・・・・」

「はぁ〜、ちょっと昔話。・・・・・・・・・・・・・・・ある日、一人の女の子が妖怪に取り憑かれました」

「?」

幸恵はいきなり何かを語りだすひのめを怪訝な表情で見つめるが当のひのめはそれを全く気にせずに続ける。

「妖怪は理袋(ことわりぶくろ)と言って人間が感情をコントロール出来なくなる妖怪でした・・・
 はじめは何事もなく本人も気付かず日常生活を送っていたところ・・・」

「・・・・・」

「とうとう先輩達のイジメがきっかけで感情が爆発・・・
 理袋に理性を奪われたまま・・・少女は先輩達に大怪我負わせました」

「やめて・・・」

停止を求む言葉・・・しかしひのめはさらに強い眼差しで語る。

「もちろんこのままでは日常生活すら送れるか危うい・・・
 そこで両親は高名な民間GSに除霊を依頼・・・しかし・・・・・」

「やめてって言ってるでしょ!」

「そのGSは程度を軽く考えて助手に除霊をやらせました・・・・・それがいけなかった」

「くっ・・・」

「除霊は失敗に終わり・・・理袋は少女のチャクラと連結するまでになってしまった・・・
 こうなっては一朝一夕で除霊は不可能、現代の心霊理療では何年もかかるし、
 日本のオカルトGメンは心霊治療に思ったより力を入れていない・・・
 GS不信になった少女は除霊を拒否し、自分の感情を殺すことにした・・・そうするしかないと思ったから」


ガタンっ!バシャ!

熱く赤い液体・・・紅茶がひのめの頭に勢い良くかけられた。
しかし、ひのめは慌てることなく滴る紅茶を袖で拭いながら・・・息を切らせてる幸恵を見つめた。

「あなたに何が・・・何が分かるの!?GSのせいで私の人生は滅茶苦茶ッ!!
 もうあの楽しいと感じた日々も戻らない、好きに笑えない、泣けない・・・・でも!
 それでも誰かを『暴力』で傷つけて・・・・自分が傷つくのは嫌・・・・」

「さっちゃん・・・」

「あの日・・・先輩達に大怪我を負わせた日・・・いつもこんなことすぐに終わると思っていた先輩達のイジメ・・・
 ・・・・でもその日だけは違った・・・、今でも残ってる人を殴る感触、骨が折れる音、血の匂い・・・
 そのときのことは全然覚えてないのに嫌な感覚だけは全部体が覚える!
 剣道の心地よい痛みとは違う、・・・あんな思いはもう嫌!!」

ひのめはここに来てやっと初めてあったときの幸恵の言葉を理解できた。


────傷つきたくない・・・


それは他者へ向けられた言葉であり、自分自身へも向けられた言葉。
幸恵の自己防衛だったのだ。人を傷つけるのが恐くてだから今の自分が人と触れ合うのが恐くて・・・
だって・・・なぜなら幸恵は・・・




「さっちゃんは・・・・・・どうしよもなく優しいんだね」

その言葉は・・・幸恵の心の奥深くまで入り込んでいくのだった。

                              その46に続く

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